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喜劇 お染与太郎珍道中

渡辺えり「演劇人を目ざした初心を思い出し、改めて生の芝居の大切さを再確認した」 『喜劇 お染与太郎珍道中』製作発表会見

1月7日、都内にて、2021年2月新橋演舞場・京都四條南座公演『喜劇 お染与太郎珍道中』製作発表会見が行われ、W主演の渡辺えり、八嶋智人が登壇した(会見動画&フォト)。

本舞台は、昭和54年(1979)3月明治座にて『与太郎めおと旅』という題名で初演されたもので、作家の小野田勇が稀代の喜劇俳優・三木のり平とタッグを組み、落語の噺を中心に、さらに歌舞伎のエピソードも加えてドタバタ珍道中に仕上げた。
その芝居を、渡辺えり・八嶋智人が喜劇初共演でW主演を務める。
この日の会見では、今のコロナ禍で演劇人として改めて自身の原点に振り返る機会になったこと、そして2月1日からの公演は、万全のコロナ対策を施した上で行うことなどを語り、決して“不要不急”ではない、生の芝居の“大切さ”について熱く語った。

会見レポート

喜劇 お染与太郎珍道中

■公演に向けての思い

渡辺えり(お染 役)
このコロナ禍の1年、演劇人はほんとに大変な思いをして、我慢に我慢を重ねて年を越しました。
自分の存在そのものを否定しなくちゃいけないような長い1年でしたが、でも逆に、映画、アート、そしての生のお芝居がいかに大切かっていうことを1日1日再確認しつつ過ごした1年でもありました。
今回、この喜劇の稽古をやらせていただいて、本当に幸せだなと改めて思っています。
自分は、演劇がやりたくて山形から上京してきたんですけど、その時の思いのようなものもまた再確認しました。自分にとって何が重要なのか、お客様に何をお見せするのが大事なのかみたいなことを本当に考えた時期になりました。
2021年になって、これから見えないものを作っていくぞ!という奮い立つような思いでいます。
今回の『喜劇 お染与太郎珍道中』は、人間にとっての大事なものは一体何なんだってこと、それを追求していく芝居です。これは偶然だと思うんですけども、コロナ以前から企画されていたお芝居なんですけど、お金持ちの箱入り娘のわがまま放題の娘が、自分が生きてく上で何が大事かということを勉強していきます。そして結局、愛し愛されるっていう目に見えないそういう愛情という力がいちばん重要
だということを学びます。
このようなお芝居を、お客様に大泣きして大笑いしながら見ていただきたいなと思っています。こういう時代ですからマスクしていただきながら。

渡辺えり

渡辺えり

 

八嶋智人(与太郎 役)
コロナっていうのはこの先も随分と長く付き合っていかなきゃいけないという中で、昨年はいろいろと試行錯誤もありました。
その中でウジウジしててもしょうがないなということで、2021年の頭に、こうして喜劇と最初から銘打った舞台ができるというのは本当に幸せだと思っています。
もちろん、この先どうなるかまだわからない状況でありますが、我々は粛々と準備をして喜劇を真面目に作っていますので、それを楽しんでいただければなと思います。
舞台とはこれだけ楽しいもんだ、劇場ってのはこれだけ楽しいもんだということを分かっていただけたらなという思いもあります。
過去の映像で残ってるものを見させていただくと、三木のり平さんが突然マイケルジャクソンを踊りだすっていうシーンに出会った時、もう何でもいいんだ、面白いことを全部取り込んでいこう、同時代性もある、現代的な部分もあるという喜劇に仕上げるために、今、一生懸命ふざけて稽古場で頑張っております。
もちろんコロナ対策は、我々中ではものすごく厳しく行っております。お客さんとしては、劇場とはとても安全な場所だと僕は思います。

八嶋智人

八嶋智人

■東北人と関西人は合わない?

-喜劇としては初共演のお二人ですが、お互いの印象をお聞かせください。

渡辺えり
私が山形出身で、八嶋くんが奈良なんです。東北と関西なんですよね。そのせいかケンカばっかりしてますね。
すごいイジってくるんですよ。ユーモアのある方だから。でも私は生真面目な東北人だから反応しなかったりして。
で、この人、ある記者会見の時に、「尊敬している先輩だけど、付き合うのはゴメンだ」って言うんですよ。そんなことをわざわざ記者会見で言いますか?言われたほうがどう思うのよ?
好き合う役同志なのに、素に戻っちゃうのよ。

喜劇 お染与太郎珍道中

八嶋智人
どんだけ地獄みたいな人ともお芝居をするわけじゃないですか。

渡辺えり
やめなさいよ。そういうことを言いなさんなって言ってるの。

喜劇 お染与太郎珍道中

八嶋智人
(笑)

渡辺えり
こういう感じなんですよ(笑)
だから、これがどういう形で本番に出るか。良い形で出ればいいなって。

八嶋智人
喜劇としては初共演と銘打ってたりするんですが、日常がこのように喜劇みたいなんで(笑)

