映画『愛されなくても別に』

【インタビュー】馬場ふみか「自分の幸せが他の人の幸せとは限らない」映画『愛されなくても別に』

公開中の映画『愛されなくても別に』で、南沙良と共に毒親を持つ女の子を演じた馬場ふみか。撮影エピソードや本作で描かれる親子での愛し方、愛され方のすれ違いについて思うところを聞いた(読者プレゼントあり)。
 
本作は、「響け!ユーフォニアム」で知られる武田綾乃の同名小説の映画化。日本最年少でカンヌ国際映画祭への出品を果たした井樫彩監督の最新作として公開中である。
毒親、虐待、性暴力など家族間で生じる問題から社会のひずみに切り込みつつ、その世界をサバイブする女性たちの清々しさと、「不幸中毒」からの脱却までを鮮やかに描いた本作。
浪費家の母親に依存される主人公・宮田陽彩(みやた・ひいろ)役に南沙良、過酷な家庭で育つ過去を持ち、陽彩と徐々に心を通わせていく江永雅(えなが・みやび)役を馬場ふみか。そして過干渉の母親から逃れるため、宗教にのめり込む木村水宝石(きむら・あくあ)役を本田望結、三人が働くコンビニの同僚・堀口順平(ほりぐち・じゅんぺい)役をIMP.の基俊介が演じた。

馬場ふみか インタビュー&撮り下ろしフォト

■「人間扱いしてくれるのが好き」

‐本作の脚本を最初に読まれたときの感想はいかがでしたか?
 
馬場ふみか(江永雅 役)
原作にも脚本にも「女扱いじゃなく、人間扱いしてくれるのが好き」っていう江永の言葉があるんですが、それにすごく共感したのを覚えています。そのように思った瞬間が自分にもあったなって。
物語としては、宮田陽彩(ひいろ/演:南沙良)と江永それぞれが、家族との関係性など、とても重くて苦しいものを抱えているものが描かれていますが、一方で、友達とか家族とも違った2人の寄り添い方が素敵で、こうした相手に出会えることって、とても幸せだなと思いました。
映画『愛されなくても別に』

馬場ふみか

‐今回、クランクイン前に馬場さんと南さんそれぞれ個別でアクティングコーチを受けられたそうですが、それによって役作りにどう生かされたのかを教えてください。
 
馬場ふみか
まず最初に、これまで私が出演してきた作品を講師の方が観てくださっていて、改善した方がいいよねという私のクセを教えていただきました。
そして、この作品については、映画では描かれていない、江永がまだお母さんと一緒に暮らしているときのシーンの台本でレッスンをやりました。それは、江永がお母さんにお金を渡しつつ「もうこういうことは止めたい」というシーンなんですが、それによって、江永が宮田に自分の家族のことを話すシーンの撮影ですごく生かされたと感じています。とても大きな手助けになりました。
 
‐井樫監督からはどういう演出がありましたか?
 
馬場ふみか
色々やろうとしなくていいから、とにかく引いて、そのまま喋ってくれればいいですと言われました。

映画『愛されなくても別に』

■馬場ふみかと江永は似ている?

‐それらをふまえ、江永というキャラクターをどう捉えて役作りのアプローチをされましたか?
 
馬場ふみか
井樫監督曰く、私と江永が似ているそうで(笑)
もちろん、育った環境や、今置かれている状況は全然違うんですけど、江永は、表面的にはドライに人との距離を測るんだけど、内面は優しい人間でお節介なところもあるのが可愛いなと。行き場を無くした宮田に「一緒に暮らさない?」って声をかけるのもそうだし、木村水宝石(あくあ/演:本田望結)が信仰しているコスモ様に一緒に会いに行ってあげたりとか、一見冷たそうに見せていながらの優しさがすごく可愛らしいなと私は思っています。
だから、宮田は江永と一緒にいることですごく救われている部分があるのと同じように、江永も宮田といることですごく救われている部分があるんだなって。
映画『愛されなくても別に』

場面写真  江永雅(演:馬場ふみか)/宮田陽彩(演:南沙良) ©武田綾乃/講談社 ©2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会

‐なるほど。根は優しくてちょっと世話焼きみたいなところが馬場さんと宮田は似ていると井樫監督は言いたいのでしょうか。
 
馬場ふみか
私は世話は焼かないです(笑)なのに「ふみちゃんは(江永)雅だよ」って、お話をいただいた時から言われていて、なんでですかね。
この作品の試写を観に行った知人から「もうめちゃくちゃ馬場だったね」って言われて、私ってこういう風に見えてるんだって思うことにしました(笑)

映画『愛されなくても別に』

■2人の距離感がとても大切な作品

‐江永雅を演じる上で意識されたことは?
 
