沖縄離島に残る風習を軸に命の繋がりを描く。照屋監督(ガレッジセール・ゴリ)映画『洗骨』舞台挨拶
海外映画祭での評価が際立つ照屋年之監督(ガレッジセール・ゴリ)の長編第二作となる映画『洗骨』。
そのタイトルから怖いイメージも感じるが、沖縄離島に残る風習を軸に命の繋がりを描いた、笑いあり涙ありのヒューマンコメディタッチで描かれ、親から子へとの命の繋がりを改めて考えさせられる作品だ。
1月17日、全国公開に先立っての特別試写会舞台挨拶が行われ、奥田瑛二、筒井真理子、筒井道隆、水崎綾女、鈴木Q太郎、そして照屋監督が登壇し、本作への熱い想いを語った。(フォトギャラリー&主題歌ライブ映像)
映画『洗骨』
日本に留まらず、海外映画祭での評価が際立つ照屋年之監督。
長編第二作となる『洗骨』がいよいよ2月9日より全国公開する。
本作は沖縄の離島・粟国島を舞台に、亡き人を風葬し、数年後に対面してその骨を洗い、あの世におくり出すという独特の風習《洗骨》が題材。
主演に奥田瑛二を迎え、筒井道隆、水崎綾女といった日本映画界屈指の実力派が揃い“祖先から現代への生命のリレー”、“家族の再生”というテーマをユーモアを交えながら描き出す感動作。
1月18日からの沖縄先行上映され、全国公開は2月9日より。
ストーリー
洗骨───。
今はほとんど見なくなったその風習だが、沖縄諸島の西に位置する粟国島などには残っているとされる。
粟国島の西側に位置する「あの世」に風葬された死者は、肉がなくなり、骨だけになった頃に、縁深き者たちの手により骨をきれいに洗ってもらうことで、晴れて「この世」と別れを告げることになる。
沖縄の離島、粟国島・粟国村に住む新城家。
長男の新城剛(筒井道隆)は、母・恵美子(筒井真理子)の“洗骨”のために、4 年ぶりに故郷・粟国島に戻ってきた。
実家には、剛の父・信綱(奥田瑛二)がひとりで住んでいる。生活は荒れており、恵美子の死をきっかけにやめたはずのお酒も隠れて飲んでいる始末。
そこへ、名古屋で美容師として活躍している長女・優子(水崎綾女)も帰って来るが、優子の様子に家族一同驚きを隠せない。様々な人生の苦労とそれぞれの思いを抱え、家族が一つになるはずの“洗骨”の儀式まであと数日、果たして 彼らは家族の絆を取り戻せるのだろうか?
出演:奥田瑛二 筒井道隆 水崎綾女 / 大島蓉子 坂本あきら 山城智二 前原エリ 内間敢大 外間心絢 城間祐司 普久原明 福田加奈子 古謝美佐子 鈴木Q太郎 筒井真理子
監督・脚本:照屋年之
音楽:佐原一哉
主題歌:「童神」(歌:古謝美佐子)
製作総指揮:白岩久弥
製作:藤原 寛 小西啓介 宮崎伸夫 武富和彦
制作協力:キリシマ1945
制作プロダクション:ファントム・フィルム
制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
製作:『洗骨』製作委員会(吉本興業 ファントム・フィルム 朝日新聞社 沖縄タイムス社)
配給・宣伝:ファントム・フィルム
(C)『洗骨』製作委員会
2018/日本/カラー/スコープサイズ/上映時間111分
公式HP:senkotsu-movie.com
1月18日(金)より沖縄先行公開 / 2月9日(土)より全国公開
舞台挨拶
登壇者:奥田瑛二、筒井道隆、水崎綾女、坂本あきら、鈴木Q太郎、古謝美佐子、筒井真理子、照屋年之監督(ガレッジセール・ゴリ)
映画『洗骨』について
照屋年之監督(ガレッジセール・ゴリ)
今回は、本名の照屋年之で監督をやらせていただきました。
映画の現場っていうのはほんとに大変で苦しかったからこそ、出来上がった作品が一生懸命出産して生まれた我が子のように可愛いんですね。
だから親バカが子供を自慢したくなるように、この映画は是非とも一人でも多くの方に観ていただきたいと思って、1年半経ってやっとこの日が来ました。
皆さん、今日はこの映画を楽しんでください。よろしくお願いします!
