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映画『死神バーバー』

【インタビュー】桜井日奈子が7年ぶり主演映画の号泣シーンで爆発させた、剥き出しの感情と“今を生きる”尊さ。映画『死神バーバー』

映画『死神バーバー』で約7年ぶりの主演を務める桜井日奈子。死をテーマにしながらもポップで温かい本作で、彼女がどう役と向き合い、新鋭・日穏(KANON)との共演で何を感じたのか。撮影秘話から自身の死生観まで、進化を続ける彼女の“今”に迫る。(読者プレゼントあり)

映画『死神バーバー』の舞台は、死神が営む現世と冥土の狭間の美容室「冥供愛富(メイクアップ)」。亡くなった人間にお色直しを施し、魂が送られる前に大切な人と「最期の別れ」ができるよう手助けする場所だ。
美容師の佐伯美帆(桜井日奈子)は、新米死神サクマ(日穏)の早とちりにより、本来の寿命より早くここに連れてこられてしまう。本当の死を迎えるまでの5日間、様々な死者たちを見届ける中で、美帆は自身の人生を見つめ直していく。名匠・いまおかしんじ監督が、死をポップかつ温かな希望として描き出すヒューマン・ファンタジー。

桜井日奈子 インタビュー&撮り下ろしフォト

‐ 今回の作品のタイトルを聞いた時の感想や、出演が決まった際のお気持ちからお願いします。

桜井日奈子(佐伯美帆 役)
プロデューサーさんが1年半前に、私が出演していた舞台『138億年未満』を観に来てくださったとのきっかけで「一緒に仕事をしたい」と思ってオファーをくださったと伺っています。
私にとって、久しぶりの主演ということもありますが、「オファーしてよかった」と期待に応えられるように「頑張りたい!」と思いました。
そして、脚本がとにかく面白かったです。扱っているテーマは「お別れ」や「死」という事なので、重たい話になるかと思いきや、すごくポップで温かくて、観た後に、自分の大事な人をもっと大切にしようと思えるような、前向きな気持ちになれる内容だったので、ぜひやりたいとお受けしました。

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桜井日奈子

‐ 台本を読まれて特に面白いと感じたのは、具体的にどういった部分でしょうか?

桜井日奈子
オムニバス形式で、それぞれの後悔みたいなものが描かれるんです。それを死神が、「人間はバカなのか」という風にちょっと上から目線で見ている。死神には分からないけれど、「素直になれない人間って愚かだよな」と思わされるところが面白いですね。自分も人間なのに、そう思わされてしまうというか。
それから、いまおか監督の演出がとてもおもしろくて、何の脈絡もない動きを演出につけるんですよ。「ここで大きい声出してみて」とか「変な動きを入れてみて」とか。正直、最初は演出の意図をどう処理していいか分からなくて、役の整合性が崩れるんじゃないかと思ったりもしました。でも、作品として観た時に、「なるほど」と。「強がり」や「素直になれない人間」らしさが表現されていたんです。
例えば、道具箱から金槌(かなづち)を出すシーンで、「ネコ型ロボットみたいな声を出して」と言われて(笑)。絶対使われないだろうなと思っていたら、ちゃんと使われていて、そういうところがスパイスになって作品をポップにしているなと感じました。すべてに意味がありましたね。

‐ 今回演じられた佐伯美帆は、仕事もあまり上手くいっておらず、イライラを出しやすい女性という印象ですが、桜井さん自身は彼女をどんな女性だと捉えていますか?

桜井日奈子
不器用だな、と思いました。一生懸命強がるけれど、自分の弱いところを見せたくない、見せられないという「弱さ」があるから、ついイライラしたり人に当たったりしてしまう。本当はもっと上手くやれる方法も分かっているはずなのに、自分の弱さを隠すための鎧(よろい)として強がってしまう子なのかな、と解釈していました。

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場面写真:佐伯美帆(演:桜井日奈子) ©︎『死神バーバー』製作委員会

‐ 監督からは、役作りや芝居の面で何かリクエストはありましたか?

