河合優実

【インタビュー&撮り下ろしフォト】河合優実「“考えることが役者の仕事”という前提の監督でした」

映画『偽りのないhappy end』(公開中)にて、主人公のエイミの妹・ユウを演じた河合優実。今や多くの映画作品に引っ張りだこの彼女が俳優デビュー間もない頃に参加した本作のことについて振り返ってもらった。

映画『偽りのないhappy end』は、園監督に師事してきた松尾大輔が、満を持して、長編映画監督デビュー。
田舎で一人で暮らしていた妹ユウ(演:河合優実)が、東京で自分と一緒に住み始めた途端に行方不明になってしまったエイミ(演:鳴海唯)と、同じく妹が行方不明のヒヨリ(演:仲万美)が、共に犯人を捜すミステリーをベースに、姉二人の心の揺れを丁寧に描く。

河合優実 インタビュー&撮り下ろしフォト

■不思議なタイトルの作品

-脚本を読んだ時の最初の印象は?

河合優実
台本を頂いたのは 2019 年で、ユウをやると決まってからでした。ユウに肩入れしながらお姉ちゃんのエイミ(演:鳴海唯)との物語だと思って読み始めたのですが、2人の久しぶりの交流が描かれたあとユウは失踪してしまい、思わぬ形でいろんな人たちが登場して絡み合っていったので、その話の広がり方が印象的でした。

河合優実

河合優実

-完成した作品を観ていかがでしたか?

河合優実
物語の内容は知っているのにその展開に驚かされましたし、現場ではほぼ鳴海さんとしかお会いしてなかったので、他のキャストの方々の役の演じ方を特に楽しんで観ました。

-タイトルの『偽りのないhappy end』について、作品を観る者が考えさせられる内容ですね。

河合優実
不思議なタイトルに感じましたが、エンドロールが終わるところまで作品を観ると、松尾監督にはこのように世界が見えているのかと腑に落ちる部分もありました。

河合優実

-河合さんが演じられたユウとはどういう女性だと解釈されましたか?

河合優実
いろいろと自分の頭の中で考えますが、それを人にわかってもらえないことも理解している。人と人は分かり合えないんだということを幼いうちに悟った子だと思います。 多くの人はそういうことに折り合いをつけて生きていくけど、ユウはそれができない不器用さや弱さがある子で、壁を築きながら生きている。最後の砦として肉親であるお姉ちゃんにだけは期待していたけど・・・と解釈しました。

-ユウは、姉のエイミに対してどういう思いを持っていたのでしょう?

河合優実
お姉ちゃんが(上京して)側にいなくなったことに寂しさを感じて、それがその後に起きることの端を発してるのかなと思います。

偽りのない happy end

河合優実/鳴海唯(場面写真) © 2020 daisuke matsuo

■松尾監督はとにかく答えをくれない

-エイミとユウの姉妹がボートに乗っているシーンで、エイミは「ユウも東京に来て新しい人生を始めなよ」と上京を薦めます。劇中、同じシーンが冒頭と、中盤は回想シーンとして2度登場しますが、良く観ると、ユウの表情やセリフの言い方が少し違うのと、実は英語字幕も違っています。このあたりは、松尾監督からどういう演出がありましたか?

河合優実
このシーンは、手の動かし方や目線まで細かいところを監督と詰めましたし、何度も撮り直しました。その2つのシーンは別カットが使われていると思いますが、監督が編集段階でどういう意図でそうされたのかは聞いていません。

-なるほど、それはこの作品を観る者に委ねられているところですね。

河合優実
そうだと思います。映画の字幕については最近興味深く思っていて、まず前提として役者の意図から離れたところで、後から付くものなんです。別の作品の話になりますが、監督と字幕担当の翻訳の方とのやり取りのファイルを見たことがあって、「こんな緻密なやり取りをしてるんだ」と驚いたことがありました。
そして台詞が役者の解釈とは違う言葉に訳される事もある。特に日本語は曖昧ですし。外国映画を字幕で観るのと母国語の映画を観ることはかなり違う体験かなと感じています。しょうがないことなんですけど。