奥田瑛二(新城信綱 役)
これからこの映画をご覧になる皆さんに、これだけは断言します。
損はさせません。そして、皆さんを裏切ってみせます。
筒井道隆(新城 剛 役)
死を扱う話なんですけども、すごい楽しい話になっております。
最後まで楽しんで、そして死について考えてもらえればありがたいです。
水崎綾女(新城優子 役)
撮影したのが1年半前でやっと完成披露試写会の日が来て、お客様にも観ていただけるということですごく緊張しています。
沖縄とか海外ではすごく良かったという声をいただいているので、皆さんにもそういう感想を持っていただければなと思っています。
坂本あきら(高安 豊 役)
沖縄は暑かったです!
この映画を観て熱くなってください!いい映画です!
鈴木Q太郎(神山亮司 役)
私はふだんはお笑い芸人をやらせていただいてまして、皆さん、役者としてはどうか温かい目で観ていただきたいなと思っております。全力でやりました!
筒井真理子(新城恵美子 役)
今日は立ち見の方もいらっしゃるということで、これだけ期待して来てくださったんだと興奮しております。
最後まで楽しんでください。
古謝美佐子(主題歌「童神」)
今、ドキドキしてる。
歌わない舞台はとっても緊張する。
この映画は素晴らしい作品です。映画なのに涙が出てきました。私のおばぁとかおじぃを思い出して。
映画のタイトルでもある「洗骨」という風習
照屋年之監督
沖縄出身の僕でさえ知らなかったので、東京の皆さんもほとんどが知らないと思いますよ。
昔の沖縄・琉球の風習なんです。
普通は、人が亡くなると、火葬しますよね。でも“洗骨”では、亡くなると遺体を棺桶に入れて、4年間寝かせるわけです。
で、ミイラ化した遺体を棺桶から出して、遺族が骨を1本1本水や酒で洗っていくのが“洗骨”という風習です。
で、2019年の今も沖縄の粟国島(あぐにじま)という小さな島では一部、“洗骨”が行われているんです。
それに僕はビックリしたんです。この時代にミイラを洗って?と。
まず、法律的に大丈夫なのか?とか、いろんなことを考えたんです。後に法律的には問題ないことがわかったものの、やっぱり最初は怖いなって思って。
でも、島の人に話しを聞いたり実際の映像を見たりすると、まったく怖くないことがわかりました。
逆に、自分の両親や祖父母に、今の自分があること・命を繋いでくれたことに、すごく感謝する行為だなと感じたんです。
とても美しい風習だと思ったので、これは映画にしたいと思いました。
僕が芸人ということもあり、笑いの部分もある、ヒューマンコメディの作品に仕上げました。
タイトルは『洗骨』ということでちょっと怖い感じもしますけど、ぜんぜんそんなことはなく、ジーンとくるところや、笑えるところや、ぜんぜん堅苦しい映画ではないので、楽しんでいただけたらいいなと思います。
照屋監督の父も洗骨?
– 沖縄以外では今日が初お披露目となりますが、今のお気持ちは?
照屋年之監督
沖縄で上映した時、沖縄の人がどういう反応するかなと最初心配だったんですが、みなさんすごく楽しんでくれて。
ウチの親父も観終わった後、「俺もたぶんもう長くないから死んだら洗骨してほしい」って言ってきたんです。
そしたら、兄貴が「めんどくさいから燃やす」って(笑)
なので、ウチの親父は火葬で決まりです!今度、『火葬』っていう映画を撮ります(笑)
沖縄の地で役になりきった。でも泡盛を飲むと・・・
– 本作は沖縄の美しい風景もたくさん観れますが、現地での撮影はいかがでしたか?
奥田瑛二
現地入りする前に東京で何度も何度も台本を読んでイメージするようにしました。
でも、実際現地入りすると、沖縄の自然の美しさと空気感が、こちらに住んでいる者の想像を超える幻のようなものがあるので、とにかくも“無”になろうと。何も考えずこの地に肉体を置く。さらけ出す。
その結果がこの映画に写っている信綱(奥田瑛二演じる新城信綱)なんですね。
朝起きたら信綱。撮影中はもちろん信綱。撮影終わって泡盛1杯飲んでも信綱。2杯飲んでも信綱。
3杯飲むと奥田が出てくるんです。4杯飲むとスケベな奥田が出てくるんです(笑)
それで12時になると解散と。
そういうのを撮影の30日間、繰り返してました。
ですから、僕は撮影中の記憶がほとんど無いんです(笑)
酔っ払ってたというわけじゃなく、沖縄の地で信綱になりきって、照屋監督に預けた状態だったからです。
照屋年之監督
奥田さん。奥田さんは記憶が無いかもしれませんが、僕らは酔っ払ってエロくなってた奥田さんをしっかり覚えています。
(会場笑)
普段から役作りに入っていた奥田瑛二と筒井道隆
照屋年之監督
奥田さんと筒井道隆の二人は、オフの時でも一切会話しないので、めっちゃ気を使いました。
元々仲が悪い二人をキャスティングしちゃったのかなと思ったくらいに。
そしたら、実は二人は役どころで確執がある二人だから、普段から会話はしないどころか目も合わさないようにされてたってことです。
もちろん、撮影が終わった今は普通に会話されてますが、撮影中はそれくらい役作りされてました。
オフの間も妊婦姿で過ごしたら、いろいろ誤解が
– 水崎さんはずっと妊婦の姿で過ごされたそうですが?
