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怒り - 東京国際映画祭

宮﨑あおい「演じていて最後まで気持ちがよくわからなかった」

怒り - 東京国際映画祭

安藤紘平(MC)、宮﨑あおい、李相日(イ・サンイル)監督

11月1日、TOHOシネマズ六本木にて、宮﨑あおいが、李相日(イ・サンイル)監督と共に登壇し、2016年に公開された『怒り』についてのQ&Aイベントを行った。
これは、東京国際映画祭の第30回記念特別企画「Japan Now 銀幕のミューズたち」によるもの。
宮﨑あおいは同作で演じた“愛子”役が自分とは違いすぎて最後までよくわからなかったと答えた。
そんなトークの内容を写真とともにたっぷりとお届けする。
(この日は『ユリイカ』のQ&Aイベントもあり。別途配信予定)

映画『怒り』作品情報
公開年:2016年
出演:宮﨑あおい、広瀬すず、松山ケンイチ、綾野剛、妻夫木聡、森山未來、渡辺謙
監督:李相日(イ・サンイル)

※以下、『怒り』に関するネタバレを含みますのでご留意ください。

ただただカメラを見つめていた

宮﨑あおい
今日はお客様と一緒にいろんな話をして、皆さんの思っていることとか、聞いてみたいこととかに、いろいろ答えられる時間になったらいいなと思います。

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李相日監督
昨年も『怒り』はTIFFで上映して頂いて、森山未来くんと一緒にトークしたんですが、その時はなんとなく殺伐とした雰囲気だったような気がするんですが(苦笑)
今年は宮﨑さんなんで、ものすごく華があっていいなと。明るくいきたいと思います。昨年に引き続きよろしくお願いします。

安藤紘平(MC)
この映画はほんとに何度観ても素晴らしいんですよ。
宮﨑あおいさんの代表的な映画のひとつだと思います。
宮﨑さんの演技は独特の微笑みがあって、最後、田代(松山ケンイチ)が帰ってくる時の、田代に対するわだかまり、最後の最後に裏切りの感情を抱いたことで、微笑みを出せないはずなのに、それを表現したことが役者としてすごいと思いました。

李相日監督
いろんな解釈があると思いますし、愛子はもちろん罪悪感もあると思うんですけど、彼女の心が落ち着いた瞬間なんじゃないかなと思います。

宮﨑あおい
あまり、どういう気持ちだったかは正直覚えてないかもしれないですね。
撮影の時に現場で監督にカメラを見てくださいってことを言われて、でも、どういう気持ちでっていう指示もなかったので、ただただ、カメラを見つめたという感じでした。

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渡辺謙さんとの出会い

客A
宮﨑さんが愛子を演じる前と後で、何かご自身の中で変わったことはありますか?

宮﨑あおい
愛子ちゃんに出会ったっていうことも、きっと何か大きな出会いであったと思うんですけど、それよりも今思うのは、監督やおとうちゃん(渡辺謙)との出会いだったりの方が大きいなと思っています。
渡辺謙さんの存在を感じた現場での2週間とか、監督と現場に入ってからたくさん話しをして、そういうものがすごく大きな財産になっているかなと思います。

過去のことも先のことも考えない

客B
30代の女優宮﨑あおいさんにも期待していますがご自身はいかがですか?

宮﨑あおい
今月、32歳になるんですけれども、年齢は数字(にすぎない)っていうか、
私は、先のことも過去のこともあまり振り返らないタイプなので、今できることをコツコツやっていったら、いい30代になるのかなと思っています。
でも最近は新しいことにどんどんとチャレンジしていければいいなと思っています。
それは仕事の部分でもそうですし、自分が今までやったことのないことに、もっと出会っていきたいなと思っています。

安藤紘平(MC)
先日、大林宣彦監督が、ある女優さんに年齢をたずねたら「演じられる年齢が年齢なんです」と答えたという話を伺いました。
そうしたら、宮﨑さんなら、また16~17歳も演じられそうですよね。

宮﨑あおい
それは怒られます(笑)

李相日監督
『怒り』の撮影中はおいくつだったんですか?
僕はあまり年齢でキャスティングはしないんですけど、宮﨑あおいの口から「チャレンジ」っていう言葉が出るんじゃないですかね、30代というのは。

宮﨑あおい
怖い・・・(笑)

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宮﨑あおい、李相日(イ・サンイル)監督

李相日監督
脅してるわけじゃないんですけど、(宮﨑あおいが)これまで10代20代とやってきた中で、やったことないものってなんだろう?って。
僕も作る側としてやったことのないものってなんだろう?って毎作毎作自分にのしかかってくることなんで、それがより如実に強くなってくる年代じゃないですかね。楽しみです。

難しい演技とは?

客C
『怒り』は泣いている演技が多いですが、笑う演技と、どちらが難しいですか?

