伊藤沙莉

【インタビュー】伊藤沙莉の“逃げ方”。自身最後?の女子高生役を演じた『ホテルローヤル』

映画『ホテルローヤル』(11/13公開、主演・波瑠)で、自身最後かもしれない女子高生役を演じた伊藤沙莉に、本作への取り組み、そして自身が苦境に陥った時の逃げ方について明かしてもらった。(撮り下ろしフォトあり)

本作の原作は累計発行部数100万部を超える桜木紫乃の直木賞受賞作。誰にも言えない秘密や孤独を抱えた人々が訪れる場所、ホテルローヤル。そんなホテルと共に人生を歩む主人公・雅代(波瑠)が見つめてきた、切ない人間模様と人生の哀歓が描かれており、観る者の心に温かな余韻と感動をもたらす。
伊藤沙莉は、両親から見捨てられ人生の居場所を失った女子高生・佐倉まりあを演じ、担任教師(岡山天音)と共に、ラブホテルである“ホテルローヤル”を訪れ、そこで大きな選択をする。

伊藤沙莉インタビュー

■『ホテルローヤル』は観る人の心が救われる作品

-『ホテルローヤル』全体をご覧になった感想を教えて下さい。

伊藤沙莉(佐倉まりあ 役)
すごく悲しいことが起きたり、冷たく見えることもあったり、でも意外と温かくて優しいところもある映画だと思いました。
愛に飢えた人たち、どこか淋しさを抱えた人たち、そういうものを隠して、自分を騙して生きている人たちの生き様がギュッと詰まっています。
ホテルローヤルに集まるそういう人たちの表だけじゃなく、裏も見せてくれることで、それに触れていく雅代(波瑠さん)の成長と思いが変わっていく様を見ていくことで、映画を観る人がグッときたり、ちょっと救われたりする作品だなと確信しました。

伊藤沙莉

伊藤沙莉

■内田慈さんと正名僕蔵さんが泡だらけで出てくるんです。

-本作には、伊藤さんが演じられたキャラクター含めて、いろいろなカップルが登場しますが、伊藤さんの中で印象に残ったカップルや、これはわかる!って思ったカップルはありますか?

伊藤沙莉
う~ん、シンプルに役者さんとして内田慈さんと僕蔵(正名僕蔵)さんが大好きなんですよ。この2人のエピソードを観ているのはとても楽しかったですね。2人がお風呂に入っているだけで普通に面白いじゃないですか。「こんなに絵になるんだ!」っていう。それこそもっと観ていたいと思える人たちだなって思います。
私が火災報知器のボタンを押して「先生、押しちゃった!すみません!」って謝るところで、内田さんと僕蔵さんが(裸で)泡だらけで出てくるんですよ。もう笑いそうになっちゃって、しょうがいないから「泡なんだけど」って話しかけたんですよ。そしたら、僕蔵さんが半笑いで私の方を見ているので、「その半笑いが面白いからやめてください」って言ったくらい(笑)
このお二人の空気感というのは、この2人にしか出せないなぁって思いましたね。大好きです。

ホテルローヤル

内田慈/正名僕蔵

■女子高生役は卒業?

ホテルローヤル

佐倉まりあ(伊藤沙莉)/野島亮介(岡山天音)

-ミニスカート制服の女子高生(17歳)役、とても似合ってましたが、ご自身はいかがでしたか?

伊藤沙莉
これが(高校制服を着る役として)卒業式ですね。サヨナラ制服!って感じです。私の願望としてはもうちょっとやりたいなっていうのはありますけど。
ずっと制服ばっかりやってた時期があって、ある時から制服を避けるようになったんですが、いざやらなくなるとやっぱりちょっと寂しいんですよ。制服着たいなぁって。
なので、今回は久しぶりだったので楽しかったし、衣装替えがなくてすごく楽だし、良いことづくしでした。
でも、やっぱり限界があるのかなっていうのは思いました。本作では学校の外のシーンで、対峙しているのが大人(岡山天音)だから成立しているけど、これがたとえば20歳の子と並んで制服だったらやっぱり老けて見えるんだろうなとは思います。
それは、自分が20歳の時でさえ、あるオーディションでも思ったんですよ。その時、中学生と並ばされて、よくよく見るとやっぱりババァだって落とされたんです(笑)

-そんなこと言われたんですか!?

伊藤沙莉
言われました。しっかりババァだって(笑)
やっぱり現役だからこその喋り方や佇まいがあるらしくて、それと比べちゃうと、顔や身体つき以前に女子高生には見えなくなっていくんだろうなっていうのはあります。
でも、もう1回くらい、ほんとはやりたいですけどね。武監督はギリギリって言ってたんで、もう本作で終わりだと思いますけど(笑)

伊藤沙莉

-でも、先生役の岡山天音さんと伊藤さんは同じ歳じゃないですか。それなのに、しっかり先生と生徒に見えました。

伊藤沙莉
ありがとうございます。ありがたいです。天音くんがちゃんと先生でいてくれたんで。私はそれに甘えて乗っかってって感じでしたね。

ホテルローヤル

野島亮介(岡山天音)/佐倉まりあ(伊藤沙莉)

-また女子高生役があるといいですね。

伊藤沙莉
やりたいですね!「いぇーい!」って何も考えてない女子高生役をやりたいですね。

ホテルローヤル

佐倉まりあ(伊藤沙莉)

■自分の“空っぽ”を錯覚させるためにテンションを上げて自分を騙す。

-その“佐倉まりあ”が最初登場した時は、その心の底にそこまでの闇を抱えているようには見えず、伊藤さんは見事に二面性のある難しい役を演じられていました。役作りはどのようにされましたか?

