日下このみ

【インタビュー】元NMB48日下このみ「アイドルを目ざす子たちにダンスをしっかり指導していきたい」

NMB48在籍時代にグループ曲を振り付けるという48グループ初の試みを自ら挑んだ日下このみ。NMB48卒業後、2年間のブランクを経て、#ババババンビや高嶺のなでしこなどでの振付師として本格始動した彼女に、幼い頃から持っていたという振り付けへの情熱と今の活動から今後の抱負までを伺った。

日下このみ インタビュー&撮り下ろしフォト

■小学生の時から振り付けを考えるのが好きだった

-そもそものお話から伺いますが、NMB48在籍時代、振り付けをやりたいと思われたきっかけは?

日下このみ
振り付けは小学1、2年生くらいから興味を持っていて、ダンスを習うんじゃなくて自分で作りたいって思ったのがきっかけです。

日下このみ

日下このみ

-そんな小さな頃から?

日下このみ
はい。ダンスは教えられるんじゃなくて、自分の好きに踊りたいという感覚がダンスを習う前からありまし
た。

-なるほど。では、子どもながらにも、自分ならこう踊りたいというアイディアが湧いてきた感じでしょうか?

日下このみ
はい。そもそもピアノを習いたいと思って買ってもらった電子ピアノ なんですが、伴奏機能がある機種だったので、それで音楽を自動演奏させながら振り付けを作っていました。内蔵されている曲に行進曲が多かっ たんですが、100円ショップで売っている突っ張り棒をステッキ代わりにとか、そういう小物を使った振り付けを作ったりすることが好きでした。振り返って冷静に考えたら変人ですね(笑)

-決して変人ではないですが(笑)、今の活躍の片鱗が幼い頃から既にあったということですね。ということは、NMB48に加入した時もご自身の中では振り付けを作りたいという想いはあったのでしょうか?

日下このみ
どこかにはありましたが、デビュー直後はグループ内の人気序列が下だったので、「まずはこれをあげないといけないな」と思って、そこに3年ぐらいは奮闘していて、自分で振り付けというところへの意識はあまりありませんでした。
そして、ある程度注目していただけるようになってきた時に、「次に何をしたいか?」って考えると、振り付けだったんです。
でもその当時の48グループは、メンバー自身が何かを作るということはあまりやらない空気感だったので、「振り付けを自分で作ってみたいです」って言ったんですけど、「それは振付師の仕事だからメンバーがやることではない」という話になりました。でも「私はこれをやりたい」ってずっと言い続けてはいました(笑)

■いざやるとなったら急にビビって怖くなった(笑)

-そんな時に「AKB48のオールナイトニッポン」に出演したことがすべての始まりになったんですよね?

日下このみ
はい。番組の中で、「次の目標となる夢は?」ということを話すコーナーがあったので、その時に「次にや りたいことは振り付けです。裏方の仕事ですが、もともと好きなんです。」と言いました。そうしたら、番組を聞いてくださっていた秋元康先生が、「じゃぁ、次のシングルのカップリング(「心の文字を書け!」)は日下振り付けで」と言っていただいたんです。

-放送中に「振り付けをやりたい」って発言されたのは、最初からそのつもりで?

日下このみ
はい。「これを言ったらいけるかもしれへん。世間に広まったらこっちのもんやろ」ってあらかじめ心のな
かで準備していました(笑)
なんとか実現にこじつけられたら、あとは結果を残せばいいんやって思って。

-いざやると決まった時の気持ちは?

日下このみ
めっちゃやりたい!って言ってたのに、いざやるとなったら急にビビってきました(笑)「やばい、やばい!ほんまに叶ってしまった。果たして私はできるのか?」って。
今までは、この曲にはこういう振り付けがあったらいいなって空想の世界での一人遊びだったんですけど、それをメンバー16人の立ち位置を考えながら実際の構成を考えなくてはならないと冷静に思った時に、めっちゃ怖くなってきました(笑)
「できるのかな?でも自分で言ったことやしやらな!」と自分を奮い立たせながら取り組みました。

-実際「心の文字を書け!」ではどのようにして振り付けが出来上がっていったんですか?

