あの「監督が“あのちゃん”を邪魔者扱いするから良かった」映画『鯨の骨』初日舞台挨拶
2023年10月13日、シネマート新宿にて、映画『鯨の骨』初日舞台挨拶が行われ、落合モトキ、あの、大江崇允監督が登壇。あのにとって本格的な映画出演は初めてとなった撮影現場でのエピソードと共に、主題歌に込めた想いなどを語った。
舞台挨拶レポート
■トークノーカット動画レポート
■テキスト&フォトレポート
‐落合さんが演じられた間宮は、明日香に出会って、ARアプリ「ミミ」にのめり込んでいきます。キャラクターについてどんなことを感じましたか?
落合モトキ(間宮 役)
間宮という男は結婚相手に逃げられてしまって、そこから「ミミ」にドハマリして、明日香を追っていくという人物。被害者面がうまくて、誰かにかまってほしいという匂いを出しているキャラクターです。
今回は間宮のお話なので、一人の人間としての成長を感じ取っていただければなと思います。
‐間宮もそうですが、リアルとヴァーチャルの境目がわからなくなっていく人物を演じてどうでしたか?
落合モトキ
僕もポケモンGOとかドラクエウォークとかやってたんですけれど、長く続かなかったので、間宮ほどの執着心は無いし、思うに、ドラマや映画の聖地巡礼をするような感じのアプリだなと思いました。
‐あのさんは「ミミ」というARアプリの中のカリスマ少女役。この役がきたとき、最初、どんな感想を持ちましたか?
あの(明日香 役)
脚本を読んで、すっと入ってきました。明日香と自分が遠いとは思えない。共感する部分もあり、自分がやることで、難しい説明も不要になるんじゃないかなと思うぐらいフィットしてると感じました。
‐どういう部分が明日香とご自身が繋がると思いましたか?
あの
僕も何年かこういう活動をしている中で、世の中の人が抱いている“あのちゃん像”が人の数だけあって、それぞれ違う印象を持っているなとか、僕は客観的に見て思っています。
アイコンとして見られやすい自分と、現実の自分との乖離に向き合う場面が多く、ギャップを感じたり、ほんとうの自分をどこまで出して良いのかわからないとか、そういうことに対して、苦悩した時期もあったから、明日香ももしかしたら同じ気持ちだったのかなとか、そういう部分が似ているなと思いました。
‐落合さんはあのさんとの共演を最初、どう思われましたか?
落合モトキ
あの“あのちゃん”?って感じで、バラエティとかでは見てますけど、共演することになって、改めてよろしくお願いします、となりました。
‐現場でのあのさんはいかがでしたか?
落合モトキ
楽しそうにやってました。
撮影前の1週間、リハーサルをやる期間があったので、そこで落合モトキとあのちゃんがちゃんとセッションできたので、そこで彼女の空気感もわかりましたし、そういうのが映像に映し出されていると思います。
‐そのリハーサルで印象に残っていることは?
あの
リハーサルや稽古自体、僕は初めてだったので、最初は知らない部屋の中に閉じ込められちゃったみたいな感情が強かったんです(笑)
本読みかなぁと思ったら、本読みももちろんしたけれど、「数秒間目を合わせてみて」とか、「なんか会話してみて」とか、自分は普段からコミュニケーションが苦手だし、演技の上でのコミュニケーションはまた違うから、しんどー!みたいになって(笑)
そこで、喋り方の矯正が始まったんです。僕の挙動とか、目の動きとか、声自体の発し方が、僕にとってはこれがいちばんやりやすくて普通なんだけど、明日香にとっての普通にするための人間矯正はされました。ご指導されました(笑)
‐セリフもそうですし、今見ているあのさんと明日香は全然違う人物なので、監督、これからあのさんはどんどんオファーが来てしまうのでは?
大江崇允監督
ぜひぜひですよ。僕としてはこの作品に出ている人を是非見つけて帰ってくれたらと思います。
‐落合さんから見て、演技経験があまりないあのさんをご覧になっていかがでしたか?