水崎綾女
1ヶ月間の撮影だったんですけど、沖縄にずっと滞在してました。
妊婦姿ということで、最初はお腹にタオルを入れてふくらませる予定だったんですけど、今回の映画は命をつなぐということで生と死がテーマになっているので、私の妊娠姿もとても重要だと考えて、シリコンの重いものをお腹に入れることにしました。
そして撮影以外の、寝る時もご飯に行く時も、お風呂に入る時以外はずっとつけっぱなしで、現地で過ごしました。
照屋年之監督
オフの時もずっと妊婦姿のままで沖縄の街をブラブラしているから、現地のおばぁちゃんに「もうすぐ産まれるの~」って言われて(笑)
水崎綾女
「あんた、もうすぐ産まれるね。そのお腹の張り方は男の子だね」って言われて。
騙していることに心苦しさも感じたんですけど、ちゃんと妊婦に見えているんだってことにも少し安心して。
照屋年之監督
それくらい妊婦に見えていたので、食堂に奥田さんと水崎さんの二人が入っていった時の光景は、どうみても奥田さんが不倫した若い女性を妊娠させて、東京から離れた沖縄でしばらく潜伏しているようにしか見えなくて(笑)
周りのお客さんもチラチラとこの二人をそんな感じで見ていて(笑)
コントと映画のお芝居の違い
– 役者デビューということで、撮影現場はいかがでしたか?
鈴木Q太郎
ふだん、コントをやっているので、コントのお芝居が抜けないんですよね。身振り手振りつけちゃって。
照屋年之監督
あとね、この人、カメラ見るんです(笑)
カメラ目線でセリフをしゃべるので、「なんでカメラ見てんの?」ってカットすることがあった。
バラエティのクセが抜けないというか。
鈴木Q太郎
でもだいぶ、映画の芝居のことがわかってきたので、関係者の方がいらっしゃいましたら次のオファー、よろしくお願いします!
一切妥協しない筒井真理子
照屋年之監督
筒井真理子さんはものすごくこだわられるんですよ。
出演されるシーンは遺影と棺桶の中だけなんですけど、遺影の撮影も優しいお母さんの笑顔の写真が撮れたって思っても、「もっと優しい顔にできると思います。もう少し撮らせてください。」と、何回も撮影されて。
筒井真理子
はい。撮影の横で監督がいろんな頭蓋骨を選んでいらっしゃるので、洗いたいと思えるような表情にしたいなぁって思って。
照屋年之監督
でもこだわっていただいたおかげで、みんなが会いたくなる優しい笑顔のお母さんの写真が撮れたんです。
そして、次に棺桶のシーン。
死に役なのに、筒井さん、棺桶からパッと起き上がって、「病気で死んだんですよね。じゃ、メイクは変えたほうがいいかしら」って何度も何度も。
こっちからしたら「早く死ねよ」って(笑)
(会場笑)
全然死なない。何度も蘇るんだもの。映画のタイトルが「蘇り」になるところでしたよ。
でもやっぱり、そのこだわりが“死に顔”になっていったんです。
主題歌「童神」歌唱動画
映画上映後、主題歌「童神」を古謝美佐子がライブ歌唱。それをステージ上で聴いていた奥田瑛二が思わず涙した。
奥田瑛二
まいりましたね。こよなく愛せるキャラクターを照屋監督が与えてくれた。そういったことを思い出して、感無量になってしまいました。
水崎綾女
個人的に、今日は阪神淡路大震災が起こって 24 年。わたしは 5 歳のときに被災しました。命をつなぐというのがテーマのこの作品で、個人的にこみ上げてくるものがあります。
最後に。
照屋年之監督
みんな 100%の自信なんて持てない人がほとんどだと思う。
不安やおびえ、コンプレックスを持った人を描きたいと思ってきました。
そんなこといっても明日は来るから、一歩を踏み出してみようと映画にしたいと思いました。人に会いたくなる映画になれば。
フォトギャラリー
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映画予告編
[写真・記事:Jun Sakurakoji]
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