貫地谷しほり「失敗した人間は再起するのが難しい世の中。その先の景色を感じてほしい作品」
11月9日(土)新宿シネマカリテにて、映画『夕陽のあと』の公開記念舞台挨拶が行われ、貫地谷しほり、山田真歩、越川道夫監督が登壇。役への取り組み、撮影地でのコミュニケーション、監督の映画に込めた思いを語った。
■映画『夕陽のあと』
あらすじ
豊かな自然に囲まれた鹿児島県長島町。1年前に島にやってきた茜(貫地谷しほり)は、食堂で溌剌と働きながら、地域の子どもたちの成長を見守り続けている。一方、夫とともに島の名産物であるブリの養殖業を営む五月(山田真歩)は、赤ん坊の頃から育ててきた7歳の里子・豊和(とわ)との特別養子縁組申請を控え、“本当の母親”になれる期待に胸を膨らませていた。そんな中、行方不明だった豊和の生みの親の所在が判明し、その背後に7年前の東京のネットカフェで起きた乳児置き去り事件が浮かび上がる……。
母親であることを手放した女と、母親になることを決意した女。
-夕陽に染まった海原の向こうに、ふたりの願いが交差する-
■舞台挨拶
役への取り組み、監督の演出
– 精神的にハードな役柄に、どのように取り組み、乗り越えていきましたか?
貫地谷しほり(佐藤茜 役)
劇中のとある台詞が今回、大事だと思っています。
自分の価値観というものを置いておいて、いかに茜という役に寄り添うかを常に考えていたら、すごい毎日辛くて。島の皆さんや山田さんはコミュニケーションをとっているのを見て、羨ましいなと思いながら、台本を読みがら暗い気持ちでいました。
越川道夫監督
貫地谷さんは、すごく悩んでいましたね。微妙な感情の度合いがいっぱいあったので。
(演出する立場として)茜がいないシーンでも、茜の残像がお客様の中に残っているのが大事な映画だと思っていました。茜である貫地谷さんが出ているシーンも大事なんだけれども、それ以上に、いないシーンでどのように茜の存在が残っているかということを考えながら演出していました。
島の人とのコミュニケーション
山田真歩(日野五月 役)
台本をいただいたときに、(私が演じる)五月は、島で生まれて、島で育っているということで、そこに説得力がないとダメだなと思いました。
飲み会のシーンでは周りが島の方々だったので、皆さんと波長を合わせたいと思って、漁師さんにお願いして泊まらせていただいて、一緒に朝の仕事をしました。
貫地谷しほり
私、現場に向かっている車の中で、その姿をたまたま見ました。
山田さんが台本を持って、ブツブツ言いながら歩いていく姿をみながら、すごく素敵な方だなと思いました。
山田真歩
島は山と海で、とにかく全部歩こうと思ったんです。ある時、前からやってきたおばあさんに挨拶したら、ハグされて、嫁いできてからの話を20分ぐらい伺いました。
島の新しい仲間だと思ったのかわかりませんが、親戚と話している気分でした。心が開けっ広げな感じを表現できたらいいなと思いました。
越川監督が一番大切にしたいポイント
– この映画では、生みの親・親育ての親どちらが本当の親なのかという、なかなか答えを出しにくいテーマに挑まれています。その中で監督が一番大切にしたいと思うポイントはどこでしょうか?
越川道夫監督
どちらが本当の親かっていうのは、争いの映画だったり、芝居だったりっていうのは昔からあると思うんですけど、その問題圏の外に出たかったんです。
そんなに簡単に決まるものではないし、どっちかどうっていうことが問題ではないなと。だからその問題・その問いの外に出ることができるのだろうかと。
実際に、「子どもの人生は誰のものですか?」と言われれば、「それはみんな子どもの物・子ども自身の物です。」と言うと思うんですね。
しかし、その僕も含めてやっぱり、子どもを自分の子どもとして、所有しちゃうと思うんです。
それでもやっぱり子どもの人生は子どもの人生だと思うんです。子どもの人生をどういう風に尊重できるかっていうことを一番に考えました。
それは取材している段階で児童相談所の鹿児島のイトウさんという方から、「子どものことは最終的に子どもが決めます。僕らが決めるんじゃない、親が決めるんじゃない、子どものことは基本的に子どもが決めます。そのことを考えながら、いつも児童相談所に勤めている。」と伺ったからです。その考え方はそんなに間違いじゃないと。
しかし、それは愛ゆえに拘束してしまうわけですけれど。どうしたら、そういう問題圏の外に出られるのかってことを考えながら、問いながら作った映画です。
それぞれの心はそれぞれの心でもあるし、苦しみも喜びもそれぞれにあると思いますけれど、僕らはいい大人ですから、後から来る子供たちのためにどういう風な場所や世界を残しておけるか、すごく大事な問題だと思います。
それは子どもが、いる・いないに関わらず、大人の問題だと思っているので、それをどのように映画で描けるかなと考えながら、みんなで作りました。
主演・貫地谷からのメッセージ
貫地谷しほり
今、この国は、失敗した人間がどうやってまた再起するかということがすごく難しい世の中ではないかなと思います。その解決策はすごく難しいと思うんですが、分からないから怖いってことももちろんあると思います。
そのような中で、「もしかしたら隣にこういう人がいるかもしれない。」そういう思いを皆さんが常にどこかで感じていただければ、この先また違う景色が見えるんじゃないのかなと、私はこの映画に携わって感じました。
監督:越川道夫(『海辺の生と死』)
出演:貫地谷しほり 山田真歩 / 永井大 川口覚 松原豊和 / 木内みどり
脚本:嶋田うれ葉 音楽:宇波拓 企画・原案:舩橋淳 プロデューサー:橋本佳子 長島町プロデュース:小楠雄士 撮影監督:戸田義久 同時録音:森英司 音響:菊池信之 編集:菊井貴繁 助監督:近藤有希
製作:長島大陸映画実行委員会制作:ドキュメンタリージャパン配給:コピアポア・フィルム
2019年|日本|133分|カラー|ビスタサイズ|5.1ch
©2019長島大陸映画実行委員会
公式URL:yuhinoato.com
11月8日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!
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