日下このみ
まずはMVの撮影用にサビの部分だけ振り付けを考えれば良かったんですが、MVの曲と歌詞が決まったのは撮影の前夜。そこから徹夜で振り付けを考えないといけなかったので、精神的には追い込まれました。

日下このみ

■みるきーさん(渡辺美優紀)や、さやかさん(山本彩)にも「そこはちょっと違う」

-同じグループメンバーに振り付けるというのはどんな感じでしたか?

日下このみ
その当時、大先輩も一緒にいるチームでの振り付けだったんですけど、そういうところは私はあまり緊張しないタイプなので、「そこはちょっと違います」と大先輩にも言っちゃったりしてました(笑)

-ちなみに例えばどなたに?

日下このみ
みるきーさん(渡辺美優紀)やさやかさん(山本彩)とかでした。
でもありがたいことに、先輩も優しいし、他のメンバーも「いいやん、いいやん!」って乗り気でやってくださったので、とても恵まれていました。

-最初の振り付けの人仕事を終えてみて、どういうお気持ちでしたか?

日下このみ
絶対に次もやりたい!という気持ちになっていました。クオリティー的には、自分の中では次はこうしなければという課題だらけだったので、ここで終わるのは良くない、次に繋げなきゃと思って。
で、すぐにマネージャーさんに「次もやりたいです」とすぐに言ったところ、「いや、次は曲もまだ決まってないので分かりませんね」と言われました。

-ちょっと前のめりだったんですね(笑)

日下このみ
はい、やりたすぎて(笑)

-人への振り付けの教え方はどのように学ばれていきましたか?

日下このみ
今振り返ると、NMB48で最初に振り付けた時は、教え方としてはぜんぜんわかっていないペーペーすぎました。
振り付けは全体の構成を作って、それをステージで見せるためのクオリティーに仕上げないといけないというプレッシャーだけがあって、教え方についてはすごい下手くそでひどかったと思います。

-なるほど、ではその頃はメンバーの協力にも大いに助けられたということですね。

日下このみ
ほんとにそうです。この時は振り付けを完成させる締め切りまでの時間も短かく、徹夜で作らないといけないほどだったので、それに追われすぎたところがありました。
いただいた楽曲に対してどういう表現ができるか、時間が無い中、妥協したくないところと、妥協せざるを得ないところとのバランスを取りながら進めるということを、NMB48時代はやっていました。

日下このみ

■「こんなにも無力な私って何なんだ?」

-そうして、NMB48時代も何曲も振り付けされる中、2019年にNMB48を卒業されました。それから振り付け師として活躍するようになるまではどのように過ごされていましたか?

日下このみ
病みまくりでした(笑)グループを卒業してからは、どこかの事務所に所属するということはあまり考えていなくて、いったん自分自身で何ができるか考えてみようと思ったんです。
でも、実際は何もできず、「こんなにも無力な私って何なんだ?」っていうゾーンに入ってしまった んです。そういう中で、熱海で自然に触れつつ、住み込みで旅館のアルバイトをしたり、そういうことをしながら自分ができることを2年ほど模索していました。

-自分を模索というのは、振付師という軸は変わらず?

日下このみ
そうです。ダンスの振付とダンスの仕事をするためにどうすればいいかを考えていました。ダンス以外のことをしようという考えは無かったです。
そして、ソロの子や、元メンバーのアイドルグループの振り付けとか、単発で仕事をいただけるようになり、2021年の11月に、ゼロイチファミリアさんとお仕事をさせてもらえるようになって、本格的に振付師としての仕事をスタートさせました。

#ババババンビ

#ババババンビ レッスン風景 (C)#ババババンビ製作委員会

高嶺のなでしこ レッスン風景

高嶺のなでしこ レッスン風景

■振り付けのアイディアの源泉は自分の時間を大切にすること。

-振り付けとひとことで言ってもとても奥が深いんだろうなと素人ながら想像しますが、日下さんは、ふだん、振り付けに対してどういう取り組みをされていますか?

