早織

【インタビュー】早織「“生きてる内はみんな作り手”というセリフが好きなんです」

映画『辻占恋慕』(5/21公開)にて、主人公のミュージシャン月見ゆべし役を演じる早織。ギター未経験にも関わらず、弾き語りシンガーの役を当て振り無しに演じきるまでの取り組みと共に作品の魅力について伺った。

早織 インタビュー&撮り下ろしフォト

■初めは当て振りかと思っていたギター演奏シーン

-歌唱シーンやギター演奏もありますが、出演前からそれはお聞きになっていましたか?

早織(月見ゆべし 役)
2019年の初めに大野監督からオファーをいただいた時はまだ細かなことは決まってませんでした。
マネージャー役かミュージシャン役か、どちらを演じるのかも、連絡をくれたプロデューサーから事前に希望を聞かれました。女性が男性のミュージシャンを支えるという設定はよくあるように感じられたので、その逆を映画で観てみたいと思って、ミュージシャン役を希望しました。でも問題は弾けないギターをどうするか?ということです(笑)
撮影は音源に合わせての当て振りかなと思っていたのですが、ただ、当て振りとはいえ、ギターをどう持つか、どう指で弦を押さえるかも知らなかったので、自習を始めました。それが2019年の3月頃。しかし自分でやってみてもわからないことばかりで、コードも綺麗に鳴らせず、困り果てました。その後、知人にギターの先生を紹介してもらって、基本的なことから学び直し、上達を目指して、好きな曲を1曲覚えて歌いながら弾ききる練習をしていました。

早織

早織

-その曲とは?

早織
カネコアヤノさんの「とがる」という曲です。2020年に入り、西山小雨さんが本作の楽曲を担当してくださることが決まってから、西山さんにお会いして、私の今のギターのレベルがどのくらいなのか、曲のキーがどれくらいだと私が歌いやすいのかを見てくださって、そこから脚本も深く読み込んでくださった上で月見ゆべしの曲を書き下ろしてくださいました。

-西山さんと初めてお会いした時、早織さんのギターのレベルについてはなんとおっしゃってましたか?

早織
一から始めてここまで弾けるようになって、めちゃめちゃ頑張ったでしょうと驚かれていました。

■大野監督「撮影で実際に弾いてほしい」

早織
私がここまでギターを練習していることを受けて、監督が「撮影現場で、早織さんの弾く実際の音を録りたい」って言い出したんです(笑)それを聞いて「えっ!?」って、私の演奏した音が映画に残るという、また別のプレッシャーが生まれました。当初2020年5月くらいにクランクイン予定だったのが、コロナ禍で延期になって。映画の楽曲を練習する時間はできたんですが、どれだけ練習しても落ち着かなかったです。

-延期後のクランクインはいつですか?

早織
2021年3月末から4月頭の9日間で撮影しました。

-監督は早織さんのギター上達度についてはなんとおっしゃってましたか?

早織
撮影が1年近く延期になって、頓挫する可能性もあったでしょう。監督は「そんな状況でも早織さんはひたむきにギターに取り組んでくださっていて、この映画は早織さんのために撮りました」っておっしゃってました(笑)
ほんとは中止になっていたら監督も「コロナだし仕方ないなぁ」って気が楽になるところもあったかもしれませんが、「早織さんはずっとギターを練習し続けているから、俺は逃げられないな」ってなったらしいです(笑)
すべての撮影が終わって、監督と私と疲れ果てた状態でメイキング用インタビューを撮ってたんですけど、その時、監督がそう言ってました(笑)

-歌を歌うことはもともとお好きなんですか?