桜井日奈子
美帆に関しては、最初はプリプリ怒っているシーンが続くんです。私自身の感情が乗ると「わあーっ」と強くやってしまうのですが、監督は「怖い女性」が苦手らしくて(笑)。「美帆ちゃん怖いから、もうちょっとマイルドにして」と言われました。理由を聞いたら、「奥さんが怖くて……」とおっしゃっていましたね(笑)
でも、作品に入る前の顔合わせの時に、「どういう風にやったって、僕は作品にするから大丈夫だ」と言ってくださっていたので、その安心感はありつつも、現場では先ほど言ったような「脈略のない動き」をつけられるので、心は常にかき乱されていました(笑)

‐ 美帆と桜井さんの共通点はありますか?

桜井日奈子
ありますね。私も普段は出さないように気をつけていますけど、心のうちでは結構イライラしちゃったりとか(笑)。「実はイライラしてるよ」みたいな感情の乗り方は、美帆と近いものがある気がします。
あと、素直になれないところも似ていますね。実家に帰った時、親に仕事のこととか聞かれても「別に。上手くやってるし」みたいに、心配させたくなくて強がっちゃう。そういうところは美帆と共通しているなと感じました。

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‐ 新米死神・サクマ役の日穏(KANON)さんとの共演はいかがでしたか?

桜井日奈子
とにかく落ち着いていて、19歳(撮影当時)とは思えない達観した感じがありました。いい意味で10代のキラキラ感というよりは、落ち着きがあるんです。
監督の「脈略のない演出」に対しても、私は一瞬悩むんですけど、彼は「分かりました」と言ってスッとやる潔さがありました。サクマという難しい役を軽やかに演じていて、私より10歳くらい年下ですけど、そうは思えないぐらい頼もしさもありました。私も頑張らなきゃと思わされました。

‐ 撮影現場で雑談などはされましたか?

桜井日奈子
当時はまだ彼がグループのオーディション中だったので、ダンスを覚えたりしている期間で、動画を見せてもらったんです。歌もダンスもキレキレで、「あ、もう絶対デビューしてトップランナーになるな」と感じました。彼が演じたサクマは本当に魅力的な死神になっていますし、歌えて踊れてお芝居もできて、眩しさも感じました。

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場面写真:新米死神・サクマ(演:日穏(KANON))/佐伯美帆(演:桜井日奈子) ©︎『死神バーバー』製作委員会

‐ 今回は美容師の役ですが、練習などはされたのでしょうか?

桜井日奈子
美容師さんに切り方を教えていただいて、マネキンとハサミをお借りして家でも練習しました。一番難しかったのは、ハサミの持ち方です。基本的に輪っかに指を通さないんですよ。「なんで輪っかがあるのに指を通さないんだ!」と思いながら練習していました(笑)
あと、これはここだけの話なんですけど……実は撮影の数日前に、趣味のバスケットボールで突き指をしてしまって、それを隠してハサミのシーンをやっていました。

‐ それは監督にも伝えていないのですか?

桜井日奈子
言ってないです。今、ここで初めて言いました(笑)。指を通さない切り方で本当によかったです(笑)

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場面写真  ©︎『死神バーバー』製作委員会

‐ 「死と向き合う役」ということで、普段の現場とは違う意識はありましたか?

桜井日奈子
シーンによって「美帆にとってあと何日か」を意識していました。最初は「もう死んだのかよ、どうでもいい」というテンションだったのが、カウントダウンが進むにつれて「どうでもよくないぞ」と気づき、今まで疎かにしていたものと向き合わざるを得なくなる。向き合っていくと、「なんでこんな簡単なことができなかったんだろう」となっていくんです。
実は私、最近、死と向き合う役が連続して続いていて。死と向き合わざるを得ない時間が本当に長いんです。でも作品が終わるたびに、日々を大切にしようと思ったことを忘れちゃう。やっぱり忙しさに追われて……人間ってそういう生き物だよな、と思わされています。

‐ 美帆がサクマに「よしよしして」と甘えて号泣するシーンがありますが、あの時の心境の変化をどう捉えていましたか?

