呉市長も参加の市町村トップ会談開催。第10回ロケツーリズム協議会
7月25日、全国ふるさと甲子園の開催や雑誌「ロケーションジャパン」を刊行している株式会社地域活性プランニング主催による「第10回ロケツーリズム協議会」が都内にて開催された。
10回目は「第1回市町村トップ会談」と称して、岩手県久慈市、広島県呉市、岐阜県飛騨市、神奈川県綾瀬市、長野県千曲市、千葉県いすみ市の市長らが一堂に会し、これまでの各市のロケツーリズムに対する取り組みを発表し、また、TV業界、映画業界などから招かれた制作側からの意見のヒアリングも行われた。
ロケツーリズムとは?
映画やドラマのロケ地になると、いわゆる“聖地巡礼”と呼ばれる現象が起こり、作品のファンが多くそのロケ地を訪れる現象が発生することがある。その作品人気が海外にまで広がると、観光客の幅は海外にも及ぶ。
観光客が、その町の風景と食を堪能し、人々の“おもてなし”に触れ、その地域のファンになると、その地域が活性化され、経済効果も生まれ、地方創生にもつながっていく。また、地域の魅力の再発見にもなる。それがロケツーリズムだ。
ロケの難しさ
ただ、制作側の立場から見ると、ロケを敢行するには、施設の貸借から始まり、場合によっては道路封鎖、エキストラ募集、町並みや通行人の映り込み許可などおおくの許可申請手続きが発生。さらには、ロケスタッフの宿泊、ケータリング手配など、多くのハードルが事実としてあり、町の協力が得られるかどうかはもちろん、それぞれの窓口がバラバラであると、どうしても煩雑になることが少なくない。
一方、ロケ部隊を受け入れる地域側も、どう対応していいのかノウハウと体制が無いという課題を抱える。
また、いざ、ロケが敢行されても、その後のPR活動を行うためには、さまざまな権利処理のノウハウも必要になる。
とりあえず、フィルムコミッションを作ったはいいものの、ノウハウやサポートしてくれるバックボーンが無いと、現場の担当者は孤軍奮闘・立ち往生となってしまいがちだ。
例1:地域の現場が困っていること(協議会スクリーン画像より)
・シティセールスと言いつつ現場任せ
・ロケ対応の人・予算を工面してほしい
・県(市・町)の上の人達の理解がない
そこで、株式会社地域活性プランニングは、各地域のフィルムコミッションなどと映像制作者との間に立って、両者を結びつける活動を行い、地域の担当者に、ロケ受入体制の組織作り・権利処理ノウハウなどについて、学んでもらってきた。
例2:ポイントは『人づくり』(協議会スクリーン画像より)
・ロケを呼びたい!現場対応を学びたい!
→ロケナビゲーターの育成
・シーン写真を使いたい!作品とコラボしたい!
→ロケエディターの育成
・街のPRをしたい!経済効果を上げたい!