馬場ふみか
生まれ育った環境とは自分と大きく違うので、完璧に理解することは難しいと思うんですけど、知っていくために様々な本を読んで理解を深めようとしました。
あと、今回はそれぞれの演じ方以上に、2人の距離感がとても大切な作品だなと思いました。
私も(南)沙良ちゃんもお互いに人見知りなのもあり、なにかしっかりと話し合うというようなことはなかったんですが、毎日撮影で一緒なので、ちょっとずつ自然に距離が縮まって、なにかを話すわけではないけど隣にいるというような感じで、それが宮田と江永の関係性にも反映されていて、それがとても大事だったのかなと思います。
 
‐馬場さんと南さんは今回が初共演となりましたが、撮影前と後で、南さんの印象で変わったところはありましたか?
 
馬場ふみか
初めて会った時と、今とでは、全然印象が違います。
初めて会った時は、緊張していて、人見知りっていうのもあって、どうやってお話しようかと思っていたんですけど、だんだん慣れてくると、思っていた以上にフラットで可愛い子だなと思いました。20代前半らしい可愛らしさみたいのがどんどん見れるようになってきて、とても嬉しいです(笑)
映画『愛されなくても別に』完成披露上映会

南沙良/馬場ふみか(6月8日 映画『愛されなくても別に』完成披露上映会)

 
‐先ほど南さんとは特に話し合うことはなかったとおっしゃいましたが、それはすわち、お芝居についての相談も特にされなかったと?
 
馬場ふみか
全然してないです。「もうすぐ池のシーンがあるね」とか「お腹すいたね」とかそんな程度です(笑)
 
‐お芝居とは直接関係ない雑談はされていたということですね。
 
馬場ふみか
はい。本当に毎日そんな感じの会話でした。
作品撮影が終わってからの昨年末に2人でご飯に行ったんですが、その時も、家の日当たりがどうとか、ほんとに日常のお話ばかりで、お仕事の話はほとんどしませんでした。
映画『愛されなくても別に』

©武田綾乃/講談社 ©2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会

■2人の素が出ている自転車のシーン

‐撮影全体を通して、思い出に残っていることは?
 
馬場ふみか
髪色のチェンジがとても大変でした。
最初はピンクで、次に青くなって、最後は金髪。
ピンクのときはウィッグだったんですけど、青のときは、毎日金髪の上にスプレーをかけてたので、それにすごく時間がかかっていました。
ちなみに、原作では、そんなに頻繁に髪の毛の色は変わってないんですが、井樫監督による映画だけのアイディアです。というのも、私は普段、作品と作品の間に時間があるときに、けっこう髪の色を変えることがあって、その時にピンクも青もやっていて、それを知っていた井樫監督がこの映画に採用したんです(笑)
映画『愛されなくても別に』

場面写真(馬場ふみか/伊島空)  ©武田綾乃/講談社 ©2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会

‐なるほど。ちなみにその作品の合間に髪色を変えるのは例えばリフレッシュしたいとかですか?
 
馬場ふみか
そうです。役柄に応じて髪型を変えたりとか、髪の色を指定されたりとかするので、自分のやりたい髪型本当に合間にピンクにしたり、パンクしたり、金髪にしたりやってます。

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‐髪の色以外で、その他撮影全体通して大変だったこととか、逆に楽しかったこととか、なんか印象に残ってることはありますか?
 
馬場ふみか
自転車2人乗りのシーンは、結構大変でした。
私が前で、後ろに沙良ちゃんを乗せて、グネグネした山道を下るんですが、私達の前に荷台にカメラを乗せた軽トラがあって、それと一緒に走る形で。
後ろに沙良ちゃんを乗せてるし、もちろん安全に漕がなきゃいけないし、前のカメラとの距離も一定に保ちながら、セリフも言わなきゃとか、ここでいったん止まらなきゃとか、もうとにかく同時にやることがいっぱいあって、それは本当に大変でした。
 
‐ちなみに何テイクぐらい撮ったんですか?
 
