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【のん監督インタビュー】映画『Ribbon』にこめた思い。「映画、音楽、舞台、アートで今の自分が作られている」

本日(2021年3月19日)、のんが監督・主演を務める新作劇場長編映画『Ribbon』が2021年に公開されることが発表された。のん自身がコロナ禍で自身のフェスが中止になるなどして“芸術は不要不急なのか?”という自問自答がきっかけで誕生した物語で、卒業制作作品の発表の場を喪失してしまった美大生がアイデンティティを自らの手に取り戻すさまが描かれている。
特撮チームには、『シン・ゴジラ』監督・特技監督の樋口真嗣、准監督・特技統括の尾上克郎が参加しており、のん発案の “リボンアートによる感情表現” にも注目だ。
のんが監督を務めるのは、YouTube Original「おちをつけなんせ(2019年)」に続き2作目だが、劇場公開用長編作品としては初となる。

のん監督インタビューは、映画『Ribbon』クランクアップ数日後に敢行。本作に込めた思い、そして、監督と同時に主演として演じることも必要だった撮影現場での取り組みなどを伺った。インタビュー時の撮り下ろしフォトと、のん監督からのビデオメッセージと共にお届け。

なお、映画『Ribbon』の応援映像「映画と生きる 映画に生きる」3篇も公開されている。監督を樋口真嗣が務め、なんと、のん監督を支える映画スタッフ役として、緒方明、尾上克郎、犬童一心、片渕須直、白石和彌、市井昌秀、沖田修一、枝優花ら、日本映画を支える豪華監督陣が出演している。

のん監督 インタビュー

のん

のん監督

■“リボン”に込めた思い

-コロナ禍がきっかけだと伺ってますが、改めて本作製作に至った経緯について教えてください。

のん(監督/主人公・浅川いつか 役)
まさしくコロナ禍がきっかけです。昨年2月に自分主催の「NON KAIWA FES vol.2」を開催する予定だったんですが、緊急事態宣言前ではあったんですけど、コロナ禍の影響を考えて中止の決断をしました。当時は、主催側それぞれに開催するか中止にするか委ねられている比重が多かった気はします。
自分で中止を決断したものの、衝撃的だったしショックは大きかったです。
その後、緊急事態宣言に入ったら、他の仕事も全部ストップになって休みに入ったんですけど、時間が経つにつれて、何か作りたい!という欲は湧いてきて、“リボン”を使った映像を撮りたいなっていうアイディアだけが浮かんできたんです。
自粛期間に入った最初の3日、4日は一日中眠ってばっかりだったんですけど、だんだんと、こうしてはいられない!っていう気分になって、アイディアを形にしようと思い立って脚本を書き始めました。

-「“リボン”を使った映像を撮りたいアイディア」ということですが、本作のタイトルにもなっている「Ribbon」にはどういう意味を込められていますか?

のん
可愛いイメージがある“リボン”を、感情のモヤモヤした部分、ちょっと眉をひそめちゃうようなドロっとした部分を表すものとしたら面白いんじゃないかというアイディアから始まっています。可愛い“リボン”がもつれて絡まるとちょっと嫌なものに見えてくるんじゃないかと。
今、コロナ禍で世界中の多くの人が鬱屈した感情を持っていると思います。この映画に登場する美大生たちも時間をかけて作った作品を見てもらえなくなった。でもそれをそのままダークにイヤな感情のままとして描くのではなく、“リボン”みたいな可愛らしいもので表現し、そんなモヤモヤした感情でも可愛く昇華できるんだっていう可能性のあるもので見せたいと思いました。

-なるほど。あと、本作の物語から感じたのは、もしかして“Reborn(再生)”という意味もかかっているのではということ。その点はいかがでしょうか?

