「これまでの人生で決めてきたことは全部捨てて演じた」映画『猿楽町で会いましょう』公開記念舞台挨拶
6月5日、ホワイトシネクイント(渋谷PARCO内)にて、映画『猿楽町で会いましょう』の公開記念舞台挨拶が行われ、上映後舞台挨拶に、W主演の金子大地、石川瑠華、栁俊太郎、前野健太、児山隆監督が登壇。コロナ禍による1年延期を経ての公開を迎えた今の気持ちを語った。
本作は、「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」で205篇の応募作の中から満場一致で第2回グランプリ獲得。
2019年・第32回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門に正式出品されたほか、ウディネ ファーイースト映画祭2020コンペティション部門ノミネート、台北ゴールデンホース映画祭(台北金馬映画祭)に正式招待されている。
舞台挨拶レポート
-監督、コロナ禍による1年間の延期を経て、昨日からいよいよ劇場公開となりました。今のお気持ちは?
児山隆監督
映画っていうのはやっぱり作るだけじゃなくて、お客さんに観てもらって初めて完成するものだということを、この一年痛切に感じました。
なので、皆さんにお披露目することができて本当に幸せですし、ホッとしています。
-昨日の公開初日舞台挨拶は、当初児山監督お一人の登壇予定だったんですが、金子さんと石川さんも急遽駆けつけられたそうですね。それはどんなお気持ちからなんでしょうか?
金子大地(小山田修司 役)
やっぱり初日なんで何が何でも行きたいなと思ったからです。
石川瑠華(田中ユカ 役)
私も行きたいっていう気持ちと、監督におめでとうございますってまず言いたかったからです。
■「これまで生きてきて決めてきたことは全部捨てた」
-金子さんは、小山田という人物をどのように捉えて演じられたんでしょうか?
金子大地(小山田修司 役)
脚本を読んだ時に思ったのが、とにかく純粋なんだけど、未完成でまだ自分の撮りたいものも定まっていないような役柄だったんで、とにかく余裕のない男を意識しました。
-物語の中で大きく心情が変化していくと思うんですけれども、これはご自分でそんな風に表現しようと努められたんですか?
金子大地
撮影は2週間でしたが、毎日毎日が濃かったので、台本でもこう変わってくと書いてあるけど、自分も自然と変わったなっていうのは撮影を通して思いました。
-石川さん、チャーミングさや、虚無感など物語の中でいろんな顔を見せてくださいました。脚本を読んだ時、ユカという女の子どんな風に思いましたか?
石川瑠華(田中ユカ 役)
ユカの行動だけを追っていくと、本当に悪いことしかしてなくて、で、脚本だけ読んだらあんまり好きにはなれなかったんです。
-実際にユカを演じる上でどんな事を大切にされたんですか?
石川瑠華
脚本を俯瞰で読んじゃうと善悪をつけちゃうんですけど、私はこの人は良い人だ、悪い人だってつけちゃうんですけど、ユカを演じるにあたっては、それは絶対必要ないから、それをまずしないようにして、できるだけ寄り添ってあげようって思いました。
あと、これまで生きてきて、自分で決め切ったこととかを全部要らないなって思ったんで、1回捨てて、本当に無垢な状態で、なんにでも反応できるような人でいたいなって思ってました。
-ユカとご自身、共通点とかは見つけられましたかか?
石川瑠華
ユカは、良いところと悪いところが幅広いと思うんですけど、私もそこは一致する部分があります。
でも、今日も映画を観て思ったのは、いち観客としての私のためのユカだなと思っちゃいました。
-柳さんはどんなところを心に留めて演じられましたか?
栁俊太郎(北村良平 役)
監督からはフラットな感じでとは言われていましたので、ユカとの関係もどれだけ馴染めるかということを意識して演じました。
-良平からではなく、柳さんご本人から見て、この物語に登場するユカってどんな人だと思いますか?
栁俊太郎
けっこう厳しいなっていう(笑)
あんまり近寄りたくないですね。正直な話。
でも、分かっていても、注意はしていても、いっちゃうっていうのは、わかります。
-そういう魅力がユカにはあると?
栁俊太郎
はい。そういう意味ではすごい魅力があると思います。
-それでは、嵩村役を演じられた前野さん、見事なまでのギラギラ感、ギトギト感が素晴らしかったですが、ご本人としてはどういうところを心がけて演じられましたか?
