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「何かから積極的に逃げることは、変換すれば前向き」映画『ホテルローヤル』完成報告会

10月26日、都内にて映画『ホテルローヤル』の完成報告会イベントが行われ、主演の波瑠、安田顕、夏川結衣、岡山天音、武正晴監督が登壇。そして、松山ケンイチはビデオメッセージで参加した。(フォトギャラリー)

本作の原作は累計発行部数100万部を超える桜木紫乃の直木賞受賞作。誰にも言えない秘密や孤独を抱えた人々が訪れる場所、ホテルローヤル。そんなホテルと共に人生を歩む主人公・雅代が見つめてきた、切ない人間模様と人生の哀歓が描かれており、観る者の心に温かな余韻と感動をもたらす。

完成報告会では、2019年5月頃に行われた撮影当時のことを振り返りつつ、本作にちなんで、キャストそれぞれの「最近心が満たされた瞬間」を明かした。
映画『ホテルローヤル』は、11月13日(金)公開。

完成報告会レポート

ホテルローヤル

■出演オファーより前に原作を読んでいた

-波瑠さんは原作小説が直木賞受賞した時に読まれていたんですよね?

波瑠(田中雅代 役)
そうです。当時は読書が好きで。最近は台本を読んでいるとなかなかうまく切り替えて読書ができなくなってしまったので、当時の方が本を読むことが多かったんです。
直木賞を受賞されて、本屋で平積みされているのを見て迷うことなく買って、自宅に帰って一緒に住んでいる母と交代交代で一緒に読んだのが思い出になっています。

ホテルローヤル

波瑠

-今回その作品の主人公を演じられるということは運命とも言えますよね。

波瑠
はい。ビックリしましたね。知ってる!っていう作品の台本をいただけて、とても光栄だと思いました。

■役作りについて

-主人公雅代役を演じるにあたって意識されたことは?

波瑠
台本を読んでみたら、雅代は静かに佇んでいるシーンが多くて、周りの方が賑やかで物語もどんどん展開して、そこについていけてるんだかどうかわからない曖昧さで大人たちを見ている、という役柄でした。
なので、台本にも、“雅代「・・・」”っていうのがすごく多くて(笑)、これは下手したらただ突っ立っているだけの日々になるぞと思い焦りながら、雅代の内面に向き合う作業をしなければなと思いました。

ホテルローヤル

-安田さん、今回の役は実際より上の年齢ということで、特殊メイクもされたそうですが、役作りは?

安田 顕(田中大吉 役)
メイクさんに老けメイクをしてもらって、恰幅の良い男性ということで衣装さんにもそのようにしてもらって、もう周りの皆さんのおかげで出来上がったキャラクターです。
私は北海道出身なので、イントネーションは大丈夫なのと、私の親父は室蘭市出身でそこで溶接工の職人めいたことをやっていましたので、自分の親父を思い浮かべながら演じてました。
完成した映像を見たら、違和感なく老け込んだ親父でした。

ホテルローヤル

安田顕

-ということは、安田顕さんのお父様に似ている感じにもなっていたんですか?

安田顕
嬉しいとかイヤだなとか、そういうものを抜きにして年齢重ねていくとオヤジの嫌なところを自分が受け継いでいたり、顔も似てきますね。

-夏川さん、「幸せになんなさいよ」っていう印象的なセリフがありますが、どのようなことを意識してお母さん役を演じられましたか?

夏川結衣(田中るり子 役)
このお母さんは個性的で、家族を顧みないところがあるので、でもそうなる事情があって、それは夫婦の歴史や子どものことなど。
劇中、とても無責任なところもあるんですが、そのセリフはほんとに最後にそう思って言ったんだと思います。

ホテルローヤル

夏川結衣

-岡山さん、演じられた先生役は原作ではホテルに入る前のところですが、映画ではホテルに入ってからのことが描かれています。どういうことを考えて演じられましたか?

岡山天音(野島亮介 役)
僕は原作よりも先に台本を読ませていただいたので、原作との比較でどうしようということはなかったですね。
ただ、生徒役の伊藤沙莉さんは僕と同じ年齢なんですけど、その二人で教師と生徒という関係性を作っていくのは、お芝居としての試みとして面白いものになりそうだなとは思いました。

ホテルローヤル

岡山天音

■ラブホテルは知らないのに、ラブホだ!っていう説得力があった。

-この作品の舞台、ホテルローヤルは、その場所自体が主役とも言えるくらい印象的でした。このホテルの内装は、原作者の桜木紫乃さんが描き起こした見取り図をモチーフにされていると伺いました。

武正晴監督
当時釧路に本当にあった桜木先生のご実家のホテルを思い出してもらって、内装の見取り図を書いてもらいました。また、実際にどういう苦労をされたのかも伺って、それをシナリオにも取り込むようにしました。
あとは、従業員の部屋や、雅代の部屋はどこかにあるはずなんで、それは我々で考えました。

ホテルローヤル

原作・桜木紫乃絵によるホテルローヤル内装絵コンテ

ホテルローヤル

波瑠/安田顕/武正晴監督(右)

-波瑠さん、そうやって出来上がったホテルの中に入られていかがでしたか?

