小野莉奈

【インタビュー】女優・小野莉奈「改めて私は“ものづくり”が好きなんだって思った」

5月に20歳の誕生日を迎えた女優の小野莉奈さん。舞台版から引き続き、7月24日公開映画『アルプススタンドのはしの方』に主演される小野さんに、作品のこと、そして自身の高校時代の恩師の話や、今後の抱負などを伺った。

『アルプススタンドのはしの方』は、兵庫県立東播磨高校演劇部が上演し、第63回全国高等学校演劇大会で文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞、今も全国の高校でリメイクされ続けている名作戯曲が原作。
2019年、浅草九劇でリメイク上演され、同年度内に上演された演劇から選出される“浅草ニューフェイス賞”受賞。
好評を経て業界注目の名匠・城定秀夫監督により堂々の映画化となった。
出演は、小野莉奈、平井亜門、西本まりん、中村守里、黒木ひかり、目次立樹ら注目の俳優たちが揃っている。

高校野球の応援に来た、冴えない高校生たち4人が、アルプススタンドの隅っこで繰り広げる会話劇。「しょうがない」と最初から諦めていた彼女たちだったが、それぞれの想いが交差し、先の読めない試合展開と共にいつしか熱を帯びていく。
今のコロナ禍でさまざまに諦めざるを得ないことが少なくない今の状況に、奇しくもひとつの応援メッセージを送る形の作品となった。

小野莉奈インタビュー

野球のルールはぜんぜん知らなかった

– 小野莉奈さんが演じられる“あすは”は、野球のルールを知らないまま、応援に駆り出されますが、小野さんご自身は野球のルールはご存知でしたか?

小野莉奈(安田あすは 役)
まったく知らなかったですね(笑)
私の弟とお父さんが野球を観る人だったから、テレビに映っている野球を見ることはあったんですけど、それでもルールはまったく理解せずに生きてきました。
この作品を経て少しはわかったと思うんですけど、ここはこうだからこうだよ!って自信持っては言えないですね(笑)

– その点は劇中で演じられた役と合ってますね。

小野莉奈
そうですね(笑)

小野莉奈

小野莉奈

「なんで応援しなきゃいけないんだろう」

– 舞台版から演じられている“あすは”と共感できるところはありますか?

小野莉奈
最初のシーン、甲子園での野球の応援に動員されて、ダルダルで「なんで応援しなきゃいけないんだろう」って思っている“あすは”の気持はすごくわかりますね。
申し訳ないんですけど、応援しに行く理由がわからないという気持ち。
学生ならではというか、学校で決められたことを強制されてやることに「なんで?」っていう気持ちはすごくわかります。
でも、それだけじゃなくて、試合を観ていくうちに、逆に自分も惹き込まれて一緒に応援するっていう、スポーツを頑張っている人たちに自分が刺激を受けて応援したくなるっていう気持ちもすごくわかりました。
自分が“あすは”の立場でもそうなっているだろうなと思います。

– ご自身の学生生活で“応援”というのはされたことは?

小野莉奈
高校時代は自分がダンス部だったので、応援する側っていうよりは、やる側だったんですけど、中学時代はサッカー部の応援に友だちと行ったことはあります。

「またこの共演者と集まれるんだ」

– 最初に映画化の話を聞いた時、どう思われましたか?

小野莉奈
舞台の公演期間中は映画化のことは知らなくて、千秋楽の日にお客さんと一緒に映画化のサプライズ発表を聞いて、一緒にビックリしました。
お客さんの「おめでとう!」という声の中、「またこの共演者と集まれるんだ」と思うと寂しさも無くなって嬉しい気持ちになりました。

– 映画を撮るにあたって、舞台版と演じる上で違いはありましたか?

小野莉奈
気持ちをナチュラルにして演じました。
舞台だと割とオーバーに気持ちを出したり、声を張ったりしていたんですけど、映画ではそれは抑えて、ナチュラルにお芝居することを意識しました。

– 映画化にあたって気をつけられたことは?

小野莉奈
体調面に気を使ってました。5日間連続で、暑い中での撮影でしたので。

– 撮影中、城定監督からの指示や相談されたことは?

小野莉奈
城定さんからの指示はあんまり無くて、割とキャストに任せる感じでした。
それに撮影のペースも早くて。なので逆に「今のは大丈夫でしたか?」とよく確認していました(笑)。
でも「大丈夫だよ。」って言ってくれて、そこは監督を信じてやってました。

小野莉奈

自分で決めたことはあきらめない

– 劇中の“あすは”は友人がインフルエンザにかかって演劇部の大会に出られず、「しょうがいない」って諦めた状態になってますが、小野さん自身はそういうことはありますか?