早織
音楽は大好きで、歌を歌うことも好きなんですが、ヘタだなあと感じています。音程がちゃんと取れないんですよ。自分でギターを弾きながらだと音程を取れるんですけど、誰かの伴奏にあわせてでは音程をうまく取れないというレベルです。
なので、この映画を観ていただいた方に「歌が良かった」って言ってもらったとき、素直に嬉しかったです。ギターを練習してみて、改めて弾き語りが好きだなって思いました。言葉が好きなので。

辻占恋慕

月見ゆべし(演:早織)©2021 E&E

月見ゆべし(早織)劇中歌カセットテープ

月見ゆべしのカセットテープに見立てた「辻占恋慕」サントラ(税込2,000円)。劇中曲「獣」「雨の日」「じゃがいも」「サヨナラナンマイダ」と主題歌「辻占恋慕」の全5曲を収録。

■「生きてる内はみんな作り手」

-早織さんは本作の物語をどう捉えていらっしゃいますか?

早織
さまざまな立場の人が出てくるんですけど、川上なな実さんが演じている西園寺琴美が、「生きてる内はみんな作り手だと思うけどなあ」と言うんですけど、このセリフがとても好きです。
お芝居や音楽などはもちろん作ることですが、日常生活において自分で言葉を紡いだりすることも“作ること”だと思うからです。表現することって、誰もが生きている間に何かしらしていることだと思います。
『辻占恋慕』は、そういうことを大切に生きたいと思える映画だと感じています。劇中、ライブシーンで信太(しんた)が「俺はライブがしてぇんだよ」って言うんですけど、あれは音楽ライブがしたいということではなくて、“生きたいんだよ”っていう切実な叫びに聞こえるんです。
周りの人、他者の価値観から解放されて、自分自身の人生を生きるというメッセージに繋がるのではないでしょうか。

辻占恋慕

西園寺琴美(演:川上なな実) ©2021 E&E

■監督であり共演者でもある大野大輔

-大野大輔監督とは監督としてだけではなく、マネージャー・信太役としての共演者でもあります。早織さんから見て大野監督印象は?

早織
大野さんは役者として演じることにも集中しないといけなかったですし、大野さんが演出の上でねばることと、あまり重視していないこととの差が大きいなあと思いました。
なので、「そこは何もおっしゃらないんだ」ってところは、私や、カメラマンさんらと相談しながら作っていくこともありました。そういう意味では共同作業してみんなで頑張ったなっていう現場でした。

-なるほど。大野監督は自分でこだわるところと、周りの役者やスタッフに任せるところがあるということですね。

早織
そうです。たとえば最初の居酒屋のシーンでは、実際にバンドをやっている方が来てくれたんですが、なかなか自然な会話にならない中、普段煙草を吸うと伺ったので、煙草を吸いながら会話しようかって私がカメラマンさんに提案したら、「あっそうだ!なにか足りないと思ったら煙だ。それいいね!」ってなったこともありました。
そんな感じで、こうすると良いんじゃないかってみんなで意見を出し合いながら撮影を進めることもありました。

辻占恋慕

マネージャー・信太(大野大輔監督)/月見ゆべし(早織) ©2021 E&E

-逆に大野監督がここはこだわったという点は?

早織
セリフの抑揚ですね。抑揚があんまり無い方がいいと。
例えばケンカのシーンでも強い感情をぶつけ合うのではなく、淡々と会話を進めるというのが監督の色でした。

-なるほど、いわゆるテレビドラマ的なわかりやすい感情の出し方ではないということですね。

早織
はい。いかにも、というのは、監督は好まれませんでした。
もうひとつ監督がこだわったのは、セリフを言うタイミングなどの“間”です。

早織

早織

■最後にメッセージ

-最後に本作をこれからご覧になる方へのメッセージをお願いします。

早織
この『辻占恋慕』はポスタービジュアルに歌詞も載っていて、映画を観た後にこの歌詞の内容がより染み入ってくると思うんです。なので、もしこのポスターやチラシを見て気になってもらえたら、是非劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。

辻占恋慕

ポスタービジュアル

早織

■フォトギャラリー

[写真・インタビュー:桜小路順/ヘアメイク:灯(ROOSTER)/ジュエリー:SHUN OKUBO]
衣裳:Y.M.Walts (ワイエムウォルツ)
ワイドパンツ ¥45,100(税込)
オープンカラーシャツ ¥33,000(税込)