波瑠
ホテルローヤルのお部屋はセットなんですが、私はラブホテルはぜんぜん知らないんですけど、セットに入った瞬間「あ、ラフボだ!」っていう説得力を感じました。なんでしょうね。なんか大げさにきらびやかで、統一されているようでなんだかチグハグで、でも「非日常だからそれでいいんだ」っていう大吉さんの言葉をほんとに表現したようなお部屋でした。

-役に入りやすいセットだったということですよね?

波瑠
ラブホテルっていう場所って、いろんな人の関係や記憶が刻まれる場所。そういうものをたくさん受け止めてきているお部屋なんだろうなって思いを馳せたくなるような感じでした。

ホテルローヤル

■思い出に残っているシーン

-今作ではホテルで働く人、ホテルに来る人の人間模様が魅力的に描かれています。キャストの皆さんからご覧になって印象的な人やシーンを教えて下さい。

波瑠
私は従業員なのでボイラー室がすごい好きなんです。きっと冬は暖かくって、夏は暑くって。洗濯物がいっぱい吊るしてあって、その一角が従業員と雅代のお茶会の場所になっていて。それが雅代にとっては、もしかして両親よりも家族に近い安心感を持てる空間なのかなって、そういう温もりを感じるシーンです。

安田顕
僕はひとつのシーンというよりも、時代が移り変わる時の場転換がとても好きです。
そして、釧路湿原の景色が窓から見れる部屋で大吉が娘の雅代が絵を描いているところを見るシーンですね。このシーンがあるのと無いのとでは大吉のイメージってぜんぜん違ってくると思います。

ホテルローヤル

夏川結衣
私はミコちゃん(余貴美子)が出ていく時に、大丈夫かなって従業員皆がそれぞれの思いでミコちゃんを見るシーンがあるんですが、余さんのお芝居にもグっときて、私の中では忘れられないシーンになっています。

ホテルローヤル

岡山天音
さっき、安田さんもおっしゃってましたけど、時間経過、時代が移り変わるというのをワンカットの中で見せているところがあるんですが、クランクインの時にそのシーンがあって、そこが何回もやったなって思い出に残っています。台本を読んでいる時にはイメージが想像できなかったのですが、現場で「こいうことだったのか」って思ったので。

ホテルローヤル

■それぞれの人生の選択について

-雅代やるり子の選択をお二人はどのように感じられましたか?

波瑠(田中雅代 役)
雅代は踏み出すのは遅かったとは思いました。疑問を抱いて不満に思っていた親が残したラブホというものにいったんは働くことになって。
私は演じる女性を最後幸せに送り出したいという感覚があるので、雅代のラストの選択は良かったなって安心するものがありました。
夏川結衣(田中るり子 役)
るり子さんは一般的には無責任な人と思う人もいると思います。人ってそれぞれの価値観でそれぞれの人生を歩んでいるので、一概に間違っていると他人が言いきれいないと思います。
前に踏み出す時って、犠牲を払わなきゃいけないこともあるだろうし、大きな決断になればなるほど。
そういう意味では、私は前に進むという決断は重いけれども素晴らしいことだと思います。

ホテルローヤル

■最近心が満たされた!瞬間

-ホテルローヤルは誰にも言えない秘密を抱えた人たちが身体だけではなく心も満たされる場所として描かれています。そこで、皆さんが最近、心が満たされた瞬間!っていうエピソードを教えて下さい。

波瑠
私は、お腹が満たされると心も満たされるという単純な人間です。
お腹が空くとほんとにわかりやすく機嫌が悪くなってイライラしますし(笑)
最近、自粛生活で外食が難しくなってしまって一人で寂しく食事をするという時間が増えました。私は一人は好きなんですけど、たぶん無意識のうちに寂しかったんだと思います。
なので、最近、いろんなことに注意した上で久しぶりにお店でご飯を食べたら、なんかすっごく元気が出たんです。

ホテルローヤル

安田顕
自粛期間があって、細心の注意を払って、大江戸温泉物語に行って、スッポンポンになって大きなお風呂に入って、サウナに入って、アカスリマッサージをしてもらって、あれはほんとに満たされた!

夏川結衣
私も細心の注意を払いながら、久しぶりに友人と食事をした時に、食事だけじゃなくて、人と直接目を見て会話することがこんなに自分に幸せをもたらしてくれるとは思いませんでした。

岡山天音
僕はすごい匂いフェチなんですよ。
で、コインランドリーの前を通ると一気に幸せになるんですよね。
で、夜、家に帰る途中、その時間はどの家もお風呂に入っているから、下水道からシャンプー匂いがしてくるんですよ。それがすごい好きなんですよね(笑)
なんか変なこと言ってすみません(笑)

-安田さんがお風呂の話をしてましたが、お風呂でも幸せになるんですか?

