
綾野剛「これは“珍味”な作品です」映画『星と月は天の穴』完成披露上映会 舞台挨拶【詳細】レポート
2025年11月18日、テアトル新宿にて、映画『星と月は天の穴』完成披露上映会が開催され、上映前舞台挨拶には、主演の綾野剛をはじめ、咲耶、田中麗奈、そして荒井晴彦監督が登壇した。
本作は、日本を代表する脚本家であり監督の荒井晴彦氏が、長年の念願だった吉行淳之介の芸術選奨文部大臣受賞作品を映画化した最新作。
舞台挨拶レポート
‐ まずは皆様からご挨拶を頂戴したいと思います。今作の主人公、妻に捨てられた作家・矢添克二を演じられた綾野剛さん、お願いします。
綾野剛 (矢添克二 役)
皆さんこんばんは。綾野剛です。本日お越しいただき大変感謝しております。今日が初めて見ていただく機会となります。荒井さん、嬉しいですね。今日は短い時間ですが、楽しんでいただければと思っております。よろしくお願いします。
‐ 続いて、画廊で出会う大学生、瀬川紀子を演じられた咲耶(さくや)さんお願いします。
咲耶 (瀬川紀子 役)
瀬川紀子役を演じました咲耶です。今日が人生で初めての舞台挨拶なので、ものすごく緊張しています。私にとって思い入れの深いこの作品で初めての舞台挨拶を迎えられましたこと、そして皆様に見ていただけることを、とても嬉しく思います。今日はよろしくお願いいたします。
‐ 続いて、なじみの娼婦・千枝子を演じられました田中麗奈さんです。
田中麗奈 (千枝子 役)
皆さんこんばんは。田中麗奈です。今日は映画を見に来てくださってありがとうございます。この映画を見ていただければ、自然に心の温度、体の温度が上がっていくと思いますので、どうぞ今日は温まって帰ってください。よろしくお願いいたします。
‐ そして、本作の脚本・監督です。荒井晴彦監督、お願いいたします。
荒井晴彦 監督
人生で5度目の舞台挨拶なんですけど、全然慣れません。早く終わらないかなと思ってます(苦笑)
作品と役柄について
‐ 綾野さんは今作で2作目の荒井組となりました。完成した映画をご覧になって、どのようなことを感じられましたか。また、日本でも世界でも初めて作品をご覧いただくこの機会について、どう感じていますか。
綾野剛
率直に、今日という日が迎えられてとても嬉しいです。この作品を試写で見た時、映画は見方があると思いますが、「目で見る」というよりは「耳で見る」、「文字を読む」映画とも言えるなと感じました。
荒井さんの前で言うのもなんですが、これは「珍味」な作品だと思います。私自身、試写で見た時、現場では感じられなかった「味わい」をたくさん感じられました。
特に、咲耶さん、田中さん、そして岬あかりさん(作中で紀子に相当するB子役)という3人の女性のあり方がとても豊かです。
この作品は、強いメッセージを込めたというよりは、言葉の美しさや骨太さが際立っています。小説家である矢添が言葉にしているものは、どこかおかしく、ある種、今の時代で言うところの「化石男」とも言えるので、そういった部分を楽しんでいただけたらと思います。
‐ 荒井監督は10代の頃に本作の原作に出会われ、長年映像化を願っていらっしゃったとのことですが、この原作のどういったところに特に引かれたのでしょうか。
荒井晴彦 監督
(言いづらそうに)ちょ、ちょっと、言いづらい(照笑)
綾野剛
まず私が聞きましょうか?