落合モトキ
一緒にカメラの前に立っているとき、力強さと楽しさを感じて、あのちゃんで良かったなって思いました。出来上がった映像を見ると、女優さんっていう感じで好きです。
‐あのさんは俳優としての今後のキャリアはいかがですか?
あの
その1週間のリハーサルも含め、撮影期間で成長させてもらえたなと思うし、落合さんも背中で語るタイプというか、けっこうドシって構えてくれていたので、安心して演技に挑めました。
でも、稽古のとき、なにを喋っても「まだあのちゃんがいる」って、監督が“あのちゃん”を邪魔者扱いしてくるから(笑)
「あのちゃんが出ちゃってる」とか、僕にとってはこれが普通だからわかんなくて、ただ、その時間が無いとたぶん、この明日香はできてなかったんだろうなと思うと、自分が人間としてもすごく成長できてよかったし、これから演技のお仕事があっても活かせるかなって思います。
‐是非注目してほしいポイントは?
落合モトキ
あのちゃんと出会う喫茶店のシーンです。冒頭とラストと2回、喫茶店のシーンがありますが、撮影日も初日と最終日で別々で、2人の顔つきが違っています。いろいろ覚悟を決めて、これから明るい世界へと踏み出してみていいんじゃないっていう明るい顔になっていると思います。そこの違いを楽しんでいただけたらと思います。
あの
長回しのシーンがあって、セリフも長いんですけれど、そういうこともしたことがなかったので、それがとても大変だったなという記憶と、あと、今回はめちゃめちゃ走りました。
何回走っても監督が止めてくれないんです。
大江崇允監督
そういうと全シーン走ってるみたいな印象を与えるけど、1シーンか2シーンしか走ってないんですよ。
あの
その1シーンか、2シーンを何回もやらされたんです。でも本当に良い走りができました。
大江崇允監督
あのちゃんの走りがまた早いんだよ。
落合モトキ
あのちゃん、ほんとに早いんです。僕、今33歳なんですけれど、令和になって初めて本気で走ってあのちゃんを止めました。
昨年、あのちゃんがロンドンハーツに出て、徒競走してたじゃん。俺、あのちゃんが絶対に1位だろうなって思って見てた。早いのを知ってたから。
大江崇允監督
あと、2時の話をしてよ。
あの
撮影期間中、夜中の2時に呼び出されて、落合さんと横田さんが撮影している目線の先に僕がいるというシーンを撮って。でも本編で使われてなかったです・・・。
ほんとに怖い話です(笑)
大江崇允監督
2時に来てもらって、4時半まで待ってもらって、1カット出て、帰ってもらって、編集でカットしました。
あの
なんだったんだろう?って感じです。
大江崇允監督
スタッフが(あのちゃんに)会いたがってたんで。
あの
最悪です。いつでも会えるのに。
でもそのシーンは僕は写ってないけど、実際はいたんだなって思って見てくれたらと思います。
‐主題歌「鯨の骨」は、あのさん自身が作詞・作曲されていますが、歌詞にはどういった想いを込められましたか?
あの
撮影期間中に作ってほしいと言っていただいたので、この映画が無かったらできなかった曲にまさになっているので、映画に対してより一層向き合って、作詞作曲しました。大切な一曲になっています。
‐ご自身が出演していて、エンドロールにご自身が作った曲が流れるというのはどんな気持ちでしょう?
あの
エンドロールでイントロが流れた瞬間、嬉しかったです。すごくシビレましたし。曲を作っているときもそこのシーンで流れるってわかっていたから、どういうサウンドにするかもこだわったので、やっぱりすごく達成感があったです。
落合モトキ
試写で見るまであのちゃんが歌っていることを知らなくてビックリしたんですけれど、歌詞のワードの選び方ひとつとってもすごいなって思いました。
ちなみに、あのちゃんは撮影現場で「チェンソーマン」を読んでました。
あの
なんでそんなこと言うの?
落合モトキ
「チェンソーマン」を読んでたから、もしかしたらあの曲になっていたかもしれない。
あの
ならないだろ(笑)
落合モトキ
でも、「チェンソーマン」を読んでたから、そこで2つの曲を作ってたんだなって。すごいなって思って。
あの
そう、同時並行で。
‐本作にちなんで、今、みなさんがハマっているものは?