-河合さんから見て、松尾監督の印象を教えてください。

河合優実
松尾さんはとにかく答えをくれない監督なんです。私にとっては(笑)
その時の私の状態もあったかもしれませんが、絶対的な答えがあってそれに辿り着いてほしいのか、それとも松尾さんの中でも決まりきっていない部分を一緒に探るということなのか、それすら迷ってしまい。
でも、ヒントはくれるし、違うところは絶対に違うって言ってくれるけど、考えることが役者の仕事でしょっていう前提に立つ監督さんだったなと思います。
作品としても役柄としても難しく感じていました。

-監督が考えることと、役者が考えることのギャップを怖いと思う人もいるでしょうしね。

河合優実
そうですね。監督と全部すり合わせたい人もいますし、敢えてしないという人もいるだろうし、松尾さんは敢えてしないタイプなのかなぁ?
なので、撮影している時は、松尾さんを探っているような感覚でした。「監督の正体を見たい!」みたいな(笑)

-それを伺って思ったのは、河合さんが出演された『由字子の天秤』の春本雄二郎監督もそれに近いタイプでしょうか?すなわち自分の中に答えはあるけど敢えて言わない。

河合優実
春本さんは自分の中で答えは絶対にあるんですけど、意地悪で教えないんです(笑)その不安定な状態を撮りたいんだと思います。

河合優実

■大学来の友人でもある見上愛との共演について

-鳴海唯さん、見上愛さんそれぞれと渋谷の街での共演シーンがありますが、撮影の思い出やエピソードがあれば教えてください。

河合優実
忘れられないのが、渋谷の街を走るシーンです。街中の撮影なので、撮り直しが何度もできるわけじゃないのに、思いっきり見上愛のスカートが脱げてしまったんです。監督も「こんなハプニングは見たことない。スカートがめくれるじゃなくて脱げるなん て・・・」ってなって(笑)
見上さんとは、元から仲が良かったので、共演できたのは嬉しかったです。

偽りのない happy end

見上愛/河合優実(場面写真) © 2020 daisuke matsuo

-河合さんと見上さんは高校卒業後、同じ学校でお芝居の勉強をされましたよね?

河合優実
はい。同じ大学でしたし、「いつか一緒にお芝居できたらいいね」という話もしていました。 そうしたら、2人が事務所に入った年にすぐこの『偽りのない happy end』で共演する巡り合わせが実現したんです。 (撮影から)2年ごしでこの作品をお互い観て、「ウチらダメだわ~」って、自己満の自己批評会をしました(笑)

■「止める人がいないのでずっと歌い続けてます」

-河合さんのプロフィールに「ひとりミュージカル」が好きとありますが、具体的にはどんなことなのでしょう?

河合優実
好きなミュージカル作品のサントラを流して、一人で歌って踊るだけの趣味です(笑)
歌モノを流しているとずっと歌っちゃうんです。家族も好きなので怒られないし、止められないので延々と歌い続けています(笑)

-役者としての表現力を養う目的も?

河合優実
そんなつもりではまったくないんですけど(笑)、結果的に繋がっているとは思います。

-「ひとりミュージカル」以外に、オフの日はどんなことをして過ごされるのが好きですか?

河合優実
家でゴロゴロして映画を観たり、映画館に行くこともあります。最近は、読書やランニングもしています。
コロナ禍の自粛期間中で時間がある時は、友だちの似顔絵を描いたりもしてましたね。

■最後にメッセージ

-最後に、『偽りのないhappy end』について、河合さんが思う見どころと共に、読者へのメッセージをお願いします。

河合優実
いろんな人間が登場しますが、それぞれが抱えているものに対して一生懸命生きています。映画をご覧になる方が、登場する誰かに自分の気持の置きどころを見つけてもらえたら面白いんじゃないかなと思います。

河合優実

■撮り下ろしフォトギャラリー

[写真・インタビュー:金田一元/ヘアメイク:渡邊夏生/スタイリスト:李靖華/インナートップス:MSSHEEP ¥27,500問い合わせ先info@mssheep.com)]

河合優実(Yuumi Kawai)プロフィール
2000年12月19日生まれ。東京都出身。(20歳/鈍牛倶楽部)
2019年デビュー後、映画、ドラマ、舞台、MV、CM、モデルなど多岐に渡り活躍。
主な出演作に、映画『佐々木、イン、マイマイン』(20/内山拓也監督)、『サマーフィルムにのって』(20/松本壮史監督)、『由字子の天秤』(20/春本雄二郎監督、2022年公開予定作『ちょっと思い出しただけ』(2/11公開、松居大悟監督)『愛なのに』(2/25公開、城定秀夫監督、今泉力哉脚本)がある。

