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あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

あの「哲学を否定することこそ、哲学の入り口」――クリスマスイブの囲み取材で語った“復讐”と“現在地”

2025年12月24日、HMV&BOOKS SHIBUYA 6F イベントスペースにて、あの全編書き下ろし『哲学なんていらない哲学』(12月24日発売)に関する囲み取材が行われ、登壇したあのは、記者からの質問に答えた。(動画&フォト)

【あのコメント(「哲学なんていらない哲学は」より抜粋)】
これをなぞって生きなきゃいけないわけじゃない。人生の参考書でも教科書でもない。
「誰かのことを肯定する」「誰かの人生を変えよう」なんてことを書きたいわけではなくて、
人から見たらどうでもいいことかもしれないけど、「それはどうでもよくない」って言うために書きたい。当たり前のことを「当たり前じゃない」と言うために書きたい。

囲み取材レポート

■トークノーカット4K動画レポート

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■フォトレポート

あの
ようやくファンの方や色んな方に読んでもらえることは嬉しいです。ですが、本を書いている時と今とでは変化があって、『読んでほしくないな』というか、『読まれていいのかな』というような、大事なことを書き終えたからこその複雑な気持ちもあります。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

あの

‐ 今回、なぜ「哲学書」という形で本を出そうと思ったのですか?

あの
元々、いつか本を書くなら哲学書だなと思っていました。ずっと書こうと決めていたわけではないのですが、今年、2025年の今書きたいと思ったんです。自分の性格上、今を逃したらもう書きたくなくなるだろうなと分かっていたので、このタイミングで書くことにしました。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ どんな方に読んでほしいですか? また、読者へのメッセージをお願いします。

あの
僕は本をたくさん読んできた人間ではないですし、難しいこともあまり分かりません。自分なりに書いてみた本なので、難しく考えないでほしいです。タイトルを見て「難しそう」と思われるかもしれませんが、むしろ本を読んだことがない人や、「哲学なんて意味がわからない、いらない」と思っている人にこそ、気軽に読んでほしいですね。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ 『哲学なんていらない哲学』というタイトルには、どのような意味が込められているのでしょうか。

あの
僕自身、「哲学なんていらないんじゃないか」と思って生きてきた部分があります。ただ、そうやって物事を否定したり考えたりすることこそが、哲学的なことが生まれる入り口であり、その奥に哲学が広がっているのだと、自分の経験を通じて感じました。たとえ哲学を否定しようとも、僕たちは哲学のもとで生きている。それが伝わるタイトルにしたくて、自分で決めました。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ 元々、哲学には関心があったのですか?

あの
関心というよりは、自分の考えや発言に対して、ファンの方から「それ哲学っぽいね」と言われることがよくあったんです。自分から積極的に哲学書を読んだりはしていませんでしたが、「関心がないのに哲学をしてしまっている自分」に気づいてから、徐々に興味を持ち始めました。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ この本のジャンルをご自身ではどう捉えていますか?

あの
本の書き方もジャンルも分からなかったので、カテゴリーはあまり意識せずに書きました。自分の経験をもとに感じた、頭の中身や思考を詰め込んだ本なので、一概に「これだ」とは言えない不思議な内容になっています。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ 「今しか書けない、来年なら書いていない」とおっしゃいましたが、それはどういう感覚なのでしょうか。

あの
僕の感情は流動的で、どんどん変わっていくものです。来年、再来年に同じ気持ちを持っているかと言えば、絶対に違う。今の感情が嘘になるわけではありませんが、今はもう「次へ進みたい」という気持ちです。誰にも邪魔されない2025年の僕の言葉を、初期値として置いておきたかった。今この瞬間を逃したら、「もういいや」と思ってしまうタイプなんです。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ 執筆にはどのくらいの期間がかかりましたか?

あの
ちゃんと書き始めてからは、4ヶ月ほどで書き上げました。全体では半年くらいですね。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ 出来栄えを自己採点すると何点ですか?

あの
自分にとっては当たり前のことを書いただけなので、採点するのは難しいです。でも、この本が誰かの思考につながる可能性があるなら、100点かなという感覚です。

‐ 初めての著書となりますが、書いてみていかがでしたか?

あの
エッセイや小説というより、全部が混ざっている感じです。詩のような部分もあれば、自分の経験に基づいた思考をそのまま置いている部分もあります。自分の過去すべてを書くのではなく、今の考えに必要な経験だけを抽出して書いたので、普段とは違う脳みそを使いました。「なんてことを始めちゃったんだ」と思いながら書いていましたね。

‐ 書き終えた今の心境は?

あの
やり遂げたという達成感はすごくあります。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ 「作家先生」という新たな肩書きについてはどう感じていますか?

