
あの、初の少年役に“不退転の覚悟”。10歳当時、どんな少女だったのかも明かす。『君の名は。』のスタジオが放つアニメ『しらぬひ』公開記念舞台挨拶
コミックス・ウェーブ・フィルム最新作『しらぬひ』公開記念舞台挨拶が2026年8月23日、新宿バルト9にて開催。声優を務めたあの、花澤香菜、三木眞一郎と片野坂亮監督が登壇し、アフレコ裏話や個性豊かな幼少期、願いごとを語り尽くした。(動画&フォトレポート)
短編アニメーション映画『しらぬひ』は、1996年晩夏の海辺の町を舞台に、酒に溺れる父マサルと暮らす孤独な10歳の少年・湊(みなと)と、彼の唯一の心の拠り所である少女の姿をした神さま・べんちゃんの交流を描いた36分の短編アニメーション。
一時保護を前に限界を迎えた湊は、父への憎しみから、一つだけ願いを叶えてくれる伝説の光〈しらぬひ〉に「あいつを消してくれ」と祈りを捧げる。
しかし、その祈りは命の代償を伴う取り返しのつかない“呪い”へと変貌を遂げていく。家族への愛憎の果てに、少年が辿り着く「ほんとうの願い」とは何かを問いかける。
舞台挨拶レポート
■トークノーカット動画レポート
■ダイジェストフォトレポート
片野坂亮(原作・脚本・監督・作画監督)
初めまして、監督の片野坂亮です。本日はこのような素敵な場を設けていただき、本当にありがとうございます。これから観ていただく皆様に、この舞台挨拶を通じてまた違う見方をお届けできたら嬉しいです。本日はよろしくお願いします。
あの(10歳の少年・湊 役)
湊の声をやりました、あのです。こうやって皆さんに観ていただけるのは嬉しいです。見る前ですけど、お話を聞いてくれたら嬉しいです。よろしくお願いします。
花澤香菜(少女の姿をした神さま・べんちゃん 役)
べんちゃんの声を担当しました、花澤と申します。短い時間ですが、舞台挨拶を楽しんでいってください。よろしくお願いします。
三木眞一郎(酒におぼれる父・マサル 役)
マサルの声をやらせていただいております三木です。本日は短い時間ですがどうかよろしくお願いいたします。
‐ 本作は36分という短編ですが、片野坂監督は原作・脚本・監督、そして作画監督もご自身で務められています。そもそもこの物語はどういったところから生まれたのでしょうか?
片野坂亮監督
物語の着想は、私がまだフリーランスで実写映像をやっていた頃、今から16年ほど前ですね。アルバイトをしながら、本作の舞台となった赤崎の地で何か映画を作りたいなという思いがありました。
当時はお金も条件もなくて作れなかったのですが、あそこで作りたいという思いと、その時に考えたストーリーが着想のスタートとなっています。
‐ 本作が商業アニメーション初監督作品となりますが、コミックス・ウェーブ・フィルムの皆さんと一緒に作られていく体験はいかがでしたか?
片野坂亮監督
この体験はそもそも世界でもできる人が限られていて、全く当たり前じゃない環境です。毎回その環境に感謝しながら、一歩一歩進めさせていただいた記憶があります。
‐ 精鋭たちが集まっていたスタジオで、一緒にお仕事されて何を感じましたか?
片野坂亮監督
日本のアニメーションは職人の技に支えられているんだなと、改めて実感しました。背景も完璧に決まっていますので、本編でぜひ見ていただきたいです。
‐ 主人公・湊役をあのさんにお願いしたいと思われたのはなぜですか?
片野坂亮監督
私がそもそもあのさんのアーティストとしてのファンで、仕事への姿勢や熱量、まっすぐさをリスペクトしていたからです。今回のシナリオに行き着いた時、プロデューサーの新井(修平)さんから『湊が抱える痛みを正しく世の中に伝えるのはあのさんだと思う。オファーしていいですか?』と声をかけていただいたのが経緯です。
‐ あのさんは今回、初めて少年役を演じられましたが、10歳の湊の気持ちをどう声に乗せるか、どんなことを意識されましたか?
