【現地レポ】9分半にもわたるスタンディングオベーション!是枝監督映画『怪物』公式上映後レポート
フランス時間5月17日(水)、映画『怪物』が、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門での公式上映開始。エンドロールが始まると、2200人もの観客を収容する会場からは拍手がおこり、9分半にもわたるスタンディングオベーションが続いた。その後、監督・キャストらはメディアの取材に応じた。
9分半に及ぶ拍手と歓声のスタンディングオベーションに感激
フランス時間5月17日(水)コンペティション部門での公式上映を迎えた『怪物』(インターナショナルタイトル:MONSTER)。
是枝裕和監督をはじめ、脚本家の坂元裕二、主演の安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太が華やかなレッドカーペットを歩き、会場内で大きな拍手で迎えられた後、着席し上映が開始となった。
エンドロールが始まると、2200人もの観客を収容する会場からは拍手がおこり、坂本龍一さんへの追悼文が流れた際には、さらに割れんばかりの大きな拍手が沸き、敬意を表するような歓声もあがり、その後も9分半にもわたるスタンディングオベーションが続いた。その間、監督は少しホッとしたような表情を見せながら、大きく会場内を見渡し、おじぎをしながら称賛にこたえ、両脇の安藤と永山ともハグをし、言葉を交わし、その喜びを分かち合った。
また、脚本家の坂元ともしっかり肩を組み、『怪物』が多くの観客に届いた手応えを確かめ合い、称えあった。
スタンディングオベーションの後、マイクを渡された是枝監督は「こんなに多くのスタッフとキャストに支えられて作ることができました。まずはそのスタッフとキャストに感謝します。そのスタッフとキャストの多くが今日ここに集まってくれたことがすごくうれしいです。でも色々な事情でみんながここに集まるわけにもいかなくて、でもここに来られないスタッフとキャストの思いもここ(胸に手をあてて)に抱いて今ここに立っているつもりです。戻って皆さんのこの拍手と、皆さんの顔を、ここに来られなかったチームのみんなに報告したいと思います。とても良いワールドプレミアになったとおもいます。有難うございました。」と語った。
今回審査員長を務めるのは、昨年のカンヌで2度目となる最高賞パルム・ドールを受賞した『ザ・スクエア 思いやりの聖域』『逆転のトライアングル』のリューベン・オストルンド監督。
さらに、審査員には俳優のブリー・ラーソンやポール・ダノらが名を連ねている。コンペティション部門に選出された計21作品の中から最高賞となるパルム・ドールをはじめ各賞が発表となるのは、フランス時間の5月27日の授賞式が予定されている。
是枝監督作品がカンヌ国際映画祭で【コンペティション部門】に選出されるのは、昨年の韓国映画『ベイビー・ブローカー』以来2年連続、7回目(カンヌ国際映画祭への出品自体は9回目)。なお、昨年の『ベイビー・ブローカー』では、エキュメニカル審査員賞、そして主演のソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞した。これまでも、2004年『誰も知らない』では主演を務めた柳楽優弥が《最優秀男優賞》を受賞、2013年『そして父になる』では《審査員賞》を受賞、2018年『万引き家族』では最高賞である《パルム・ドール》を受賞している。
公式上映後の日本メディア向け囲み取材レポート
フランス時間5月17日(水)、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門での公式上映を終えた『怪物』(インターナショナルタイトル:MONSTER)より、是枝裕和監督をはじめ、脚本家の坂元裕二、主演の安藤サクラ、永山瑛太が、日本メディア向け囲み取材に参加した。
●フジテレビ
-映画が終わった後大きな拍手が送られていましたが、皆さんの反応をどう見られましたか?
坂元裕二(脚本)
カンヌのスタンディングオベーションしか見たことないものですから、どれくらいのレベルかわからず監督を見たら微笑んでいたのでいい反応だとおもいました。胸が震えるような思いがしました。
永山瑛太
まずは本当に感謝したい。是枝さん坂本さんさくらさん皆さん含め怪物に携われたことが今まで俳優やって来れて良かったなと思いました。
安藤サクラ
地響きのような拍手で圧倒されました。監督の姿を目に焼き付けようとずっと監督をみていました。なにより主役の(黒川)想矢と(柊木)陽太と一緒に感じられたら良かったのになと思いながらいました。夜遅い時間での上映だったので、2人が一緒にいられなかったのが、もやもやっとしました。しっかり2人に伝えたいなと思います。
是枝裕和監督
トップバッターだったんで責任重大だなと思いながら現場にいましたが、上映後の見てくれた方達の顔がとても輝いていたので、良かったなって思いました
●共同通信
-拍手も盛り上がって、観客の皆さんも泣いてる方もいらっしゃる方もいて、地元の方に感想をお伺いしたら、Beautifulという感想が出たのですが、どう思いますか?