岡山天音
自分がお風呂に入ってる時はあんまり・・・

ホテルローヤル

-安田さんは匂いはどうですか?

安田顕
匂いはどうだろうねぇ。でもウチで飼っている犬は、私がオナラをすると必ずその匂いを嗅ぎに来ますよ。その時はあの子は満たされているんだろうなって思いますね(笑)

ホテルローヤル

■松山ケンイチ(宮川聡史 役)からビデオメッセージ

全編北海道でロケしてるんですけど、東京で撮影するのとはやっぱり違いまして、場所が違うせいか考え方も変わってくるんですよね。
その場所で感じるものを素直に出していく感じで演じました。それが地方ロケの一番良いところだと思います。
そして、北海道の地方ということで方言のニュアンスも入れてみたらどうだろうかってことで、これは内緒なんですけど、僕は青森出身なんですけど、地元の言葉でやっちゃったんですよね(笑)それに誰もつっこまなかったので、そのまま最後までやらせていただきました。
この作品は波瑠ちゃん演じる主人公が、自分の人生を自分で選ぶっていう作品です。男性ももちろんですけれど、自分の足で歩いて、それで人生を決めていくというのは当たり前のことなんですけど、なかなか難しいような気がします。
それにはいろんな人の人生に触れることも大事だと思いますし、この作品はいろんな人生が描かれていますから、ご覧になった方の背中を押してくれるような作品になっていると思います。

ホテルローヤル

松山ケンイチ

■最後にメッセージ

武正晴監督
出演者の皆さんがほんとに素晴らしい仕事をしてくれて、撮影中は幸せな日々を過ごせました。
その結果、いいものが作れたと思います。
良い原作、良いキャスト、そして釧路という良い場所に恵まれたので、是非皆さんに観ていただきたい作品になりました。
夏川さん演じるるり子が言う「幸せになりなさいよ」っていうセリフは、無責任にも受け取れるかもしれませんが、この映画を観た方一人一人が幸せを見つけるきっかけになってくれればいいなと思います。

ホテルローヤル

武正晴監督

波瑠
私はこの映画のラストがとても好きです。一人の人間が自分の人生を初めて自分で受け入れて肯定できて、そういう瞬間ってものすごく尊いと思うからです。そして自分はずっと愛されていたんだなという気づきとか、雅代の再スタートがとても胸に響くものがあったからです。
この作品のキャンペーンで原作の桜木先生とご一緒した時におっしゃっていたことで印象的だったのは、「何かから積極的に逃げるっていうことは、変換すれば、ものすごく前向きな行為なんじゃないかなって思うんです。」という言葉。
それを聞いて目から鱗が落ちました。その通りだなと深く納得しました。
そんなメッセージがこの作品には込められています。是非、たくさんの方に届くといいなと思っています。

ホテルローヤル

ホテルローヤル

ホテルローヤル

■フォトギャラリー

[写真・記事:Jun Sakurakoji]

映画『ホテルローヤル』

ストーリー
北海道、釧路湿原を背に建つラブホテル、ホテルローヤル。
雅代は美大受験に失敗し、居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルの仕事を手伝うことになる。
アダルトグッズ会社の営業、宮川に淡い恋心を抱くも、何も言いだせずに黙々と仕事をこなす日々。
しかしホテルには今日も、閉塞感を逃れ“非日常”を求めて様々な人々が訪れる。
投稿ヌード写真の撮影をするカップル、子育てと姑の介護に疲れささやかな高揚を求める夫婦、行き場を失くした女子高生と妻に裏切られた高校教師。
そんな中、ホテルの一室で心中事件が起こり、雅代たちはマスコミの標的に。
さらに父・大吉が病に倒れ、家業を継ぐことになってしまった雅代は、初めて「自分の人生」に向き合う決意をする…。

出演:
波 瑠
松山ケンイチ
余 貴美子 原 扶貴子 伊藤沙莉 岡山天音
正名僕蔵 内田 慈 冨手麻妙 丞 威 稲葉 友
斎藤 歩 友 近 / 夏川結衣
安田 顕

原作:桜木紫乃「ホテルローヤル」(集英社文庫刊)
監督:武 正晴  脚本:清水友佳子
製作幹事:メ~テレ ファトム・フィルム  製作プロダクション:ダブ  配給・宣伝:ファントム・フィルム
(C)桜木紫乃/集英社 ©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会
公式サイト:https://www.phantom-film.com/hotelroyal/

予告篇

YouTube player

11月13日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

ホテルローヤル

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