【インタビュー】吉澤嘉代子から働く方へメッセージ。“働く”ということへの想い。
勤労感謝の日である2018年11月23日(金・祝)に、TOKYO FMにて「TOKYO FMホリデースペシャル パーソル presents 勤労感謝Fes!」(以下、「勤労感謝Fes!」)が開催。参加アーティストとして、吉澤嘉代子さんが登場。“働く”にまつわる経験談を語り、生LIVEを披露しました。
イベント後、NB Press Online(以下、NB)では、吉澤嘉代子さんに個別取材の機会をいただき、ご自身の職業に対する考えや、生まれ育った街のエピソード、『女優姉妹』の制作に関わる方々への想いの伝え方について、たっぷりと語っていただきました。
吉澤嘉代子に訊く。
職業・職業名に対する真剣な考え方
NB
今回の「勤労感謝Fes!」は、“働く”がテーマでしたが、“働く”といえば、“仕事”。
“仕事”といえば、“職業”というつながりで、質問を始めたいと思います。
以前、SNSで、職業欄に書く職業名について迷ってしまうという話をされていましたが、その迷いの理由は?
吉澤嘉代子
デビューしたばかりの頃は、最初“フリーター”とか書いていたんです。
でも、当時のマネージャーさんに「それは違うのでは?」と指摘されまして…。まぁ、当たり前なんですけれども(笑)
「自分でつくった音楽でお客様からお金をいただく仕事を定職として続けているんだから、“フリーター”って書くのは違うんじゃない?」と言われて、そうだなと思って。
となると、歌を作って歌う“シンガーソングライター”が自分の中での肩書として、一番しっくりくるんですけど。
だけど、“シンガーソングライター”だと、自分が作詞・作曲能力をひけらかしているような気がして、なんか、周りからはそこまでは問われていないんじゃないかって思って…。
じゃぁ、歌うお仕事“歌手”かなと思ったんですけど..。
でも、“歌手”っていうと、本当に歌う専門の方もいらっしゃるじゃないですか。
本当に歌だけを専門にされている人とは、自分は歌に対する自覚が違うと思って…。
人からいただいた歌を心をこめて歌うって、本当にプロだからできることだと思うんですよ、私は。
自分はそれができないから、歌手と言ってしまうのは、おこがましいと思ってしまって、じゃぁ、なんだろうと思って、いろいろ迷っているんですけど。
ミュージシャンの友達とかに聞いたりすると、“音楽関係”とか、“アーティスト”とか。
“アーティスト”とかは(自分には)恥ずかしいかなと思ったりするんですけれども…。
あとは、“自営業”とか…。うーん…難しいですね。
NB
ご自身の中で、「コレだ」っていう肩書きとして思いつく言葉はありますか?
吉澤嘉代子
うーん。やはり、難しいですね。
職業欄をぱっとみて、“シンガーソングライター”とか“ミュージシャン”とか考えますが、自分自身にふさわしいかどうかを考えると難しいですね。
NB
この迷いは、まだまだ続きそうですね。
吉澤嘉代子
はい。
生まれ育った労働の街。“働く”ということへの想い。
NB
プロフィールに、埼玉の川口出身・鋳物工場の街で育ったとありますが、工場のある生まれ育った街と仕事という観点で、思い出とかエピソードはありますか?
吉澤嘉代子
川口の街って、労働の街なんです。
工場がたくさんあるっていうのもあるんですけど、駅にも“働く歓び”という像が立っているんですよね。
なので、昔から労働者の街です。
今はだいぶ変わってきて、ほぼベッドタウンみたいな街になりましたけど。
子どもの頃から、作業着を着て火花を散らしながら何かを加工する父や従業員の方の姿をみてきました。
いまの自分は、歌をつくって、それを広めたり、歌ったりっていうのをずっと繰り返している感じですけれども、働いているっていう感覚が薄いです。
趣味というか、自分がやらないとどうしようもないものをそのままお仕事にしているっていう状態に、奇跡的になった感じなんです。
だから、なんか、父や働いている人たちと比較すると、自分がなんだか申し訳なくなったりします。
友達も、先生やOLをしていて、みんな朝から仕事に行っている中で、私はゆっくりと起きて、家でずっと悶々と歌詞に悩む…みたいなところに、「この時間ってなんだろう…。私って働いていない…。」みたいな苦しい気持ちになったりします。
NB
それは、働いていると十分に言えるお仕事だと思いますよ。
吉澤嘉代子
悶々と悩み続けているところに終わりが見えないというか…。
「働いてます!」みたいな感じがいいなと思ったりします。
NB
カラダを使うか、アタマを使うかという違いはありますが、そこは自信をもって、働いているといっていいと思います。私が言うのもなんですけれども。
生まれ育った身近な工場とそこで育まれたもの
NB
工場の雰囲気、音や光、働く方々の姿をみて、それが歌に反映・影響されている部分はありますか?