あの
技術的な部分はプロの方々とは天と地の差で知識もなかったのですが、やるからには観る方に湊の思いを届けたいという気持ちが強く、湊がどういう10年を送ってきたかをすごく意識しました。周囲の人に対してどう思っているかまで考え、『じゃあこういう声を出すかな』と場面ごとに想像しながら演じました。
‐ 少年役のオファーが来たとき、どう感じましたか?
あの
すごく驚きました。自分は大人の女性で、役は男の子ですから。できるかなという不安はありつつも、可能性を少しでも感じてオファーしてくださったことが嬉しくて、その期待に応えたいと思いました。脚本を読んで、自分の声だけでなく湊と何かを重ね合わせてくれたのかなと感じ、自分がやる意味をしっかり出せるよう、覚悟を決めて受けました。
‐ 脚本を読んで『しらぬひ』という物語全体の印象はいかがでしたか?
あの
最初に読んだ時も、家でセリフを読む時も、毎回涙が止まらなくて泣いてしまいました。それぐらい胸が痛くて目を閉じたくなるようなお話です。でも、現実にもどこかにこういう子供が絶対にいると思っているので、生半可な気持ちでやってはいけないと強く思いました。
‐ 監督は、あのさんの演技をどう受け止めましたか?
片野坂亮監督
『演技』というより、アフレコの瞬間、あのさんは完全に湊(みなと)として生きてくれていました。演技という言葉がしっくりこないほど、湊を生きてくれた感覚です。
‐ 花澤さん、べんちゃんと湊の関係を脚本で最初に読んだ時、どのように受け止めましたか?
花澤香菜
『湊にべんちゃんがいて良かった』と心から思いました。ただ、べんちゃんができることにも限りがあります。現場に入ってみないと分からないなと思ったので役を固めずに臨みましたが、あのさんと現場で掛け合いをしたことで『ずっと一緒にいてあげたい』という気持ちが募り、相乗効果が生まれたと思います。
‐ あのさんとお芝居をされて、印象に残ったことはありますか?
花澤香菜
本当に『湊として生きている』そのものでした。第一声を聞いた瞬間、あのさんから出ている声なのかと思うほど完璧な少年で、孤独の表現が非常に繊細で、どっぷり浸り込んでお芝居されている姿がかっこよかったです。
‐ あのさんは、花澤さんと共演されていかがでしたか?
あの
声優の現場の経験が多くないので緊張感があり、集中しすぎて最初は話しかけていいかも分からない状態でした。そんな中、花澤さんが優しく声をかけてくださいました。
花澤香菜
アフレコスタジオは密閉されていて静かなので、あのさんの集中を邪魔しちゃいけないと思いつつ、『声優は何回目?』と話しかけたら『2回目』と聞いて驚きました。
あの
驚いてくれたことで、今やっている姿勢は間違っていないんだと救われました。背中で全てを見せてくれて、本当にかっこよかったです。
‐ 三木さんが初めて脚本を読んだ時、父親・マサルにどのような印象を持ちましたか?
三木眞一郎
パンフレットをお持ちの方はいらっしゃいますか? マサルの役説明が酷い一文で……『酒におぼれた』とだけ書いてあるんです(笑)
彼を人生として成立させるため、声を任されている以上、彼の最も近い存在(友人)でなければいけないと思い、内面と向き合いました[9]。しんどくもありましたが、あのさんに助けられ、監督のご指示をいただきながら乗り越えられました。
‐ 監督からの指示は、実はスパルタだったという話も?
片野坂亮監督
パンフレットではディレクションをあまりしなかったと書いているんですが、あれは嘘です(笑)実際は、めちゃくちゃ指示を出していたようで、申し訳ありません。
‐ 撮影当時はゾーンに入っていたでしょうからね(笑)
三木眞一郎
演出のビジョンがしっかりあったということです(笑)
‐ 三木さんから見て、あのさん演じる湊はいかがでしたか?
三木眞一郎
声だけでなく存在、魂がマイク前に乗っかっていて非常に素晴らしかったです。皆さんご覧になれば納得していただけると思います。叫ぶだけでは不可能な『思いのすれ違いのぶつかり合い』をお互いにやり合えた気がします。鳥肌が立つような凄いシーンがあります。
‐ あのさんは、三木さんのマサルの声を聞いていかがでしたか?
