【木下ほうかインタビュー】映画撮影現場で裏切られることはよくあるんですよ。
文豪・江戸川乱歩の短編小説を現代にアレンジした「赤い部屋」シリーズ第2弾となる映画『裸の天使 赤い部屋』(4/2公開)に主演する木下ほうか。バイプレーヤーとして唯一無二の個性を発揮する彼にインタビュー。本作出演のこと、そして芸能界の裏話を赤裸々に語ってくれた。
本作の原作は、傑作短編「畸形の天女」を映画化。不思議な少女に出会った会社社長が体験する愛欲地獄を描くエロティック・サスペンス。
木下ほうかは、愛欲に落ちていく会社社長をストイックな演技で演じる。相手役の不思議でどこか危うさを漂わせる少女・文子を演じるのは、2015年、東海テレビ、ソニー・ミュージックエンタテインメント、吉本興業によるオーディション番組「ザ・ラストヒロイン~ワルキューレの審判~」で15万人の中からラストヒロインに選ばれた中山来未。本作では、一糸まとわぬオールヌードで、木下ほうかとの愛欲シーンを見事に演じきっている。
『裸の天使 赤い部屋』は、4月2日(金)よりシネマート新宿にて2週間限定レイトショーのほか、名古屋シネマスコーレにて4月下旬公開、大阪シアターセブンでの上映も決定している。
木下ほうかインタビュー
■最初の印象は悪かったけど・・・
-本作出演オファーを受けようと思われたポイントは?
木下ほうか
ふだん、憎まれ役、イヤミな役が多いですが、それからすると穏やかな役ですし、ましてや恋愛ものですしね。
それに、窪田将治監督とは何度もお仕事させていただいて信頼がありましたから断る理由が無いです。
-撮影にあたって窪田監督とはどういうお話を?
木下ほうか
いくつか、シナリオについて意見はしましたけど、それよりも相手役のヒロインがいったい誰なのか。それに一番関心ありましたし不安でもありました。
-そのヒロイン役の中山来未さんの魅力と、中山さんと話されて印象に残ったことは?
木下ほうか
第一印象は悪かったんです。緊張しているせいか目も合わせないし、当日リハーサルした時、演技もあんまり安定していませんでしたし。
その後、「キスシーンがあるけど、普通のキスシーンじゃなくて、ベロベロいくよ。(台本に)書いていること以上のことが起きるよ」って、一種のワナをかけてみたんですが、彼女は「やれる」と。でもその段階では僕はまだ疑ってました。なぜなら今まで同じようなパターンで何度か裏切られましたから。
そしたら、数日後に、本人が自主的にリハーサルしたいと言っているという連絡がきたんです。しかも本人が自腹で稽古場をおさえて。
意欲はとても感じましたし、そして驚くことに現場に入ったら、まるっきり不安が解消することになったんです。
こういう役をやる時って、女優はたいてい不安がるものです。制限も多いし、いろいろめんどくさいんですけど、この人はそういうのがまったくなくて、むしろどっからでもかかってこいみたいなところがあって。
ですので、現場はすごいスムーズでしたし、特別に気を使わずとも、元気にやってくれましたしね、初対面とのギャップにビックリしました。
-中山さんはオーディション番組「ザ・ラストヒロイン~ワルキューレの審判~」で15万人の中からラストヒロインに選ばれたという実績のある方ですね。
木下ほうか
そのようですね。オーディションの時は19歳だったそうですが、やっぱりそのへんの強さが備わっている人なかもしれません。
あと、中山さんが面白いのは価値観が独特で、彼女と同世代の他の方とは全然違うものの見方をしているなって思いましたね。何か食べに行こうってなった時に、ゲテモノを食べたいと言ってきたりとか(笑)
ただ、ふだんは人見知りなのか無口なんだけど、いざカチンコが鳴ると、コロっと変わるところを見ると、(女優に)向いているんでしょうね。この世界、そういう人はけっこう多いですしね。
-なぜ最初はヒロイン役に対してそこまで不安があったんでしょうか?
木下ほうか
ベッドシーンやヌードシーンがある作品の女優の裏切りとか、脱走って、けっこうあるんですよ。もしくは、やれるはずのことをやれないとか。事務所か本人か、その理由はわからないけど。
そういう悲しい話を周りの監督やプロデューサーによく聞きました、僕も体験したことあるんです。
たとえば、ある映画作品でのキスシーン。監督OKが出て終わったと思ったら、なんかザワザワしてる。何?って思ったら監督が来て「すみません、今のシーン、もう1回撮っていいですか?」と。
「さっきOKだったのになんで?」と聞くと、「もうちょっとソフトにしてほしい」と。誰が言ってるのか聞くと、事務所がということで、なんで事務所が作品の演出に口を出してるんだと怒りを覚えましたね。
もうやめて帰る!とも思いましたが、撮影最終日でスタッフもみんな寝てないし、そこで僕が帰ってしまったら台無しになるからそこは抑えましたが、こういうことは悲しいですよね。
そういう話を聞いたり体験したりしてきたから、今作でも最初は中山さんに対して不安があったんです。本人は「やります」って言ったのはムリしてると思ってたんです。
それが、いざ撮影に入るととても前向きに動くし、実際に脱ぎだす時も躊躇なくて、こういうのは実は少ないケースですね。
中山さんは本番に入ると急に変わって、カットがかかると元に戻る。
そういう人ってけっこう多くて、たとえば芸人さんでも面白くて明るい人ほど、普段はとても地味で無口な人も多いから、そういうのに中山さんは似てる気がします。
なので、撮影していく中で、中山さんに対する印象はどんどん良くなりましたし、完成した作品を見て、中山さんで良かったなって思いました。
■僕も進んでやるかも
-本作はエロティック・サスペンスとなってますが、エロティックという切り口で今の日本映画に対して思うところはありますか?
