河童の女

【監督・キャストインタビュー】51歳新人監督が満を持して世に送り出す映画『河童の女』とは?

7/11(土)より公開となる映画『河童の女』。不思議なタイトルの本作は、「カメ止め」現象を巻き起こしたENBUゼミナールシネマプロジェクト最新作。メガホンを取った51歳の新人・辻野正樹監督、そして主演の青野竜平、郷田明希にお話を伺った。

今後の活躍が期待される俳優と新進気鋭の監督の出会いの場となっているCINEMA PROJECTで本作が長編映画デビューとなる51歳の新人・辻野正樹監督。
辻野監督は、フジテレビ系列で放送された大野智主演ドラマ「劇団演技者。」で脚本を務めた実績を持つ。
『河童の女』は、その辻野監督のオリジナル脚本で、それにあわせ、ワークショップオーディションで選ばれた16名のキャストに、ベテラン俳優の近藤芳正をゲスト俳優に迎え撮影が行われた。
とある民宿を舞台に長編映画初主演の青野竜平と郷田明希の2人が織りなす物語で、トラウマを抱えながらも懸命に生きる人々の姿を描き、クスッと笑えるエピソードと共に最後にはホッと温かい気持ちに包まれる作品になっている。

青野竜平×郷田明希×辻野正樹監督インタビュー

河童の女

青野竜平/辻野正樹監督/郷田明希

部屋の換気のため開けた窓から、強い雨音とJRの往来の音が聞こえてくる中、W主演の青野竜平さん、郷田明希さん、そして辻野正樹監督がインタビューに応じてくれました。
インタビューの中で、「オーディションの時、郷田さん一人だけ異質な印象を感じ、それがキャスティングの理由。」と答えた辻野監督。
本記事掲載用ポートレート撮影の準備中、その郷田さんにこちらから「プロフィールに特技がモノマネって書かれているのが気になりました。」ってふってみると、ご本人は「じゃ、B’zをやってみますね。」とまさかの快諾。“愛のバクダン”の一節をモノマネ披露してくれました!
笑いが起きる中、辻野監督は初めて彼女のモノマネを見たようで「衝撃だ!」とビックリした様子。
監督に改めて「異彩という意味でやはりキャスティングの目にくるいはなかったですか?」と訊ねてみると、「あの、俺、やっぱり間違っていたかなと思えてきた・・・(笑)」と話され、とても和やかなインタビューとなりました。

河童の女

絶賛B’zモノマネ中の郷田明希

■ 51歳新人監督。その挫折と栄光の人生

– 51歳で新人監督として長編映画劇場デビューとなった経緯を教えて下さい。

辻野正樹監督
20代の時は音楽をやっていてCDも出したんですが、売れなくて30歳くらいの時に挫折しました。
会社員生活も1ヶ月ももたず辞めちゃって、俺はなんにもできないダメ人間だなぁと思っていた中、友だちが自主映画を作ることになって、劇伴音楽を作ることになったんです。
でもその友だちが「シナリオが書けない」って言うので、私が代わりに書きました。それがシナリオを書くようになったきっかけです。
その自主映画は結局作られることはなかったんですが、今度は俳優をやっていた友だちが劇団を立ち上げるというのでそれに参加することになりました。

辻野正樹監督

辻野正樹監督

– その劇団の公演がフジテレビでドラマ化されたと聞きました。

辻野正樹監督
はい。旗揚げ公演の「勝手にノスタルジー」(03)は、脚本だけでなく、演出も私が担当したんですが、すごく評判が良くて、フジテレビ「劇団演技者。」(04)にて、大野智さん主演でドラマ化され、ドラマ版の脚本も担当することになったんです。
こうなったら演劇界で少しは注目されるかと思ったらまったく注目されなくって(笑)
その時、演劇はどれほど面白いものができても、公演が終わったら形に残らないなと思い始めました。
思い返したら、もともとは映画が好きで、シナリオを書くことに興味を持ち始めたので、演出も経験したし、じゃぁ、自分で監督して映画を撮ったらいいんじゃないかと思うようになりました。それに気づいた時は、もう30代後半でした。

– ENBUゼミナールに参加されたのは?

辻野正樹監督
自主映画を撮り始めた後、42歳の時です。
ENBUゼミナールで熊切和嘉(くまきりかずよし)監督が講師をされていました。
その後、脚本の仕事をやりつつ、監督としてはホラーオムニバスDVD作品「奇々怪界譚 醒めない悪夢の物語」(17)などをやりました。
そして、2019年、ENBUゼミナールでシネマプロジェクト作品のコンペをやることになり、『河童の女』の企画をエントリーして、それで選んでいただくことになりました。

