辞書に載せるべき新語ランキング2017発表
2015年に始まって今年3年目となる三省堂「今年の新語2017」のベスト10の発表が、東京・神保町の一橋大学一橋講堂で行われ、特別ゲストとして水道橋博士が登壇した。
世にいくつかある新語・流行語ランキングの中で、本発表の特徴は一時的な流行語ではなく、“将来辞書に収録される可能性のある新語”と認められるほどに広く普及し、用例が確定している新語という観点で選ばれることにあり、辞書の編纂専門家が一般公募の中から選定した。
後世に残る新語
本ランキングの大きな目的は、既存の新語ランキングのアンチテーゼとして、後世に残るであろう新語の“誕生”と“普及”の時期・瞬間を見極め、目撃すること。
“言葉は生きもの”という表現があるとおり、同じ日本語でも、時代の流れと共に、読み方や意味合いが変化していくもの。その中には一時的なものもあれば、広く恒久的に定着していくものもある。
すなわち、そういった恒久的に定着していくという意味での“新語”の誕生を記録することが、本ランキングの目的であるという。
2017年の今年は、2452通の応募があり、その中から「辞書に載せるほどに確立した新語」として次のランキングが発表された。
大賞:忖度
2位:インフルエンサー
3位:パワーワード
4位:○○ロス
5位:フェイクニュース
6位:草
7位:仮想通貨
8位:オフショル
9位:いきる
10位:きゅんきゅん選外:卍(まんじ)・プレミアムフライデー・熱盛
大賞に「忖度(そんたく)」を選出した理由は、もともとの意味「相手の気持ちを推し量る」を越えて、今年は「有力者の気持ちを推測し、気に入られようにすること。」という新たな解釈で使われるようになったことが確定し、広まった年だからと、飯間浩明氏は説明した。
ユーキャンなどの新語・流行語大賞との差別化という点は意識しているが、2017年は「国語辞典」という観点でも、「忖度」という言葉は特徴的であったということだ。
これに対して、水道橋博士は、ビートたけしの弟子だった頃から「殿に忖度する」という表現を使っていたという。「“忖度”というのは、される側はそれと気付かないが、たけし軍団というある意味封建的な社会の中で、ぼくらは昔(1990年代頃)から、“忖度”という言葉は使っていた」と。
ちなみに、「インスタ映え」については、辞書に載せるという観点では、複合語ということでふさわしくないとのこと。載せるとすれば「インスタグラム」もしくは接尾語としての「映え」の用例のひとつとして記載することになるという。
「忖度」を各辞典風に解説すると・・・
大賞:忖度(そんたく)
『新明解国語辞典』風
【<忖度】-する(他サ)
[「忖」も「度」も推し量る意]
何らかの意味で苦境に立たされている人について、その心情などを、第三者があれこれ推測すること。また、その推測。
『三省堂国語辞典』風
①[文][相手の気持ちを]推測すること。「母の心中を-する」
②有力者の気持ちを推測し、気に入られようにすること。「会長の意向を-した報告書・-が働く」[二○世紀末から広まった用法]
『三省堂 現代新国語辞典』風
①ひとの気持ちをおしはかること。「かれの心中を-すると気の毒でならない」(類)察する②相手が希望していると思われることを、言われる前に行うこと。「有力な縁故者への-で、すんなり申請が通る」[②は、①をして何をするかというところまでが意味に含まれたもの。類例に「通夜」(=徹夜すること→徹夜して亡き人を弔うこと)]
その他いくつか紹介すると。
4位:○○ロス
ロス<接尾>[loss]
あるものがなくなったことで、喪失感のあまり無気力になってしまうこと。「ペット-」[ニ○十三年に放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」が終了したことによる喪失感を「あまロス」と言ったことなどから広まり、「○○ロス」という造語がさまざまに行なわれるようになった]
6位:草
くさ[草](名)[俗]
笑うこと。笑えること。「一問もわからなくて-・-生える[=笑ってしまう]」
[ニ○一○年代に広まった用法。笑いを表す記号「w」を「www」のように重ねた様子が草原に見えることから]
8位:オフショル
“off the shoulder”の略でファッション用語で、登壇した水道橋博士は聞いたことない!とコメントしたが、2016年ごろからふだん着としても流行している女性の服の一種を表した言葉だという。
ランキング各新語選出の語釈は三省堂の下記サイトにて、12月4日より公開
http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/topic/shingo2017/
選考委員(敬称略)
新明解国語辞典編集委員:倉持保男
三省堂現代国語辞典編集主管&明治大学教授:小野正広
三省堂国語辞典編集委員&早稲田大学・成城大学講師:飯間浩明
三省堂出版局長:瀧本多加志
藝人春秋2
そんな水道橋博士の新著「藝人春秋2」(上下巻)が11月30日発売。橋下徹氏とのエピソードの真実など書き下ろしも含む。
[写真・記事:Jun.S]
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