早大出身小手伸也も出演&応援。早大演劇の歴史を受け継ぐ早大生による自主制作映画『色の街』
6月24日、クラウドファンディングで完成した映画『色の街』の完成披露試写会が、早稲田小劇場どらま館にて行われた。本作は、早大劇団出身でTVドラマでも活躍中の黒澤優介が主演。また、同じく早大演劇倶楽部出身で、NHK朝ドラ「なつぞら」やTBS「集団左遷!!」などのTVドラマで引っ張りだこの小手伸也も特別出演している。スタッフのすべてが大学生という自主制作映画の本作について、彼らの思い、そしてそれを応援する小手伸也氏の心情について取材した。
映画『色の街』は、ラッパ屋やキャラメルボックスなど人気劇団を輩出した早大劇団「てあとろ50′」出身の森平周(早大4年)が初監督を務めた学生映画。早稲田演劇をはじめ、小劇場で実力のあるキャストが活躍するきっかけにと製作された。制作チームには城西国際大メディア学部の学生らが参加した。
主演は“令和の三枚目俳優”を掲げる黒澤優介が務める。突然喋らなくなった女の子(矢崎希菜)をどうにかして笑わせたいという役どころで、劇中では台本にない一発ギャグやアドリブが盛り込まれている。黒澤は同早大劇団で主宰などを務めたほか、TBS「チア☆ダン」などにレギュラー出演するなど、映像の分野でも活躍している。
さらに、早大演劇倶楽部出身で現在公開中の映画「コンフィデンスマンJP」や、現在放送中のTBS日曜劇場「集団左遷‼」、NHK連続テレビ小説「なつぞら」に出演中の小手伸也が特別出演。物語のカギとなる中年男性役を演じる。
出演者インタビュー
早大大先輩・小手伸也の大きな思い
インタビューに応じてくれたのは、森平監督、主演・プロデューサー・宣伝を兼ねる黒澤優介、CM10社に出演する実績を持つ、ヒロイン役・矢崎希菜、安慶名晃規。そして、小手伸也。
映画『色の街』は、学生制作映画ということもあり、いろいろ荒い部分もあることは、黒澤優介自身が編集しながら実感したという。「“ありのまま”をテーマに本作の制作に挑んだものの、いろいろと気負いすぎるところがあった」と反省する黒澤氏に小手伸也は、「それも含めての“ありのまま”なんだよ。」と、映画制作に挑戦する若い力にエールを送った。
現役早大生による映画製作
- 森平監督は、現役早大生と伺いました。
森平監督
はい。早大4年生です。今は卒団していますが、「劇団てあとろ50’」で脚本・演出を担当していました。
- 舞台と映画の違いはなんでしょうか?製作側のご意見として教えてください。
森平監督
1番の大きな違いは、映画は関わるスタッフの数が多いこと。演劇は(日々)変わっていくのが面白いなと思ってやってたんですけど、映画は時間内に撮っていくというのが重要になっていくので、最初から入念の準備して取り組んでいくというのが一番大きな違いかなと感じています。
今回の製作では、スタッフの皆さんは映画のことを専門にやられている方々だったのもあり、「なんで決めてないの?」「すみません!」みたいなことがありました(笑)
- 今後また映画監督をやってみたいと思われますか?
森平監督
今は作り終わって一段落してホッとしている状態なので(笑)
これからどの方向で進んでいくというのはまだ決めていないです。
- 本作制作のきっかけについて教えてください。
黒澤優介
元々僕も、「劇団てあとろ50’」で役者をやっていて、2017年に森平くんと「できない刑事」という演劇と映像を融合した作品を上演したんです。学生演劇と学生映画のコラボーレーションという形です。
それをやっていた時に「普通に映画を撮りたいな」って思ったんです。演劇が好きでやっていたんですが、映画を撮る楽しさを知ってしまって、自分達で映画を作りたいっていう気持ちが強くなって、昨年の6月頃、「チア☆ダン」(TBS)というドラマの撮影中にずっと企画を考えていました。
いざ、製作しようと思ったら、映画がこれだけお金がかかるとはわかってなくて、クラウドファンディングを利用させてもらうことにしました。
- 撮影で苦労されたことは?