馬場ふみか
最後はドローンでの撮影もありましたし、テスト含めると、10回以上やった気がします。

映画『愛されなくても別に』

‐10回もやっていると、やっぱり慣れてはくるものですか?
 
馬場ふみか
1番最初よりは多少慣れましたが、曲がりくねった下り坂だったので難しかったです。
 
‐しかも、人を後ろに乗せてると、自由も利かせにくいですしね。
 
馬場ふみか
そうなんです!衣裳合わせの日に、撮影所内の道で、2人乗り練習をしたんですが、沙良ちゃんがほんとにできなくて(笑)、結局私が前になりました。
 
‐劇中、池から自転車で帰る時に、「宮田が漕いで」って江永が宮田に運転を促すシーンがありましたよね?
 
馬場ふみか
その時の沙良ちゃんは、(練習していた時以上に)本当に漕げなくなっていて、(台本上の)セリフは終わっているんですが、2人で「ヤバイ!」とかギャーギャー言っているのがそのまま本編に使われています(笑)
 
‐ちょっと疲れている感じでしたしね。ということはあの瞬間は、素のお二人?
 
馬場ふみか
はい。リアルな二人です(笑)
 

■今年も盆踊りをしたい

‐馬場さんはデビューされておよそ10年。20代のほとんどを俳優として活動されてきましたが、改めてこの10年振り返っていかがですか?
 
馬場ふみか
とにかく目の前にあるものに取り組んできた日々だったなと思います。振り返ってみると、あっという間だなと感じますが、様々な作品で様々な方々に出会えて、ここまできたなと思います。
 
‐それを踏まえて今後の抱負はありますか?プライベートのことでもお仕事のことでも。
 
馬場ふみか
とにかく健康に留意して生きていきたいですね。ジムに通ったり食べ物に気をつけたり。
役者としては、20代前半と後半でも、演じる役柄が大きく変わりましたし、自分の年齢によって、役柄のライフステージも変わっていったりするところも、役者の面白いところだなと思うので、30代になってまた変わっていくのもとても楽しみです。どこに行っても光っていられるような役者を目指せればいいかなと思っています。
 
‐いよいよ今年も本格的な夏到来ですが、この夏やってみたいことは?
 
馬場ふみか
お祭りに行きたいかな。一昨年だったかな、友達と近所の盆踊りに行って、地元の方が踊っているのを見ながら振りを覚えて盆踊りしてみたらとても楽しかったんです。なので今年も盆踊りしてみたいです。

映画『愛されなくても別に』

映画『愛されなくても別に』

■自分の幸せが他の人の幸せとは限らない

‐この作品のテーマにちなんだ質問です。この作品では、親子の観点で愛し方、愛され方のすれ違いが描かれていますが、本作を通して改めて馬場さんがその点について、考えを新たにされたこととはありますか?
 
馬場ふみか
大変難しい話ですけど、こうして様々な環境に置かれている人がいるということを改めてちゃんと認識して生きることがとても大事だなと思います。
やっぱり自分の環境が全ての人に当てはまるわけでもないし、自分の幸せが他の人の幸せとは限らないことをちゃんと自分でわかった上で、人と関わることが必要だと思いました。
 
‐最後に、これから本作をご覧になる方に、ご自身が演じられた役の見どころ含めたPRメッセージをお願いします。
 
馬場ふみか
江永は、最初と最後で大きく印象が変わっていくので、そのちょっとずつ変わっていくところを楽しんでいただきたいです。
物語には、毒親、貧困といった重苦しいテーマも含まれていますが、最後に光が見える映画になっているので、ぜひ劇場でご覧いただきたいです。