のん
それは私も後から気づきました。伸ばしたら“リボーン”になる!って。これは良い偶然だなって思います(笑)

のん

■美大生たちに取材を敢行

-本作では、卒業制作がコロナ禍の影響を受けたことによる、美大生のさまざまな感情の葛藤が描かれていますが、美大生を主人公にされた理由について教えてください。

のん
私自身が絵を描く活動をしていることもありますし、美大に関心があってオープンキャンパスに行ったこともあるんです。
そういうこともあり、主人公が何をしている人にしようかなって考えてみた時に、美大生のアイディアを思いつきました。
それで美大生の方達はコロナ禍でどういう影響があったのか調べてみて、今まで知らなかったけれどこんなにショッキングなことがあったんだと衝撃を受けました。

のん

-調べていく中で、実際に美大生の方にお話を聞かれたりしたんですか?

のん
はい。脚本を書き進めている段階ではあったんですけど、全国の美大が集まって見逃し卒展というものをやってることを知って、多摩美術大学のデザイン科の展示を見に行きました。その時に、出展していた学生たちと先生が集まっていて、「突然すみません!」って言いながら(笑)、「お話聞けますか?」ってお願いしたら快くセッティングしてくれて、そこで取材させていただきました。

-劇中に登場するいくつかの絵画はご自身で描かれたと伺いました。

のん
元々は、「コロナ禍での“未来の○○”」というテーマで描いた絵から始まっていて、その時に描いたのがリボンをたくさん纏った女の子の絵なんです。自分の感情や自分が思っていることは、自分自身で視覚化していかなくてはいけない未来になっていると想定して。現代でも、SNSが発達していて、芸能人じゃなくてもそれらを通して自分のことを発信していきますが、それのもっと未来の話として。
女の子が纏っているリボンは、自分のモヤモヤや怒り、楽しいこと、喜びといった感情を表しています。劇中で登場する卒業制作物もメインとしては、その絵を元に描きました。その他の作品も“浅川いつか”の作風としてリボンを絡めた作品になっています。

のん

■監督脳と俳優脳の切り替えの難しさ

-『おちをつけなんせ』に続いて、今回もご自身で出演もしながら監督もされてますが、それについての面白さと難しさについて教えてください。

のん
これは桃井かおりさんの受け売りなんですけど、自分が脚本を書いたり監督するので当然その作品のイメージを持っているわけですが、「それをまったく同じく共有している役者が一人いるっていうのは、すっごい楽よ」って、おっしゃってったんです。
でも、「楽なことあるのかな?」って、私の場合楽ではないなって思っていたんです(笑)
けど、今回それがわかった気がして、「あ、自分のイメージ通りに動くやつ(=のん自身)が一人いるのは、確かに良いものだな」って思いました。
でも現場で生まれるものや、人と人の間で生まれるものもたくさんあって、人に委ねて生まれてくるものを待つっていう作業もすごく楽しいのは変わりません。

-撮影現場では、「よういスタート」は助監督さん、そして「カット!」はのん監督ご自身でしたね。

のん
現場では恥ずかしかったですね。カットをかけるのは(笑)
泣いているシーンだと、涙を流した後に「カット!」って言うのが、「うわーっ、自作自演!」って思って(笑)ある意味面白かったですけどね。

Ribbon

メイキングカット ©映画「Ribbon」製作委員会

-泣いている演技から監督としての「カット」のかけ声は、感情などどう切り替えられるのですか?

のん
私は、のんになってからアクティングコーチについてもらって演技をする方法を取っているんですが、今回もガッツリ関わってもらいました。自分が監督っていうこともあって、“浅川いつか”を演じる自分自身を客観的に見られない場合もあるから、余計に必要でした。
監督の頭を使っていると、脳みそがそっちの方に集中してしまうので、役者で使っている時の五感とかに集中力がいってなかったりするんです。そうなると、“浅川いつか”じゃなくて、“のん”のまま本番演技に入ってしまうので、そういう時の切り替えはアクティングコーチと擦り合わせながらやるとすごくやりやすいんです。