黒澤優介
まず機材としてピンマイクが使えませんでした。カメラのレールも準備できなかったので、映像がブレたりとか、機材の準備が間に合いませんでした。
なので、セリフの音声はけっこうアフレコすることになりました。
映画撮影に慣れてないことが原因で、スタッフと意思疎通がうまくできなかったり、基本、撮影は押してました。
小手伸也さんのシーンも、映像としては1分くらいなんですが、撮影は1日がかりでした。
早大演劇倶楽部出身、小手伸也の思い
- 小手伸也さんご出演のきっかけについて教えてください。
黒澤優介
まず、この映画の“トメ”の方をどなたか名前のある方に出ていただきたいなと思っていて、森平くんが、「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ)を見て、五十嵐役をやられていた小手伸也さんが強く印象に残っていたことと、早稲田のOBということを知って、是非にということでオファーさせていただきました。
- 小手伸也さんが在学中に在籍されていたのは「早稲田大学演劇倶楽部」で、「劇団てあとろ50’」とは直接は関係ないですよね?
小手伸也
そうですね。お話をいただいた時は、「劇団てあとろ50’」(1974年創設)の方だと聞いて。
僕らが在学中に演劇をやっていた頃って、古い世代の生き残りが多いといいますか、わりとサークル同士が反目し合うという状況でした。客を奪い合うというか、「我が演劇道こそ至上なり」みたいな。
有象無象含めると200以上も劇団があって、それぞれが牽制し合うという空気がまだ残っていて、僕らが卒業した20数年前の頃くらいから、サークル間の垣根が低くなってきていて、いろんな団体とコラボレーションする機会が増えていって、僕も正直てあとろさんはライバルだと思っていました。
僕が「早稲田大学演劇倶楽部(略称:エンクラ)」(1985年創立)にいた当時はまだ創設10年くらいで、「劇団てあとろ50’」の方が劇団としては先輩で、今は残念ながら活動休止を発表した「キャラメルボックス」とかを輩出してますが、エンクラ出身の劇団といえば、当時はまだカムカムミニキーナくらいで。で、のちのち僕の後輩の三浦大輔くんが出てきたりとか。
でもいくらライバルとはいえ、早稲田界隈で演劇を盛り上げていた同士ですし、その後輩たちが僕に声をかけてくれるっていうのはとても光栄に思いまして、僕も学生時代に演劇を頑張ってた経験がありますし、なんかお力添えができればと思って、割と二つ返事でお受けしました。
黒澤優介
お話を受けてくださった時は、えぇっ!ってびっくりしました。
今はもう、てあとろの公演に演劇倶楽部の人が客演として出てくれたり、あまりライバル意識とかはないです。
小手伸也
今はもうあんまりないでしょうね。
黒澤優介
なので小手さんのお話を聞いてびっくりしました。
小手伸也との共演
- 安慶名さんはその小手さんを殴るシーンがありますが、いかがでしたか?
安慶名晃規
(パンチを)当ててしまったら切腹だなと思いました(笑)
初めて大先輩とお芝居させていただいて、変に気負わなくて逆に飛び込んでいくというか、という新たな感覚がありました。
変な緊張とかじゃなくて、「先輩お願いします!」っていう感じでした。
小手伸也
学生演劇は、あまり世代が離れた人と共演することが少ないですしね。
(僕が出るというのは)ものすごい歳が離れたOBを連れてくるみたいな感じだね(笑)
そういう意味では、割と緊張してたであろうなということは、僕はビシビシと感じてました(笑)
「そんな(緊張しなくて)いいんだよ」って思いながら(笑)
黒澤優介
撮影時は、ちょうど「SUITS/スーツ」(フジテレビ)が放送されている時期だったので、蟹江弁護士(小手伸也の役)が殴られているって思って見てました(笑)
- 私は本日『色の街』を見て、「集団左遷!!」(TBS)の鮫島が殴られている!って思って見てました(笑)
小手伸也
「集団左遷!!」は昨日ちょうど最終回を迎えました(笑)
映画『色の街』で随一の存在感を放つ“矢崎希菜”
- 矢崎希菜さんを150名の中から決められたポイントは?
黒澤優介
書類オーディションの時点で、矢崎さんに惹かれた部分が多かったです。透明感とキラキラしているところを感じました。
森平監督
私も同じことを感じて、黒澤の2人で矢崎さんがいいよねって意見が一致したんです。
矢崎希菜
恥ずかしい(笑)
森平監督
オーディションの時高3だったと思いますが、一番緊張してなかったよね?
矢崎希菜
全然緊張してませんでした。なぜだかわからないけど(笑)
黒澤優介
オーディションでの芝居の相手役は僕がやったんですけど、それも楽しかったんです。
矢崎希菜
楽しかったですね。
- 映画『色の街』でも、黒澤さんと矢崎さんお二人のシーンが多いですが、特に、黒澤さん演じる相田が矢崎さん演じる増田カナをひたすら笑わそうとするシーンがあります。その時、矢崎さんはどうでしたか?
