【大九明子監督×のん インタビュー】「監督って別の生き物だなと思いました」
第30回日本映画批評家大賞にて、映画『私をくいとめて』が、主演女優賞・のん、監督賞・大九明子とW受賞。新宿文化センター大ホールにて授賞式が行われた5月31日、授賞式直後のお二人にお話を伺った。(撮り下ろしフォト)
大九明子監督×のん インタビュー
-この度の日本映画批評家大賞受賞おめでとうございます。第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」では観客賞。そして、日本映画批評家大賞はプロの目ということで、一般の方とプロの両輪で評価されたと思っています。
大九明子監督
たしかに!そうですね。
-日本映画批評家大賞ではどういうところが評価されたと感じられていますか?
大九明子監督
自分の映画を支えてくれる人ってどういう方々なんだろうとは常々思っているので、それぞれの作品ごとに、支えてくれるお客さんの評価を確認する作業はしてきました。
でも、批評家という皆さんとお仕事をする機会はなかなかないですし、あまり実感がなかったもので、まさか自分の映画が、批評家という映画を観て批評するということをお仕事にしている方たちの目に留まっていったということに、「えっ?」と驚きました。
そういった方々に褒められるというようなことをまったく考えずに、自分がおもしろいと思ったものを純粋に追っかけて撮ってきましたが、むしろそれがよかったのかしらと思ったりもしています。
-のんさんはいかがですか?
のん
すごく嬉しいですね。私も批評家の方たちとはお話したことはありませんし(笑)
受賞理由の言葉を伺って、自分が大事にしていた部分を褒めていただけたこと、そして、先ほどの授賞式でも「受けの芝居がとてもよくできる方」とも言っていただけたことも、とても嬉しかったです。
私は自分からわーっと出していく演技がそんなに得意だとは思っていなかったんですけど、『私をくいとめて』は、(受けだけじゃなく)自分から出していかないといけないシーンもあって、そこは、自分の中で鍛えられた気がしています。今後は、その点も評価していただけるように頑張ります。
-大九監督から見ての俳優・のんをどう見られていますか?そして、監督・のんとして期待されるものがあれば教えてください。
大九明子監督
監督として期待とか、そんなえらそうなことを言える立場ではまったくないので、そこは言えることはないです(笑)
俳優としては、今回の作品しかご一緒してないですけど、のんさんは、得難い実力をお持ちなのは確かで、とにかく信用できる職人っていう印象です。
映画は一人で作れないから、スタッフも俳優も全員がすべてのパフォーマンスを出し切っていろんなことを提案して作っていくんですけど、その中で、安心できる方ですね。お願いしたことはもちろんきちっと遂行してくれるし、それ以上のものを返してくれる。一緒に映画を作っていて楽しいし、大事な人でした。
-のんさんは、演じる立場として大九組はどうだったですか?また、監督の立場として大九監督のここを参考にしたいというところがあれば教えてください。
のん
この作品で、みつ子を演じる上で大九監督に質問させていただくと、みつ子のことがとても明快になって、さらに掘り下げていける答えをくださるので、それがすごく面白い体験でした。自分が思ってなかった答えが返ってくると、自分の中で新しい角度ができて、それを楽しんでいました。私は人に何かを伝えるのが伝え下手みたいなところがありますので、そこは参考にしたいですね。
あと、監督は、みんながウトウトしていても、一番元気!(笑)それが頼もしくて、私たちも乗り切らなければという気持ちになって、そこもすごくマネしたいなと思いました。
-元気と言えば、『Ribbon』の撮影現場を拝見した時、のんさんは監督として走り回られていて、とても元気な印象がありました。
のん
自分が監督をやってみてわかったんですけど、監督って別の生き物だなと思いました。眠くならない!(笑)
大九明子監督
“監督脳”みたいなのがあります(笑)
先日、深田晃司監督と対談する機会があって、「監督が気をつけなきゃいけないのは、アドレナリンが出ちゃってて、自分は疲れないから突っ走りがちだけど、ちゃんと食べ、ちゃんと眠るっていうことを(監督が)率先してやっていかないと。周りのスタッフ、俳優のためにも。」というお話が深田監督から出て、確かにそうだなと思いました。
のん
(監督やってると)眠くならないですよね(笑)
-なるほど(笑)お話ありがとうございました。
のん
『私をくいとめて』はまだ上映している映画館がありますので、公式HP(kuitomete.jp)をご覧いただき、是非足を運んでください!
