舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

【インタビュー】吉沢悠「使えるようになりたい魔法は…」舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

2022年からロングラン上映が続いている舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。2024年7月デビューの第三期キャストとして、大人になったハリー・ポッターを演じる吉沢悠(よしざわひさし)に、本舞台の取り組みや、ハリー・ポッターシリーズの魅力を聞いた。
 
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者である J.K.ローリングが、ジョン・ティファニー、ジャック・ソーンと共に舞台のために書き下ろした「ハリー・ポッター」シリーズ8作目の物語だ。小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる新たな冒険物語は、世界中で多くの演劇賞を獲得するなど好評を博している。国内でも第30回読売演劇大賞の選考委員特別賞、第48回菊田一夫演劇大賞を受賞するなど高い評価を獲得している。

吉沢悠 インタビュー&撮り下ろしフォト

■早くハリーになりたい!

‐舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に、ハリー・ポッター役としての出演が決まったときのお気持ちは?
 
吉沢悠
オーディションを受けるという段階から、主演のハリーを演じたいという気持ちで挑戦しているので、決まった時は、「よし!早くハリーになりたい!」という気持ちになりました。
 
‐出演が決まってから、イギリスの公演も観に行かれたとか?
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

吉沢悠

吉沢悠
はい。今年の2月に行きました。
イギリスのパレス・シアターで観たかった一番の理由は、このハリー・ポッターシリーズを生み出した国での舞台を自分の目で確認したかったからです。
また、観劇だけでなく、ロンドンの街を観光する中で、イギリスの方とも触れる機会があって、その雰囲気を味わいたかったのも理由の一つです。
 
‐パレス・シアターで観劇されてどういう印象を持たれましたか?
 
吉沢悠
この舞台を1回目はTBS赤坂ACTシアターで大貫勇輔さんが演じるハリー・ポッターを観劇して、2回目がパレス・シアターでした。どちらもハリー・ポッター愛に包まれたお客さんが集まっている劇場だなと思いました。
家族、カップル、友達同士など、いろんな方が来ていて、楽しく、幸せそうに時間を過ごしているのは、日本でもイギリスでも同じなんですけど、一番の違いは、イギリスの舞台だけで描かれているシーン(ハグリッドが登場するくだり)があって、イギリスの方が上演時間が長いんです。
さらに、日本でも2幕制になっていますが、イギリスの場合は、1幕と2幕とチケットを分けて購入することができることと、1幕と2幕の間の時間が長く、その間に食事をしたり、また別の日に2幕をご覧になる方もいらっしゃるそうです。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

吉沢悠

■大人になったハリー・ポッター

‐この舞台のハリー・ポッターは、映画「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」から19年後が描かれていますが、大人になったハリー・ポッターを演じるにあたって意識されたことはありますか?
 
吉沢悠
この舞台は、ハリーがヴォルデモート卿を倒してから19年後の物語です。
稽古場に入ってから一番最初に、ハリーがこの19年間、何をやっていたんだという空白の時間を埋めるために、演出のエリックさんを中心に紐解いていく作業をしました。
映画シリーズでのハリー・ポッターは、ヒーロー的存在だという印象が強いですが、この舞台ではより人間味のあるところが描かれているので、息子との関係性で悩んだり、いろんな悩みや葛藤を抱えるハリーというのを、稽古を通して細かいところまで確認できました。
いろんな人生経験をひとつひとつ積み重ねていって、19年後の大人になったハリーが人間関係も含めてしっかり描かれています。そういった細かい描写があるからこそ多くの国でこの舞台が上演され、多くの人に愛される理由なんだなと、僕の中でも理解が深まりました。
そのため、大人の方もしっかり楽しめる舞台になっています。
 
‐3年目の今回から、現場の演出がエリックさんという方に変わったそうですが、これまでとの違いは何かあるのでしょうか?
 
