ピサロ

渡辺謙×宮沢氷魚 舞台『ピサロ』稽古場レポート

5月15日(土)から、主演・渡辺謙、共演・宮沢氷魚で上演される舞台『ピサロ』より、公演に向けてキャストスタッフ一同、新型コロナウイルス感染予防対策を講じ、一丸となって全力投球している稽古場の様子(稽古場レポート)と写真が届いた。

なお、本公演の経緯や概要については、稽古場レポートの後に掲載。

稽古場レポート

■再び動き出した圧巻の歴史劇、リベンジ公演へ

昨年、45回の予定だった公演がわずか10回で止まってしまった時、すぐさま「再演を、リベンジ公演をやろう」と声を上げたのは渡辺謙だった。その願いが実現して4月、大階段のセットが組まれた稽古場に、総勢29名のキャストが結集。スペイン将軍ピサロに扮する渡辺とインカ王アタウアルパ役の宮沢氷魚、そして栗原英雄、大鶴佐助、首藤康之、外山誠二、長谷川初範ら、初演をともに立ち上げた懐かしい顔が揃い、一部新メンバーを迎えての再始動である。
演出席には、この状況下で幸いにも来日を果たせた演出のウィル・タケット、演出助手兼振付のシドニー・アファンデル=フィリップスの姿もあった。稽古場の隅々で黙々とウォーミングアップや台詞を反芻する俳優たちの様子からも、再演にかけるチーム全体の並々ならぬ熱意が伝わって来る。

ピサロ

少数の兵を率いて、大国インカ帝国を征服した老将軍ピサロの物語。この日の稽古は、戦いによる大殺戮が繰り広げられた一幕ラスト、その鮮烈な余韻を残しての二幕頭からスタートした。回想する老マルティン(外山)が見つめるなか、おぞましい光景を見たことに打ちひしがれ、嘔吐する小姓マルティン(大鶴)。
副隊長デ・ソト(栗原)がそんな彼を励ますところに、ピサロの一喝が刺さる。渡辺の険しい眼光、雷鳴のような一声に稽古場中の息が止まった瞬間、長身のタケットが立ち上がって芝居を止め、一気に緊張が解かれた。穏やかに、丁寧に指示するタケットを、大鶴はしっかり見つめて何度もうなずく。囚われの身となったアタウアルパとして大階段の上に座っていた宮沢が、二人の近くまで降りて来て、そのやりとりを集中して聞いていたのが印象的だった。

ピサロ

続いては、ピサロが初めてアタウアルパと対話するシーンへ。黄金を与える代わりに自由の身を要求するアタウアルパと、デ・ソトの反対を押し切ってその取引に応じるピサロ。黄金よりも太陽の子アタウアルパに惹かれ始めているピサロの心の動きを、渡辺が鋭利な視線を放って豪気に、かつ俊敏に、多彩な表現で魅せていく。
驚くのは宮沢が醸し出す、肝の据わった安定感だ。初演の舞台で見せた神々しいほどの立ち姿、透明感ある毅然とした美に、さらに太い芯が備わったようだ。名優・渡辺謙と対峙するに引けを取らない強靭さが頼もしく、ピサロとアタウアルパ、両者の関係から浮かび上がる人間愛のより深い哀切を期待せずにはいられない。

ピサロ

ピサロ

英国ロイヤルバレエ団で長く活躍したタケットが指揮する、群舞の力強くも洗練された動きにも注目だ。
物語の流れに溶け込むようにして、首藤ほかキャスト陣が卓越した身体性を発揮し、場のイメージを増幅させていく。この意気あふれる稽古場の風景に、美術、衣裳、音響、照明等の効果が加わり、圧巻の歴史ドラマが再び立ち上がろうとしている。劇場でこそ味わえる演劇の力、この衝撃を、今度こそ多くの人に受け止めてもらいたい。

ピサロ

『ピサロ』について

『ピサロ(原題:ザ・ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン)』は、16世紀、167人の寄せ集めの兵を率いて、2400万人のインカ帝国を征服した、成り上がりのスペインの将軍ピサロの物語。『アマデウス』、『エクウス』などで、トニー賞最優秀作品賞、ニューヨーク劇作批評家賞など数多くの賞を受賞した英国を代表する劇作家ピーター・シェーファーによる傑作戯曲だ。
日本初演は36年前の1985年PARCO劇場。山﨑努がピサロ、当時まだ無名だった渡辺謙がインカ帝国の王・アタウアルパを演じ、観客に鮮烈な印象を残した。

