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【インタビュー】ドラマ初主演・松岡広大「表現を生業にする人々の苦悩が詰まっている」

10月3日深夜1時38分より、ABCテレビにて放送スタートするドラマ『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』(RakutenTVおよびTVerにて配信あり)。本ドラマに中尾暢樹と共にW主演を務める松岡広大に、ドラマ初主演の想いや物語に込められたテーマに対する自身の考えを聞いた。

本ドラマは、ミナモトカズキの人気同名BLコミックが原作。物語は、幼馴染だけど境遇がまったく違う同人作家・猫屋敷守(松岡広大)と、キラキラアイドルの“ISSAY”こと風間一星(中尾暢樹)の、夢に向かってまっすぐ生きる姿と、恋未満(?)の友情関係を描く爽やかな青春ストーリー。
SHINY SMILE メンバーや、猫屋敷の友人で良き理解者の山田小春(矢作穂香)ら個性的で魅力的なキャラクターが、物語の山場を彩っていく。
大きなジャンルとしてはBLに類する本作だが、“なにか”を好きでいられること、そしてその“好き”という言葉が持つ意味はどの人にとっても共通のものなのかを改めて考えさせてくれる深いテーマが根底に流れている。そんなメッセージを笑いあり感動ありのストーリーに内包した作品だ。

松岡広大 インタビュー&撮り下ろしフォト

■民放連続ドラマ初主演!

-民放連続ドラマ初主演ということですが、お話が決まった時のお気持ちをお聞かせください。

松岡広大(猫屋敷守/ねこやしき まもる 役)
嬉しいと思う以前に、自分の器量でできるのか畏れ多いと思いました。W主演の片棒を担ぐという形とはいえ、これまで主演を務めてこられた諸先輩方が素晴らしさに、どう自分をそれに近づけられるかと思ったからです。

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松岡広大

-シリーズものにレギュラーで出るという挑戦もありますからね。

松岡広大
はい。レギュラーとして出演するのは、俳優としては一つの目標ですし、さらに主演となると本当にひとにぎりだと思うので、そこに自分が選ばれたのは光栄だと思います。

-猫屋敷守(ねこやしき まもる)というキャラクターをどう捉えて取り組まれましたか?

松岡広大
猫屋敷守は厭世的なんです。嫌なことは自分の中で我慢したりするけども、毒はちゃんと吐く。でも自分が言ったことに対して後悔もするし、なんでこんな感情になっているんだろうという自己嫌悪に陥りますし、同人というものをどう認めてもらって売るかと考えているということは、同時に、結局はどうやって世の中と繋がるかということを考えているなと思ったので、そこをとにかくリアルに演じるために、原作の漫画をとにかく読むっていうことを意識しました。

■想像していた以上に多様な重さがあった

-先日、Twitterで「想像していた以上に多様な重さがありました。途中支えきれないと思い倦(あぐ)む時期もあった」とツイートされていましたが、具体的には?

松岡広大
まず、主演としてのあり方です。一つの現場に、スタッフさんもエキストラさんも合わせて100人規模というたくさんの方が参加されていていますし、やっぱり風通しの良いものにして、意見が通りやすい環境や、お互いを尊重した上で忌憚のない意見を交わし合えるようにしたかったので、改めて人への配慮って何だろうとか、そういったことを考えながらやっていました。
そういう重みがまずあって、タイトなスケジュールの撮影を続けていくために、体力含めて自分はできるのだろうかという不安との闘いはもちろん、周りのキャストの皆様との芝居で不備はないかという配慮、そしてこうやって取材でお話させていただくことも、これをきっかけにしてドラマを観ていただくための語り部にもなる役割としての重さもあるわけで、それで多様な重さがあったと書きました。

-W主演とはいえ、座長としてどう現場で居るか?ということですね。

松岡広大
はい。利己主義になってはいけないので、どう利他主義で居られるか?ということかなと思います。

-先日クランクアップされたそうですが、撮影全体を通してその他印象に残っていることはありますか?