宮﨑あおい
お芝居をする中で、難しいことという意味でいいですか?
私は、人を笑わせることがいちばん難しいと思っているので、お芝居のなかで人を笑わせたりとかするのも難しいなと思います。
漫才師の役をやらせていただいことがあるんですけど、それをやった時になんて難しいことなんだろうと思いました。
今回は、“愛子ちゃんが慟哭”って台本には書いてあったんですけど、田代くんが犯人じゃなかったってわかった後のシーンで、カメラが回りながら監督に声をかけられていて、もっともっと!とか、まだまだ!みたいなのを言われながら泣き叫んでいて、あれは忘れられない経験です。

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李相日監督
僕、本番中に声を出すことがけっこうあって(笑)、あとでもちろん(編集で僕の声を)抜いてもらうんですけど。

安藤紘平(MC)
『少年メリケンサック』(2009年)は笑わせてくれましたよね。

宮﨑あおい
あれは難しかったですね。ほんとに。

唐揚げをポン!

客D
『怒り』は難しい役だったと思うんですが、印象に残っているシーンはどれですか?

宮﨑あおい
撮影自体は2週間くらいだったんですけれども、2週間ってこんなに長いんだって思う2週間で、全部がすごく鮮明に記憶に残っている気もするし、なんにも覚えていないような気もするし、どこって選ぶのがとっても難しい作品でした。選べないです。

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李相日監督
じゃ、僕が独断と偏見で言うと、愛子が田代のことを掲示板で見ているシーン。
ここはゾクッとした瞬間。
お父さんが、「愛子なんだから」と言った目が空洞なんだけども、なにか詰まっているような、矛盾するんですけど、ものすごく真実味を感じたので覚えています。

宮﨑あおい
あ!思い出しました!
唐揚げをポンと(田代くんに)投げるところです(笑)

最後までわからなかった“愛子”役

客E
ご自身が、“愛子”の役にピタっとハマった瞬間はいつごろですか?

宮﨑あおい
私はまったく自分は愛子ちゃんと違う人間だと思っていたので、愛子ちゃんが自分の中にいる気がしていなかったので、すごくずっとずっと悩んでいました。
撮影に入る一ヶ月くらい前から、あぁどうしよう、現場に入るのが怖いなとか、なんでやろうと思っちゃったんだろうかとか、ほんとにそういうことを考えるくらい悩みました。わからなさすぎて。
リハーサルをやっても、そこで何かをつかめるという実感もなくて、ただ、お花の髪飾りを前半つけているんですけども、あれを衣装合わせでメイクさんが持ってきてくださった時に、「あ、なんかこういう子なのかな」っていうのは少しありました。
あとは現場に入ってからちょっとずつつかめたのか、それとも最後までつかめなかったのか、そこは自分でもよくわからなかったですね。

李相日監督
いい質問ありがとうございます。
宮﨑さんはいつも「自分とまるで違う」っておっしゃるんですけども、確かにまるで違うというか、生き方とか考え方とかいろんなことが違うんですけど、一番つながっていてほしいところが僕はつながっているって思い込んでいたんでお願いしました
それはたぶん本人が自覚していないからいいことかなとこっちは勝手に思っていることだったりもしています。
俳優さんも一人の人間で、人生を生きて、いろんなことがあって、人によっては後悔することとかを記憶にフタをして考えないようにしたりとか。
でも、人によってはトゲをトゲとしてちゃんと残していく人もいるし、そこの向かい方みたいなところとか。
普通の多くの人だったら、嫌な目にあったりとか、人と揉まれる中で失ってしまいそうなものでも、宮﨑あおいさんは、まだちゃんと持っているのかなと僕は勝手に抱いていました。
なので、そういう意味ではあまり心配していなかったですね。
それよりも一番の問題は、宮﨑あおいが、(現場から)逃げないってことが大事だったんで、千葉から出られないように、撮影現場とホテルにしか行けないようにどうできるかっていうのが皆で考えるって感じでした(笑)

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客F
“愛子”は、ふだんの宮﨑あおいさんとはギャップがあると感じます。
たとえばサンダルをひきずって歩いているシーンの動きとか。
演じられていて意識していたことは?

宮﨑あおい
ないです。意識してどうしようとかこういう歩き方をしようって考えた部分はたぶん一切無いかなと思います。
サンダルは用意してくださったのを履いて、用意してくださったピンク色のジャージの衣装を着て、花飾りをつけると、自然とああいうことになったんですよね。
なので自分でこうしようと思ったというよりは、周りの人が作ってくださった環境の中に身を置いた時に、自然に愛子ちゃんを一緒に作っていってもらったというか、それはいつものどこの現場でもそうなんですけど、たぶん、こうやろうと思ってやったことは監督に全部ダメって言われる気がするかなと思いました。

李相日監督
サンダルに高性能マイクロチップが…(笑)

宮﨑あおい
(笑)

李相日監督
今言われたことは、そうなんですよね。
ああいうサンダルを履くとああいう歩き方になるんですよ。
そういうのを僕らスタッフは事前にいろいろ検証するわけですよね。
彼女は生活をイメージする具体が衣装だったり髪飾りだったりするんで、その具体の積み重ねの延長に一緒に巻き込まれていくという感覚ですかね。

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[写真・記事:Ichigen Kaneda / 記事:Jun.S]

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