あの
本当に絵の中の距離感でそこにいる感覚で、怖かったです。凄く迫力があり、声を当てるというより湊としてそこにいさせてもらいました。引き出していただきました。
‐ あの特徴的な湊の声は、家でたくさん練習されたのですか?
あの
テスト前に家で何パターンか練習しました。実際のアフレコで皆さんと立ち合いながらどれが良いか決めていきました。喋り続けるのは本当に難しく、苦戦しました。
花澤香菜
あの声質を維持して喋り続ける難しさの中、湊そのものとしてやられていたのが印象的でした。
今、1つだけ願いが叶うなら?
‐ 本作に登場する「1つだけ願いを叶えてくれる知らぬい」にちなみ、今1つだけ願いが叶うなら何を願いますか?
あの
『退去届けの提出』です。今、事情で家が3つある状態なのですが、引っ越しの退去手続きが苦手でできなくて。家具もそのままでモヤモヤしているので、願いが叶うならとにかく退去手続きを終わらせたいです(苦笑)
花澤香菜
それはマネージャーさんにお願いしたらどうですか?(笑)私がやってあげてもいいよ。
‐ 信頼できる業者さんにお願いするとか?
あの
そうですね、ほんとに苦手で・・・(笑)
花澤香菜
私の願いは『手に取るパンが全部焼きたてになってほしい』です。パンが大好きで毎日、朝昼晩でも行けます。焼きたてのクロワッサンはしっとりしていて最高なんです。
三木眞一郎
『スーパーカーを1台所有してみたい』です。自分のお金ではなく贈り物的な形で(笑)。駐車場がないので実際には困りますが、言ってみたい夢です。
片野坂亮監督
『咳を止めたい』です。完成してからずっと咳が止まらなくて、本日も咳止めのシロップを飲んで吸入してきました。寝ずにやった1年間を含め、3年間のプロジェクトの生命力を使い切ってしまったのだと思います。
それぞれの10歳当時
‐ 湊と同じ「10歳の頃」は、どんなお子さんでしたか?
あの
ものすごく引っ込み思案で人と喋れない子でしたが、鉄の棒?(鉄棒 or 雲梯?と他のキャストからツッコミあり)にずっと30分以上ぶら下がって我慢する遊びをしていました。そのおかげで我慢強さや根性がつきましたし、空中での体重のかけ方を覚えたことで、今のバンド活動(ライブでジャンプしたり動く)の省エネな体力作りに活きています。
花澤香菜
子役をやっていて、お笑い番組に出ていたので、『ネタ帳』をつけていました。日常で起こった面白い話をブランコに乗ってクラスメイトを集めて発表していました。
あの
あ、遊具つながり!(嬉)
三木眞一郎
遊具繋がりか・・・(笑)
48年前なのでテレビゲームはなく、回転する球体の遊具で誰が一番長く捕まっていられるか、どっちが長くしがみつけるか競争をしていました。高いところも平気で、ワンパクでしたね。
片野坂亮監督
体が小さくて少し太っていました。当時サラサラな髪の毛が自慢だったのですが、お風呂でコストコの大きなハチミツをトリートメント感覚で頭につけて流し、甘くて美味しいしサラサラになるし最高じゃんと思っていました(笑)
最後に、注目ポイントとメッセージ
三木眞一郎
絵も音も楽曲も、みんなの思いが詰まった素晴らしいフィルムです。いろんなところに注目して見ていただけたら嬉しいです。
花澤香菜
父親に対する、地獄の底から湧き出る湊の思いを吐露するお芝居が素晴らしいので注目してください。べんちゃんの顔回りの髪の動きも意識して見ると楽しめます。
あの
見終わった後、必然的に自分と向き合える映画になっています。劇中に散りばめられたキラキラや、音楽もとても良いので、全てひっくるめてお楽しみください。
片野坂亮監督
制作中、『目撃してしまった』という気持ちで劇場を出ていってもらいたいと話し合いました。これから観る皆様は、ある愛や人生の『目撃者』になります。それをどう今後の生活で考えるか、見終わった後に感じていただきたいです。よろしくお願いします。
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[動画・写真・記事:三平准太郎]
短編アニメーション映画『しらぬひ』
《INTRODUCTION》
『君の名は。』『すずめの戸締まり』など、社会現象化する大ヒット作を生み出し、国内外から熱い注目を浴びているアニメーションスタジオ、コミックス・ウェーブ・フィルム。
