
森田剛×伊原六花『ヴォイツェック』開幕前会見&公開ゲネプロ
2025年9月21日、東京芸術劇場プレイハウス(東京都豊島区)にて、パルコ・プロデュース2025『ヴォイツェック』開幕前会見&公開ゲネプロが行われ、主演の森田剛をはじめ、伊原六花、伊勢佳世、浜田信也、冨家ノリマサ、栗原英雄が登壇。(動画&フォト)
本作は、ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーが遺した未完の戯曲『Woyzeck』を、ジャック・ソーンが現代に翻案したニュー・アダプテーション版であり、冷戦下の1981年ベルリンを舞台としている。
演出は小川絵梨子が手掛けており、愛を求める兵士ヴォイツェック(森田剛)が、幼少期のトラウマや貧困、薬物投与による幻覚に苛まれながら、狂おしい運命へと導かれていく重厚なドラマである。
会見では、登壇者が開幕への意気込みを語り、稽古中のエピソードや作品に対する深い考察が語られた。
■開幕前会見&公開ゲネプロレポート動画
■開幕前会見フォトレポート
まず、登壇者一人ひとりから、約1ヶ月間の稽古を終えて初日を迎えるにあたっての意気込みが語られた。
森田剛(ヴォイツェック 役)
約1ヶ月の稽古を終え、「ついに初日という日が来たな」という感じです。今はワクワクしています。
伊原六花(マリー 役)
本番は、観客の皆さんを見ないと分からない部分がたくさんあると思っています。演出の小川絵梨子さん、そして素敵なキャストとスタッフの皆さんと作り上げてきたので、まずは舞台上で必死に生きようと思います。
伊勢佳世(マギー/ヴォイツェックの母親 役)
この作品は「モンスターみたいな難しい作品」です。ここまで皆で一緒に対峙して来られたことが本当に嬉しいですし、これから本番が始まるのが楽しみでもあります。
浜田信也(アンドリュース 役)
今回の作品を一緒に作っている仲間が、本当に素晴らしい方たちばかりで、毎日の稽古をとても楽しく穏やかに過ごすことができました。本番も皆で一緒に楽しく乗り切れたら良いなと思っています。
冨家ノリマサ(大尉 役)
稽古中、主演の森田剛さんが背中で皆を引っ張っていく姿が印象的で、素晴らしい稽古ができたと思います。作品自体は「震えるほど」の重厚なものなので、その震えが自分にも伝わってきており、震えながら初日を迎えたいと思っています。
栗原英雄(医師 役)
「ついにここまで来たな」という感じです。怒涛のように舞台稽古を皆でやって、今日を迎えました。このゲネプロを経て、明日までにはもっと良いものになると信じています。
稽古場でのエピソードと演出家・小川絵梨子氏からのアドバイス
‐稽古場でのエピソードや、演出の小川絵梨子氏からかけられた言葉の中で、特に印象に残っているものを教えてください。
森田剛
小川さんからはたくさんの言葉をいただきましたが、その中でも素敵だと感じたのは、「一緒にやっている仲間を信じる」ということと、「自分では何もしない、相手に委ねる」という言葉でした。
100%相手を信じ、また自分も信じてもらい、役として舞台上で生きられたら良いなと思っています。
伊原六花
森田さんと同じように、宝物のような言葉をたくさんいただきました。
特に印象的だったのは、役について深く考え込んでグルグルしている時に言われた言葉です。小川さんは、「(舞台に)出てしまえば、私が言ったことなんかうるせえバーカでいいから」とおっしゃっていました。その一言で一気に力が抜け、その場で起こることをもう少しビビットに感じて楽しめば、もっと楽しい舞台になるとさらに思えました。
伊勢佳世
お二人と同じで、「目から鱗の言葉ばかり」でした。相手を信じて、今起こっていることにとにかく反応する、それだけで良いと言ってくれるので、本当にそれだけで舞台に立とうと思っています。そうすることで、舞台上で起きる出来事が面白く、楽しいものになると思っています。
浜田信也
皆さんと共通しますが、「前に前に進み、相手に委ねて、一人でやらずに舞台上にいる人と一緒に時間を過ごし、その場で生きていく」ということをとにかく大事にしてほしい、と様々な言葉で伝えられました。
冨家ノリマサ
僕も皆さんと同じように、「とにかく相手を感じること」を一番に頭に刻みながら取り組みました。稽古場でのエピソードとしては、稽古が終わった後の休憩時間が、皆さんがすごく仲が良くて、僕にとって「癒しの時間」でした。
栗原英雄
ほぼほぼみんなが言った通りです。小川絵梨子さからは、皆さんが言ったようなアドバイスを毎日たくさん受けました。ハードルの高いノートやアドバイスを日々いただきましたね。ただ、何が一番印象に残っているかは「内緒」です(笑)