日下このみ
自分時間を大切にするようにしています。部屋の中にこもっていてもアイディアは浮かばないことが多いので、時間が無くても公園に行って、サンドイッチを食べたり、映画や舞台を観たり、目や耳からいろんな雰囲気を取り込まないと新しいことは生まれないので、常にリラックスすることと何かを見に行くようにしています。

-例えば映画の中に登場するダンスなどもチェックするという感じでしょうか?

日下このみ
そうです。たとえばディズニー映画などのファンタジーの世界とか、キャラクターたちの可愛い動きをチェックしたり、ミュージカル映画だと、ダンスのワンシーンでの、「今のペア振りめっちゃいい」とか「右端に映っている人がいい」とか、そういうのを逐一メモします。そういうことが積み重なって、新しいアイディアに繋がっていきます。

-ミュージカル映画と言えば、少し前には『ラ・ラ・ランド』がとても注目されましたし、昨年は『ウエスト・サイド・ストーリー』もリメイクされましたね。

日下このみ
カッコイイ作品ですよね。私はSHOWが好きなんです。

-私、個人的にPerfumeが好きなんですが、MIKIKOさんの振り付けって日下さんからご覧になっていかがですか?

日下このみ
すごいです!!映画『ちはやふる』の主題歌の「FLASH」の振り付けは特にかっこよくて好きです!
MIKIKOさんの振り付けを拝見していると、これまでは形として無かったものをガッツリ1から 作られているように感じます。

日下このみ

■ロサンゼルスで“パッション”を学んできたい!

-オフの日はどんなことをして過ごすのがお好きですか?

日下このみ
自然がいっぱいのところでボーッとするのが好きで、さっきも言いましたが、広い公園にひとりで行くのが好きです。
あとは、こじんまりとしたお店に一人で飲みに行ったりとか、一人時間が好きですね(笑)

-そういう時間で一人で妄想している中で、新しいアイディアが浮かんでくるということですね。

日下このみ
そうなんです。

-近々短期のダンス留学されるとか?

日下このみ
ロサンゼルスに行ってきます。ロサンゼルスのダンスのスタジオに通って、様々な人種の方のいろんなダンスの種類を見て、“パッション(情熱)”を学びたいと思っています。ダンス、 振り付けはもちろんですが、日本では感じられないエネルギーや気持ちの外への出し方、海外の方ならではの“パッション”を直接感じ取ってきたいです。

-そういうことも踏まえて、ダンスの取り組みの今後の抱負は?

日下このみ
今はダンスの指導をさせてもらうことが多くなっている中、アイドルになりたいと思っている子が増えていると感じています。そこは私が濃く伝えられる分野なので、既にアイドルとして活躍されている方々はもちろん、これからアイドルを目ざす子たちにも、しっかり指導をできるようないい先生になりたいです。

日下このみ

■撮り下ろしフォトギャラリー

[ヘアメイク:小田愛永/インタビュー・写真:三平准太郎]

日下このみ(くさか このみ)プロフィール
元NMB48。現在 振付師・パフォーマンス指導。
幼少期からダンスを始め、2012年 アイドルグループNMB48としてデビュー。
NMB48劇場公演、東京ドーム、日本武道館、大阪城ホールなど様々なステージに立つ。
また選抜メンバーとして紅白歌合戦などの音楽番組にも多数出演。
個人の活動では、AKB48グループ初となるメンバーによる楽曲の振り付けを担当し、コンサートの構成、演出なども手掛ける。2019年 約7年の活動を経てNMB48を卒業。
現在は、振付師として、アイドル・芸人などの楽曲の振り付けを行なっている。
また自身の経験を生かして、アイドルグループのパフォーマンス指導も数多く担当。

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