松岡広大
猫屋敷はモノローグのシーンが多くて、その時は表情だけのお芝居をすることになります。言葉を発さずに、表情だけで感情を表現するのが難しかったです。
その難しさをひとつひとつどうクリアにしていくかということを毎日考えていたので、それは結果的に自分にとって良い意味での悩みでしたし、糧になったと思います。

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■中尾暢樹との不思議な縁

-W主演のお相手の中尾暢樹(なかお まさき)さんと松岡さんとは、舞台でナルト役を演じられたという共通点がありますね。

松岡広大
そうなんです。僕は17歳から21歳まで初代ナルト役を務めて、それから中尾くんにバトンタッチすることになるわけですが、最初の公演を僕は後ろでこっそりと観ていたんです。
それから少し経って今回のドラマのお話をいただき「お相手は中尾さんです」となっていたので、こんな繋がり方をするんだと不思議な縁を感じて驚きました。

-その中尾さんと共演されていかがでしたか?

松岡広大
中尾くんはすごく明るくて天真爛漫なので、演じられた風間一星(かざま いっせい)というキャラクターに近いと思います。笑顔が多いので現場が和んだり、そういったところで僕も救われたりもしました。
僕はとにかく考えに考えて、どれが一番いい表現なのか、どうやったら中尾くんが芝居しやすいかとかいろいろ考えていたんですけれども、彼を見ているとそんなに構えてなくて、ちょっと自分は考えすぎかもなと思っちゃうほど、良い意味で楽観主義でした。
本人のそのまんまの明るさと役に不思議と親和性があって、それがまた増幅されて一星になっていったので、とてもスムーズにお芝居の掛け合いできたと思います。

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■表現を生業にする人々の苦悩が詰まっている

-松岡さんのコメントで「表現を生業にする人々の苦悩が詰まった作品」と語られてますが、それについて質問です。猫屋敷が葛藤していたように、自分が表現したいことと、売れるための商業的観点との葛藤やバランスの持ち方などについて、松岡さんとして思われていることはありますか?

松岡広大
僕は時代に迎合したくないと思っていて。ある程度どこかで逆張りをしたりとか、最新のものというよりは源流に戻るべきとも思うんです。
なので、寄り道はいいと思うんですけど、迎えに行き過ぎると、奇をてらっている感じがするし、すごく打算的だし、血の通ったものにならないなって思うんですよね。
でもそこをぐっと噛み殺して表現するのか、自分自身の芯を通して、初志貫徹としていくのかというのは、どうしても生じる齟齬だと思います。
よく思うのは、空気を読みすぎるよりは空気を作ろう!ということです。空気を作れば、感じる人はいるし、受け手の人の感性は自由ですから。

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■SNSの功罪

-劇中、暴露系マスコミが登場して、一星が所属するアイドルグループのあるメンバーのことを暴こうとして、「悪い話はすぐに拡散されるけど、良い話は広まりづらい」と言う場面があります。これはまさにSNSの負の側面の典型的な特徴を表していいますが、俳優という「表現者」として存り続けることの難しさと楽しさについて、松岡さんが日頃お考えになられていることはありますか?

松岡広大
やっぱりどこかでデジタルなものと距離を置いた方がいいとも思うんです。
もちろん何かをまとめて見やすくすることは重要だと思いますが、時にはそこからの離脱も重要だと思っています。
最近SNSはあまり更新していないですが、その分こういったインタビューの場でお話したいと思うようになりました。それは生きた言葉としての会話が成立しているからです。

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■“好き”とは?

-“好き”という言葉の意味の捉え方について、猫屋敷守と、一星とでギャップがあるように感じましたが、松岡さんはいかがですか?

松岡広大
まさにそうなんです。例えば“I love you”って“愛している”なんですけど、一方で“(親友として)大好きだよ”という意味もあります。猫屋敷と一星のそれぞれの捉え方はそれに近いと思っています。これまでどうやって生きてきたかというところでの“好き”の違いもあるでしょうし、自分の中に密かに持つ内向的なものなのか、外に向かって表すものなのかという違い。あとは、その先の関係をどうしたいか?ということにもよりますよね。この言葉を言う事で離れてしまうかもしれないし。言葉って時にはとても鋭利になり得ると思っているんです。

-なるほど。このドラマを観る人がそのへんをどう捉えるのか?というのも見どころのひとつのポイントかなと思いました。

松岡広大
エピソードが進むにつれて、最初は内に秘めていた“好き”がだんだん外に向いていったり、また戻ったりと行ったり来たりするところも楽しんでもらえたらなと思います。