役の印象の変化
‐最初に台本を読んだ時と、稽古を重ねて本番間近になった今とで、ご自身の演じる役の印象は変わりましたか。
森田剛
ものすごく変わっています。ものすごいスピードで、役が「生きてる感じ」がします。それは、日々の稽古の中で毎日発見があり、その発見が今もずっと続いているので、日々進化していくのだろうと思っています。
伊原六花
パッと受ける最初の印象はあまり変わっていませんが、稽古を通して言ってもらう言葉などで、マリーという役や彼女が生きている場所の「解像度が高くなった」と感じています。
伊勢佳世
特に母親役は台本にセリフがあまり書かれていないため、森田さんが演じるヴォイツェックを見ながら、母親も「こうなんじゃないか、ああなんじゃないか」と、すごく想像を膨らませてもらうことができました。稽古中に森田さんが役と共に変わるごとに、自分も影響を受け、母親像が膨らんでいった感じです。
浜田信也
僕はガラッと変わりました。「180度変わった」と言ってもいいくらい変化しました。これは、日々森田さんと一緒のシーンを演じる中で、役柄としてだけでなく、普段の稽古でのコミュニケーションを通してお互いを知っていく過程と、役として繋がっていくことがリンクした結果です。
冨家ノリマサ
最初に台本を読んだ時、ほぼほぼ内容が理解できず、「なんだこれ」と思いながら、この物語の中で自分という「歯車」がどう作用すれば良いのかを考え続けました。稽古が始まると、皆さんがどんどん色々なものを立ち上げていき、小川さんの演出が加わることで、ようやく稽古の途中で自分のポジションや、歯車をどう動かせばいいのかがだいぶ見えてきました。
栗原英雄
台本を読んだ当初は「脳で考える」ことが中心で悩んでいましたが、日々時間が経つにつれて感覚的なことが分かってきました。その後、自分も周りの人物も立ち上がってきて交わることで、「こういう物語が流れていくんだな」ということが少しずつ感覚的に理解できるようになったという状態です。
役柄への共感点と苦労した点
‐それぞれの役を演じるにあたって、共感できた点、および苦労された点を具体的に教えてください。
森田剛
人間として生まれたら誰もが抱く、「愛したいし、愛されたいし、認められたいし、自分の居場所を捜したい」という強い気持ちは、ヴォイツェックに対して共感というより、憧れとして抱いています。
伊原六花
マリーが「とにかく必死に生きているところ」に共感できます。環境や時代は違えど、楽しいことは楽しみ、喧嘩する時は喧嘩し、泣く時は泣くという「ちゃんと生きてる」姿は、私もそうして生きたいと思っている部分です。
伊勢佳世
マギーは上流階級の役で、私とは生活がかけ離れていますが、「よりよく生きたい」という欲望や、自分より弱い人をいじめたいという気持ちが、強いものを持っていると生まれるのだな、と感じながら演じています。
浜田信也
私の役には、自身の弱いところや、人に見せたくないコンプレックスから目を背けて、楽しく生きていこうとする部分があります。これは誰しもが無意識に多少は持っている要素だと思うので、弱さを持っているという点で、役柄に大変共感できる部分です。
冨家ノリマサ
私の役はまるっきりの軍人なので、共感というよりは、今の平和な日本から世界を見たときに起こっている戦争の中で、そこに駐在している軍人の思いは理解ができると感じています。
栗原英雄
私自身も富家さんと同じで、共感というより、その時代に生きた人間が必死に生きようとした時に、それが正しいかどうかも分からずに必死に生きる姿に、現代にも通じる普遍性を感じています。私が演じる医師は「マッドサイエンティストみたいな感じ」ですが、その人物の生き様には数パーセントでも共通点があるかもしれないと考えています。
主人公ヴォイツェックの「愛」にちなんで、個人的に愛するものや大切にしている時間
‐主人公ヴォイツェックは「愛を求めて生きる」人物だと聞いていますが、登壇者の皆様それぞれがご自身の中で愛してやまないものがあれば教えてください。
森田剛
植物が好きで、アガベ(植物)を愛しています。ただ、言っても伝わらないかもしれませんけどね(笑)
また、この作品が暗い話なので、朝起きたら空を見るようにしています。
でも何よりも、この作品の稽古も全て含めた「皆さんととの時間が本当に愛しい時間」でした。この時間への愛情を込めて、最後まで全力で駆け抜けたいと思うし、それを見てくれた皆さんが何かを感じてくれたら良いなと思っています。
伊原六花
私は、家にいるモモンガとトカゲです!
以上です(笑)
伊勢佳世
森田さんの話を聞いて泣きそうになりました。
私は、森田さんが演じるヴォイツェックを愛しています。また、子役の2人の子供たちも本当に可愛くて、今では母親なんじゃないかというくらいの気持ちで見ています。
浜田信也
冗談ではなく、「休憩と休日」を心から愛しています。
このような作品を作っている時は、心が一息つく時にふとアイデアが浮かんだり、試してみたいことなどが思いついたりすることが多いからです。考え詰めている時よりもリラックスしている時の方が発想が出てくることがあるので、休憩時間や休日の大切さを強調したいです。
冨家ノリマサ
抽象的で難しい質問ですが、生きていて人と目が合った時に、「この人はこういう風に感じているんだろうな」と、一種の意思の疎通がすっとあった瞬間に、そこに小さな愛を見つけるのが好きかもしれません。そういう小さなものを積み重ねていけば大きなものになると思い、日々それを探しています。
栗原英雄
「人生」を愛しています。60歳になり、最近プライベートで訃報が多く、人間には必ず最後が来ると思うと、一瞬一瞬を愛していきたいと改めて思いました。また、この稽古場に来るのが楽しくて仕方なく、出演者、キャスト、スタッフのみんなを愛しています。
お客様へのメッセージ
‐最後に、本作を楽しみにされているお客様へ、代表して森田剛さんからメッセージをお願いします。
森田剛
とにかく、「やるだけ」という感じです。本気でやります。観に来てくださった方には、その場で起こっていることを素直に感じてもらったら良いと思います。楽しみにしていてください。
パルコ・プロデュース 2025『ヴォイツェック』は、2025年9月23日(火・祝)から東京芸術劇場プレイハウスにて開幕。その後、岡山、広島、福岡、兵庫、愛知を巡演し、11月には東京にてリターン公演が予定されている。
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[動画・記事・会見写真:三平准太郎/舞台写真:細野晋司]
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パルコ・プロデュース 2025『ヴォイツェック』
《INTRODUCTION》
ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナー(1813~1837)が遺した未完の戯曲『Woyzeck』。今日まで、時代を超えて様々な形で解釈され、観客に新たな驚きと感動を与え続けてきました。
今回の脚本は、2017年にロンドンのオールド・ヴィック劇場で上演され、高い評価を集めた、ジャック・ソーンが翻案を手掛けたバージョン。
ビューヒナーの原作を現代的に解釈し、冷戦下の1981年ベルリンを舞台に、政治的緊張感と心理的・感情的な深みを強調したドラマでロンドンの観客を圧倒しました。この重厚感ある新バージョンを、日本で初めて上演いたします。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でその名を知られる劇作家のジャック・ソーン。彼の手によって現代にアップデートされた今回の『ヴォイツェック』は、過去のトラウマと自身の心の闇と闘いながら生きるヴォイツェックの姿を通じて現代社会の様々な問題を浮き彫りにし、内面的な葛藤に直面する現代人の姿を映し出します。
本作の演出を手掛けるのは、米国アクターズスタジオ大学院演出学科を日本人で初めて卒業し、小田島雄志・翻訳戯曲賞、紀伊國屋個人賞、読売演劇大賞優秀演出家賞ほか、多くの受賞歴を持ち、2018年より新国立劇場の芸術監督を務める小川絵梨子。
