大森監督「芦田愛菜が意図していないところを撮りたかった」 映画『星の子』初日舞台挨拶
10月9日、都内にて、映画『星の子』の初日舞台挨拶が行われ、実写映画6年ぶりの主演となる芦田愛菜、永瀬正敏、大森立嗣監督が登壇した。
この日の舞台挨拶は全国10箇所、19劇場に生中継され、兵庫県出身の芦田愛菜は関西弁で、宮崎県出身の永瀬正敏は宮崎弁で全国にひとことあいさつ。
そして、ゲストとして、本作のタイトルアートを手掛けた、アーティスト・清川あさみも登壇。原画を芦田愛菜にプレゼントした。
舞台挨拶レポート
■お客様を前にしての初日舞台挨拶の思い
-お客様を前にしての初日舞台挨拶はいかがでしょうか?
大森立嗣監督
この映画の編集してる時に、“コロナ”という言葉を聞き、音楽製作はリモートで乗り切ったんですが、試写ができないという状況もがあった中、こうやって、皆さんの前に立てるということは本当に嬉しいです。やっぱり映画館で観てほしい気持ちがあるんですよね。
芦田愛菜(林ちひろ 役)
今日無事に皆さんにこの映画をお届けできたことが嬉しいです。
永瀬正敏(ちひろの父 役)
本当に嬉しいです。こうして全国で中継していただけるって事は、僕は初めての経験なんです。ありがとうございます。
■撮影を振り返って
-『星の子』のクランクインは昨年の12月。改めて撮影を振り返ってみていかがですか?
芦田愛菜
監督は、こういう風に演じてほしいっていうのはあまり具体的には言われない方で、そのシーンについてだったり、ちひろについてお話しさせていただくうちに、私はちひろになるための課題というか、ヒントをいただいていたような、そんな感覚でした。
それが役について委ねてくださっている感じがして、監督と一緒に“ちひろ”という女の子を作り上げていく感覚が私はすごく楽しかったです。
-芦田愛菜さんは、ちひろの心のゆらぎをどのように捉えて撮影に臨まれましたか?
芦田愛菜
ちひろは、宗教のことや両親のことで、自分が周りからどのように見られてるんだろうとか、私って変なのかなって悩むところもあれば、学校に行けば心を許せる友だちがいて、その友達に悩みを相談できたり、そういう心の揺れというか、多面的な部分を表現したいと思っていました。
そういうちひろの繊細な心の揺れや葛藤は、一人のシーンにこそ表れるものだと私は思っています。なので、ふと、一人になった時に決意が見えたり、悲しみや悩みなど、ちひろの本音の部分を見せられるような演技ができたらいいなと思っていました。
■大森組は心地よい
-さて、永瀬正敏さんにとって、大森組の独特なところってどんなところですか?
永瀬正敏
俳優部もスタッフが皆さんも含めてなんですけど、すごく居心地のいい現場ですね。
それは監督のの決断が早いということ。監督の中で撮りたいと思うものが明確に見えていて、スタッフの皆さんと入念な打ち合わせをされているからだと思いますが、現場が早く動くので、演者にとっては余白ができて、役に没頭する時間をいただけるのがありがたいです。
■芦田愛菜が意図していないところを撮りたかった
-大森監督は、初めて芦田愛菜さんとの撮影はいかがでしたか?
大森立嗣監督
映画監督ってやっぱり変な人なんです。
芦田愛菜さんって、めちゃくちゃ演技が上手いんですよ。本を読む力もあるし、人とのコミュニケーション能力もあるし。
なので、芦田さんが意図してないものを撮りたくなるんですよね。
例えば背中からどうしても出てきちゃうものとか、なべちゃんと並ぶカットでは、芦田さんは背が低いから見上げる形になる格好とか、そういうどうしようもないものに目がいくんですよ。
そこからこぼれ落ちてくる芦田さんが持ってるものを魅力的に出していきたいなと思って撮りました。
■信じていたのに、勘違いだったことは?