桜井日奈子
美帆は周りに弱みを見せないようにしてきましたけど、サクマが(現世と冥土の狭間にある美容室)「冥供愛富(メイクアップ)」で死者たちと向き合う様子を見ていて、「この人になら自分の弱いところを見せてもいいんじゃないか」と、どこかで思ったんでしょうね。それでダムが決壊するように、メソメソじゃなくて「号泣」してしまう。
爆発する前に、もっとうまく「辛いんだ」「怖いんだ」と伝えられていれば、あんな風にはならなかったのかもしれません。美帆の不器用さと、サクマの優しさが、最終日にダムを決壊させたんだと思います。あとは単純に死ぬのが「怖い」というのもありますよね。他の人たちは「亡くなった後」に会いに来ているけど、美帆は「亡くなる前」ですから。正気ではいられない日々だと思いますし、自然とああいう感情になりました。
私もあまり誰にでも心を開けるタイプではないですけど、開いた相手にはお茶らけた部分や、泣き虫な部分も見せてしまうので、そこは美帆と似ているかもしれません。

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‐ 最初は同僚(山口)と激しく喧嘩していた美帆が、最後には号泣して甘える。その感情の揺れ幅を演じるのはいかがでしたか?

桜井日奈子
職場の同僚と激しく言い合うシーンは、山口役の佐久間祥朗さんのイラッとするお芝居に乗せられて、思っていた以上にヒートアップしてしまいました(笑)
後半の橋の上で、お店のお金を盗んだ山口さんを説得するシーンも含めて、一連で撮ったんです。夜のシーンを一連で撮るのはハードルが高いので、夜遅くまで何度もテイクを重ねて、みんなでヒーヒー言いながら撮りました。

‐ 本来より早く連れてこられてしまった5日間で、美帆はどう変わったと思いますか?

桜井日奈子
最初は現実を整理しきれていなかったけれど、死者たちの様子を見ていくうちに、だんだん理解が追いついていったのだと思います。
「生きるということ」に対して、もう手遅れなんだけど、でも誠実に、大切になっていく。劇中に「生きてみたくなっちゃった」というセリフがあるんですけど、終わることを実感して初めて、生きることに誠実になれたのかな、と思っています。

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‐ この映画では「人との出会いや繋がり」もテーマだと思いますが、最近そのような繋がりを感じたことはありますか?

桜井日奈子
私は今デビューして12年目くらいなのですが、以前ご一緒した方と別の現場で再会することが増えました。お互いがちょっとずつ成長した姿で再会すると、「頑張ってきてよかったな」と思いますね。昔とは違う価値観で話し合いができたりすると、「自分は生きてるな」と感じます。
この仕事は繋がりの連続だと思うんです。繋がらなければ終わってしまう。だからどの現場でも「次に繋がるように」というのは意識していますし、今回の『死神バーバー』というご縁も舞台からだったので、いいご縁が繋がったなと思っています。

‐ 再会した方に言われて、印象に残っている言葉などはありますか?

桜井日奈子
「昔よりも話しやすくなったね」と言われますね。昔は人間関係に怯えていて、傷つくのが怖かったんです。でも今は楽しく仕事ができているし、人と話すのも楽しくなりました。

‐ 完成した作品を観て、一人の観客としての感想はいかがでしたか?

桜井日奈子
「終わりは誰にでも来るもの」なので、客観的に観ているつもりでも他人事には思えませんでした。自分はどういう終わり方をするんだろう、と考えさせられましたね。美帆には「5日間」という明確なカウントダウンがありますけど、私たちもいつ来るか分からないだけで、確実にカウントダウンは始まっていますから。
劇中のキャラクターたちはみんな、悔いを残してお別れをしていきます。どんなに向き合っても、きっと私たちは悔いを残すんだろうな、と。この作品は「今を大切にしよう」と思わせてくれると同時に、それをすっかり忘れて生きてしまうような「人間の愚かさ」もテーマにしていると思うんです。でもそれを悪いと言うのではなく、「人間ってそういうもんだよね」と肯定してくれる作品だなと感じました。

‐ もし美帆と同じように「残り5日間」と言われたら、桜井さんはどう過ごされますか?

桜井日奈子
もちろん家族とも過ごしたいですけど、私はこの仕事が本当に好きで、どんどん楽しくなってきているので、最後の最後まで俳優業をやって、何かしら形に残るものを残したい、と思うかもしれません。5日で撮れる作品はなかなかないかもしれないですが(笑)

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桜井日奈子(さくらいひなこ)プロフィール
1997年4月2日生まれ。岡山県出身。2014年、「岡山美少女・美人コンテスト」の美少女グランプリを受賞。2016年に舞台「それいゆ」で舞台デビュー。
以降、映画「殺さない彼と死なない彼女」(’19年)、ドラマ「人事の人見」(’25年/フジテレビ系)、舞台「シャイニングな女たち」(’25年,26年)など話題作に多数出演。
直近ではドラマ「余命3ヶ月のサレ夫」(’26年/テレビ朝日系)ではヒロインを務めたほか、「コンサルタント-死を執筆する男-」(’26年/WOWOW)、実写映画「SAKAMOTO DAYS」、7月9日(木)スタートの「ラストノート」(’26年/フジテレビ系)にも出演。幅広い作品でそのたしかな演技力と希少な存在感が支持されている。

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■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎/ヘアメイク:Hitomi(Chrysanthemum)/スタイリスト:有咲]

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《INTRODUCTION》
6月26日(金)から新宿武蔵野館ほかで全国公開される映画『死神バーバー』はいまおかしんじ監督最新作。
本作の舞台は、死神が営む美容室「冥供愛富(メイクアップ)」。死神美容師たちは、亡くなった人間にお色直しをし、魂が冥土に送られる前に、現世にいる残された家族や大切な人を1日だけ繋ぐことで、本当の意味での「最期の別れ」を手助けしている。
新米の死神美容師・サクマ(日穏)の”早とちり”によって、死までの数日間を「冥供愛富」で過ごすこと になったヒロイン・佐伯美帆(桜井日奈子)が、残された時間の中で、死を迎えた人たちとの出会いと別れを通じて自分の人生を見つめ直すヒューマン・ファンタジー。

《STORY》
ある日、職場でもプライベートもうまくいかずイライラしていた佐伯美帆はうっかり階段で足を滑らしてしまう。
その後、目を覚ますと目の前にいた新米の死神・サクマに、怪しい美容室<冥供愛富>に連れてこられるが、サクマのミスにより、本当の死は数日後であることが判明して…。

桜井日奈子 日穏
岡部 大 平井亜門 猪塚健太 佐久間祥朗
河屋秀俊 武田 暁 山脇辰哉 細井じゅん
坂巻有紗 日高七海 光嶌なづな 荒井啓志 佐々木ほのか
山下敦弘 川上さわ 守屋文雄 森蔭晨之介 西山真来
工藤 遥 宇野祥平 / 美保 純

監督:いまおかしんじ
原案:梅木陽一
脚本:谷口恒平
主題歌:Furui Riho「太陽になれたら」(LOA MUSIC / PONY CANYON)
製作:『死神バーバー』製作委員会
制作プロダクション:レオーネ
製作幹事:SPOTTED PRODUCTIONS ポニーキャニオン
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
©︎『死神バーバー』製作委員会
公式HP:https://shinigami-bb.com/
公式X:@shinigami__bb
公式Instagram:@shinigami__bb

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