吉沢悠
僕は今回からなので、1、2年目とここが変わったとハッキリとは言えないんですけど、出演2年目になるキャストの方がエリックさんの演出を受けた時に、「あ、そこはそういう解釈だったんだ」とおっしゃっていた時間があったんです。1、2年目から引き続きのキャストの方もいらっしゃいますが、僕も含めて3年目からのキャストもいるので、新たに解釈をゼロから構築していきましょうという作業をしていく中で、(1、2年目のキャストの方々にとって)3年目で生まれている何か共通認識みたいなのがあるようなんです。動きや解釈がちょっと違ってるとおっしゃっている姿を見て、何か新しいものが生み出されているんだなっていう感覚を間接的に感ました。
 
‐そうなると、お客さんの立場としても、1、2年目のハリー・ポッターをご覧になった方も今回、新たな発見があるのかもしれませんね。
 
吉沢悠
そこを楽しみにしてほしいですし、特にコアに観られてきた方ほど、より違いを感じられるかもしれません。
この舞台は、いろんな要素があるので、観る度に、いろんな気づきが生まれると思うんです。それはなぜかというと、僕らキャストが課されている、やらなきゃいけないことが本当にたくさんあるんですけど、でもそれを観客の皆さんにはわからないようにやっているからです。
なので、お客さんが、1回観て見えたものがあったとしても、2回目に観た時には、また違った部分に気づく要素がたくさんある舞台です。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

‐今回の舞台の稽古で大変だったことは?
 
吉沢悠
魔法の内容は言えませんが、ロングランでやっていくので、事故が無いようにすることです。
そのために、ここではこういうことがあるかもしれないというシチュエーションを、今までの本番で実際にあったことも含めて伝えられています。事故が起こる可能性を稽古の中で潰していく作業です。
なので、その場の流れや勢いでやろうという感じの舞台ではなくて、スタッフの皆さんが支えて下さるからこそ成り立つ舞台だと感じています。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

吉沢悠(稽古中写真)

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

吉沢悠/平方元基(稽古中写真)

‐だからこそ、これほどの感動の舞台になるってことですね。
 
吉沢悠
そうですね。
 
‐7月7日の会見で、稽古場ではキャスト同士、ファーストネームで呼び合っているというお話をされていましたが、稽古場の雰囲気として印象に残っていることは?
 
吉沢悠
会見では、ひょっこりはんさんの実名の下の名前の話がでてましたけど、仕事場でファーストネームで呼び合うことって、日本ではあまり馴染みがないじゃないですか。特に、男性が女性を下の名前で呼ぶって、今のご時世で大丈夫かなみたいな。
ただ、やっぱり外国の方が演出されていて、彼らはファーストネームで呼び合う習慣があるので、それもあって「ゲームを通してみんなの名前を覚えて、これからカンパニーとして一丸となっていきましょう」という時間があったんです。皆が輪になって座って、手拍子しつつ、順番に自分のファーストネームを言っていく。そうして一通り言い合ったら、今度はボールを投げられた人が、投げた人のファーストネームを言わなくちゃいけないので、ちゃんと覚えておく必要があるというゲームです。
例えば、僕だったら「パンパン(手拍子)、悠」、平方さんだったら「パンパン(手拍子)、元基」と順番に言っていき、最後がひょっこりはんさんだったので、「なんて言うんだろう?」って思ったら、「パンパン(手拍子)、さとし」って言ったんですよ!「えっ?さとしなの?」って、みんなそこで初めて知ったんですよ。「さとしって呼んでいいの?」っていう空気になって(笑)
で、2周目の時は「パンパン(手拍子)、ひょっこりはん」って言うので、みんなが「結局どっちで呼べばいいんだ?」ってなるという、そういう面白い時間がありました。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

7月7日会見写真:吉沢悠(前列右から2人目) ※ひょっこりはんは後列左から1人目

■何回も観た人も初めての人も楽しめる3年目の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

 
‐ハリー・ポッターシリーズが、原作小説、映画、舞台と世界中で長く人気を博している、その魅力について、吉沢さんはどう思われますか?
 
吉沢悠
僕は、今回の舞台稽古に入る前に、ハリー・ポッターの映画シリーズを1作目から7作目と、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』、そして原作小説の「ハリー・ポッターと賢者の石」を改めて見直しました。
そうして、改めてこの舞台の台本を読み、稽古に入ってみると、小説、映画、舞台それぞれが持っている世界観がちょっとずつ違う気がしたんです。
映画版ではハリーが悪の存在を倒すというヒーロー的な楽しみ方もできる作品ですが、小説の方がより細かく描写されていて、僕の持っていたハリー・ポッター像は他のキャラクターよりもちょっとシニカルな感じがしたし、脳内で、読者自身のハリー・ポッターの世界を生み出せる良さがある。そして、この舞台版は、19年後の大人になったハリーを描いていることで、明確に世界観が違う。
それぞれのジャンルで楽しみ方が変わるところが、ハリー・ポッターシリーズの魅力だなと思います。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

吉沢悠

‐ハリー・ポッターに登場する魔法に関係なく、もし吉沢さんが魔法をひとつ使えるとしたらどんな魔法がいいですか?
 