■インタビュー後記
のんさんが最後に「是非映画館に!」と言われた部分は、いったんインタビューが終わって撤収しかけた時、まだ録音状態のICレコーダーに近づき吹き込まれたひとことです。『私をくいとめて』は、VODサービスでの配信も始まってますが、もし、今後、お近くの映画館で上映されることがありましたら、是非、劇場に足を運んでみてください。
■フォトギャラリー
[ヘアメイク:菅野史絵(クララシステム)/スタイリング:町野泉美/写真:金田一元/聞き手・写真:桜小路順]
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映画『私をくいとめて』
INTRODUCTION
ロングランを記録した『勝手にふるえてろ』の、原作=綿矢りさ×監督・脚本=大九明子のゴールデンコンビで贈る、映画『私をくいとめて』が2021年12月18日(金)より全国公開中。
脳内に相談役「A」を持つ、31歳おひとりさま・みつ子。悠々自適におひとりさまライフを満喫していたみつ子が、年下営業マン・多田くんと出会い、久しぶりに訪れた恋に戸惑いながらも一歩踏み出していくさまが描かれた本作。
監督は、『勝手にふるえてろ』(17)、『美人が婚活してみたら』(19)、『甘いお酒でうがい』(20)など、女性の生き方や恋愛にスポットを当てた話題作を次々と発表し続けている大九明子。
みつ子に扮するのは、劇場アニメ『この世界の片隅に』(16)で主人公・すず役の声を演じ、活動の幅を広げる女優・創作あーちすと のん。みつ子が恋する腹ペコ年下男子・多田くん役を演じるのは、この秋放送される「姉ちゃんの恋人」(カンテレ・CX)出演のほか、映画でも多数公開待機作を控え、今最も熱視線が注がれる実力派俳優・林遣都。さらに臼田あさ美、片桐はいりといった実力派役者陣や、本作で映画初出演となる若林拓也も存在感を発揮!令和を生き抜く女性たちに容赦なく突き刺さる、わかりみが深すぎる崖っぷちのロマンスを彩る。
第33回東京国際映画祭(2021年)で、今年唯一のコンペティション部門である「TOKYOプレミア2020」部門にて、一般観客からの投票で最も支持を集めた【観客賞】を受賞した。
STORY
30歳を越え、おひとりさまもすっかり板についてきた黒田みつ子。みつ子がひとりきりでも楽しく生活できているのには訳がある。脳内に相談役「A」がいるのだ。人間関係や身の振り方に迷ったときはもう一人の自分「A」がいつも正しいアンサーをくれる。
「A」と一緒に平和なおひとりさまライフがずっと続くと思っていたそんなある日、みつ子は年下の営業マン多田くんに恋をしてしまう。
きっと多田くんと自分は両思いだと信じて、ひとりの生活に慣れきってしまったみつ子は20代の頃のように勇敢になれない自分に戸惑いながらも、一歩前へふみだすことにする。
監督・脚本:大九明子 原作:綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日新聞出版)
音楽:髙野正樹
劇中歌 大滝詠一「君は天然色」(THE NIAGARA ENTERPRISES.)
出演:のん 林遣都 臼田あさ美 若林拓也 前野朋哉 山田真歩 片桐はいり/橋本愛
製作幹事・配給:日活
制作プロダクション:RIKIプロジェクト
企画協力:猿と蛇
(C)2020「私をくいとめて」製作委員会
公式HP:kuitomete.jp
公式Twiter:@kuitometemovie
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