安藤サクラ
激しく同意します。初めて見たときになんと美しいものを見たんだろう、頭で考える美しさでなく、生きとし生けるもの全ての美しさを感じたので激しく同意です。
是枝裕和監督
なぜでしょうね。映画全体としては人と人が理解できない世界をずっと描いていくのだけど、見終わると、そういう光を感じるっていうのが、自分の映画ではない読後感で、それは坂元マジックだと思うのですが、それがしっかり届いたのではないかなと思います。
●北海道新聞
-今回トップバッターということですが監督がリクエストしたんですか?
是枝裕和監督
結果的にそれは良かったなと思うのですが、そんなリクエストなんておこがましい。彼らがこの作品にとってベストな上映日時を決めてくれたんだろうと思っています。見終わってから、1日2日3日と反芻した方が良い映画なのでね。
●日経新聞
-監督、何百回も観ていると思いますが、今日観てどう思われたのか?山田さん・川村さんが坂元さんと開発していた企画ですが、坂元裕二さん、坂本龍一さんと組んで何が加わったと思いますか?
是枝裕和監督
なんか違いました?何が変わったか、か・・・。それは観た方が感じることだと思うんですよね。僕自身はこの作品の大ファンなんです。本当に面白いと思っています。自分で自分の映画を分析するのもなんだけど、通常はスライス・オブ・ライフを僕は描いているけど、今回は圧倒的に物語の推進力が強い。2018年12月にプロットをいただいて一緒に開発した一人ですが、描かれる人間たちの瑞々しさをしっかり描けてうまくいったんじゃないかと思います。そこがこの映画の強さじゃないかと思います。
●ハリウッドレポータージャパン
-演じる上で気を付けたことと、意識したこと、脚本を読んでこんな風に表現したいということがあったら教えてください。
坂元裕二(脚本)
できるだけ嘘のない物語を作ろうと心がけました。面白いストーリーを作るために一人一人の登場人物が物語に振り回されないように、一人一人が生きている物語を作りたいなと心がけました。特に子供たちが出る物語なので、自分自身が子供と遠く離れた歳になったが、自分にとって都合の良い子供を描かないように気をつけました。
永山瑛太
ぼくは保利先生を演じたのですが、これまでも坂元脚本を演じてきたのですが、一貫してあるのは「生きづらさ」。僕に書いてくれるキャラクターはある苦しみを抱えている。意識する事は過去とか未来を頭で考えることをやめて、今、共演者やカメラの前に立った時に、思考せずに本能的に感じられるか。今回は教師役で子供と向き合う役だったのですが、とにかく余計なことを考えない、現場では監督を信じてやりました。
安藤サクラ
現場に入る前は、最終章の物語をどういい形にサポートしていけるか、最初の登場人物としてどう表現していくかというのを大事にしたい、その上で脚本を読んだ時に最初に感じた私の印象をお守りのように抱いて現場に入って、現場ではよりセットに入ったら、にニュートラルな状態で楽しく毎日撮影をしていて、現場で特に慎重に繊細にやっていたのは、触れ合うこと。人と触れ合う、息子とのふれあいの距離感だったり、校長先生もそうですし、そのちょっとしたふれあいで距離感が変わる作品なので、そこは繊細にやりました。ちょっとのふれあいで意味合いが変わるなということは、現場に入って思いました。
是枝裕和監督
この面白い脚本とこのキャストがそろった時点で監督はあまり余計なことはしない方がいいとは思っていましたが、何が起こるかわからない中を、観客もいろんな怪物をみることになることだけを意識していました。スタッフが成熟して、取り組んでくれたので、素敵な現場でした。
●NHK
-観た人にどう感じて欲しいか、一言ずつ教えてもらえませんか?
