【インタビュー】のん「オリジナル音声とは違うアプローチ」。アニメ映画『マロナの幻想的な物語り』日本語吹替
ワンコ・アニメーション映画『マロナの幻想的な物語り』の日本語吹替版が9月11日(金)より公開となります。主人公で鼻がハート型のミックス犬・マロナの声を演じた“のん”さんに、本作への取り組みについてお話しを伺いました。また、ビデオメッセージもお届け!
本作は、様々な飼い主の元で暮らしながら、健気に生きたミックス犬マロナの生涯を描いた物語で、ルーマニアの女性監督アンカ・ダミアンが『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』のプロデューサー ロン・ディエンスと作り上げた“愛とアートと犬の気持ち”がいっぱい詰まったワンコ・アニメーション映画。
2020年3月の東京アニメアワードフェスティバル2020 コンペティション部門にて、長編アニメーション・グランプリと東京都知事賞のW受賞を果たしています。
特徴的なのは、そのアニメーション描写。一見、手描きイラストのような素材をベースに、アート感覚溢れる独特な動きのアニメーションが登場キャラクターはもちろん、画面の隅々まで表現されています。
その独特のアニメーション映像は、ルイ・ヴィトンがトラベル・ブック“パリ編”に選んだイラストレーター、ブレヒト・エヴェンスをはじめ、ボローニャ国際絵本展で注目のサラ・マゼッティといったヨーロッパの才能あるクリエータが集結し、2Dと3Dを融合させることによって実現しました。
のん インタビュー
■ぜんぜん違う描き方のものが同じ画面にあっていいんだ。
-本作の独特なアニメーション描写についてどう感じられましたか?
のん
すごく面白かったです。すごいアート性の強い映像表現なので、観てて楽しかったですね。人の描き方もひとりひとりぜんぜん違うタッチで描かれているし、顔がない人とかもいるし、真っ黒けっけで、ぜんぜんこの人だけ異質だなって人も出てくるし、親子で同じ顔で描かれている部分もあるし。それぞれがぜんぜん違う抽象化された描き方になっているのに、それら同じ画面にあっていいんだなっていうのがすごく面白かったです。
-創作あーちすととしても活躍されているのんさんですが、その点でも触発されたということでしょうか?
のん
はい。シーンごと、場所ごとにも全く違う描き方をするので、工事現場はカクカクしていたりとか、そういう違いを見るのも楽しかったですね。
■“のん”版マロナは、オリジナル音声とは違うアプローチ
-マロナのCVの収録で大変だったり、逆に面白かったことがあれば教えて下さい。
のん
すごく抽象的な描き方がされていて、絵だけでも想像力を刺激される作品です。ですので、そういう想像を阻むようなマロナにはなりたくはないなって思ったので、その点は勇気がいりました。こういう作品とどのように(自分の声とを)調和させるのかっていうのが緊張しましたね。そこが一番気を張って、大変だったことです。
-オリジナル原語版をご覧になった上で感じられた世界観に自分の声を融合させようというアプローチはされましたか?
のん
最初はそうでしたね。私自身はけっこうマロナの鋭いところとか、達観しているところ、ちょっと皮肉が効いているところとかが可愛く見えていたので、それを大事にしようというキャラクターづくりをしていました。
そして、オリジナル音声のフランスの方のCVの、ちょっと息が漏れていて、フランス語特有の感じ。それは発音によるところもありますし、フランス人の国民性を感じさせてくれるちょっと含みがあって、ものごとを斜めから捉えている感じなどもイメージしながら。
マロナが人間のことをいろいろと鋭くついているところとか、そういう風に考えて落とし込んでいたんですけど、日本語吹き替え演出の安藤直子さんから、「素直な感じで明るくて、可愛らしいキャラクターで」と演出いただいたので、現場で変わっていきましたね。
■マロナの言葉として聞くと心がキューって苦しくなった
-マロナが犬の視点で犬の気持ちをいくつも語っているのが本作の特徴のひとつだと思いますが、のんさんが印象的に思われたセリフを教えて下さい。
のん
「犬は飼い主に散歩に連れていってもらわないと排泄もできなのよ」っていう、ソランジュとのシーンでのマロナのセリフがすごく心に残りました。
すごく当たり前のことなんだけど、マロナに犬の目線で言われると、なんか、衝撃的でグサっときました。
散歩は、飼い主として、責任感持ってやらないといけないことのひとつだけど、犬の立場からすると自分でどうにかできるものじゃないってことで、それをマロナが語るとこんなにも痛みのあるセリフになるんだって思えて、心がキューって苦しくなりました。
■ペットの思い出
-のんさんご自身はペットを飼われたことはありますか?
