福田麻由子「自分が大事に持っていたいものは?」映画『グッドバイ』初日舞台挨拶
4月3日、渋谷ユーロスペースにて、映画『グッドバイ』の初日舞台挨拶が行われ、主演の福田麻由子、そして井桁弘恵、池上幸平、宮崎彩監督が登壇。3年前に撮影してようやく公開を迎えた今の気持ちについて明かした。
本作は是枝裕和監督の元で映像制作を学んだ宮崎彩監督が、福田麻由子を主演に迎え、少女から大人に変わりゆく主人公の視点から家族の変容と決別をほろ苦く描き出したヒューマンドラマ。
主人公のさくらに「女王の教室」「白夜行」などで子役として非凡な才能を発揮し、近年ではNHK 連続テレビ小説「スカーレット」『蒲田前奏曲』などで深みを増した演技を見せる福田麻由子。娘から女性に変わりゆく役柄を繊細に演じ切った。
監督・脚本は是枝裕和監督の元で映像制作を学び、本作が初長編監督作となる弱冠25歳の新鋭・宮崎彩。 日常の機微を積み重ねた丁寧な演出で、ゆっくりと、しかし確実に変わりゆく家族の姿を優しく、せつなさを込めて浮き彫りにした。
舞台挨拶レポート
■福田麻由子をイメージして書いた脚本
-撮影自体は3年前になりますが、本日、初日を迎えられたお気持ちは?
宮崎彩監督
撮影から公開まで時間がかかって、やっと上映できるって言う喜びと、まだ嘘なんじゃないかなっていうところと、ふわふわとしていますが、皆さんに見ていただけるのは嬉しいです。
-本作製作の経緯を教えてください。
宮崎彩監督
企画を立てたのはさらに前なのですが、撮影は3年前でした。私自身が当時、大学に在学していまして、それまで短編を監督したことはあったんですけれども、長編映画を撮る機会がなく、卒業までにどうしてももう一本映画が撮りたいという想い一点で、企画を立てて、みなさんに出ていただくことになりました。
-福田さんに関しては、脚本が半ばあて書きだったということですが、キャスティングの経緯などを教えてください。
宮崎彩監督
今日登壇いただいているお三方は、私が直接オファーさせていただきました。
企画を立てて、主人公が20代半ばの女性、そして“いろいろと器用にできるけれども熱がない”という性格のキャラクターを作っていくなかで、福田麻由子さんのことを思い出したんです。
私は、自分が小さい頃から見てきた福田麻由子さんが私の中に文化として残っていて、それを脚本を書いていく中でより思い出されてきて、「私って、福田麻由子に、これを演じてもらいたいんだ」という想いが強くなりました。
出演していただくあては全然なかったんですけど、書いている途中で勝手に想いが暴走して、書きあがった時には“上埜さくら”の造形は福田さんしか考えられませんでした。
-福田さん、半ばあて書きの役柄だったということですが、ご自身に当てはまる部分はありますか?
福田麻由子(上埜さくら 役)
この映画の撮影は3年前の春で、当時23歳でした。その頃の自分と今の自分は状況も違うし、世の中の状況も違います。
この映画は、さくらが会社を辞めるところから始まって、何を手放し、グッドバイしていくのかっていうお話ですが、当時の私も、自分が本当に大事に持っていたいものは何なんだろうっていうのをすごく強く考えていた時期だったので、巡り合わせのようなものを感じました。
■何も続かなくて・・・
-さくらはなんでも器用にこなせるんだけれども、どこか熱がないような性格ということなのですが、ご自身と比較していかがですか?
福田麻由子
私も小学生の時はいろいろと習い事をしていました。スイミングとか…でも泳げないんですけど(笑)
ダンスとかも習っていたんですけど…踊れないし、何も続かなくて(苦笑)
ピアノも習っていて、私の古いプロフィールに、“特技:ピアノ”って書いてあったのを宮崎監督が見て、ピアノを弾くシーンが映画の中にあるんですけど、「弾けない」とは言えないと思って、「でも弾けないんだけどな…」なんて思って、ピアノを弾いてみたりして、とにかく習い事は何も続かなかったので、それはちょっと似ているかもしれないです。
-井桁さんは、さくらの同僚として出演されていますが、脚本を読んでの印象はいかがでしたか?
井桁弘恵(みほ 役)
大人な作品だなと思いました。3年前、私は大学生だったので、さくらの気持ちというか、流れのようなものに、まだ、当時の自分の心がついていけていなくて、難しい作品なのかなと思いましたが、撮影から3年後の24歳になって作品を見ると、また違った感情というか、受け取るものが違うなと思いました。なので、最初は難しい大人な作品だなと思いました。
■子どもたちとの接し方がわからなかった
-保育園のシーンがあり、実際の園児の子たちの前で演技されたと思いますが、撮影現場はいかがでしたか?
井桁弘恵
私は実際に末っ子で、年下の子と遊んだり、接する機会が今までありませんでした。なので、保育園のシーンは、どうなるんだろう、どうやって子どもたちと接したらいいんだろうって、とても悩んでいました。
けれど、子供たちがすごく素直で賑やかで可愛くて、一緒に楽しんでる感覚でできたので、とても楽しかったです。
-池上さんは、さくらが働く保育園に通う園児の父親役ということでしたが、最初に脚本を読まれた時の印象はいかがでしたか?