落合モトキ
野球です。野球はやったことないんですが、一度ダブルプレーをやってみたくて、友だちとキャッチボールの練習から始めています。
あの
僕は、携帯のアプリからやるクレーンゲームにハマってます。
片手間でできちゃうんで、めっちゃ課金しまくり。取れるまで何度もやるから、お金がどんどん無くなって。で、やった!取れた!ってなっても、マジいらないものなんですよ。
いらないヌイグルミが家にいっぱい届いています。エビフライのでっかいヌイグルミとか、誰が使うん?これ?いらねぇってなってます。
■フォトギャラリー
[写真:山田健史/動画・記事:三平准太郎]
映画『鯨の骨』
《INTRODUCTION》
濱口竜介監督と共同執筆した『ドライブ・マイ・カー』が米アカデミー賞脚色賞にノミネートされ、話題沸騰の配信ドラマ「ガンニバル」の脚本も手がけた大江崇允が、「AR」を題材にリアルとバーチャルが混濁する世界を描く、サスペンスフルで新感覚な意欲作です。
【AR】アプリ「ミミ」にはまり込んでいくサラリーマン、間宮を演じたのは『桐島、部活やめるってよ』『素敵なダイナマイトスキャンダル』の落合モトキ。子役からの長いキャリアを持つ実力派が、無気力とナイーブの狭間を漂う主人公を好演。そして間宮のみならず、孤独なひとびとを引き寄せる“明日香”役は、強烈な個性で注目を集めるミュージシャン、あの。“あの”という存在が象徴している今の時代の空気がみごとに役に生かされており、とらえどころのない【AR】アプリ「ミミ」のカリスマ少女に扮している。
また、明日香に憧れ、「ミミ」内で新たなカリスマを目指す女性、凛役に横田真悠、間宮の元婚約者、由香理役に大西礼芳、明日香の熱狂的な信者、しんさん役に宇野祥平が扮し、脇を固めている。
※ARとは?
ARとは「Augmented Reality」の略称で、日本語では「拡張現実」を意味する。現実世界での体験にデジタル情報を重ね合わせ、新たな価値を生み出す「XR(Cross Reality)」と呼ばれる先端技術のひとつ。ARアプリの主な例として『セカイカメラ』『ポケモン GO』などがある。
※ARアプリ「ミミ」とは?
劇中に登場する、位置情報を元としてスマホカメラ画面で撮影した自分の動画を撮影場所に残せるサービス。
また、ミミを起動することで、その場所に残された動画を再生することができる。名前の由来となったあのお伽話のように、秘密や愚痴を垂れ流し、それで街を埋め尽くそうという悪意のコンセプトで作られたジャンクアプリ。
《STORY》
結婚間近だった恋人と破局した不眠症の間宮は、マッチングアプリで唯一返信をくれた女子高生と会うが、女子高生は間宮のアパートで自殺してしまう。うろたえて山中に埋めようとするも、気がつけば死体は消えていた。
間宮は、ARアプリ「王様の耳はロバの耳(通称ミミ)」(※注釈)の中で、死んだ女子高生と瓜二つの少女“明日香”を発見する。“明日香”は「ミミ」を通じて再生できる動画を街中で投稿し、動画目当てのファンたちが街を徘徊するカリスマ的存在だった。
“明日香”の痕跡を追いかけるうちに、現実と幻想の境界が曖昧になっていく間宮。いったい“明日香”とは何者か? 彼女は死んだ少女と同一人物なのか? そして本当に存在するのだろうか?
出演:落合モトキ あの
横田真悠 大西礼芳
内村遥 松澤匠 猪股俊明 / 宇野祥平
監督:大江崇允
脚本:菊池開人 大江崇允
音楽:渡邊琢磨
主題歌:ano「鯨の骨」
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
制作プロダクション:C&I エンタテインメント
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
©2023『鯨の骨』製作委員会
公式サイト:www.culture-pub.jp/kujiranohone
2023年10月13日(金) 渋谷シネクイント、シネマート新宿ほか全国公開
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