矢崎希菜
私は笑ってはいけない役ですし、心も強く持たなくちゃいけないんですけど、(黒澤さんが)毎回違うことをやってくるので、ほんとに面白くて、もう耐えられなくてツボに入ってしまって、何回も撮り直しになりました(笑) 笑っちゃいました(笑)
- 映画終盤で、矢崎さん演じる増田カナがついに笑いますが、あれはどういう演出なのでしょうか?
森平監督
高校時代と現代とで彩度を変えたりという演出もあって、見てる世界が違ってくるというのを今回はやっていて、
高校の時の相田はそれにあまり気づけていなかった。
加藤との現代のシーンでは、それに気づいていて加藤と接していくということで話が進んでいきます。
増田カナが笑ったのは、高校時代の相田がまだそれに気づけておらず、自分のことばかりをぶつけてしまっているから、カナは笑ってしまったということです。
矢崎希菜
この笑うシーンは大変でした。
とりあえず、笑ってみようという指示で。
森平監督
新人俳優の感情の放出の練習みたいな「笑って」という感じでした(笑)
映画『色の街』の見どころ“ありのまま”
- 本作のテーマ・見どころは?
黒澤優介
キャッチコピーは「ありのままってなに?お前にはどんな景色が見えてるんだ?」。自分が今見えている景色が本当なのかどうか?
例えば今、SNSとかでは、自分の好きな情報だけを恣意的に選んで見ている現代社会になりつつあると思っています。
自分がそれを正解だと思って見ているものが実は違うものかもしれないというのがきっとあると思っています。
この映画を観る人にはそこに気づいてもらえるきっかけになったらいいなと。
“ありのまま”のはずが気負いすぎた
黒澤優介
今回、映画初挑戦だったんですが、小手さんをはじめ、素敵なキャストの皆さんに参加してもらって、なんとかいいものにしようって、ちょっと背伸びをしてしまったところは感じています。なんとか形にしなければいけないと思って。
本作のテーマ「ありのまま」を伝えたることが僕たちはできてたのかなって思い返した時に、いいものを見せなきゃって気負っている部分もあって。でも学生映画なので、うまく表現できなくて「あーっ!」ってなる部分もあって、この半年、編集しながらそんな感じでした。
今後もっと勉強して、また森平とそれこそ自分達がありのままでいられる作品を作ってみたいと思います。再チャレンジしたいなと思っています。
小手伸也
その“背伸び”も含めて“ありのまま”ですよ。
ブサイクだろうが踏ん張ってなんとか形にしようとした努力の結晶がどんなに納得のいかないものだったとしても、自分から見たらいびつかもしれないけど、それこそが今の自分達の実力であり、それを正直にさらけ出すこと、それこそがこの映画のテーマに沿っているのではないでしょうか?
黒澤優介
先輩!ありがとうございます!!!
小手伸也
(笑)
映画『色の街』
あらすじ
一人暮らしをして、平凡な大学生活を送る相田雅(黒澤優介)。
街角の喫煙所。学ラン姿で咳き込みながらも、タバコを吸い続ける家出少年・加藤(安慶名晃規)に出会う。加藤は、人を探しているらしい。相田は加藤を手伝うことにするが……。
相田には、加藤を放っておけない理由があった。相田は思い出す。高校2年生。突然喋らなくなった女の子(矢崎希菜)との日々を。
人はそれぞれ見ている景色が違う。そんな当たり前のことを実感する高校時代。
そして、それを乗り越えようとする大学時代。
二つの時代を描く、青春ショートムービー。
作品情報(Filmarks)
https://filmarks.com/movies/84195
出演:黒澤優介、矢崎希菜、安慶名晃規、つじかりん、早乙女ゆう/小嶋修二、藤田晋之介、竹内麗、内田倭史(劇団スポーツ)、榎本純(ボクナリ)、三瓶大介/小手伸也(特別出演)ほか
監督・脚本:森平周
主題歌:Mom「プライベートビーチソング」(Life Is Craft)
挿入歌:Mom「フリークストーキョー」(Life Is Craft)
プロデューサー:武井茉周、黒澤優介
オフィシャルサイト:https://sapporopurearu.wixsite.com/ironomachi
映画「色の街」予告編 100秒ver.
2019年11月公開予定公開日未定
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