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馬場ふみか(ばばふみか)プロフィール
1995年6月21日生まれ、新潟県出身。
『パズル』(14/内藤瑛亮監督)で女優デビュー。「仮面ライダードライブ」(14/EX)で敵女幹部・メディックを演じて話題となり、『黒い暴動』(16/宇賀那健一監督)で初主演を果たす。『恋は光』(22/小林啓一監督)では演技が評価され、第44回ヨコハマ映画祭にて最優秀新人賞を受賞。
主な出演作に、『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』(18/西浦正記監督)、『糸』(20/瀬々敬久監督)、『ひとりぼっちじゃない』(23/伊藤ちひろ監督)、『愛に乱暴』(24/森ガキ侑大監督)などに出演。
現在は、DMMTV オリジナルドラマ「外道の歌」(24)が配信中。

■馬場ふみかさん 直筆サイン入りチェキ読者プレゼント

馬場ふみかさん直筆サイン入り撮り下ろしチェキを抽選で1名様にプレゼントします。
NB Press OnlineのX(旧Twitter)アカウント(@NB_Press_Online)をフォローの上、下記の本記事紹介&プレゼント応募告知ポストのRP(リポスト)で応募完了。
ご当選者には、XのDMにてお知らせいたします。(参考:個人情報の取扱いについて
応募締め切り:2025年8月3日(日)23時59分
★★★

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■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎、メイク:北原果/Conomi Kitahara、スタイリスト:藥澤真澄/Masumi Yakuzawa(TRON)]
 
◎衣装クレジット
ドレス¥63,800/フォトコピュー(フォトコピュー03-6265-8322)
ピアス¥95,700、リング(右手)¥117,700、リング(左手)¥113,300/シャルロット シェネ(エドストローム オフィス 03-6427-5901)
シューズ 参考価格/ピエール アルディ(ピエール アルディ トウキョウ 03-6712-6809)

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映画『愛されなくても別に』

《INTRODUCTION》
「響け!ユーフォニアム」で知られる武田綾乃の同名小説が原作の映画『愛されなくても別に』が、日本最年少でカンヌ国際映画祭への出品を果たした井樫彩監督の最新作が、絶賛公開中である。毒親、虐待、性暴力など家族間で生じる問題から社会のひずみに切り込みつつ、その世界をサバイブする女性たちの清々しさと、「不幸中毒」からの脱却までを鮮やかに描いた本作。
浪費家の母親に依存される主人公・宮田陽彩(みやた・ひいろ)役に南沙良、過酷な家庭で育つ過去を持ち、陽彩と徐々に心を通わせていく江永雅(えなが・みやび)役を馬場ふみか。そして過干渉の母親から逃れるため、宗教にのめり込む木村水宝石(きむら・あくあ)役を本田望結、三人が働くコンビニの同僚・堀口順平(ほりぐち・じゅんぺい)役をIMP.の基俊介が演じた。

《STORY》
宮田陽彩(みやた・ひいろ)(19)は、“クソ”のような大学生活を送っていた。
大学に通い、それ以外の時間のほとんどを浪費家の母に変わっての家事とコンビニでのアルバイトに費やし、その中から学費と母と2人暮らしの家計8万を収める日々。遊ぶ時間も、金もない。
何かに期待して生きてきたことがない。親にも、友人にも・・・。
いつものように早朝にバイトを終えた宮田は、母のために朝ご飯を作り、家事をした後に大学に登校していた。そこで大学の同級生であり、バイト先の同僚でもある 江永雅(えなが・みやび)(24)のひょんな噂を耳にする。威圧的な髪色、メイク、ピアス──バイト先ではイヤホンをつけながら接客する、地味な宮田とは正反対の彼女の噂。
「江永さんのお父さんって殺人犯なんだって」
他の誰かと普通の関係を築けないと思っていたふたり。ふたりの出会いが人生を変えていくー。

出演:南沙良 馬場ふみか
本田望結 基俊介(IMP.) 伊島空 池津祥子 河井青葉
監督:井樫彩
原作:武田綾乃『愛されなくても別に』(講談社文庫)
脚本:井樫彩/イ・ナウォン
主題歌:hockrockb「プレゼント交換」(TOY’S FACTORY)
企画・プロデュース:佐藤慎太朗
製作幹事・制作プロダクション:murmur
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
武田綾乃/講談社 ©2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会
公式サイト:aisare-betsuni.com
公式X:@aisare_betsuni
公式Instagram:@aisare_betsuni

予告編

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2025年7月4日 新宿ピカデリーほか全国ロードショー!

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