■ オーディションで一人だけ異質な印象の女性がいた

– 青野さん、郷田さんのキャスティングの経緯について教えて下さい。

辻野正樹監督
ENBUゼミナールのシネマプロジェクトでは、これから世に出ていこうという役者さんをオーディションで選んで、その役者さんで映画を作るってことを毎度やっています。
役者さんを選ぶ段では、メインの2人は台本のイメージにはまる人を選ぼうと思っていたので、それが青野さん、郷田さんだったというわけです。
青野くんは見た目のイメージ通り、真面目な人って雰囲気です。また、大きな舞台も経験されていて、芝居もちゃんとしている方でもありましたし。
一方、郷田さんですが、彼女が演じた“梅原美穂”っていう役は、当初は、ロングヘアの謎めいた女をイメージしていました。
オーディションでは、ロングヘアのモデルのような綺麗な化粧をした女の子が多かったんですが、そんな中、あんまり化粧もせず、ショートヘアで声も低く、一人だけ異質な感じの女性がいたんです。それが郷田さんでした。

河童の女

影のある女・美穂(郷田明希) (C)ENBUゼミナール

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浩二(青野竜平)/美穂(郷田明希) (C)ENBUゼミナール

– 役が決まった時のお二人の気持ちは?

青野竜平(柴田浩二 役)
嬉しかったです。応募の段階では、僕の年齢に合う役が、主人公の浩二と浩二の兄だけしかなかったんですよ。
役柄の説明を見ると、兄のキャラクターは僕とは違う。一方、浩二の説明を見ると自分の素材に合ってるように感じ、やってみたいとも思い、応募しました。

青野竜平

青野竜平

郷田明希(梅原美穂 役)
募集内容を見た時に、自分の年齢に当てはまるのが“美穂”しかいなくて、でも「美人で影があって」と書いてあったので、「あ、これは絶対に(私とは)違うな」って思ったんですよ。
そうなると、「あ、もう役は無いな」とも思ってました。でも、もしかしたら小さい役でも作ってもらえるかもしれないって思ってオーディションに参加しました。
なので、“美穂”に選んでもらったのはすごいありがたいですね。

郷田明希

郷田明希

– 郷田さんご本人は影は無いタイプですか?

郷田明希
影は無いですね(笑)
“美穂”の役づくりとしては、“美穂”はこんな人生を歩んできたのかなとか、こんな性格かなっていうのをいろいろ書くようにしたんです。
そのうち「あ、ちょっと自分に似ている部分もあるな。」っていうのも少しずつ思い始めました。
そうなると、“美穂”がこういう人だからこう演じなきゃじゃなくて、自分自身を出していくことが“美穂”になるかもしれないって、そういう気持ちで演じました。
辻野監督からも「郷田さんのままでやってくれたらいいよ」って言ってくださったので、さらに納得して。

河童の女

舞台となった民宿「川波」での1シーン (C)ENBUゼミナール

– 郷田さんが“美穂”に似ているかもっておっしゃいましたが例えば?

郷田明希
自意識過剰で繊細なところです。
あと、私は妄想がけっこう膨らむタイプなので、そこも“美穂”と似てなくはないかな。

河童の女

青野竜平/郷田明希

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ベテラン俳優近藤芳正も脇を固める (C)ENBUゼミナール

■ “映画だからこういう演技”って縛られたくない

– 辻野監督の脚本はセリフが多いという意見も聞きますが、演じられたお二人はどうでしたか?

郷田明希
私はセリフを覚えることだけは苦手じゃないので、そんなに多いとは思わなかったです。
でも、青野さんはほとんどのシーンに出ているし、すごいセリフ量で大変だなと思いました。

郷田明希

青野竜平
僕は、お芝居でも台本1ページまるごとの長セリフとかの経験もあったんですが、映画でこんなにしゃべれることは、なかなか無いなって思ったのでとても嬉しかったです。

青野竜平

辻野正樹監督
僕の脚本って、映画をやっている人からしたらセリフが多いって言われることがよくあるんですが、二人とも演劇をやっているから、セリフが多いっていうことに関してはそれほど抵抗は無かったのかなと思っています。

– 演劇舞台と映画それぞれでおふたりは演技の捉え方をどう感じられていますか?

青野竜平
お客さんがいる・いないっていう部分で言うと、変わりがないなと思いました。映画はスタッフさんがお客さんだと思うので。
ただ映画は、場面カットごとに撮るとか、何回か同じシーンを撮るとか、現場に入ってから変わることに瞬時に対応できることが求められます。
演劇は、お客さんによって変化はあるんですけど、稽古をずっとやっていく中で作られていくものです。その違いが難しいですし、面白いなとも思いました。
映画も演劇もスタッフさんがとても大切なのは同じですが、映画では、目の前でスタッフさんが動いているのが見えて、改めて役者というのは、いろんな人の思いがある中で成立しているんだなと感じました。

河童の女

(C)ENBUゼミナール

郷田明希
私は演劇舞台では、「郷田さん、ちょっとやり過ぎ」と言われることが多いので、映画だとさらにやり過ぎ感が出ちゃうんだろうなと思っていました。
でも、完成した映画を見ると、もっとやり過ぎても良かったかなと思いました。

河童の女

辻野正樹監督
僕の映画の出演者は舞台やってる人が多くて、演技が芝居のようと言われることもあるんですが、僕自身は映画はいろんなものがあっていいと思うので、映画だからこういう演技だっていう考え方はあんまり好きじゃないですね。

河童の女

(C)ENBUゼミナール

■“カメ止め現象”には感謝しかない

– あらためてカメ止め現象について、辻野監督はどのように受け止められましたか?