綾野剛
あれがきっかけだったんですか?共感できたということでしょうか。
荒井晴彦 監督
いや、共感というか、だって18歳だから。
セックスというのは、ラーメンの胡椒みたいに必要なんじゃないか、ということでしょうか。
綾野剛
う、うん・・・・どういうことでしょうか?ぜんぜんピンと来ない喩えですが(苦笑)
えっと、(監督に代わって説明すると)とあるシーンがあるのですが、言葉では言いづらいですね。
ま、なかなかその(男性がいざコトに及ぶ段になっても)本領発揮できなかった瞬間があるんですね。本領発揮できない時にどうしようか悩んだ末に、とあるものを見つけると、なぜか本領発揮できる気がして、奮い立たされたというか、(あるものが)起立したというか(笑)
‐ 咲耶さんは今回、オーディションで紀子役を掴まれたそうですね。合格の知らせが来た時はいかがでしたか。
咲耶
夢のような心地でした。企画書、準備稿、原作と全て読んでから、「絶対にこの作品で紀子の役を勝ち取りたい」という思いが強く湧きました。
漠然としていた私の理想がこんなに早いタイミングで実現してしまったという奇跡的なタイミングだったので、掴むしかないと思いました。
合格を聞いた時は、本当にふわふわしてしばらく現実感がありませんでした。
‐ 田中さんは荒井監督の監督作品としては初めてのご出演となりました(脚本作品にはこれまで参加している)。荒井組(監督作)に参加されてみていかがでしたか。
田中麗奈
すごく嬉しかったです。荒井組をやりたいと思っていたので、念願が叶ったと、お声がけいただいて驚きましたが、とても嬉しかったです。
やはり緊張はしていたのですが、綾野くんが先輩なので、先輩についていこうと思って現場に入りました。
‐ 荒井監督に再度お伺いします。今回、舞台が1969年と描かれておりますが、この年代設定にした理由を伺ってもよろしいでしょうか。
荒井晴彦 監督
単純に、あの『星と月は天の穴』というタイトルの裏返し、ひっくり返しを持ってきたかったんで、1969年のアポロを入れたいなと思って。
あとは、60年代というのはいろんなことがあって、自分自身の人生でも色々と影響を受けた時期だったからです。
‐ 綾野さんが演じる主人公・矢添克二は、非常に個性的なキャラクターだと思いますが、ご自身ではどのように感じていらっしゃいましたか。
綾野剛
まず、面白い人だと思いました。脚本を読んだ時、セリフに行動、表情、感情が全て書かれていたので、いかに肉体的表現や表情でセリフを邪魔しないかということをとても意識しました。
また、その時代の映像などを見ると、割と出力の高い言葉、力強いトーンがあると感じました。もしかしたらマイクの性能で低音が拾えていないだけで高音が強くなっているのかもしれないと予測した時、矢添の声は、ラジオボイスのようなかすれ具合が良いのではないかと監督に相談しました。
セリフを丁寧に編んでいくために、声でもあまり欲をつけないという方向性で、それが時代にもマッチングしやすかった気がしています。
‐ 矢添は執筆する恋愛小説の主人公Aを自身に投影していますが、綾野さんは矢添と小説の中のAの二役を演じ分けています。演じ分けのポイントはどのようなところでしたか。
綾野剛
見ていただく前にどう表現したらいいか難しいのですが、矢添がどちらかというと曲線的な動きをするのに対して、Aは直線的に動きます。タバコを吸う時も、電話をする時も、感情をあまり表さないAに関しては、すべて直線的な動きにしました。Aについては監督に相談しながら設定を詰めていったのですが、どういう人物かは言葉で表現しづらいですね。監督、どう言えばいいですかね?