早織(さおり)プロフィール
1988年生まれ。京都府出身。高校時代に小出早織としてTVドラマ「ケータイ刑事 銭形雷」(2006年)に主演し、「帰ってきた時効警察」、映画『舞妓 Haaaan!!!』(いずれも07年)に出演。映画『百円の恋』(14)、『過激派オペラ』(16/主演)、『望み』(20)、NHK連続テレビ小説「スカーレット」(20)、Amazonプライム・ビデオ『失恋めし』(22)、舞台「夜は短し歩けよ⼄女」(21)、「九十九龍城」(21-22)など多数出演。

■史上初!? 映画グッズ対バン決定![ゆべしのサントラカセットテープ VS あずきのCD仕様パンフ]

昨日、当サイトで報じたように、劇場公開を記念し、早織演じる月見ゆべしと、加藤玲奈演じる世の中を達観したアイドル・菊地あずきが劇中で対バンする展開にちなみ、史上初!?となる映画グッズ対バン[ゆべしのサントラVS あずきのパンフ]が発売される。

辻占恋慕

ゆべしVSあずき

月見ゆべしのカセットテープに見立てた「辻占恋慕」サントラ(税込2,000円)には、劇中曲「獣」「雨の日」「じゃがいも」「サヨナラナンマイダ」と主題歌「辻占恋慕」の全5曲を収録。
一方、あずきのCD仕様のパンフレット(全24P/税込1,200円)には、早織&西山小雨の特別対談や、ミュージシャン・作家のタカハシヒョウリによるレビュー、サントラ収録曲の歌詞のほか、あずきが歌う「君の体温と僕の体温、合わせて75度」「メロンソーダ」収録のCD 付き。劇場限定で販売される。

映画『辻占恋慕』

INTRODUCTION
TAMA NEW WAVEでグランプリ他3冠に輝いた傑作「ウルフなシッシー」や YouTube ドラマから発展した怪作「アストラル・アブノーマル鈴木さん」など、不器用で一筋縄ではないキャラクターたちの日常と“ジワる”人間臭さを照射し、心に刺さる台詞の数々と骨太な構成でファンを獲得し続けている鬼才・大野大輔監督が描く、平成から令和へと変わりゆく時代を生きる“持たざる者”たちの激苦な愛と青春のラプソディ『辻占恋慕』。
鳴かず飛ばずのシンガーソングライター、月見ゆべしを演じたのは、映画やドラマ、舞台と幅広く活躍する俳優・早織。それまでギターを持ったことがなかったものの、今回の出演にあたり、劇中歌を手掛けた西山小雨のサポートを受けながら練習を重ね、撮影時には吹き替えなしで演奏できるまでに上達した。
夢を捨ててゆべしを支えるマネージャーとなる信太役には、大野大輔監督自ら出演。そのほか、濱正悟(『ナポレオンと私』「恋せぬふたり」)、元 AKB48 の加藤玲奈、川上なな実(『東京の恋人』「全裸監督」)、ミス iD出身のひらく(『恋愛依存症の女』)、福永朱梨(『本気のしるし』『彼女はひとり』)、小竹原晋(『街の上で』)などが脇を固める。

STORY
ロックデュオ「チカチーロンズ」のボーカル・信太はある日の対バンライブでギターの直也にドタキャンを食らわされる。路頭に迷う信太に救いの手を差し伸べたのはシンガーソングライターの月見ゆべしだった。
売れない、金ない、時間ない、三十路同士の二人は共鳴し、やがて信太はゆべしのマネージャー、そして恋人となる。しかしメジャーに進出させたい信太と自分のスタイルを頑なに曲げないゆべしの溝は日に日に深まっていくばかりで…。

出演:早織 大野大輔
濱正悟 加藤玲奈 川上なな実 ひらく 福永朱梨 小竹原晋 / 堀田眞三
監督・原作・脚本:大野大輔
音楽:福田裕彦
劇中歌:西山小雨 ナビ 二ノ倉らむね
制作プロダクション:Creative Hub Swimmy
製作:E&E
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
©2021 E&E
公式サイト:http://tsujiurarenbo.com

予告編

YouTube player

5月21日(土)新宿K’s cinemaほか全国順次公開

辻占恋慕

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