主演ヴォイツェック役は、舞台『台風23号』や映画『雨の中の慾情』、『劇場版 アナウンサーたちの戦争』などに出演し、様々なフィールドでその強烈な存在感を持って観客を魅了し続ける森田剛。パルコ・プロデュース公演でも、宮本亞門演出『金閣寺』(11)、いのうえひでのり演出『鉈切り丸』(13)、行定勲演出『ブエノスアイレス午前零時』(14)、鄭義信演出『すべての四月のために』 (19)、ショーン・ホームズ演出『FORTUNE』(20)で主演を務め、様々な演出家のもと難役を演じてきた森田が、初の小川絵梨子演出作品で暗い過去に苦しみながらも愛を求めるヴォイツェック役に挑みます。
ヒロインのマリー役を演じるのは、ミュージカル『ダブリンの鐘つきカビ人間』(PARCO&CUBE produce)や舞台『台風23号』、映画『少年と犬』に出演し、7月からは主演ドラマ『恋愛禁止』の放送も控え、話題作への出演が続く伊原六花。
さらに、ヴォイツェックの母親とマギーの二役には、舞台『Bug Parade』や『て』、映画『じょっぱり-看護の人 花田ミキ』、ドラマ『未恋~かくれぼっちたち~』や連続テレビ小説『虎に翼』に出演の伊勢佳世。
ヴォイツェックの同僚アンドリュー役には、前川知大主宰の劇団イキウメに所属し、近年は、『ずれる』、『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』、『Le Fils 息子』などに出演、舞台を中心に活躍する浜田信也。
大尉役に舞台『ストレンジラブ』やドラマ『コンシェルジュの水戸倉さん』、日本アカデミー賞受賞作『侍タイムスリッパー』にも出演の冨家ノリマサ。
医者役にミュージカル『イリュージョニスト』や舞台『破門フェデリコ~くたばれ!十字軍~』(パルコ・プロデュース)などに出演し、来年はミュージカル『ジキル&ハイド』が控える栗原英雄。
意欲的な作品を世に問い続ける小川絵梨子が、ニュー・アダプテーション版『ヴォイツェック』を新たな視点で読み解き、現代を照射します。豪華キャストと小川絵梨子が生み出す本作に、どうぞご期待ください。
《STORY》
冷戦下のベルリン。軍事占領下の緊張が渦巻く街で、イギリス人兵士ヴォイツェック(森田剛)は、幼少期のトラウマとPTSD、そして貧困の記憶に苛まれながら生きていた。
薬物投与による幻覚とフラッシュバックが彼の心を蝕み、現実と過去の境界が崩れ始める。愛する人への狂おしいほどの執着と嫉妬が、彼を予想だにしない運命へと導いていく――。
出演:森田剛 伊原六花 伊勢佳世 浜田信也/中上サツキ 須藤瑞己 石井舜 片岡蒼哉/冨家ノリマサ 栗原英雄
原作:ゲオルク・ビューヒナー
翻案=ジャック・ソーン
翻訳:髙田曜子
上演台本・演出:小川絵梨子
企画•製作:株式会社パルコ
東京公演(東京芸術劇場 プレイハウス):
2025年9月23日(火・祝)~9月28日(日)
2025年11月7日(金)~11月16日(日)(リターン公演)
岡山公演(岡山芸術創造劇場 ハレノワ中劇場):
2025年10月3日(金)〜10月5日(日)
広島公演(広島JMSアステールプラザ 大ホール):
2025年10月8日(水)~10月9日(木)
福岡公演(J:COM北九州芸術劇場 大ホール):
2025年10月18日(土)~10月19日(日)
兵庫公演(兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール):
2025年10月23日(木)〜10月26日(日)
愛知公演(穂の国とよはし芸術劇場 PLAT主ホール):
2025年10月31日(金)〜11月2日(日)
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