この度、最新作となる短篇アニメーション映画『しらぬひ』(読み:しらぬい)を、ギャガ配給にて8月21日(金) 新宿バルト9ほか全国順次ロードショー致します。
監督は、商業アニメーション映画初挑戦となる新鋭、片野坂 亮。スーパーの鮮魚コーナーで働く傍ら、フリーの映像作家として実写映画やアニメーション作品の自主制作を続けてきた手腕がコミックス・ウェーブ・フィルムに認められ、異例の大抜擢となった新たな才能だ。同スタジオが培ってきた繊細な映像表現と、片野坂監督の鋭利な感性が交差し、美しさの奥に残酷さが潜む物語が誕生した。
物語の舞台は1996年、夏の終わり。熊本の海辺の町で暮らす10才の少年・湊(みなと)は、酒に溺れる父とふたりきりで、息をひそめるように生きていた。 唯一の心の拠り所は、弁天島に現れる少女の神さま“べんちゃん”。 彼女と過ごすひとときだけが、自分を取り戻せる時間だった。しかし児童保護施設への湊の一時保護が決まり、べんちゃんとの別れの時が迫る。
湊は、ひとつだけ願いを叶えてくれるという、海に浮かぶ不思議な光<しらぬひ>に祈りを捧げるが、父への憎しみが募るにつれ、その“祈り”は取り返しのつかない“呪い”へと姿を変えていく。 喪失と赦しの果てに、湊が辿り着く「ほんとうの願い」とは――。愛を求めるがゆえにすれ違い、憎しみに呑まれていく少年。その奥底で消え入りそうな心をそっと抱きしめる、愛の物語。
本作の主人公となる10才の少年・湊の声を担うのは、あの。音楽活動に加え、俳優、声優、タレント、モデルと、多岐にわたる才能を魅せ続けるあのが、また新たな表現力で本作に命を吹き込んでおり、“少年の声を吹き込むのは初めてで挑戦的でしたが、子供でありながら子供らしくいることのできない環境に身を置く10才の揺れ動く感情を精一杯演じさせていただきました”とコメントを寄せている。先日、予告編が解禁された際には、主人公・湊の声について、予想を超越したあのの演技力と声質に称賛と驚嘆の声が多く飛び交った。
湊の唯一の友である少女の神さま・べんちゃんは、花澤香菜が務める。世の中から忘れ去られ、その姿は次第に消えていく運命にあるという儚さを帯びつつも、湊に優しく寄り添う存在という役どころだ。また湊の父親・マサルは、三木眞一郎が担当。家を出ていった妻への思いをこじらせたまま、酒に溺れ、湊と向き合うことができず、少年の心に深い影を落としていく。
商業アニメーション映画初挑戦となる片野坂監督は、本作についてこう語る。“本作の登場人物は、心のどこかで愛を求めながら、すれ違い続け、やがて自分でも止められない衝動へとたどり着いていきます。願いは祈りであると同時に、誰かを縛り続ける呪いでもある。彼らの生きる様をありのまま描きました。この映画が、孤独な夜を過ごす人たちの心に、そっと寄り添えたらと思います。”
《STORY》
1996年、夏の終わり。酒に溺れる父のもとで生きる10才の少年・湊は、“ひとつだけ願いを叶える光”〈しらぬひ〉に祈りを捧げるが、その願いは、やがて呪いへと変わっていく——。
- メインカット
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- 旧赤崎小学校
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- 弁天島
- 弁天島
- 湊(cv. あの)
- べんちゃん(cv. 花澤香菜)
- マサル(cv. 三木眞一郎)
出演:あの 花澤香菜 三木眞一郎
原作・脚本・監督・作画監督:片野坂 亮
音楽:梅林太郎
主題歌:青葉市子「しらぬひ」(hermine)
制作プロデューサー:濱﨑周平
プロデューサー:新井修平
アニメーション制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
製作:しらぬひ製作委員会
配給:ギャガ
©2026 片野坂亮/しらぬひ製作委員会
公式サイト:https://gaga.ne.jp/shiranuhi/
公式X:https://x.com/shiranui_movie
2026年8月21日(金)新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
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