木下ほうか
たとえば欧米の映画って、そういうシーンは当たり前に出てきて、当たり前に丸写しだし、そういうのはすごい憧れます。セックスシーンが無いことが演出の方針ならわかるんですが、何かの力が働いて起きた制限だとしたら歪です。映画は極力自由に作るものだし、残酷なシーンであろうが、差別的なシーンであろうが、なんだっていいはずなのに。そういう意味で言うと、大島渚監督の『愛のコリーダ』のような作品は今は無いですね。
-木下さんが演じられた松永。もしご自分があの状況にいたとしたらどうされてると思いますか?
木下ほうか
私は未婚ですし、松永とは立場は違うけど、でも、一人の男がああいう秘密基地のような別宅を持っていて、そこであのようなことが起きたら、僕だとしたら当然進んでそうすると思います。ただし、相手がそう思わせてくれるほど魅力的じゃないとダメですけどね。
-中山さんが演じられた文子は、どこか危うい印象がある少女ですが、それでも欲望が勝ってしまうと。
木下ほうか
可能性はありますよね。昨今は一番叩かれるパターンですが(笑)
ただ、この映画の面白さは年の差とか、こういう不倫も映画だからこそ大胆にやれる。それをちゃんと演じた中山さんは良いと思っています。
■やらないで後悔するよりは、やって後悔する方がいい
-「痛快TV スカッとジャパン」(フジテレビ系列)でのイヤミ課長が典型的ですが、木下さんご自身の実際の性格とのギャップはどうなんでしょうか?
木下ほうか
たとえば、「いえ、僕は実は優しいんだよ」って自分で言う人って信用できます?
自分の中に無いものは演じられないと思っています。自分の中に、そういう要素が備わっているのか、あるいはそういう知識があるだけなのか、どこかに手がかりがあるはずなんです。そうじゃないと演じられないので。
ただ、幼い頃、僕がよく言われた「人の嫌がることをしちゃダメ。自分も嫌でしょ」っていうことを思って演じてはいます。
-木下さんは実に数多くの作品に出演されてますが、オファーを受ける、受けないの基準みたいなものはありますか?
木下ほうか
監督は誰か。共演者は誰か。台本の内容はどうなのか。報酬はどうなのか。これらのうちどれかひとつでもクリアできたらオファーを受けます。
内容はまだわからなくても、この監督ですと、この人と共演ですと言われて受けることがありますし、逆に監督も共演者もわからない段階だとして、台本の内容だけで決めることもあります。内容が良ければ、ギャラがほとんど出ない学生の自主製作映画を受けることもありますしね。
あるいは、ギャラがとても高いなら、魂を売って出ますし(笑)
いずれにしても、やらないで後悔するよりは、やって後悔する方がいいという考えです。
-チャレンジャーということでしょうか。
木下ほうか
チャレンジと言うとカッコイイけど、好奇心ですね。
■ほうか道
-昨年6月からYouTubeチャンネル「ほうか道」を始められましたが、そのきっかけを教えて下さい。
木下ほうか
テレビ局の仲間が、(コロナ禍で)仕事がヒマだからやりませんか?って声をかけられたのがきっかけです。彼らは当たると見込んでいたようで。
でも、途中から彼らが忙しくなってきて、僕が見捨てられる形になったんです(笑)
でも、撮影は(スマホで)僕一人できるなと思って、無計画ですがその時に思いついたものをやってます。
バイクの修理やツーリングの回が人気ですが、逆に言うとそれ以外の回はぜんぜん(再生回数が)伸びないですね(笑)
最近、GoProを導入したので、今後はそれで撮影した動画もアップする予定です。
■最後にメッセージ
-最後に本作『裸の天使 赤い部屋』の見どころを教えて下さい。
木下ほうか
是非、劇場の大きな画面で我々の性行為を見てほしいです。いずれ配信されたりDVD化されるかもしれませんが、やっぱり劇場で、暗い場所で、大きいスクリーンで見てほしいし、そうじゃないと見えない部分もありますから。そしてなんといっても、中山さんが見どころです。
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出演:木下ほうか / 中山来未 / 柳憂怜 波岡一喜 草野康太 / 仁科貴
原案:江戸川乱歩「畸形の天女」 監督・脚本・編集:窪田将治
エグゼクティブプロデューサー:村上潔 プロデューサー:山口幸彦 宮下昇
製作:キングレコード フェイスエンタテインメント
企画・制作プロダクション:フェイスエンタテインメント
配給:キングレコード 宣伝協力:ブラウニー
(C)2021「裸の天使 赤い部屋」製作委員会
公式サイト:http://hadaka-tenshi-movie.com/
公式ツイッター:@EroticaQueen21
予告編
4/2(金)より シネマート新宿にて 2週間限定レイトショー
名古屋シネマスコーレにて4月下旬公開
大阪シアターセブンにて上映決定!
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