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映画『偽りのないhappy end』

INTRODUCTION
2011年の『ヒミズ』から10年間、園子温監督のほとんどの作品の助監督を務め、園監督に師事してきた松尾大輔が、満を持して、長編映画監督デビュー。田舎で一人で暮らしていた妹が東京で自分と一緒に住み始めた途端に行方不明になってしまったエイミと、同じく妹が行方不明のヒヨリが、共に犯人を捜すミステリーをベースに、姉二人の心の揺れを丁寧に描く。

主演は、NHK朝の連続テレビ小説 「なつぞら」でドラマデビューし、CMを中心に活躍中の鳴海唯と、マドンナのバックダンサーとしてワールドツアーに約1年半同行し、舞台Rock Opera「R&J」ではヒロイン役を演じた仲万美。
エイミの妹・ユウ役を、『由宇子の天秤』で注目を集める河合優実がミステリアスに演じる他、エイミが滋賀の湖で出会う少女・アカリ役に「青のSP〜学校内警察・嶋田隆平〜」の田畑志真、エイミの婚約者・タカシ役に『横須賀綺譚』の小林竜樹、風俗店の古株のボーイシンジ役に『SR サイタマノラッパー』シリーズの奥野瑛太、向井刑事役に『AWAKE』の川島潤哉、ヒヨリの妹が家庭教師をやっていた少女・アオイ役に本作が映画デビューとなる三島あよな、ユウの友達・マイ役に、「きれいのくに」の見上愛と、今後の更なる活躍が期待される面々が集結!
アオイの母・ヨシエ役でベテランの馬渕英里何、風俗店の店長役で『ケンとカズ』のカトウシンスケが脇を固める。

大都会・東京と、美しい琵琶湖がある滋賀を舞台に、いなくなって初めて自分は妹のことを何も知らなかったと気づき、必死に真実を暴こうとする姉二人が辿り着く先は…

STORY
中学を卒業してすぐに地元滋賀を離れ、ずっと東京に住むエイミ(鳴海唯)は、母親が亡くなった後も一人で滋賀の田舎で暮らしている妹・ユウ(河合優実)に、「東京で新しい人生を始めない?」と誘う。はじめは拒んでいたユウだがなぜか急に東京に来ることを受け入れ、一緒に暮らし始めるが、引っ越してきて早々、ユウは行方不明に…
そんな折、エイミは同じく妹が行方不明になっているヒヨリ(仲万美)と出会う。エイミに、地元の琵琶湖で若い女性の遺体が見つかったと警察から連絡がくるが、見つかった遺体はユウではなく、なぜかヒヨリの妹だった。再び巡り合ったエイミとヒヨリは、共に犯人を捜すことになるが思わぬ方向へ…

出演:
鳴海唯  仲万美
河合優実  田畑志真 小林竜樹 奥野瑛太 川島潤哉 三島あよな 見上愛
メドウズ舞良 藤井千帆 野村啓介 橋本一郎 谷風作 永井ちひろ 鈴木まりこ
古賀勇希 安田博紀 原知也 宮倉佳也 笹川椛音 白石優愛 土屋直子
馬渕英里何 カトウシンスケ

監督・脚本:松尾大輔
撮影:川野由加里 照明:赤塚洋介 録音:阿部茂
制作担当:興津香織 助監督:小泉宗仁 監督助手:石塚礼/安藤梓 監督補助:廣野博友 特別協力:匠司翔
キャスティング:杉山麻衣 バレエ振付・指導:吉野菜々子
音楽プロデューサー:菊地智敦 音楽:古屋沙樹 編集:和田剛 音響効果:伊藤進一
配給・宣伝:アルミ―ド
2020年/日本/カラー/16:9/5.1CH/97分
© 2020 daisuke matsuo
公式サイト:itsuwarinonai-movie.com
Twitter:https://twitter.com/itsuwarinonai
Facebook:https://www.facebook.com/itsuwarinonai

予告篇

YouTube player

12月17日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

偽りのないhappy end

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