■本公演直前に中止になった時の思いを全部乗せて。

-昨年3月の新橋演舞場「有頂天作家」は本公演直前で中止となりました。そこを含めて今回の公演についてのお気持ちをお聞かせください。

渡辺えり
「有頂天作家」はゲネプロまでやって、本当に本番と同じように3回も4回もやって、で、結局本番ができなかったっていう、あの切なさは今もずっとあります。
その時に稽古をした相手役の表情、衣装の色とか、ずっと(頭の中に)焼き付いてるんです。友情がテーマの物語でしたので、稽古場でもゲネプロでも号泣しながら演じるという、ものすごく密な芝居の感情は、今もずっと持ち続けています。
今回はそれとは全く違う形の芝居なんですけど、あの時にできなかったみんなの悔しさとか、みんなの悲しさといったものを全部、身体の中の細胞に入れて、今回その分もやろうっていう気持ちです。
どんな芝居でも(そこに登場する人物は)みんな生きてるんだっていう風に思ってやるのが私のやり方なので。
「有頂天作家」のゲネプロは岡江久美子さんもいらしてたんですが、その後にコロナで亡くなられて。今だにキョトンとした気持ちなんですが、そういうお客さんの想念も客席や劇場の舞台にもあると思ってやろうという思いです。
劇場に来た人はもちろん、いろんなことがあって劇場に観に来れなかった人をも生かせるような、そういう芝居を作りたい、と思って頑張っています。

渡辺えり

■三木のり平名作芝居に挑戦するという意気込み

-三木のり平さんが演じられた喜劇の名作です。それに挑戦するという意気込みを改めてお聞かせください。

渡辺えり
三木のり平さんとは共演したことがあるんですが、彼の現実(=共演者)も非現実(=芝居を見る客)も含めて劇場全体を笑わせていくというその空気感がずっと胸にありまして、その三木のり平さんの精神を現代に合うように進化させてやれればなと思っています。
それを自分たちがどこまでできるのか。理屈で悩みすぎてもできないと思うのでなるべく感覚でその域までにいけるようにがんばります。劇場全体が渦巻きになるように。私、先日66歳になって、渦巻き(=6)と渦巻き(=6)なので。

渡辺えり

八嶋智人
僕はその三木のり平さんの役をやらせていただきますが、喜劇の神様みたいな人なので、どうなるかわかりません。
ただ、三木のり平さんの本を読ませていただくと、膨大な知識に裏打ちされた“アチャラカ(喜劇の一形態)”や出鱈目がおそらくあるのだと思いますが、僕にはそういった前提となるものがありません。ただ今回は幸いなことにたくさんの面白い先輩共演者たちがいて、ボールを一球投げると、十球、二十球と投げ返してくるので、それをやっていくうちに僕の身体の中に蓄積されてきています。
なので稽古もとても楽しいんですよ。70歳過ぎた人がデカイ声でフザケているとか、単純にカッコよくないですか?それだけでもう面白いんですよ(笑)
そして演出の寺十悟(じつなしさとる)さん。昔から知っている方なんですが、今風なこと、テンポとか間合いで面白いものに導いてくださってくれるので、それが今、どんどん積み重なってきています。僕は三木のり平さんにはなれないので、それにおまかせしようかなと。令和の喜劇を僕なりに作っていけたらなと思います。

八嶋智人

喜劇 お染与太郎珍道中

喜劇 お染与太郎珍道中

■会見ダイジェスト動画

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[写真・動画・記事:Jun Sakurakoji]

『喜劇 お染与太郎珍道中』

新橋演舞場:2021年2月1日(月)初日~17日(水)千穐楽
京都四條南座:2021年2月21日(日)初日~ 27日(土)千穐楽

<紹介>
昭和54年(1979)3月明治座にて『与太郎めおと旅』という題名で初演されました。作家の小野田勇が稀代の喜劇俳優・三木のり平とタッグを組み、落語の噺を中心に、さらに歌舞伎のエピソードも加えてドタバタ珍道中に仕上げました。
主演は渡辺えりと八嶋智人。2人はさまざまな舞台や映像で、共演しておりますが、この度、喜劇初共演で大店の箱入り娘お染と、ドジでおっちょこちょいな手代の与太郎を演じます。
その他の出演に、太川陽介、宇梶剛士、石井愃一、深沢敦、春海四方、石橋直也、三津谷亮、有薗芳記、一色采子、広岡由里子、あめくみちこ、そして西岡德馬と曲者ぞろいの豪華実力派キャストが集結しました!

<ものがたり>
江戸時代、指折りの大商人、米間屋「江戸屋」にお染(渡辺えり)という箱入り娘がいました。久兵衛夫婦にとっては一粒種の娘で、わがまま放題に育ち過ぎてのグラマー美女に。
蝶よ花よと、金にあかせての花嫁修業、お茶にお花、お琴に二味線、踊りに料理、更に手習いにと大忙し。ついでの事に恋の手習いにも精を出して、お出入りの大名・赤井御門守の家中での美男の若侍・島田重二郎と良い仲でした。

ところが、二人の仲を裂く悲しい出来事が起こります。重三郎が京都藩邸へ転勤という事になったので。
追い討ちをかけて、赤井家からお染を妾に差し出せとの無理難題を突き付けられました。

お染は、一つには赤井家から逃れるため、また一つには重三郎を追って、京へ旅立つ事になりました。
過保護で親馬鹿の入兵衛夫婦は、お染に付き人まで付けて京都に送り出す事に。その付き人に選ばれたのが手代の与太郎(八鳩智人)、ドジで間抜けでおっちよこちょい、先輩の番頭・同僚の手代・ずっと年下の丁稚小僧まで日頃馬鹿にされている頼りない人物ながら、すこぶるつきのお人好し、無類の忠義者で、年頃の娘と一緒旅をさせても、間違いも起こらないというのが与太郎当選の理由ですので、男としてはだらしがない話です。
もっとも久兵衛もその点は抜かりなく、出入りの鳶の者、べらばう半次をこっそり見張り役で跡を追わせる事にしました。

かくて、お染・与太郎は表向きは夫婦という態を取り、五十三次の珍道中が始まるのですが、世間知らずの娘と頼りない手代の二人旅、騒ぎが起こらぬ訳もなく一――。

喜劇 お染与太郎珍道中

 

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