前野健太(嵩村秋彦 役)
今おっしゃったギトギト感というか、そういうちょっとウザい感じが出るようにとと思ってやりました。
-前野さんご本人から見たユカはどんな女の子ですか?
前野健太
すごい魅力的で。私、普段、歌を作っているんですけど、ユカが近くにいたら、たぶん歌を作ってしまいます。そういう入り込んでしまう女性です。
■“嘘”
-この作品は“嘘”がひとつのテーマになっていますが、監督はこの“嘘”をどういった視点で取り入れられたんですか?
児山隆監督
この物語を考えた一番最初に、ユカは嘘ばっかりついているキャラクターとしました。
実はこの映画は、ユカに関わった人はみんなユカに嘘をついてて、小山田もそうですし、おそらく良平もそうだし、嵩村もオイシイ話をチラつかせたり、バイト先でもそうだし、友だちの久子だったり、みんなに嘘つかれています。そうすると、ユカの嘘だけ断罪できるのかと。
ユカ一人を悪者にするんじゃなくて、じゃ、全員が良い者なのか、全員が悪者なのかとか、なかなかそういう答えは出ないんですけど、ユカみたいな女の子に対しても、ピュアにというか、映画の中で公平にというか、そういう風に見えるように、何かその嘘との距離感を意識しながら作ったつもりです。
■皆がユカの方に向いていった
-撮影中のエピソードで思い出に残っていることは?
金子大地
児山組のスタッフの皆さんがこの作品に対してすごい熱を持って参加されていて、キャストも含めそうなんですけど、本当に良い雰囲気の中、一つ一つのカットを大切に撮っている感じがあって、それがすごく幸せでしたね。
石川瑠華
男子校はもちろん行ったことないですけど、児山組は男子校みたいなノリで、テンションが上がったまま、いいっすねー、行っちゃいましょうみたいな、アップテンポで進んでいくなと私から見て思いました。
私はユカを演じてたので、そこに乗って、次はユカでっていうことができなくて、そこが悔しいなっていうか、もうちょっとそこも楽しみたかったなぁってちょっと思います。
栁俊太郎
監督が、いいよって言ってくれたので、すごい気持ちよかったです。
前野健太
児山組は、撮影初日からすごいグルーヴが出てて、カメラマンの方と監督の掛け合いの間に挟まって、この映画は多分面白くなるぞって、初日から僕は勝手に感じていました。
そして、児山監督はひとつひとつがすごい丁寧なんです。で、(私が裸で出ていた)メンズエステのシーン、上から俯瞰で撮っているあのカットは要らないですよね?おっさんのテカテカの背中って要りますか?
丁寧過ぎて、そこは本当にヤダって。意外に筋肉がモリモリしてて、普段何やってんのかなと思って。
金子大地
でもすごいセクシーでしたよ。
前野健太
いや、気持ち悪いなぁって思って。あそこまで丁寧にやらなくてもいいんじゃないかなと思いました。
児山隆監督
主演の石川さんもそうですし、金子くん、柳くん、前野さんもそうなんですけど、日を重ねるごとにどんどんと、無意識にユカの方に体重を乗せて、みんながそっちの方に向いて行って。
ユカのどういう表情を出そうかというのを、金子さんは初日から率先してやってくれてたんですけど、その他のキャストの皆さんも、どうやったらユカに対して負荷をかけられるのか、そういうふうに皆が自然とユカの方に向いていった現場だなって思っています。
そういう意味で、チームワークというか、一体感みたいなものを毎日感じ取れてました。
そのことは、自分的にも発見だったし、楽しかったです。
■共演してみて
-金子さん、石川さん、お二人で芝居をする時、お互い、どんなところに刺激を受けましたか?