→ロケプロデューサーの育成(ロケ地TOP会談の実践)
第1回市町村トップ会談
そして、第10回の今日は、冒頭にも述べたとおり、成果発表も兼ね、「第1回市町村トップ会談」と称して6市の市長が一同に介し、それぞれの町のロケツーリズムの実績と魅力をPRしたのだ。
豪雨災害により、今まさに被災地として大変な状況にある広島県呉市 新原芳明市長は、「本日は来るかどうか考えたが、窓口が一本化され、市民が一体となった組織で復興に取り組もうとしていることと、ロケツーリズムの取り組みとは共通のものがあると感じたし、今後の呉市のためにも今日は参加することにした。」と、市のトップとして、ロケツーリズムに強い意欲を示した。
NHK朝ドラ『あまちゃん』の舞台となった岩手県久慈市 遠藤譲一市長は、「私自身、ロケツーリズムが大好きです。副市長と共に久慈市の魅力をふだんからPRしています。」と、小さい町ながらも、『あまちゃん』をきっかけでロケツーリズムに対する市民の理解の深まりとモチベーションが上がり、“北三陸「あまちゃん」観光推進協議会”という組織で一体となってロケを受け入れる体制があると紹介した。
映画『君の名は。』の舞台となった岐阜県飛騨市 都竹淳也市長は、作品のロケが行われていたこと自体、当時は市としては認識しておらず、後追いになってしまったことに危機感を感じたという。
同様にこの日集まった各市長は、ロケツーリズムに対する意欲が高く、市長自ら引っ張っていくという意気込みが感じられ、その話を聞いていた、松竹芸能取締役小林氏をはじめ、この日招かれたテレビ業界のプロデューサーの方々も、「心強いです」と感心して聞き入っていた。
ロケツーリズム協議会の活動は継続して行われ、今回のようなTOP会談も複数回予定しているという。
観光庁の取り組み
観光庁も、2020年に訪日外国人者数を4,000万人にする目標に向け、ロケツーリズムの推進が観光振興に必要な取組と認識。2016年度から「テーマ別観光による地方誘客事業」にて支援してきたが、今年度は観光庁としては支援の最終年となる。
この日も参加していた観光庁の根来恭子氏(観光地域振興部 観光資源課 地域資源活用推進室長)は、
「各地の皆様にはここで勉強したことを活かしながら、地元ならではの実践をもって自立し、地域振興に努めていただきたい。この協議会の中から、日本のインバウンド誘致・受入を牽引するような地域が続々と誕生してほしいと大いに期待している。」
と説明した。
各市の取り組みとPRポイント
岩手県久慈市 市長 遠藤譲一( 連続テレビ小説『あまちゃん』 )
北三陸「あまちゃん」観光推進協議会が広域でロケ受け入れ
海岸・港・漁場貸し切りでロケ協力
撮影後の作品宣伝もまちぐるみで協力
ロケ隊のサポート
市内の宿泊・飲食・観光情報
撮影実績と地域の魅力
海外メディアも注目
撮影スポット盛りだくさん
三陸鉄道も全面協力・闘牛など
岐阜県飛騨市 市長 都竹淳也( 映画『君の名は。』 )
市長が先頭に立ってお出迎え
窓口一本化
権利処理の勉強を市民含めやっている
飛騨市の魅力
市内にはたくさんのロケーション
飛騨市ロケおもてなし隊発足
ロケ弁・ケータリング、ロケ対応、宿泊、エキストラ、ロケ施設
神奈川県綾瀬市 市長 古塩政由(※代理人出席)( 映画『空飛ぶタイヤ』 )
官民一体組織での対応
市民エキストラ320名
ロケ地候補数147件
厚木航空施設もロケ相談可能
キッチンカーでご当地グルメをケータリング
長野県千曲市 市長 岡田昭雄 ( 大河ドラマ『お江』 )
ちくまロケ杏力隊
顧問である市長をトップに一本化組織
千曲市の魅力
日本一のあんずの生産量
昭和の温泉街など古い町並み
千葉県いすみ市 市長 太田 洋( 映画『万引き家族』 )
官民一体の受入体制
『孤独のグルメ』他、各種テレビ番組により続々と街の人々が紹介される
広島県呉市 市長 新原芳明(『この世界の片隅に』、『海猿』など多数)
ロケ受入の組織体制(呉地域フィルムコミッション)
2市2町(呉市・江田島市・熊野町・坂町)
69団体(商工会議所・観光協会・観光関連事業者など)
ロケ地の魅力
海上自衛隊や海上保安庁との連携
映画「男たちのYAMATO」
映画「海猿」
映画・ドラマ「この世界の片隅に」
歴史的な建造物や町並み
日本遺産である旧海軍ゆかりの建造物
江戸から昭和初期にかけての町並みが残る御手洗
昭和レトロな中央商店街
CM 日産「DAYS」 サントリー「オランジーナ」
映画『孤狼の血』
恵まれた自然風景
ドラマ『平清盛』
[取材・記事・写真:Jun Sakurakoji]
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