是枝裕和監督
今日見ていい表情をされているなとは思いましたが、どう感じているかは人それぞれなので、感じてほしいと思うのもおこがましいのではと思いました。
安藤サクラ
すごいご覧になって感じた感想を含めた質問でしたね。私全然違う感想だったので、今すごくびっくりしました。
-スタッフも成熟したとありましたが、何かエピソードありましたら
是枝裕和監督
元の脚本を読み込んだスタッフが町や湖を見つけてきてくれて、スタッフがあの電車、車両を作ってくれて、それがこの映画の世界観、子供達だけの宝物である空間と時間を見事に表現している、その絵の持っている力強さがワンカットワンカット繋がったものが今回の結果だと思う。
●キネマ旬報
-安藤さんへ、万引き以来のカンヌだとおもいましたが、かわってましたか?
安藤サクラ
カンヌが変わったなんてまだ私にはわかりませんが、私自身が二度目ということで、前回の初めての興奮じゃない状態でしっかりと味わおうという気持ちで、前回はあっという間に終わってしまったのですが、今回は「これがカンヌか」というのを噛み締めながら過ごしてます。
-前回はパルム・ドールですが、前回と今回どっちが大きかったですか拍手は?
安藤サクラ
今回!?あれ?違う?!それは私の感じ方か。正解??
●ライター
-映画の中で、嵐がでてくることでスペクタクル感がありましたが、あの雨を待っていたのですか?
是枝裕和監督
雨は全部降らしました。全部作りました。一箇所唯一校庭に降る雨だけ本物で、あとは作り物です。
●朝日新聞
-監督、カンヌ7回目、作ったり演出するうえで海外を意識するのですか?
是枝裕和監督
題材選びとか、そういうことですか?あんまり意識してないのかも。デビューして、僕らの世代はすぐに海外の映画祭に呼ばれていくっていう状況が1990年代2000年代初頭にあって、どうやって日本の外で受け入れられるかを考えざるをえない時期があったんだけど、それを考えないと全く成長しないってことはないと勉強しました。自分のローカルな題材をしっかりと掘り下げていけば、地球の反対側にも届くと知りました。
-坂本さんが音楽担当されていましたが、やりとりはどうされていたのですか?
是枝裕和監督
映画の中で3回繰り返される夜の湖のシーンについて、ロケハンで諏訪に行った時に、ここに坂本龍一さんのピアノが入ると確信しました。ご体調のことはありましたが、一回自分の好きな坂本さんの曲を仮当てし、それをお手紙と共に送って見てもらいました。お返事が来て、映画全体を引き受ける体力はないのだけど、1−2曲閃いたから書いてみます、気に入ったら使ってくださいと返事のお手紙をもらいました。
観た直後に音楽室のシーンがすごく好きだと言ってもらい、あのホルンとトロンボーンの音を邪魔しない音楽を作ろうと思ったという意見をもらいました。映画の中から聞こえてくるような曲になったんじゃないかなと、おこがましいけれど思いました。
今日も最後に大好きなAquaが流れて良かったなと思いました。
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映画『怪物』
安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太そして田中裕子
“怪物”だーーれだ。
《INTRODUCTION》
『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた是枝裕和監督と『花束みたいな恋をした』「大豆田とわ子と三人の元夫」などで圧倒的な人気を博す脚本家・坂元裕二、そして音楽には、『ラストエンペラー』で日本人初となるアカデミー賞🄬作曲賞を受賞し、『レヴェナント:蘇えりし者』や『怒り』など国内外を問わず第一線で活躍した坂本龍一という、映画史上、最も心を躍らせ揺さぶる奇跡のコラボレーションで紡がれる映画『怪物』。
出演は、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子ら変幻自在な演技で観る者を圧倒する実力派と、二人の少年を瑞々しくかつ情感豊かに演じる黒川想矢と柊木陽太。その他、高畑充希、角田晃広、中村獅童など多彩な豪華キャストと、まさに怪物級の才能が一堂に集結した。
《STORY》
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した――。
キャスト:安藤サクラ 永山瑛太 黒川想矢 柊木陽太 高畑充希 角田晃広 中村獅童 / 田中裕子
監督・編集:是枝裕和『万引き家族』
脚本:坂元裕二『花束みたいな恋をした』
音楽:坂本龍一『レヴェナント:蘇えりし者』
企画・プロデュース:川村元気 山田兼司
製作:東宝、ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.、分福
配給:東宝 ギャガ
©2023「怪物」製作委員会
公式サイト:gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
公式Twitter:@KaibutsuMovie
公式instagram:@kaibutsumovie
2023年6月2日(金) 全国ロードショー
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