-“のん”さんのまま演技してしまうってことがあるんですね。

のん
ダメなんですけどね(笑)スタッフさんにもホントごめんなさいです。
でも、それはそれで面白いんですけどね。“のん”のままでも充分!(笑)
監督脳のまま本番演技になった時は、「あぁ、もう一回お願いします」ってなります。テストで事前にそれが判明して、切り替えられることもありましたけど。
でも、今回は、『おちをつけなんせ』を撮った時よりは、監督と主役の両方をやるっていう感じが自分も上達してきて、かなり良かったです。自画自賛!自作自演の自画自賛!!自分で書いたセリフを喋ってモニターの前でチェックした時も「良いですね…」って自分を褒めてました(笑)

Ribbon

『Ribbon』場面写真 ©「Ribbon」フィルムパートナーズ

-“浅川いつか”が自室でポテトチップスを食べるシーンなどは、のんさんご自身と重なるところを感じたんですが、キャラクターにのんさんご自身を重ねているところはありますか?

のん
それはありますね。自分が(浅川いつか役を)やると思って(脚本を)書いていたので、当て書きの部分はあります。のんが“いつか”をやるとしたらこうするかなって考えながら書いていました。“のん”を素材に書きました。もちろん、丸々100%のんっていうわけじゃないんですけど、でも自分の高校生の時くらいの“のん”に近いかなって思います。モヤモヤしていて、自分が何者かもわかってなくて、ずっと鬱屈したものを抱えている感じは、高校生の時の10代の“のん”って感じですね。

のん

■のんが思う“不要不急”とは?

-劇中、“不要不急”という言葉が印象的に使われています。実際、コロナ禍で、美術だけに関わらず、舞台、音楽、映画など、多くのアーティストの方々がいろんな形で“不要不急”という言葉に影響を受けられました。創作活動を最前線でされているのんさんの立場から、この“不要不急”という言葉をどのように受け止められていますか?

のん
緊急事態宣言が出たり、飲食店の営業時間短縮、そして深刻な状況のニュースを見聞きして衝撃も受ける中、「あ、舞台や映画も音楽も?不要不急のものを控えるっていうのはこういうことか!?」っていうことも、実感として自分に押し寄せてきました。
そして、いざ、自分の主催の「NON KAIWA FES vol.2」中止の決断は、当初は「この状況ではできないよね。中止するしかない」って思っていたんです。でも、いざ、中止だって告知しなくちゃいけないタイミングになると、「えぇ、言わなきゃいけないの?楽しみに待ってくれているみんなにこんなこと言えない!」って言いたくなくなったんです。一緒に頑張ってきたバンドのメンバーとスタッフのみんなもいますし。
結局中止にはしたんですが、その時に改めて考えたことは、映画、音楽、舞台、アート、そういうものを観て、聴いて、感じて、今の自分が形作られているんだってこと。だからそれらを“不要不急”とは思いたくないっていうのは、その時にすごく感じました。
なので、私はアートも“必要必須”なんだっていうのを信じたいです。この言葉にはあんまりピンと来ない人が多いんですけど(笑)
“必要必須”なんだって信じたいから、この『Ribbon』っていう映画を作ったっていうのもあります。

-なるほど。

のん
あと、すごいお気に入りで私が通っているタルト屋さんやカフェがコロナ禍の影響で店を閉めてしまって、それもすごいショックだったんです。「うわぁ、私が外に行くのを控えてたからだ…」って、めっちゃ悔しかったですね。そこにまで自分の頭が回ってなくて申し訳ない気持ちにもなりました。
こういう葛藤って、誰か個人にぶつけられることじゃない。そういう自分の感情の行き場が無いっていうことも『Ribbon』には込めています。“浅川いつか”は自分が作品を作ることによって前に進んで行こうとします。

のん

■“のん組”がもう終わるなんて寂しい!

-撮影現場を拝見した時、「のん組」は女性スタッフを中心に構成されていることに気づきました。それはのんさんがこだわられたことでしょうか?またその理由は?

のん
根本的に女の子の映画になっているから、女の子の感性を受け入れてくれる人、その感性を共有できる方とやりたいっていうのが先にありました。結果的に女性が多くなってますが、録音部さんや助監督さんは男性ですし、この作品の感性を受け入れてくださった方々で、すごくいいチームだったなって思います。
感性を共有しながら作品を作っていく中で、この人はこうやって出してきてくれたんだって感じられることがあって、それはすごく楽しかったですし、面白かったです。

-クランクアップの日に撮影現場の見学をさせていただいた時、スタッフの方々が「“のん組”がもう終わるなんて寂しい」っておっしゃってました。

のん
ほんとですか!!うわぁ、嬉しい!!良かったぁ!!
「うるせいんだよこの監督、細けぇな」とか思われてないかなって心配もしてたんですよ(笑)

-いえいえ、何人かのスタッフの方に話を伺ったんですけど、皆さん「寂しい」っておっしゃってました。

のん
良かったぁ!私も寂しかったです!

のん

■のん監督ビデオメッセージ

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■フォトギャラリー

[スタイリスト:町野泉美、ヘアメイク:菅野史絵、インタビュー:安田寧子、写真・動画:桜小路順]

映画『Ribbon』

2020年冬。コロナ禍により一年かけて制作した卒業制作は、発表の場が失われた。
家での時間があるのに、なにもやる気がおきない……。
表現の術を奪われ、自分のやるべきことを見つけだせずに葛藤する美大生“いつか”を女優・のんが演じます。
鬱屈とした現状を、のんが持ち前のパワーで痛快に打破していく“再生”の物語です。

あらすじ
コロナ禍の2020 年。
いつか(のん)が通う美術大学でも、その影響は例外なく、卒業制作展が中止となった。
悲しむ間もなく、作品を持ち帰ることになったいつか。
いろいろな感情が渦巻いて、何も手につかない。
心配してくれる父・母とも、衝突してしまう。
妹のまいもコロナに過剰反応。
普段は冷静な親友の平井もイライラを募らせている。

こんなことではいけない。
絵を描くことに夢中になったきっかけをくれた友人との再会、
平井との本音の衝突により、心が動く。
未来をこじ開けられるのは、自分しかいない―。

誰もが苦しんだ2020 年―。
心に光が差す青春ストーリー。

脚本・監督・主演:のん
特撮:樋口真嗣
特撮プロデューサー:尾上克郎
製作統括:福田淳
エグゼクティブ・プロデューサー:宮川朋之
クリエイティブ スーパーバイザー:神崎将臣 滝沢充子
プロデューサー:中林千賀子
企画:のん
制作プロダクション:ブースタープロジェクト
製作:日本映画専門チャンネル non スピーディ コミディア インクアンク

2021年公開予定

映画『Ribbon』応援スペシャル映像「映画と生きる 映画に生きる」本日公開

いかなる状態になろうとも被写体を見つめ続ける“監督・のん”を描いた映画『Ribbon』応援スペシャル映像「映画と生きる 映画に生きる」(監督:樋口真嗣)も、のん公式YouTube、日本映画専門チャンネル(BS255)ほかにて公開中!
のん、そして日本を代表する監督、緒方明、尾上克郎、犬童一心、片渕須直、白石和彌、市井昌秀、沖田修一、枝優花らが活動屋として出演。

【炎篇】(45秒)

YouTube player

風篇、雨篇、そして詳細は下記記事へ。

わたしたちのアートをとりもどせ。未来を奪われた美大生の再生物語。のん監督・主演 映画『Ribbon』公開決定


のん公式サイト: https://nondesu.jp/
のん公式YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCj4G2h4zOazW2wBnOPO_pkA
のん公式Twitter: https://twitter.com/non_dayo_ne

日本映画専門チャンネル
視聴方法:スカパー!/J:COM/ケーブルテレビ/ひかり TV/au ひかり
視聴可能世帯数:約783 万世帯(2020年12月末現在)
放送日:2021年3月19日(金)~
日本映画専門チャンネル公式サイト:https://www.nihon-eiga.com/
日本映画専門チャンネル公式YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC8UjtfpIMxk-P8YqPWn-u0g
日本映画専門チャンネル公式Twitter:https://twitter.com/nihoneiga/

 

 

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