荒井晴彦 監督
「変態」だよ。
綾野剛
ま、ま、そうですね(笑)誠実にやった結果、そうなってしまったという。
荒井晴彦 監督
矢添との違いはメガネをかけていることだよね。
綾野剛
ま、そうですね、見た目で言うと。
なんというか、欲求をより直線的にしたらこうなるのかなって。セリフもそうですけど。どっちかと言うと、セリフから編んでいったので。
その部分を楽しんでいただけたら嬉しいです。
荒井組の撮影現場
‐ 荒井監督は綾野さんについて、「俺よりも役について考え抜いてくる役者」だとおっしゃっていましたが、どういった時にそう感じられたんですか。
荒井晴彦 監督
俺はあまり何も言わないんで、代わりに綾野があれこれとやってくれたり。
俺、モニタ音声を聞くためのイヤホンをしていたんで、(マイクごしに)綾野と田中さんが二人で会話しているのが聞こえたことがある。「あの人のOKの基準ってわからないよね」って(笑)
田中麗奈
でも本当に何もおっしゃらない感じがありますよね。
綾野剛
簡単に言うとですね、ワンシーンをワンカットで撮るのですごく長尺になって、普通に5分(カメラを)回したりするんですよ。
「ようい、スタート!」って言っても、朝も早いですし。で、カットがかかってから、OKかOKじゃないのかなんかボヤーっとする時があるんです。
監督を見ると「寝てる?お休みになられてる?」という時もありました(笑)。それぐらい静かな現場でした(笑)
荒井晴彦 監督
ちゃんと起きてたよ(笑)
綾野剛
知っていますよ(笑)「うん、うん」って言いながらそういう感じだったので(笑)
僕はもう慣れていましたけど。
田中麗奈
私は初めて荒井組に参加したので、大丈夫かな、大丈夫かなと思いながら進んでいましたが、本当に淡々と進行していく現場でした。
‐ 咲耶さんについては、監督は撮影が終わった後に「今までどこにいたの?」とご発言されたそうですね。
綾野剛
(監督の意図を説明して)今まで(女優として)出てきててもおかしくなかったのに、本当に今までどこにいたの?というニュアンスでおっしゃったんですよね。
‐ 咲耶さんは、撮影を通して印象的なエピソードやシーンはありますか。
咲耶
既に公開されているセリフなので言えるのですが、作品の中で私が一番好きなフレーズがあります。
それは、「隠されていたものが現れた時に、一つのことが終わるのさ。そして新しいことが始まるんだ」というフレーズです。この言葉は、今回の作品に出てくる全員の登場人物に当てはまる言葉で、それを矢添さんが発するシーンがとても印象的で好きなシーンの1つです。
‐ 田中さんは印象的なエピソードはありますか。
田中麗奈
私はエンドロールがすごく好きです。エンドロールで綾野さんが、あることをされているのですが、撮影現場には立ち会えました。なんていうか、魅力が満載というか、この年齢でしか出せない色気と無邪気さと少女っぽさが、女の子と女性の間を行き来しているその姿が目に焼き付いています。
‐ 監督は、田中麗奈さんについて、ここまで田中さんがやってくれるとは思わなかった、とおっしゃっていたそうですね。
荒井晴彦 監督
下着姿で申し訳なかった、それだけです(照笑)
‐ 綾野さんは、田中さんがタバコをくわえた手でマニキュアを塗っているシーンのアイデアを出されたそうですね。
綾野剛
はい。喫煙する設定だったので、特に白黒の作品でもあるので、タバコの煙のゆらぎみたいなものが何とも言えないと思いました。ただマニキュアを塗っているだけですが、そこに揺らぎがあったらすごく感情が伝わってくるんじゃないか、と。
荒井晴彦 監督
(マニキュアのアイデアは)元々そういうことをやりたいと思っていたので、「どうしたらいいかな?」という時に、綾野君から「タバコを持っていただいたらどうですか?この後タバコ吸いますし」という話でなったんです。
クロージング
‐ 最後に、この後作品をご覧いただく皆様へ、荒井監督と主演の綾野剛さんから一言いただきたいと思います。
荒井晴彦 監督
見て面白かったら、宣伝してください。宣伝しないと次回作がもう撮れなくなるんで。本当なんですよ。年も年だし、もうすぐ80だし、山田洋次(監督)に負けたくない(笑)ありがとうございます。
綾野剛
本日はありがとうございます。本当に感謝しております。
本当に登場人物の皆さんがとても魅力的で、咲耶さんや田中さん、岬あかりさん(作中で紀子に相当するB子役)ら女性たちの魅力がこの作品に詰まっています。
その中でグズグズしている矢添という男が、どのように言葉に向き合っているのか、美しさの中にある滑稽さのようなものが彼の持ち味なので、どうか「まあまあ」と思いながら受け止めて、手のひらで転がしてやってください。