芦田愛菜
「猫の可愛さ」
飼う前から猫は可愛いって思っていたんですけど、一緒に生活してみたら、思ってた以上に可愛くて、毎日癒やされています。
家に帰ると、リビングのドアの隙間に立って、ニャアと出迎えてくれたりとか、寂しがりで、皆が揃っているところにいてくれたりするところが、可愛くて愛おしいです。
永瀬正敏
「ナオス」
ある映画でアドリブで「これちょっと直しといて」って言った時、関西出身の監督は素直にOKと言ってくれたんですが、録音部の人だけが頭をひねっていて、「メンテナンスすること?」って聞かれて。
僕の出身地の九州含めた地域では、“片付ける”ということを“直す”と言うんです。
これが一部地域の言葉だっていうことをずっと勘違いしていました。
-芦田さんは?
芦田愛菜
私は、「(片付けてという意味で)直して」って言います。友だちにいつも変な顔をされます(笑)
けっこう通じないですね。
大森立嗣監督
「家族の崩壊」
自分の家が家族崩気味だったんですよ。なのでそんな風に育ってきたんです。
でも最近は、家族が仲良しになって、崩壊するって思ってたことは勘違いだったんだって思いました。
■サプライズゲスト、アーティスト・清川あさみ
芦田愛菜の演技に感銘を受けた清川あさみが、劇中のタイトルアートを刺繍で仕上げた。その原画を芦田愛菜に舞台上で贈呈した。
■最後にメッセージ
大森立嗣監督
繊細な芦田愛菜の演技に魅入っていただいて、ラストに何か心に感じていただければ幸せです。
永瀬正敏
芦田さんのお芝居がすごいです。ぜひそれを堪能してください。すごい好きなシーンがあるんですけど、それは内緒にしています。
芦田愛菜
この映画を通して、信じるとは何かっていうことを深く考えたんですけど、その結論のようなものは、きっと皆さんそれぞれ違っていていいものなんじゃないかなと思っています。
この映画を観ていただいた後に、皆さんにとって信じるって何だろう、信じたいと思える大切な人って誰なんだろうと、考えるきっかけになっていただけたら嬉しいです。
■トークノーカット動画
[写真・動画・記事:Jun Sakurakoji]
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映画『星の子』
【INTRODUCTION】
原作は、最新作『むらさきのスカートの女』で令和初の第161回芥川賞を受賞し、いま最も次作が気になる最注目の気鋭の小説家・今村夏子の同名小説。本作も157回芥川賞候補、第39回野間文芸新人賞受賞、2018年度本屋大賞7位になるなど高い評価を受けている。監督・脚本は、『さよなら渓谷』(13)が第35回モスクワ国際映画祭で「人間関係への深い理解と洗練された演出」と評価され審査員特別賞を受賞、樹木希林の遺作の一本となった『日日是好日』(18)で報知映画賞の最優秀監督賞を受賞した大森立嗣。
【STORY】
大好きなお父さんとお母さんから愛情たっぷりに育てられたちひろだが、その両親は、病弱だった幼少期のちひろを治した“あやしい宗教”を深く信じていた。
中学3年になったちひろは、一目惚れしてしまった新任のイケメン先生に、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を見られてしまう。
そして、彼女の心を大きく揺さぶる事件が起きるー。
キャスト:芦田愛菜 岡田将生 大友康平 高良健吾 黒木華 蒔田彩珠 新音 永瀬正敏 原田知世
監督・脚本:大森立嗣(『日日是好日』)
原作:今村夏子『星の子』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
製作幹事:ハピネット、ヨアケ
製作プロダクション:ヨアケ、ハーベストフィルム
配給:東京テアトル、ヨアケ
(C)2020「星の子」製作委員会
公式サイト:hoshi-no-ko.jp
特報
TOHOシネマズ 日比谷 ほか 全国公開中
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