小野莉奈
無いですね。自分で決めたことはあきらめないタイプです。
でも、“あすは”は、自分のせいじゃなく、他の部員のことが要因で諦めざるを得ない気持ちになるんですが、そういう経験は私は無かったかもしれません。
そういうのって誰のせいにもできないから、悔しいっていう気持ちをどこに持っていけばいいのかっていう複雑な思いもあって、それを“あすは”を通じて経験できたなって思います。

– そういう意味では今のコロナ禍で諦めざるを得ない状況になっている人が多いので、この映画を観た人も“あすは”たちに共感できるかもしれませんね。

小野莉奈
そうですね。“あすは”と同じような気持ちの人がたくさんいると思うんです。そういう人にこの映画を観てもらってなにか変わるきっかけになったらいいなとは思います。

改めて私は“ものづくり”が好きなんだって思った

– このコロナ禍の自粛期間中、小野さんはどのように過ごされてましたか?

小野莉奈
自分の知らなかったことを知る期間でした。
今までは、自分が好きなものってあんまりわかってなかったなって気づきました。
形としてそれを作ってきたというか、例えば、カメラを買って、自分が惹かれたものを撮ってアルバムにしたりとか、雑誌に載っている好きなモデルさんとかファッションを切り取ってスクラップしていくうちに、「私ってこういうのが好きなんだ」って自分自身のことを再発見できました。
あと、ネイルもいろんな種類をたくさん買いました。
映画もこれまでは洋画を観ることが多かったんですけど、オススメされた韓国ドラマを観て、意外と私は韓国ドラマも好きだなって思ったり、自分が今まで知ってたようで知らなかったことを再発見できるきっかけになった期間でした。
そして、改めて私は“ものづくり”が好きなんだって思いました。何か形として作ることがすごく好きなんだなって。

– 一人で個人的に何かを作ること、あるいは映画のようにチームで作ること。小野さんにとって違いは?

小野莉奈
どちらも好きですし、ものを作るのに自分が関わっていられることが嬉しいなって思います。
個人的なものは自分が満足できればいいだけですが、作品というのはいろんな人に観てもらって成立するものですし、作品を通して、多くの人に良いなって思ってもらいたいという気持ちがあります。

– その自粛期間中に誕生日を迎えられて20歳になられましたが、ご友人やご家族とかからお祝いはありましたか?

小野莉奈
この時代ならではというか、Zoomで友だちにお祝いしてもらいました。誕生日おめでとう動画を送ってもらったり。
その後に、事務所で皆でお祝いしてケーキを食べたり、家族とフレンチを食べに行って、そこでワインを飲んで大人を楽しみました。

小野莉奈

小野莉奈

人を成長させる役をやってみたい

– 20代のうちにやってみたいことはありますか?

小野莉奈
教師の役をやってみたいです。
自分の人生で教える立場になったことがあまりなくて。
教える立場って、教えている相手の人が理解してくれるまで待ってあげるという辛抱強さ、時には厳しく、時には優しく。
そういう自分だけじゃない人間性って、教師の役を通して学べると思ったからです。
それに、人って教えてもらうことで成長しますが、人に教えることによって、自分自身がもっと成長することができるって思うんですよ。
なので、人を成長させる役をやってみたいです!

– 小野さん自身の学生時代、思い出に残っている先生っていらっしゃいますか?

小野莉奈
います!高校1年の時の担任の先生です。
女優の仕事は小学6年生の頃から憧れていたんですが、高校1年の時の担任の先生に「女優さんになりたい」ってポロっと言ったら、「あなたは素晴らしい女優になれますよ」って、謎の自信で後押ししていただいて。誰かが後押ししてくれると「私、なれるんだ」っていう気持ちにもなれて、人からもらえる自信ってすごく大きいなって感じたんです。
実際、女優さんの仕事を始められましたし、その時の先生もすごく喜んでくれました。
自分以上に自分のことを信じて励ましてくれる先生で、卒業した後も応援してくれています。すごく感謝しています。

小野莉奈

観た人を笑わせられる作品に出てみたい

– 今後、出演してみたい作品のジャンルはありますか?

小野莉奈
コメディをやってみたいです。
舞台で、テンポとか間とか、そういう心の芝居というよりは、見せ方の芝居を学んでから、コメディはそれに繋がるって思って、面白いドラマとかやってみたいですね。
それを観た人を笑わせられる作品に出られたらいいなって思います。「フルハウス」のようなファミリーコメディーに(笑)

– 最近お気に入りの映画やドラマはなんでしょう?