そうしたらきっとこの作品は育っていくと思います。短い時間でしたが、今日は皆さんに会えて本当に良かったです。最後まで楽しんでいただけたらと思います。
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[記事・写真:三平准太郎]
映画『星と月は天の穴』
《INTRODUCTION》
脚本・監督 荒井晴彦 × 主演 綾野 剛が織りなす日本映画の真髄
『Wの悲劇』(84)、『リボルバー』(88)、『大鹿村騒動記』(11)、『ヴァイブレータ』(03)、『共喰い』(13)でキネマ旬報脚本賞に5度輝いた(橋本学と並んで最多受賞)、⽇本を代表する脚本家・荒井晴彦。
『身も心も』(97)をはじめ、『⽕⼝のふたり』(19)、『花腐し』(23)など、⾃ら監督を務めた作品では⼈間の本能たる〝愛と性〟を描き、観る者の情動を掻き⽴ててきた。
最新作『星と月は天の穴』は、長年の念願だった吉行淳之介による芸術選奨文部大臣受賞作品を映画化。過去の離婚経験から女を愛することを恐れる一方、愛されたい願望をこじらせる40代小説家の日常を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴っている。
主人公の矢添克二を演じるのは、荒井と『花腐し』(23)でもタッグを組んだ俳優 綾野剛。これまでに見せたことのない枯れかけた男の色気を発露、過去のトラウマから、女性を愛すること、愛されることを恐れながらも求めてしまう、心と体の矛盾に揺れる滑稽で切ない唯一無二のキャラクターを生み出した。
ß矢添と出会う大学生・紀子を演じるのは、新星 咲耶。女性を拒む矢添の心に無邪気に足を踏み入れる。
矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じるのは、田中麗奈。綾野演じる矢添との駆け引きは絶妙、女優としての新境地を切り開く。
さらには、柄本佑、岬あかり、MINAMO、 宮下順子らが脇を固め、本作ならではの世界観を創り上げている。
《STORY》 いつの時代も、男は愛をこじらせる――
小説家の矢添(綾野剛)は、妻に逃げられて以来10年、独身のまま40代を迎えていた。離婚によって心に空いた穴を埋めるように 娼婦・千枝子(田中麗奈)と時折り軀を交え、妻に捨てられた傷を引きずりながらやり過ごす日々を送っていた。
そして彼には恋愛に尻込みするもう一つの理由があった。それは、誰にも知られたくない自身の“秘密”にコンプレックスを抱えていることだ。
そんな矢添は、自身が執筆する恋愛小説の主人公に自分自身を投影することで「精神的な愛の可能性」を探求していた。
ところがある日、画廊で運命的に出会った大学生の瀬川紀子(咲耶)と彼女の粗相をきっかけに奇妙な情事へと至り、矢添の日常と心が揺れ始める。
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- 荒井晴彦監督(撮影 野村佐紀子)
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出演:綾野剛
咲耶 岬あかり 吉岡睦雄 MINAMO 原一男 / 柄本佑 / 宮下順子 田中麗奈
脚本・監督 荒井晴彦
原作:吉行淳之介「星と月は天の穴」(講談社文芸文庫)
エグゼクティブプロデューサー:小西啓介
プロデューサー:清水真由美 田辺隆史
ラインプロデューサー:金森保
助監督:竹田正明
撮影:川上皓市 新家子美穂
照明:川井稔 録音:深田晃 美術:原田恭明 装飾:寺尾淳 編集:洲﨑千恵子
衣裳デザイン:小笠原吉恵 ヘアメイク:永江三千子
インティマシーコーディネーター:西山ももこ
制作担当:刈屋真 キャスティングプロデューサー:杉野剛
音楽:下田逸郎
主題歌:松井文「いちどだけ」他
写真:野村佐紀子 松山仁
アソシエイトプロデューサー:諸田創
製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:キリシマ一九四五
制作協力:メディアミックス・ジャパン
レイティング:R18+ 上映尺:122分
©2025「星と月は天の穴」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/hoshitsuki_film/
公式X:https://x.com/hoshitsuki_film
予告編
2025年12月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
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