あの
そんなつもりは全くないです。単純に書きたいから書いただけ。今は「読まれなくてもいい」とさえ思えるほど、自分のために書けたことに満足しています。作家として存在しているという意識はありません。

‐ 「あまり読まれたくない」とのことですが、それでも特に渡したい人はいますか?

あの
あまりいませんが、本の中に名前が出てくるアーティストの方や芸能人の方々には、ぜひ渡したいですね。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ 本の中に「復讐」という言葉も出てきますが、何かやり遂げた感覚はありますか?

あの
まだ果たしているという感覚ではなく、現在進行形です。誰か特定の個人に対してというよりは、これまでに浴びてきた泥水のような経験すべてを、これからの生き方で復讐していきたい。本だからこそ言えることもたくさん書きました。

‐ 本を出すことも「復讐」の一環なのでしょうか?

あの
書きながらそう思うこともありましたが、この本に関しては少し違うのかもしれません。

‐ 過去に自分をいじめた人たちにも読んでほしいですか?

あの
僕から「読んでください」と言うのではなく、その人たちがフラっと本屋へ行って、たまたま僕の本を手に取って中身を知る、というのが一番いいなと思います。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ この後、ゲストの又吉直樹さんとのトークイベントがありますが、どのような話をしたいですか?

あの
又吉さんは本当にお会いしても本の話しかしてくれないんです(笑)
僕も本を書いてみて、ようやく少しだけ本の話ができると思うので嬉しいです。「他の仕事をしながらどうやって集中して書いているのか」といった、作家としての心がまえを聞いてみたいです。

‐ 2025年は武道館公演やドラマ出演など大活躍の1年でしたが、振り返ってみていかがですか?

あの
いろいろなことを並行してやっていたので、周りからは忙しいと言われますが、自分ではあまりそんな感覚はありませんでした。本当にやりたいことを探しながらやれた1年だったと思います。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

‐ 2026年はどのような年にしたいですか?

あの
これまでは必死に色々なことをやってきましたが、来年は一つひとつのことをもっと深く、精神を研ぎ澄ましながら集中してやっていきたいです。

‐ 今日は深夜3時までラジオの生放送があり、大好きなクリスマスイブに本が発売されました。ご自身にとってどんな1日になりそうですか?

あの
クリスマスイブに本が出るのは、最高のプレゼントだと思います。サンタさんとして1日を始められました。本当はプレゼントが欲しい側ですが(笑)、ファンの皆さんにプレゼント(代金は払ってもらいますが)として届けられたらいいなと思います。

あの著作『哲学なんていらない哲学』囲み取材

あの×又吉直樹 出版記念トークショー レポート

アーティストでタレント、俳優と数々の顔を持つあのが、12月24日のクリスマスイブに、初となる著書『哲学なんていらない哲学』を発売し、お笑い芸人で作家の又吉直樹とトークショーを行った。

あの 著書『哲学なんていらない哲学』出版記念トークショー

又吉直樹/あの

この日のトークショーは、あのが又吉との対談を希望して実現したという。あのは「僕は自分のペースがあって、喋るのも自分のペースの人なので。(又吉さんも)ゆっくり喋れるかなと思ったんです。あと本を書いてらっしゃるし、一回尾崎世界観さんを交えてご飯に行ったとき、又吉さんは本の話しかしなかったので、本を書いてから話をしたいと思ったんです」と又吉を指名した理由を述べると「盆栽みたいな感じで、安心感があるんです」と語る。

あののラブコールに又吉は「とても嬉しい」と笑顔を見せると「今回、本を読ませていただき、僕自身も分かっていなかった共通点も発見できました。このタイミングで本を読めて良かった」と呼応していた。

あのは、初の著書が「哲学書」であることについて「見た目とか喋り方に引っ張られ、何を喋ってもそこに引っ張られていく感覚がこの数年あったんです。だから僕にとっては当たり前のことなのですが、その当たり前を今一度書き記すこともいいのかなと思ったんです」と述べると、又吉は「急いでいる人って、その一部分だけを切り取って触れたりするんですけど、本を読む人は急いでいない人が多い。その前後も含めて『ちゃんと何を伝えようとしているのか』を知ろうとしてくれる人が多いので、あのさんの表現はすごく本と合っているなと思いました」と相性の良さを述べる。

さらに又吉は「本当に素晴らしくて」と感想を伝えると「あのさんの体験したことも書いてくれていて、そのなかでどう感じたかを綴ってあるので、本当の言葉が並んでいる。だからこそスッと自分のなかに入ってくるんです。僕自身も子供のころは、どうしても浮きやすく、孤立することが多かった。共感できる部分がすごく多かった。そのなかで“決めつける”のではなくて、“普通”が何なのかとか、“哲学”っていうのが何なのかとか、そういうことにはちゃんと幅があって変化するんだよっていうのを言ってくれているのが、僕自身にとって、とても心強かった。頼もしい言葉をいっぱい書いてくれているなと感じました」と絶賛する。