池上幸平(新藤 役)
とても丁寧に書かれた脚本だと思いました。3年前なのですが、今でもその印象が強く残っています。
-主人公のさくらは、池上さんが演じる進藤に、自分の父親を重ねて行くことになりますが、演じるにあたって工夫された点はありますか?
池上幸平
監督と、進藤という役について話していくうちに、ここはもう監督に任せてしまおうと思ったのは覚えています。その後は、物語後半に出てくるさくらの父親の空気に近いものが残ればいいなと思って演じました。
■今まで見てきた撮影現場と違ったこととは
-宮崎監督を含め、20代のスタッフが多い現場だったと聞いています。20代のスタッフが多い現場で刺激を受けたことはありますか?
福田麻由子
まず、同世代の監督が、私を思って脚本を書いてくださったというのは本当に嬉しかったです。
同世代の仲間が劇場公開の予定もない中で、ゼロから映画を生み出そうという姿に刺激を受けました。自分ではやったことがない、ゼロからものを創るということをやろうとしている人が同世代にいるんだと、すごくパワーをもらう経験でした。
今まで経験してきた、映画ってこうやって撮るんだよねっていう感じではないことが現場ではいっぱい起きました。家のシーンがあるのですが、スタッフさんの親戚のおうちを5日間くらい借りて撮ったり。キャストはホテルを用意して頂いてたんですけど、スタッフの皆さんは布団敷いて、その家で寝泊まりしていて、朝の入り時間に現場に行ったら、みんなが歯磨きとかしていて、布団を畳んでから撮影するといった状況に、「なにこれ?」って思ったりしました。そういうことも楽しかったです。
宮崎彩監督
福田さんのキャリアからは、考えられないことばかりのヤバイ現場だったと思います(笑)
-井桁さんは、撮影現場はいかがでしたか?
井桁弘恵
当時の私は映画撮影の現場経験も浅く、最初は緊張もあったんですけど、皆さんすごく熱量が高いし、なにより同世代ということもあって、リラックスしたアットホームなチームという感じで現場の雰囲気作ってくださいました。分からないことがあったらすぐ監督も優しくて何でも相談させてもらえたり、そこで福田さんと三人で保育園のシーンについてディスカッションできたりとか、そういうコミュニケーションを取れる現場だったので楽しかったし、刺激をたくさんもらえた現場でした。
-池上さんはいかがでしたか?
池上幸平
撮影初日、若いスタッフの人たちが、本当に活き活きと一所懸命に自分たちの役割を果たしている感じをみて、僕も頑張らなければと思いました。
■最後にメッセージ
宮崎彩監督
今日登壇してくださった皆さんは、保育園のシーンを演じてくださってます。私たちは、園児たちが実際にいるっていう環境に身を置いて、その中で生活したものを切り取りました。
全編を通して、3年前にしか撮れなかったことを残してきたと思っています。あの時しか撮れなかった季節を感じてくれたら幸いです。
福田麻由子
この作品の一つの大きなテーマは家族です。親といる時って、いつになっても自分の中に、子どもの時の自分が残っている感じがすると思います。
保育園のシーンでは、本当にそこで日々を生きている子どもたちの笑顔、笑い声やはしゃいでる姿は、ある種のドキュメンタリーのように何かキラキラとした姿が映っているのが私はすごく大好きで、一つの見どころではないかなと思っています。
井桁弘恵
私も保育園のシーンにメインで出ているのですが、子どもたちのリアルな様子とか空気感とかを楽しんでいただけるのではないかなと思っています。私自身、三年前の映像ということで自分で見ても若いなっていう感じがあるので、そこの変化も楽しんでもらえたらと思います。
池上幸平
本当に丁寧に作られている作品です。全てのシーンが繋がっていると思うので、もう見逃さず見ていただければなと思います。そのうえで、福田さんが演じるさくらの変化とかを感じてもらえたらと思います。
■フォトギャラリー
[写真:金田一元/記事:桜小路順]
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少女から大人に変わりゆく主人公の視点から、家族の変容と決別をほろ苦く描く
STORY
……郊外の住宅地、その一角にある上埜家。さくらは母親と二人で暮らしている。
仕事を辞めたさくらは、友人の頼みから保育園で一時的に働くことに。そこで園児の保護者である、新藤と出会う。やがて彼に、幼い頃から離れて暮らす父の姿を重ねるようになるさくら。
ある晩、新藤家で夕飯を作ることになった彼女は、かつての父親に関する“ある記憶”を思い出す。一方、古くなった家を手離すことに決めた母。
桜舞う春、久しぶりに父が帰ってくる──。
福田麻由子 小林麻子 池上幸平 井桁弘恵 佐倉星 彩衣 吉家章人
監督・脚本・編集:宮崎彩
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト 共同配給:ミカタ・エンタテインメント
(C)AyaMIYAZAKI
公式サイト:www.goodbye-film.com
公式Twitter:@Goodbye_film
新予告編
4月3日より渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー
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