萩原みのり×秋山ゆずき「根に持つことは前を向いて生きるために大事なこと」映画『成れの果て』
2021年12月3日、新宿シネマカリテにて、映画『成れの果て』初日舞台挨拶が行われ、主演の萩原みのり、秋山ゆずき、宮岡太郎監督が登壇した。
本作は、劇作家・映像作家マキタカズオミが主宰する劇団、elePHANTMoonが2009年に上演した同名戯曲が原作。上演されるやいなや、出演者の鬼気迫る演技と巧みなシナリオが評判を呼び、2009年度サンモールスタジオの最優秀脚本賞を受賞した。当時の小演劇界の話題を席巻した傑作が、12年の時を経て映画で甦る。
3年ぶり単独主演を務めた萩原みのりが演じたのは、8年前のある事件によって心に傷を負い上京した小夜。その事件に関わった男性が自分の姉あすみと婚約したことを知った彼女は、居ても立ってもいられず帰郷。小夜の過激な行動と言動が、周囲の人々を巻き込み、それぞれの隠された人間性を抉り出してゆくという極限の人間ドラマとなっている。
舞台挨拶レポート
■トークノーカット動画
■あんなに歓迎されない「ただいま」は初めて。
3年ぶりの単独主演となった萩原は、「最初に脚本を読んだ時は、小夜の最後の選択が理解できなかったんです。ここまで悩んだ作品は初めてでした。でも脚本の中で、小夜がひとりで叫んでいる感じがしたんです。その時、小夜の横にいきたいという気持ちが不思議と湧いてきました。たぶん小夜のことが好きだったんだと思います」とオファーを受けた当時の戸惑いと決断を告白。
それを聞いていた宮岡監督は「小夜を演じる俳優は、彼女の壮絶な過去をフラッシュバックなしで表情やお芝居で表現しないといけない。演じてもらうなら萩原さんしかいないと思いました」と語った。
萩原が演じたのは、常に怒りと悲しみを秘めている役どころ。中でも一番つらかったのは、帰京した小夜が玄関先で姉たちに「ただいま」を言うシーンだったそう。
萩原は「帰宅した小夜をみんながすごく嫌そうに眺めていて……(笑)。『ただいま』があんなにも(歓迎されるはずの)『おかえり』にならないのが苦しかったです。クランクイン直後に撮った最初のシーンでしたが、あの場に一人で立てたことで『この空気に負けんぞ』と言う気持ちが芽生えて、スイッチが入りましたね」と吐露。
■絵里役は“癇に障る声の持ち主”がいい
一方、物語を引っ掻き回す“大福娘”こと絵里を演じた秋山ゆずきは「監督からは場をかき乱して欲しいと言われたので、その場に訪れた台風ぐらいの気持ちで演じていました。楽しかったですね」とニッコリ。
絵里の無神経な一言が空気を一変させるシーンについて秋山は「共演者の皆さんのテンションがどんどん下がっていくんです。さすがに不安になりましたし、私も人間なので引っ張られそうになりましたが、監督から『みんなのテンションが下がっているのは“正解”なので、そのままの感じでいきましょう!』と背中を押されました」と明かし、監督も「もともと絵里役は“癇に障る声の持ち主”がいいなと思っていました。秋山さんは、『カメラを止めるな!』や『COMPLY+-ANCE コンプライアンス』で拝見していて、耳に残る声、魅力的な声にほだされてキャスティングしました」とキャスティングの経緯についてコメントした。
■演劇から映画にするにあたってのこだわり
本作は、劇作家・映像作家のマキタカズオミ主宰の劇団・elePHANTMoonが2009年に上演した同名戯曲が原案となっている。
映画化のきっかけについて聞かれた宮岡監督は「舞台版を見た当時、ヘビーなテーマですが、人間ってそんなものだよな、というか、人間の本質を描いたストーリーに惹かれました。僕自身、コロナ禍で創作活動ができなくなる中で、それでも自主映画を撮りたいと思った時に、予算や時間の制約に縛られないのはワンシチュエーションもの、密室劇だと考え、舞台版を思い出したんです」と述懐。
演劇から映画にするにあたってのこだわりについては「舞台版より尺を短く圧縮して、より濃密な人間ドラマを描こうと思いました。映像的なところで言うと、『ケンとカズ』のカメラマン、山本周平さんが手持ちカメラで捉える登場人物の寄りの表情や、照明の島内宏二さんによるスモークの演出など、舞台版を越える映像効果が出せたと思います」と振り返った。
■最後にメッセージ
萩原みのり
この作品を通して、根に持つということはつらいことじゃないということを知りました。根に持ちまくればいいじゃんって思います。
忘れたくても忘れられないことは、きっと忘れられない。無理に忘れようとするんじゃなくて、大事に自分の中にとどめて、一緒に生きていくという選択もある。
根に持つって、前を向くために大事なことでもあると思います。
誰か1人でもいいから、この作品がその人にとっての心強いお守りになって欲しいし、小夜がそういう存在になってくれたら嬉しいです。
■フォトギャラリー
[写真:金田一元、動画:桜小路順]
映画『成れの果て』
INTRODUCTION
萩原が演じるのは、8年前のある事件によって心に傷を負い、上京した小夜。その事件に関わった男性が自分の姉と婚約したことを知り、居ても立ってもいられず帰郷。彼女の過激な行動と言動は、周囲の人々をも巻き込み、それぞれの隠された人間性を抉り出してゆく……。
主人公・小夜役は『街の上で』『花束みたいな恋をした』『佐々木、イン、マイマイン』『アンダードッグ』など、数多くの話題作に出演してきた萩原みのり。邦画ファンの信頼厚い若手女優となった彼女が、『お嬢ちゃん』以来3年ぶりに単独主演を果たした。
そして脇を支えるキャストには、『千と千尋の神隠し』の千尋役をはじめ、数々の映画やドラマ、アニメで活躍する柊瑠美、『あの頃。』『21世紀の女の子』など、様々な邦画作品を彩ってきた木口健太、『カメラを止めるな!』のヒロイン役で話題となり「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」などテレビドラマでも活躍中の秋山ゆずき、「全裸監督」「来世ではちゃんとします」などでの個性的な佇まいが話題の後藤剛範など、確かな実力を持った面々が集結。
劇作家・映像作家マキタカズオミが主宰する劇団、elePHANTMoonが2009年に上演した同名戯曲が原作。上演されるやいなや、出演者の鬼気迫る演技と巧みなシナリオが評判を呼び、2009年度サンモールスタジオの最優秀脚本賞を受賞した。
当時の小演劇界の話題を席巻した傑作が、12年の時を経て映画で甦る。監督は「gift」「恐怖人形」など数多くの映画やテレビドラマの演出を手がける宮岡太郎。かつてリアルタイムで「成れの果て」の舞台版を観て衝撃を受けた彼が、自主製作映画として完成させた、観た者の心に⽖痕を残す衝撃のヒューマンドラマだ。
出演:萩原みのり 柊瑠美 木口健太 田口智也 梅舟惟永 花戸祐介 秋山ゆずき 後藤剛範
監督:宮岡太郎
脚本:マキタカズオミ
© 2021 M×2 films
公式サイト:narenohate2021.com
公式Twitter:@mov_narehate
予告篇
2021年12月3日(金)新宿シネマカリテ他全国順次公開!
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