金子大地
僕は2分間の予告映像を見て、そこで石川さんを知って、すごく魅力的な表情をされる女優さんだなと思ったので、長編ではとにかくもっといいものにしたいと思っていました。
実際にお芝居してても、こういう反応するんだっていう驚きが毎回あるので、一緒にお芝居してて楽しかったです。
石川瑠華
小山田と金子さんは、現場でも私から見てて違って、その切り替えがすごい早くできていて、それは俳優として本当に尊敬するところでした。
で、小山田としては、ユカがどうなっても支えてくれる存在感と雰囲気でしかないとか、セリフの返しとか、本当にずっとありがとう、ごめんなさいって思いながらやってました。
■最後にメッセージ
石川瑠華
ユカのことについて言うと、ユカみたいに理解されにくい人とか、よくわからない人って結構いると思ってて、そういう人って、一概に嫌いっていう判断を受けたり、人から離れられちゃったりすると思うんですけど、本人は理解されることから遠のいてるように見えても、やっぱりひとりぼっちでは生きていけないし、きっとどこかで誰かに理解されたいって思ってるはずだし、だから、周りにそういう人がいたら、近寄らないとかじゃなくて、手を差し伸べて理解してあげれば、救われる人とかもいるのかなと思います。
二十代前半で、一人ぼっちで孤独になりたくもないのに孤独な状況って、本当に辛いな、生きていけないなって思うので、この映画を観た人には、ユカに共感してくれた人には、そういう人に手を差し伸べてほしいなって思いました。
栁俊太郎
(ユカのこと)厳しいって言ってごめん。
石川瑠華
柳さんだからぜんぜんいいです(笑)
金子大地
やっと皆さんに観ていただくことができて本当に嬉しいです。撮影は2週間で終わったんですけど、公開まで2年かかっているのですごい長かったです。
児山さんが、最後の最後までこだわって、この作品にかける思いを知っていたので、だからなおさら、やっとこうやって皆さんに観てもらえて本当に嬉しく思っています。
児山隆監督
金子大地と石川瑠華という人は素晴らしいですし、柳俊太郎、小西桜子、前野健太、それ以外のキャストも本当に素晴らしかったと思います。
これほど素晴らしいキャストに恵まれて映画を作ることは本当に幸福なことだなと。
演出の7割はキャスティングで決まるとよく言いますけど、本当に素晴らしいキャストの皆さんと、素晴らしいスタッフと一緒に作品を作ることができて、これほど監督冥利に尽きることはないと思います。
あまり大げさなことは言いたくないんですけど、今、ここに立っている人たちは、邦画の顔になっていく人たちだと僕は思っています。
それぐらい可能性と魅力と才能に満ち溢れている方たちだと思います。
この『猿楽町で会いましょう』を観た後も、目を離さずに、今後の彼らの活躍をを見ていただけたらなと思いますし、僕もそれに負けないようにいい作品を作っていきたいと思っています。
■トークノーカット動画動画
■フォトギャラリー
[写真:金田一元/動画・記事:桜小路順]
映画『猿楽町で会いましょう』
INTRODUCTION
第2回「未完成映画予告編大賞MI-CAN」グランプリ受賞作を映画化したラブストーリー『猿楽町で会いましょう』。
鳴かず飛ばずのフォトグラファー・小山田は、読者モデルのユカと出会う。
しだいに距離を縮めていく2人だが、ユカが小山田に体を許すことは決してなかった。そんな中、小山田が撮った彼女の写真が、2人の運命を大きく変えることになる。
フォトグラファー・小山田役には、「おっさんずラブ」「腐女子、うっかりゲイに告る。」など出演作が相次ぎ、業界大注目の金子大地。
どこか掴めないユカ役には、ネクストブレイク必至の石川瑠華。
そのほか、ユカの元恋人・良平役に栁俊太郎、ユカがタレント養成学校で出会う友人・久子役に小西桜子、雑誌編集者役には、前野健太がそれぞれ脇を固める。
監督は、本作が長編映画デビューとなる児山隆。変わりゆく渋谷の街を舞台に、若者たちの刹那の恋を流麗なカメラワークで切り取っている。
金子大地 石川瑠華
栁 俊太郎
小西桜子 長友郁真 大窪人衛 呉城久美 岩瀬 亮 / 前野健太
監督:児山 隆
製作:長坂信人
脚本:児山 隆 渋谷 悠
後援:ドリームインキュベータ
制作プロダクション:オフィスクレッシェンド
配給:ラビットハウス、エレファントハウス
Ⓒ2019オフィスクレッシェンド
公式サイト:sarugakuchode.com
6月4日(金)渋谷ホワイトシネクイント 、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
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