辻野正樹監督
そりゃもう素晴らしいなと思いました。いろんなこと思ったり言う人はいますが、やっぱり面白いアイディアで映画を作ればヒットできるっていうことを証明したことは素晴らしいと思います。
僕はもうほんとにカメ止めのおかげでこの作品が作れたっていうところがあるので、もうカメ止めに対しては感謝しかないので、監督同士の飲み会で、誰かがカメ止めの悪口を言ってたらケンカになりそうになったこともありましたね(笑)

– 今後、辻野監督の抱負は?

辻野正樹監督
基本的には、オリジナル作品を作り続けていきたいですね。職業監督としてやっていけるとはあんまり思っていないので(笑)
映画にしたいと思っているアイディアはいくつかあるので、どこかで形にできればなと思っています。

河童の女

■ 見どころとご覧になる方へのメッセージ

辻野正樹監督
この作品を見た人の感想は2パターンあります。「ほのぼのとした温かい感じ」と言う人。逆に「人間の“業”の部分を感じる」という人。
すなわち、いろんな楽しみ方ができる映画だと思っています。

青野竜平
この映画には、生きづらい思いを抱えた人たちが登場します。それを見てこれでいいんだって共感していただいてもいいし、一方で単純にエンタテインメント要素もある作品ですので、そこも楽しんで観ていただければと思います。

郷田明希
いろんなキャラクターが出てくるので、誰かお気に入りのキャラクターが見つかると思います。
そして一番の見どころはラストシーンです。『河童の女』っていうタイトルが気になったら是非観ていただきたいと思います。

河童の女

[聞き手:安田寧子/写真・文:桜小路順]

映画『河童の女』

<STORY>
柴田浩二(青野竜平)は、川辺の民宿で生まれ、今もそこで働きながら暮らしている。
ある日、社長である父親(近藤芳正)が、見知らぬ女と出て行った。浩二は一人で民宿を続ける事となり、途方に暮れる。
そんな中、東京から家出してきたという女(郷田明希)が現れ、住み込みで働く事に。
美穂と名乗るその女に浩二は惹かれ、誰にも話した事の無い少年時代の河童にまつわる出来事を語る。
このままずっと二人で民宿を続けていきたいと思う浩二だったが、美穂にはそれが出来ない理由があった。

出演:青野竜平 郷田明希 /斎藤陸 瑚海みどり 飛幡つばさ 和田瑠子 中野マサアキ 家田三成 福吉寿雄
山本圭祐 辻千恵 大鳳滉 佐藤貴広 木村龍 三森麻美 火野蜂三 山中雄輔/ 近藤芳正
監督・脚本:辻野正樹
撮影・編集:小美野昌史 照明:淡路俊之 津田道典 録音・整音:松野泉
音楽:桜井芳樹 プロデューサー:市橋浩治
製作・配給: ENBUゼミナール
(C)ENBUゼミナール
公式サイト:http://kappa-lady.net
公式Twitter:@kappalady1
公式Instagram:@kappa_lady

予告編

YouTube player

7/11(土) 新宿K’s cinema、7/18(土)池袋シネマ・ロサほか全国順次ロードショー

河童の女

■オリジナルマスク プレゼント

本作が上映される新宿K’s Cinemaと池袋シネマ・ロサでは、新型コロナウイルス感染予防対策も鑑み、本作を鑑賞した方合計100名(各劇場先着50名様ずつ)にキャスト・スタッフより感謝を込めて『河童の女』オリジナルマスクがプレゼントされる。マスクは布製の河童をモチーフにしたデザインで、男女問わず着用できる。

公開劇場は、新宿・池袋の2劇場以外にもイオンシネマ(大宮、桑名、京都桂川)、チネチッタ(川崎)など全国の劇場でも上映が続々決定しており、劇場情報は公式サイトにて随時告知される。

■民宿「川波」 『河童の女』公開記念キャンペーン

本作のロケ地となった埼玉県飯能市の民宿「川波」では、『河童の女』公開記念キャンペーンを実施。
2020年10月31日までの宿泊者を対象に代表者が本作のチラシまたは映画チケットの半券持参するとグループ全員にドリンク1本 or 鮎または虹鱒の塩焼き1匹がプレゼント(詳細は映画公式SNS参照。本記事最後にも追記)。

河童の女

民宿「川波」前、スタッフ・キャスト集合写真

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