又吉の言葉にあのは「嬉しい」と笑顔を見せると「割と言いたいことは全体的に通してシンプルなんです。あまり難しいことは書いていません。それぞれに当てはまる何かが、見つかるきっかけになればいいと思う」と作品に込めた思いを語っていた。

執筆を経験し、あのは「自分はこれを許せているんだなとか、これは許せていないんだなとかは、書かないと分からなかったことも多かったかなと思います。あとはやっぱり『あとがき』の方にも書いているけれど、生き方とか、哲学的なことを持っていても、やっぱり自分の魂の衝動とか感情には抗えない部分ももちろんあって。それごと抱きしめて生きていけるといいなっていうのは、書いていて思いました」と自身の気づきについて触れる。

又吉にとっての「哲学」を問われると「若い時は、いわゆる誰か偉い人が言った名言とか格言みたいなのを読んで『なるほど、分かるような、分からんような』みたいな。ただそれを大昔の人が言っていて、現代社会でも通用するってことは、人間ってこの100年200年で全く同じところで引っかかり続けているんやなと思ったら、ある意味、人間のラインを提示されているみたいな怖さもありました」と語ると「だからこそ、例えばあのさんがどういう体験をして、そこから出てきた考えがどうなのかっていう“言葉と体験”をセットで知りたいんですよね。哲学って人それぞれやし、その言葉だけを聞いてもピンとこなかったりすることも多々ありますから。僕自身の哲学って言うと、あるのかないのか、ちゃんと『僕の哲学はこうだ』ってまだ決め切れてないかもしれないです」と述べていた。

多忙を極めるあの。「武道館だったり、アルバム制作だったり、ツアーとかをやっているなか、ドラマの撮影も始まった一番忙しいタイミングで『本を書く』ということになってしまったので、同時並行で書いていました」と苦笑いを浮かべると、又吉に執筆スタイルを問う。

又吉は「僕は結構、固めて書くのが多いんですけど。でも仕事しながら、1日3時間とか4時間とかっていうやり方の方がいい時もあったような気がして」と、あののスタイルを肯定するも「でも、例えばバラエティの仕事でさんまさん(明石家さんま)とお会いして、めちゃくちゃワーってお話しした後に一人になって自分の感覚のこと書いたりしたら、なんか人間としてもう破綻しそうですけどね」と発言して会場を笑わせていた。

又吉は「僕は評価できる立場ではないですが、めっちゃ向いていると思う」とあのの執筆の才能を評価する。あのは「えー本当ですか?」と照れくさそうに語ると、又吉は「第2弾すぐ書いてもらいたいです」と推奨する。

あのは「書き終わってもう『書けないわ、本は』と思ったぐらい正解が分からなかった」と正直な感想を吐露すると「今回書き方的には自分の経験を経ての自分の考えというところを出していたので。自伝ともまたちょっと違うし、エッセイとも若干違うから、ちょっと変なことしちゃったなという思いがあったんです。初心者にしては使う脳みそがたくさんあって難しかった」としみじみ語っていた。

最後にあのは「本当に本を書くっていうのは初めてで。拙いし、書き方がよく分からないまま書き終わって、いま出版に至っています。そのぶん、ある意味本当に『僕の言葉』で書かれている。本を読んだことない人だったり、難しいこと分かんないとか、哲学なんて知らねえよって人こそ、ぜひ読んでほしいなと思います。頑張って書いたので、読んでください。ありがとうございました。メリークリスマス」とクリスマスイブのイベントを締めていた。

あの 著書『哲学なんていらない哲学』出版記念トークショー

■フォトギャラリー

[写真:山田健史/動画・記事:三平准太郎]

書名:哲学なんていらない哲学

音楽活動にとどまらず、ジャンルの垣根を越えて活躍の幅を広げ、エンターテインメントの最前線を走り続ける、あの。
12月24日(水)クリスマスイブに全編書き下ろしの“あの流哲学書”『哲学なんていらない哲学』が遂に発売!
デビュー5周年を迎えた今、これまで歩んできた道のりや過去と対峙しつつ、さらなる飛躍への決意をも刻んだまさにあのの「現在」を映し出す一冊。綴られる言葉には「みんなちがってみんなつらい」といったフレーズをはじめ、あの流の哲学が凝縮されてる。前例やルールに縛られず、自由な表現で構成された、これまでに見たことのない【あの流哲学書】!
─何もわからない僕がわかること
─みんなちがってみんなつらい
─自分を貫く孤独は深淵の如く 「哲学なんていらない哲学は」より

著者:あの
定価:2,420円 (本体2,200円+税)
発売:2025年12月24日(水)
発売・発行:株式会社KADOKAWA
写真:松岡一哲
書籍サイト:https://www.kadokawa.co.jp/product/322506001161/

哲学なんていらない哲学

書影

 

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