のん
はい。犬は預かる形で1~2年くらい。あとはハムスターを飼ってました。
犬もハムスターも可愛がってたんですけど、でも無茶な遊びもしていました。
私が11歳だった当時、ハムスターを飼っている友だち同士3人で、砂場で遊ぶのが流行っていたんですが、ある日、山を作って「工事だ~。トンネルを掘ってね」ってハムスターに言う遊びをしていたんです。そしたらハムスターがほんとにトンネルを掘ってくれるんですね。で、「つながった、つながった」って喜んでいて。その時その遊びはトンネルが繋がった後、最後に山を崩すまでがひとくくりだと思っていたので、ハムスターを引き上げたあと、「ヤーっ!」って言ってジャンプして山を崩したら、私のハムスターだけいないってことに気づいて・・・。
「ウソっ!?」ってなって砂の中を探したら無事見つかって、幸いピンピンしてましたが、その時受けた衝撃を、この映画を観た時に思い出しました。「あの時あの子にどう思われてたのかな?」って。ちなみに、その時のハムスターは、その後長生きしてくれました。
-すごい思い出ですね(笑)
のん
すごい思い出ですね。マロナで思い出すことじゃないんですけど(汗)
ぜんぜん感動的なエピソードじゃないですね…。
曲芸師マノーレのようにしておけばよかったなと、すごい反省しました。
-今後、ペットを飼ってみたいと思われますか?
のん
仕事が忙しくなってからは、絶対にムリだなって思ってますね。犬も猫も絶対に飼えないし。でも何か生き物を飼いたいって気持ちが大きくなった時、アクアリウムならって思ってお店でエビが泳いでいるのを眺めたりすることありましたが、でもけっきょく断念しましたね。
■集中力を高めたくて自分のアトリエを。
-本作はアート性に富んだ作品ですが、のんさんも、最近ご自分のアトリエを持たれたと伺いました。
のん
これからも自由に絵を描くこととか、音楽とか、そういう制作の場として構えました。自分の中でどんどんいろんな表現を見つけていきたいなって思っています。家にアトリエがあると集中力が高まるので。アトリエにはミーティングルームもあるので、仕事にも集中できればと思っています。
-のんさんが絵を描き始められたきっかけについて教えて下さい。
のん
ちっちゃい時から絵は得意と思ってはいたものの、描いていきたいという意識まではありませんでした。
幼稚園の時、節分で鬼の絵を描くという日があって、みんなで鬼の絵を描いてたんですけど、私が描いた鬼の絵が、どこか子どもの絵の展示するところに飾ってもらえて、それがすごく嬉しくて、絵を描くことがより好きになりました。
そして、高校生になってからは、キリンを描いたり、魚を描いたりとかしてたんですけど、宇野亜喜良さんの絵を本屋さんで見て大好きになって、女の子の絵をいっぱい描くようになりました。
宇野亜喜良さんが描く女の子の絵のように、ひと目で宇野亜喜良さんだ!ってわかるような女の子を描きたいって思って、自分だけの可愛いって思える女の子の絵を追求していくようになりました。
■これから本作をご覧になる方へ(のんからのビデオメッセージ)
■フォトギャラリー
表情の違いでさまざまな魅力を感じさせてくれるのんさんのポートレート写真です。
[インタビュー:安田寧子/写真:桜小路順、金田一元/動画:桜小路順]
映画『マロナの幻想的な物語り』
STORY
血統書付きで差別主義者の父と、混血で元のら犬だけど美しくて博愛主義の母との間に生まれたマロナは、同時に生まれた9匹の末っ子で、「ナイン」と呼ばれていました。このハート型の鼻を持つ小さな犬は、生まれてすぐ彼女の家族から引き離され、曲芸師マノーレの手にわたります。マノーレはこの小さな犬にアナと名付け、アナにとっても、幸せな日々が訪れたかに思えましたが……
場面写真
監督:アンカ・ダミアン
脚本:アンゲル・ダミアン
キャラクター・デザイン:ブレヒト・エヴェンス
背景美術:ジナ・トーステンセン/サラ・マゼッティ
音楽:パブロ・ピコ
プロデューサー:アンカ・ダミアン/ロン・ディエンス(『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』)/トマス・レイヤース
提供:リスキット/マクザ厶/太秦/カルタクリエイティブ
配給:リスキット
後援:ルーマニア大使館
協力:キヤトルステラ/stylab/げんべい商店
(2019/ルーマニア・フランス・ベルギー/1:1.85/5,1ch/フランス語/日本語吹替/92分)
公式HP:maronas.info
公式ツイッター:@maronas_fantasy
公式instagram:@maronas_fantasy
公式Facebook:@maronasfantasy
日本語版キャスト:
のん(マロナ)、小野友樹(曲芸師マノーレ)、平川新士(イシュトヴァン)、原 涼子(ソランジュ/幼少時)、夜道 雪(ソランジュ/少女、大人)
『マロナの幻想的な物語り』<日本語吹替え版予告>
『マロナの幻想的な物語り』は8月29日(土)より、渋谷・ユーロスペースにて字幕版を先行公開後、9月11日(金)より吹替え版を含め、ユーロスペース、新宿バルト9、梅田ブルク7他全国順次公開
コメント ( 1 )
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今日、映画観てきました。観た後で記事を読むとさらに理解出来て良いです。
沢山の画像ありがとうございます。またお願いします。