昨年、渡辺謙は、自身に「俳優を一生の仕事とする」覚悟を決めさせる一本となった本戯曲に、タイトルロールとして帰還。しかも年齢が60歳、新生PARCO劇場のオープニング・シリーズ第一弾ということで、渡辺謙にとってもPARCO劇場にとっても「Reborn」ともいうべき節目の上演になった。渡辺謙のピサロは、スケールと情熱を湛え、人間存在の深みを共感させる素晴らしいものだった。
演出は、英国ロイヤル・バレエで長く活躍し、『ウィンド・イン・ザ・ウィローズ』で2014年ローレンス・オリヴィエ賞ベスト・エンタテイメント賞を受賞したウィル・タケット。その演出は、ダイナミックでかつ美しく、異文化の衝突の奥にある人間の内面の葛藤や孤独、存在の深淵までを鮮やかに描き出した。
そして、ピサロに対峙する太陽の子・インカ王アタウアルパ役を演じたのは宮沢氷魚。2018年、三島由紀夫最後の長編小説を舞台化した『豊饒の海』でも、進境著しい演技をみせた宮沢氷魚が挑んだアタウアルパは、渡辺謙に伍して譲らないと評され、その気品と風格が舞台に輝きをもたらした。

1年後の本年5月、渡辺謙、宮沢氷魚に加え、栗原英雄、大鶴佐助、長谷川初範、外山誠二ら実力ある俳優陣が再び結集。待望の『ピサロ』の幕が上がる。
老境の将軍ピサロが探し続け、手に入れたものは何だったのか。インカ王との対決は彼に何をもたらしたのか。人類史上止むことのない文化・民族の争いを背景に、人間存在の本質に迫る傑作『ピサロ』。今の我々に響く傑作のアンコール上演に期待だ。

PARCO PRODUCE 2021『ピサロ』

(原題:The Royal Hunt of The Sun)

あらすじ
西暦1531年。齢60を超えた粗野な成り上がりの将軍ピサロは、彼の人生の最後の遠征となるインカ征服への準備を始めた。
集まった兵士は一攫千金を夢見る平民たち。
そんな傭兵を含む167名を率いて、ピサロはペルー征服へと出発した。
6週間をかけ、森をぬけ、2週間かけてアンデスを超える過酷な行軍の末に、数千人のインディオを虐殺し、自らを太陽の子と謳うインカの王アタウアルパを生け捕りにする。
ピサロは、アタウアルパを釈放する代償として、莫大な黄金を要求する。
そして、莫大な黄金を手にしたピサロとスペイン人たちは・・・・

日程:2021年5月15日(土)~6月6日(日)
会場:PARCO劇場

作:ピーター・シェーファー 翻訳:伊丹十三 演出:ウィル・タケット

出演:渡辺謙
宮沢氷魚 栗原英雄 大鶴佐助 首藤康之 菊池均也
浅野雅博 窪塚俊介 小澤雄太 金井良信 下総源太朗
竹口龍茶 松井ショウキ 薄平広樹 中西良介 渡部又吁 渡辺翔
広島光 羽鳥翔太 萩原亮介 加藤貴彦 鶴家一仁
王下貴司 前田悟 佐藤マリン 鈴木奈菜 宝川璃緒
外山誠二 長谷川初範

企画・製作:パルコ

前売開始=2021年3月27日(土)
入場料金=13,000円(全席指定・税込) U-25チケット=6,000円(観劇時25歳以下対象、要身分証明証)
(当日指定席券引換/「パルステ!」、チケットぴあにて前売販売のみの取扱い)

□チケット取扱い ※各プレイガイドでのチケット取扱いは先行販売、一般発売ともWebのみ。
PARCO STAGE スマホアプリ「パルステ!」 パルステ で検索。
ローソンチケット:https://l-tike.com/pizarro/ (Lコード:33313)
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/pizarro/ (Pコード:505-452)
イープラス:https://eplus.jp/pizarro/

お問合せ=パルコステージ 03-3477-5858(時間短縮営業中)
https://stage.parco.jp/program/pizarro2021

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