-表面的には、いわゆるBL作品と捉えがちですが、実は深いところを問いかけている作品でもあると思います。

松岡広大
そうなんです。BLというジャンルでラベリングされていますけど、もっと人間の根源的な部分での捉え方ができる作品だと思います。

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■休日は料理を作ってリフレッシュ

-松岡さんがオフの日などに好きな過ごし方、趣味、ハマっているものを教えてください。

松岡広大
オフの日は早めに起きて、コーヒーを飲んで、それから読書ですかね。考えることがすごく好きで、机の上に小説や哲学関係の新書なんかを揃えています。
ペンと定規と付箋を使って、自分がいいなと思ったところに線を引いたり付箋を付けたり、
本を読む持久力をいったん休めたいと思ったら、食材を買いに行って、鍋をふって自炊をします。
普段のお仕事が人と触れ合うことが多いからこそ、自分と向き合う時間も確実に増えてきます。自分の関心がどこにあるのかということを常に自分自身でわかっておかないといけないので。僕は自分のことが一番わかりづらいと思うからです。

-よく作る料理ってなんでしょうか?

松岡広大
最近は、アルミパンを買って、それでイタリア料理のパスタをよく作ります。イタリア産のピッコロという小さな唐辛子、ちょっと高い青森県産のにんにくを使ってペペロンチーノを作ったり、他にもいろいろ研究して、アラビアータ、アマトリチャーナ、カルボナーラ、漁師風パスタ、あとは、チーズにこだわったパルミジャーナも作ったりしています。

-そういうのってとてもリラックスに繋がりそうですね。

松岡広大
そうなんですよ。セリフが全部頭に入ったあとに料理をすると、リフレッシュになるんです。料理という作業に集中するので。

-俳優として、あるいはそれ以外でも構いませんが、松岡さんの今後の抱負がありましたらお聞かせください。

松岡広大
これまでは演劇が多かったので、映像作品もやっていきたいとは思いますが、具体的な抱負というのはあまり決めずにいます。
こうなりたいって言葉にすると、言霊の力もあってそうなっていくのはいいことだとは思うんですけど、限定され過ぎちゃう気もするからです。
いろいろあっちに行って、こっちに行ってということがしたいので、俳優としてどうなりたいか?と聞かれたら、具体的な答えにはなってないですけど、毎日どうなりたいか?を考えています。そういう中でご縁があった作品にどう臨むかということですね。

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■最後にメッセージ

-最後に本ドラマを楽しみにされている方々へ見どころ含めたPRメッセージをお願いします。

松岡広大
お芝居がとても大好きなキャストのみなさんが集まった作品だと撮影中にすごく思ったので、安心して楽しんでご覧になっていただければ嬉しいですし、もしご自身が好きなことがマイノリティで、他の人には理解され難いことだったとしても、好きは好きでちゃんと持っていてほしいですし、あらゆる好きという感情に寄り添った作品になっていると思うので、BLだからというところだけにとらわれないで、ひとりひとりの生き様を見ていただけたらと思います。楽しんでいただけたら幸いです。

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■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎]

松岡広大(まつおか こうだい)プロフィール
1997年生まれ。東京都出身。
2012年「特命戦隊ゴーバスターズ」で俳優デビュー。
主な作品は舞台「ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』」「劇団☆新感線『髑髏城の七人 Season月』」「迷子の時間-語る室2020-」「ねじまき鳥クロニクル」
ミュージカル「スリル・ミー」、「ニュージーズ」
映画「引っ越し大名!」「いなくなれ、群青」
ドラマ「ベイビーステップ」(AmazonPrime)、「兄友」(MBS)、「ボイス2」(NTV)、「ムチャブリ!」(NTV)、「ちょい釣りダンディ」(BSテレ東)など。
今年俳優業10周年を迎え、アニバーサリーブック『再会』を発売。10月には全国5カ所のHMVにて対面イベントも実施。

ドラマ『壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている』

出演:松岡広大、中尾暢樹、立石俊樹、木原瑠生、小西詠斗、加治将樹、上田航平(ゾフィー)、宮下かな子、髙橋里恩、シュウペイ(ぺこぱ)、矢作穂香、斉藤陽一郎ほか

番組公式HP:https://www.rakuten-ipcontent.com/kabekoji/
番組公式Twitter:@drama_kbkj

ドラマシーンをふんだんに盛り込んだPR動画ロングバージョン

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ABCテレビ 2022年10月3日(月)放送スタート
毎週月曜 深夜1時38分~2時10分
※毎話放送終了後より、RakutenTVおよびTVerにて配信

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