吉沢悠
体力が回復する魔法です!今日1日を怪我なく過ごせるように、例えば膝が痛いのが治れ!みたいな、そういう魔法を使いたいですね(笑)
 
‐最後に3年目としての舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』の魅力を含めたPRメッセージをお願いします。
 
吉沢悠
3年目のキャストが大きく変わっているというのが一つの要素ですし、キャストの組み合わせや演出家が変わると解釈もまた違ってくるので、今まで観劇された方も、今までと違う雰囲気を感じられる良さがあります。
そして、今回初めてご覧になる方は、とにかくこの魔法の世界を劇場で体感していただきたいです。この赤坂ACTシアターでなければ観られないので、もしお時間の余裕があれば、是非お越しください!

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎/ヘアメイク:髙取篤史(SPEC)/スタイリスト:大迫靖秀]
 
吉沢悠(よしざわひさし)プロフィール
1978年8月30日生まれ。東京都出身。1998年ドラマ『青の時代』にて俳優デビュー。以降、テレビ、映画、舞台など幅広く活躍。2002年『ラヴ・レターズ』にて初舞台を踏み、2013年「宝塚BOYS」にて舞台初主演を果たす。主な舞台出演作品に『TAKEFIVE』、『華氏451度』(主演)、『MONSTERMATES』などがある。
近年の主な出演作に、ドラマ『夫婦が壊れるとき』、『週末旅の極意〜夫婦ってそんな簡単じゃないもの〜』、『泥濘の食卓』などに出演。
また、2025年度NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」に出演する。
近年では役者の幅を広げ、人間味あふれる演技で幅広い層から支持されている。
 

関連動画

2024年7月からのデビューキャスト集結の一斉お披露目!舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』7月デビューキャスト会見
YouTube player

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

《STORY》
ハリー、ロン、ハーマイオニーが魔法界を救ってから19年後、
かつての暗闇の世を思わせる不穏な事件があいつぎ、人々を不安にさせていた。
魔法省で働くハリー・ポッターはいまや三人の子の父親。
今年ホグワーツ魔法魔術学校に入学する次男のアルバスは、英雄の家に生まれた自分の運命にあらがうように、父親に反抗的な態度を取る。幼い頃に両親を亡くしたハリーは、父親としてうまくふるまえず、関係を修復できずにいた。
そんな中、アルバスは魔法学校の入学式に向かうホグワーツ特急の車内で、偶然一人の少年と出会う。彼は、父ハリーと犬猿の仲であるドラコ・マルフォイの息子、スコーピウスだった!
二人の出会いが引き金となり、暗闇による支配が、加速していく・・・。
 
キャスト:
 ハリー・ポッター・・・平方元基/吉沢悠
 ハーマイオニー・グレンジャー・・・木村花代/豊田エリー
 ロン・ウィーズリー・・・石垣佑磨/ひょっこりはん/矢崎広
 ドラコ・マルフォイ・・・内田朝陽/永井大/姜暢雄
 ジニー・ポッター・・・白羽ゆり/大沢あかね
 アルバス・ポッター・・・佐藤知恩/渡邉蒼
 スコーピウス・マルフォイ・・・西野遼/浅見和哉/久保和支
 嘆きのマートル・・・出口稚子
 ローズ・グレンジャー・ウィーズリー・・・飛香まい
 デルフィー・・・鈴木結里/乃村美絵/高山璃子
 組分け帽子・・・尾尻征大
 エイモス・ディゴリー・・・間宮啓行
 マクゴナガル校長・・・榊原郁恵/高橋ひとみ
 ルード・バグマンの声・・・吉田鋼太郎
ほか
 
オリジナルストーリー:J.K.ローリング
脚本・オリジナルストーリー:ジャック・ソーン
演出・オリジナルストーリー:ジョン・ティファニー
ムーブメント・ディレクター:スティーヴン・ホゲット
美術:クリスティン・ジョーンズ
 
日程:上演中~2025年2月末
会場:TBS赤坂ACTシアター
上演時間:3時間40分 ※休憩あり
主催:TBS ホリプロ The Ambassador Theatre Group
特別協賛:Sky株式会社 With thanks to TOHO In association with John Gore Organization
公式X:@hpstagetokyo
 

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA