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漂流ポスト

【神岡実希×中尾百合音インタビュー】「小学生の時に震災に」世界各国映画祭を経て日本公開、映画『漂流ポスト』

“心の復興”を描く映画『漂流ポスト』(順次公開中)より、主人公(雪中梨世)の回想シーンに登場する、女子中学生を演じた神岡実希(20)、中尾百合音(17)に出演を通しての思いと、その素顔について伺った。(撮り下ろしフォト)

“漂流ポスト”とは、「手紙を書くことで心に閉じ込められた悲しみが少しでも和らぎ、新たな一歩を踏み出す助けになるなら」という想いから、被災地である岩手県陸前高田市の山奥に建てられた郵便ポスト。
当初は東日本大震災で亡くなった人への想いを受け止める為のポストだったが、今では病気や事故など、震災に限らず亡くなってしまった最愛の人に向けた想いを手紙に綴り、届ける場所になっている。震災から9年以上経った現在も多くの手紙が届き、その数は500通を超える。手紙は同じ境遇の人々にシェアされ、心の復興を助けている。

本作は、ニース国際映画祭 最優秀外国語短編映画グランプリ、ロンドン国際映画祭 外国語長編作品部門 最優秀助演女優賞(神岡実希)、バルセロナ国際映画祭で審査員賞など、海外の映画祭で多数の映画賞を受賞。満を持して3月5日よりアップリンク渋谷にて凱旋公開となる。

雪中梨世演じる主人公・池淵園美は、中学時代、東日本大震災で親友の恭子を亡くす。その事実を受け入れれないまま大人になったある日、中学時代に恭子と埋めたタイムカプセルが見つかる。中には『将来のお互い』に宛てた手紙が入っていた…。蘇る美しい思い出と罪悪感。
過去と向き合う中、震災で亡くなった大切な人へ届けたい言葉・伝えることができなかった想いを綴った手紙が届く【漂流ポスト】の存在を知った園美は、心の復興を遂げることができるのか・・・

神岡実希×中尾百合音 インタビュー

■オーディションでは大切な人に手紙を。

-本作出演のきっかけについて教えてください。

神岡実希(香月恭子役)
オーディションです。

神岡実希

神岡実希

中尾百合音(池淵園美の中学時代役)
私も一緒です。

中尾百合音

中尾百合音

-オーディションの一環でご自分の実際の親友に宛てた手紙を書かれたそうですが、差し支えない範囲でどのようなことを書かれたのか教えてください。

神岡実希
3年以上前っていうのもあって、ほんとにビックリするくらい覚えてないんです(笑)
書いたってことは覚えてるんですけど、内容までは覚えてなくて。たぶん、親友っていうよりは、伝えたいことが一番ある人に宛てて書いたと思うんですけどね。

中尾百合音
私も覚えてないんです。誰に宛てたかも覚えていなくて、仲が良い2人の友だちのうち、たぶんどっちかなんだろうなぁって(笑)
いつもありがとうっていう内容だったと思うんですけどね。

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■監督からは「自然体に」

-撮影にあたって、清水健斗監督とはどういうお話をされましたか?

神岡実希
撮影に入る前に台本を持って稽古をしたんですが、その時にお話したのが、百合音ちゃんが同じ事務所なのと、ちょっと先輩なので引っ張っていけるようにやれたらいいなっていうお話をしました。
あとは、芝居芝居せずに自然体にやってねとか。2人の距離感含めて。

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場面写真(中尾百合音、神岡実希)

-劇中、海辺で中尾さんがバレエを踊って飛ぶシーンがありますが、あれは監督の指示ですか?

中尾百合音
確か監督の指示です。3歳からバレエをやっていてプロフィールにも特技として書かせていただいているので、監督から飛んでと指示があった記憶があります。

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場面写真(中尾百合音、神岡実希)

■東日本大震災当日の記憶

-東日本大震災当日、まだ小学生だったお二人は、どんな記憶がありますか?

中尾百合音
私は(当時千葉県在住)小学校1年生だったんですけど、バレエをやっていて、ちょうどバレエのレッスンに行く前だったんです。「バレエ行きたくないなぁ」って思いながらレッスン着を着たところに地震がきて、机の下に隠れたっていうことを覚えています。また、家の周りが液状化になったことも。

神岡実希
私は(当時埼玉県在住)小学校4年生で、まだ授業中だったんです。卒業式で歌う歌の練習をしていて、でも先生が「声が小さい!」と、CDの再生を止めては怒るというのを繰り返していて。で、ちょうど先生がCDデッキの再生を止めた瞬間に揺れ始めたんです。当時の私はCDの再生を止めた先生が悪いって思ってしまったんですけどね。
そして机の下に隠れたはいいものの、「私がつぶれたら誰が助けてくれるんだろう?」って思ってすっごい泣き叫びました。外を見たら煙が出ているところもあって、それが自分の家なんじゃないかって思う中、帰宅指示が出たので、余震が続く中、走って帰ったのを覚えています。

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場面写真(神岡実希、中尾百合音)

■身近な人の死について

-本作の出演を通して、東日本大震災に関わらず、身近な人が突然亡くなるということについて、考えを新たにしたことがあれば教えて下さい。

神岡実希
たまに出演した作品を通して考えることはあるんですけど、身の回りで大事な人が亡くなるという経験はまだありませんので、大事な人が亡くなるとはどういう感覚なんだろうっていうのは、まだよくわかっていないところはあります。動物を飼ったこともありませんし。

中尾百合音
私は、夜、寝付けない時にそれを想像して恐ろしくなって泣いちゃって眠れなくなる、ということはよくあります。でも私も実際の経験はありませんので、軽々しくは言えないなという気持ちはあります。

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場面写真(雪中梨世)

■神岡実希、最優秀助演女優賞 受賞

-神岡実希さんは、「ロンドン国際映画祭2019」の外国語長編作品部門 最優秀助演女優賞を受賞されましたが、そのお気持ちは?

神岡実希
正直申し上げますと、ほんとにまだ実感が無いんです(笑)トロフィーも今はまだ監督さんのお手元にあって、目にしてませんし。
受賞の知らせを聞いたのは、飛騨市観光大使のお仕事で飛騨市にいる時でした。朝目覚めてご飯を食べている時に市民の方からお聞きして驚くっていう。
でもこの賞が受賞できたことによって家族もそうですし、ファンの方もすごく喜んでくださったので良かったなって。自分が海外で評価されるっていうのはほんとうに嬉しいことだなって思いました。

■岐阜県観光大使として

-神岡実希さんは岐阜県飛騨市の観光大使を務められているということですが、そのきっかけや、たとえばどんな活動をされていますか?

神岡実希
飛騨市は、2004年に4つの町や村が合併して誕生したんですが、その中のひとつに神岡町っていうのがあって、私の姓と同じ漢字なんです。そこで飛騨市の方が神岡に観光大使を作るなら、神岡って名字の人がいいんじゃないかってことになって、そこでGoogle検索された時に(笑)、ヒットしたのがたまたま私で、お話をいただくことになりました。

-観光大使としてはどんな活動をされてますか?

神岡実希
観光大使を始めさせていただくことになった途端にコロナ禍になって昨年は飛騨市には行けずだったんですけど、飛騨市は2月に飛騨神岡初金毘羅宵祭(ひだかみおかはつこんぴらよいまつり)が行われるんですが、それに参加させていただきます。飛騨市には立ち達磨っていう大きな達磨があるんですけど、それが自由の女神がある方角を向いていて、今、自由の女神に向けてラブレターを送るというイベントが行われていて、その審査員をやらせていただいてます。

-『漂流ポスト』とは“手紙”つながりですね。

神岡実希
そうですね。

■今後も女優を続けていきたい

-お二人が女優を目ざされたきっかけは?

中尾百合音
きっかけは小6の時、竹下通りでのスカウトなんですが、元々興味はありました。でもまったく行動には移さなくて、たまたま声をかけていただいて、レッスンを始めました。
自分からっていうわけじゃないので、気持ちが薄いって思われちゃうかもしれないんですけど、でもぜんぜんそんなことはなくて、ほんとに自分が好きでやりたくてやっているので、他の仕事は考えていません。「ほんと今後大丈夫なの?」って親に言われるくらいに。
今後も女優を続けていきたいです。

神岡実希
私は、もともとこの世界に興味があったんですが、父親にも「スカウトされに行ってこい」って言われて(笑)、原宿に行ったんです。
でも、1回目はされなくて、その後、私は実家が料理屋なんですけど、料理コンテストの帰りにたまたま竹下通りにいた時に声をかけていただいて、今の事務所に所属することになりました。
最初の頃は雑誌が好きで、モデルになりたかったんです。けど現実を見て(笑)、レッスン会場に行ったらほんとにすごくて、キラキラした女の子がいっぱいいて、ムリだ!ってなって。でもこの世界で頑張りたいって思った時に、小5から事務所のレッスンを受けて、芝居が楽しくて、台本を読んで考える時間が小学生ながらにしてすごく楽しく思えたんです。誰かになれるっていうのはすごく楽しくて今も続けています。

-神岡実希さんは、最近、舞台出演が続いてますが、ブログでも舞台対する熱い思いも語られています。女優としての今後の抱負についてお聞かせください。

神岡実希
前はこういう女優になりたいとかも言ってたんですけど、今はどっちかっていうと自分を出せていけたらいいなってことにフォーカスを置くようになりました。
それは今年の1月に出させていただいた舞台でもそうだったんですけど、すごく人間が好きになったんです。人の愛情っていうものがこんなにも熱くて温かいっていうことを知って、もっともっと自分から人に関わりたいって思ったし、役を通して自分が垣間見れる瞬間があるからこそ、私が演じている意味があるって思ったんです。演じる中に本当の自分っていうものを出せていけたらいいなって思っています。

■ふだんの過ごし方

-お二人は、ふだん、どんなことをして過ごされてますか?好きなことや趣味などについて教えて下さい。

神岡実希
私はずっとペラペラしゃべってますね(笑)しゃべるのが好きなんですけど、ほんとに気づいたんですけど、やってた舞台が重た目の舞台だったから、プライベートで明るくなりたいっていうのもあったからかもしれませんが、私は家で一人でずっとペラペラしゃべってます(笑)「あぁ、あれやんなきゃ、これもやんなきゃ」「洗濯機回したいけど掃除機もかけたい」みたいなことをずっと一人で言ってます。自分でもビックリするんですけど(笑)
そういう感じでずっと一人でしゃべりながら行動していて、授業中でもベラベラしゃべってて。今、授業もZOOMなので、マイクをミュートして「私はこう思ってるんだけどな」とか、ひたすら言ってます(笑)

神岡実希

中尾百合音
私は自分の中に二面性があると思っています。超静かな時と、うるさい時の差が激しくて、友だちにもほんとテンションの落差が激しいねって言われます(笑)
そして、インドアな時もあれば、アウトドアの時もあるっていう人です(笑)

中尾百合音

■最後にメッセージ

-改めて、本作『漂流ポスト』が海外の映画祭を渡り歩いて、日本で公開されることに対する思いをお聞かせください。

神岡実希
日本で短編映画を上映することは日本ではすごく珍しいことだと私は思っていますし、こうやって海外で評価していただいて日本で上映できるというのはすごくありがたいことだなと思っています。
(東日本大震災から)今年で10年なので、より多くの人に観ていただいて、当時のことを思い出しながらも、温かみを感じていただけたらなと。そしてもしまだ心に残っている傷がある人がいれば、救われたって思っていただけたらいいなって思っています。

中尾百合音
私は自分が出た作品が海外で評価していただいたことを、まだあまり実感できていないんですけど、逆輸入という形で日本での上映が決まって、またこの作品に関わることができてすごく嬉しいです。監督やスタッフ、出演者の皆がこの作品に込めた思いが少しでも伝わればいいなって思います。

漂流ポスト

[インタビュー・写真:Jun Sakurakoji]

■プロフィール

神岡実希(香月恭子役)
2000年9月5日生まれ。埼玉県出身。
近年の主な出演歴は、ドラマではNTV「シンドラ バベル九朔」(2020)、TBS「初めて恋をした日に読む話」(2019)、BS日テレ「恋の病と野郎組」(2019)、映画では、『ナラタージュ』(2017/行定勲監督)、『斉木楠雄のΨ難』(2017/福田雄一監督)などがある。また、2019年より岐阜県飛騨市の観光大使を務めている。

中尾百合音(池淵園美 中学時代役)
2003年11月24日生まれ。千葉県出身。
近年の主な出演歴は、ドラマではNTV「35歳の少女」(2020)、BS日テレ「恋の病と野郎組」(2019)、CX「グッドドクター」(2018)、EX「刑事7人」(2017)、映画では、映画『来る』(2018/中島哲也監督)などがある。また、東海住宅の2代目イメージキャラクターを務めている。

映画『漂流ポスト』

STORY
東日本大震災で親友の恭子を亡くした園美は、心のどこかで死を受け入れられず日々を過ごしていた。
ある日、学生時代に恭子と埋めたタイムカプセルが見つかる。
中には『将来のお互い』に宛てた手紙が入っていた…。蘇る美しい思い出と罪悪感。
過去と向き合う中、震災で亡くなった大切な人へ届けたい言葉・伝えることができなかった想いを綴った手紙が届く【漂流ポスト】の存在を知った園美は、心の復興を遂げることができるのか・・・

出演:雪中梨世 神岡実希 中尾百合音
藤公太 永倉大輔
監督・脚本・編集・プロデュース:清水健斗  撮影監督:辻健司  録音:田原勲
メイク:大上あづさ  制服:下山さつき  音楽:伊藤明日香
撮影協力:赤川勇治 漂流ポスト3.11 配給:アルミード
(C)Kento Shimizu
2018/日本/カラー/30分/シネスコ/ステレオ
公式サイト:https://www.hyouryupost-driftingpost.com/
公式ツイッター:@hyouryupost
公式Facebook:hyouryupost.film

公開情報
2/27(土)~3/12(金) 大阪 シネ・ヌーヴォ
3/1(月)~3/13(土) 福島県いわき市・KURAMOTO
3/5(金)~3/18(木) アップリンク渋谷
3/5(金)~3/11(木) アップリンク京都
3/5(金)~3/19(金) 盛岡ルミエール
公開日未定 横浜・ジャック&ベティ

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