小野莉奈
昔のドラマを観てまして、私が小学生時代に放送されてた「マルモのおきて」(2011年フジテレビ系)とか、これは私が生まれる前のなんですけど、「ひとつ屋根の下」(1993年フジテレビ系)とか。
昔ならではの撮影法に気づいたり、懐かしいなとか、新しくないところが新しく感じていいなって思えて。振り返るってのも大事だなって思いました。
今のドラマは良くも悪くもちゃんとし過ぎているというか、昔のドラマは技術的なこともありますが、あからさまなライティングだったりに気づくこともあるんですが、逆にそれもいいなって。
あと、キャストの髪の毛が乱れてて(笑)今の現場だったら、すぐにスッと(ヘアメイクさんに)直されるなって思ったり(笑)
ちゃんとし過ぎていないリアル感がいいなって思います。

– 確かに昔は今ほどコンプライアンスも厳しくないから、良い意味でもユルさもありますよね。

小野莉奈
そうなんですよね。内容でも、セリフでも、今だとこんなのダメでしょみたいなのもあって。そのユルさがドラマの個性を出してて、面白いなって思いました。
縛られていないユルさが作品の魅力を引き出すなって感じます。

小野莉奈

「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」に出演したい!

– 今の時代でも、テレビドラマと比較すると、映画作品はまだ自由さの幅が広いと言えますが、小野さんは、女優として、テレビドラマ、映画、どちらに比重を置きたいとか考えられてますか?

小野莉奈
その点は決めたくないですね。決めちゃったらそれだけになっちゃう気がして。
目標として言うなら、良い作品を残して、より多くの人に良い影響を与えられる作品を作りたいっていう気持ちがあります。
そういう意味では、テレビドラマ、映画に限らず、雑誌や、それこそバラエティ番組にも挑戦したいですし、やってこなかった役柄にも挑戦したいです。

– コントとかどうですか?

小野莉奈
役者さんがコントに挑戦しているNHKさんの「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」に出演したいですね!是非!

小野莉奈

最後にメッセージ

– 最後に本作の見どころとこれからご覧になる方にメッセージをお願いします。

小野莉奈
本作は、高校生のリアルなやり取りから始まって、どんどん熱くなっていくところが描かれています。
そこは、私自身も作品を観て、同じ気持ちになって体感できる作品だなって思いました。
今回、コロナで甲子園大会が中止になったこのタイミングでこの作品が公開されるのっていいのか?っていう疑問は正直ありました。
でも逆に、今のこの状況だからこそ、“あすは”と同じ気持ちになって、情熱を感じて、また頑張ろうって思ってくれたらいいなって思います。
何回でも観れる作品ですので、何回も楽しんでほしいなって思います。

小野莉奈

[聞き手:安田寧子/写真:桜小路順]

映画『アルプススタンドのはしの方』

INTRODUCTION
本作は兵庫県立東播磨高校演劇部が上演し、第63回全国高等学校演劇大会で文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞、今も全国の高校でリメイクされ続けている名作戯曲が原作だ。
高校野球の応援に来た、冴えない高校生たち4人が、アルプススタンドの隅っこで繰り広げる会話劇。「しょうがない」と最初から諦めていた彼女たちだったが、それぞれの想いが交差し、先の読めない試合展開と共にいつしか熱を帯びていく。
2019年、浅草九劇でリメイク上演され、同年度内に上演された演劇から選出される“浅草ニューフェイス賞”受賞。
好評を経て業界注目の名匠・城定秀夫監督により堂々の映画化となった。
脚本は九劇での演出を手がけた奥村徹也。
出演に小野莉奈、平井亜門、西本まりん、中村守里、黒木ひかり、目次立樹ら注目の俳優たちが揃った。

STORY
高校野球・夏の甲子園、全国大会一回戦。
夢の舞台でスポットライトを浴びている選手たちを観客席の端っこで見つめる冴えない4人。
夢破れた演劇部員・安田と田宮、遅れてやってきた元野球部・藤野、帰宅部の成績優秀女子・宮下。
「しょうがない」と最初から諦めていた4人だったが、それぞれの想いが交差し、先の読めない試合展開と共にいつしか熱を帯びていき…。

出演:小野莉奈 平井亜門 西本まりん 中村守里 黒木ひかり 平井珠生 山川琉華 / 目次立樹
監督:城定秀夫|脚本:奥村徹也|原作:籔博晶・兵庫県立東播磨高校演劇部
主題歌:the peggies「青すぎる空」(EPICレコードジャパン)|演奏協力:シエロウインドシンフォニー
応援曲編曲:田尻政義|撮影:村橋佳伸|録音:飴田秀彦| サウンドデザイン:山本タカアキ
スタイリスト:小笠原吉恵|ヘアメイク:田中梨沙|制作プロダクション:レオーネ
製作:2020「アルプススタンドのはしの方」製作委員会
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS|宣伝協力:MAP
カラー/16:9/5.1ch/75分
公式サイト:https://alpsnohashi.com

予告編

YouTube player

7.24(金)新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

アルプススタンドのはしの方

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