吉澤嘉代子
やっぱり、私の中の身近なところに工場というものがあります。
小学生の頃、よく友達に「魔女が住んでいそうな家だね」って言われたりしました。
増築したりだとか、古びた工場があったりして、年季の入った歴史が感じられる家でした。
そんな大したものではないんですけどね。
そういう場所で生まれ育ったっていうことは、すごく妄想が捗ったと思いますし、工場のなんだかよくわからない液体とか、油の浮いた水たまりとかは、すごく自分に想像力を育んでくれたと思います。空気とかも、あまりきれいではなかったんですけど。
NB
工場って、独特な感じがありますよね。空気といえば、ホコリっぽさとか、そこに光が差し込んだ時のキラキラするところとか。
吉澤嘉代子
そうなんです。すごく汚れているはずなのに、油とかも光が差すとキラキラして。
NB
虹色にキラキラと輝きますものね。
吉澤嘉代子
そうですね。そういったところに、自分の中の想像力が育まれたと思います。
曲タイトルとアルバムタイトルの名付けの過程の違い
NB
吉澤嘉代子さんの曲作りは、タイトルを決めて、そこから物語をつくるように詞を書いたり、曲を作っていくスタイルだと思うのですが、アルバムのタイトルはいつ考えていますか?
吉澤嘉代子
アルバム名は、いつも一番最後かもしれないですね。
決めなければいけない締め切りギリギリまで考えてしまいますね。
今回の『女優姉妹』も、タイトル候補はいくつもあったんですけど、絞るっていうのが難しくて…。
曲はいつもタイトルからつくるので、アルバムタイトルのような後付けをするのが苦手なんですよね。
アルバムってどうしても、曲が集まってできるものなので後付けになるじゃないですか。
「こんなイメージのアルバム」、「こういうテーマにしよう!」ってところから、そのテーマに沿ったタイトルっていうと、後付けが難しいですね。だから決めるのが遅くなってしまいます。
人の輪を広げる声がけ・心がけ
NB
今回のアルバムは、吉澤嘉代子さんの今までの歴史、人間関係の集大成という印象を受けます。どんな仕事をする上でも、声がけをして、人間関係とか、人の輪をひろげるところが大事だと思うのですが、心がけていることはありますか?
吉澤嘉代子
お仕事をする時に、好きな人たちと仕事をすることが一番楽しいなと思っています。
その人が自分に持ってくれている気持ちで、仕上がりがかなり左右されると思っていまして…。
私は、自分が“好きだ!”っていう気持ちを持っていくだけです。
でも、相手がどう思ってくれているかはわからないんですけれど…。
NB
好きな人同士が組み合わさることで、相乗効果というか、より良いものができるといった感じでしょうか?
吉澤嘉代子
そうですね。その人の好きなところとかは、いつもなるべく素直に正直に伝えようと思います。
その人の良さっていうのはハッキリいいます。
だから、相手に「(言われている側が)恥ずかしくなるようなこと言うね」って言われたりします。
想い・イメージを相手に伝える方法
NB
『女優姉妹』を作りあげる、いわば総監督の立場として、さまざまな役割をもつ方々に、ご自身の想いやイメージをどのように伝えましたか?
吉澤嘉代子
アレンジャーさんとか、ミュージシャンに対してなのですが、いろんな方法で伝えます。
私はコミュニケーションが下手なので、なるべくいろんな方法で…。
たとえば、一曲目の『鏡』という曲は、編曲してくださった横山裕章さんに、『女優姉妹』のジャケットを渡しました。
仕上がっていたジャケット写真をお見せして、「こういう雰囲気にしたい…」みたいな。
ストリングスのチームに伝えるときも、「花園感をだしたい」とかっていうと、「あぁ、花園か」っていう感じで、私が伝えたこと、相手がうけとったことが、そのやりとりのように仕上がるんですよね。
なので、絵で観たら一番わかりやすいのかな。ハッキリとはわからないんですけど…。
絵だったりとか、言葉とか、イメージできるもので、音楽用語だけではないものを手当たり次第に伝えるっていうところがありますね。だから、とにかく、打っていくというか、ヒットさせていく感じですね。
NB
絵といえば、今回はジャケット写真の女優の方々の位置なども直接指示されたとのことですが、ご自身で写真を撮影されたりしますか?
吉澤嘉代子
今はSNSの時代で、私ももっと写真とかをアップしなければいけないって思っていて、それも仕事のひとつになっているって思っているんですけど。個人的に撮ったりとかは、あまりしないですね。
NB
そうでしたか。写真を撮る身として、あのジャケットがすごく良いと思いました。
吉澤嘉代子
ありがとうございます。そういっていただけて良かったです(笑)
吉澤嘉代子さんから働く方々へのメッセージ
NB
それでは、最後に、働く方々へのメッセージをお願いします。
吉澤嘉代子
人には、自分にぴったりな場所っていうものがあると思うので、もし、今いる場所が自分に合わないな、なんか辛いなって思っていたら、このように言ってしまうと、良くないのかもしれないんですけど、新しい場所に逃げていくこともいいことだと思っています。
もちろん、今その場所にいて、これが天職だと思っている方には、この言葉はあてはまらないですけど…。
その人が、好きな人たち・好きなもの・好きな場所っていうものに囲まれて、いつでも健やかにいられるように、自分の環境を整えることも自分の仕事だと思うので、それを見つけられたらいいですね。
っていう感じです(笑)
NB
すばらしい。優しい言葉ですね。ありがとうございました。
[写真・インタビュー:Ichigen Kaneda]
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