伊藤沙莉
“佐倉まりあ”に共感できないわけじゃないんです。もちろん、まりあの身の上に起きたことで考えると、わかったようなことは言えないし、実際そういう境遇の子もいるだろうし、私は到底想像つかないことではあります。
ですけど、この子の感情、それは“寂しい”とか“もっと愛がほしい”とか、とにかくほんとはただ甘えたかったという点で考えると、それは誰しもが多少に関わらず持っている感情だなと思うんです。
普通の子だったらたっぷりもらえる愛情が、まりあの場合は空っぽで。それでもみんなと同じような生活をしていかなきゃいけないってなった時に無理やりにでも、自分で補わないといけない。そうなると、その空っぽの部分を錯覚させるには、自分のテンションしかないと思うんです。自分をちょっと狂わせるしかないんです。
私自身もそうですけど、過去、ちょっと辛かったこと、寂しかったことを話す時って、普通に話す以上に一段階テンションを上げるんです。変に同情されたくないんですよ。それはある意味自分で自分を守ってあげているし、自分を一番大切に思っているからこそのこと。
まりあの身の上に起きた境遇そのものは想像つかないかもしれないけど、彼女の感情を語る上では、両親の愛情が無かったことだって考えると、遠からず私にもわからない部分ではないなっていうのは感じました。
なので、台本を読んでいく中で、そういったことを表現するのは楽しそうとは思いました。

伊藤沙莉

■その人のもうひとつの気持ちを考えてしまう。

-今のお話を伺うと、伊藤さんの人間洞察の深さを感じました。普段でも人間観察や、人からのインスピレーションを受けたりすることはありますか?

伊藤沙莉
例えば、笑ってる人がいたら、本当に楽しいのかな?もうひとつ別の気持ちもあるのかな?って考えるのは好きです。
また、すごい怒ってる人がいたら、なんでそんなに怒ってるのかなって。そこに至るまでに、いくつものことがあったのかな?最後のひと押しは何だったんだろうって考えるのも好きですね。

伊藤沙莉

■自分が“まりあ”でもその選択をしたかもしれない。

-その“最後のひと押し”というところにもつながるかもしれませんが、“まりあ”の最後の選択を、伊藤さんはどのように捉えて演じられましたか?

伊藤沙莉
きっと強い意志があるとか、そういうことじゃないんだと思います。私はその選択で「あ、まだ子どもだったんだな」って思ったんです。なにかの覚悟を決めて、この道で行く!、こうするしかないんだ!っていうことじゃなくて、今一緒に寄り添ってくれる唯一の人がその選択をするから付いていったんだと思うんです。だって行き場所が無いから。先も見えないし。
って思うと、自分がまりあでもそうするかなって思いますね。そこまで人は強くないし、他の良い考えが思いつくかっていったらそうじゃないんじゃないかなって。自分が17、8歳の時を考えると、それでも!って踏ん張れるかなって。その時一緒にいてくれる人、恋愛は関係なく、その人にすがるしかなかったんじゃないかなって。

伊藤沙莉

-まりあが最後の選択するまで、まったくそのように見えませんでしたが、その点については?

伊藤沙莉
そう見えなければ見えないほど、まりあって切ないんだと思うんです。下手に寂しそうにするのではなく。
でも、要所要所で出てくる言葉、たとえば「もう行くところが無いんだってば」。そういう言葉で、まりあがいっぱいいっぱいになっていることが漏れるように出ればいいなとは思って演じました。
でも、(親に)着信拒否されるまでは寂しさは出ないようにはしていました。

ホテルローヤル

佐倉まりあ(伊藤沙莉)

■伊藤沙莉の“逃げ方”

-このホテルローヤルに集ってくる人たちの中には、何かから逃げたいと思ってる人たちがいますが、伊藤さん自身が落ち込んでいたり、何かから逃げたいって思った時にされることってありますか?

伊藤沙莉
やっぱり実家に帰ることですね。基本、家族がすべてなんですよ。そこは昔からブレないところです。
ただ、最近、26歳にして東京に出てくるということを実践し始めましたが、自粛期間中は実家に帰れなかったのは、逆に自分の中では良いことでした。なぜなら逃げたくても逃げられなかったからです。孤独とかからも。考えないといけないことからも。
そういう逃げられないっていう状況が押し寄せた時に、私はそれを楽しめるタイプなんだなってことに気づきました。
「もうヤダ~」って思っているのが意外と気持ちいいみたいな、ちょっと変態なんですけどね(笑)
ただ、いわゆる“逃げる”っていうような限界点に達するまでに、適度にガス抜きするのが上手いんだと思います。
そういう意味で、ある程度適当な性格の方が生きやすいのかもしれません。

伊藤沙莉

■願わくば映画館で。でも皆さんに作品が届くことが一番。

-今、自粛期間のお話がありましたが、映画もオンライン鑑賞が増えています。演ずる側として、お客さんにどう映画を観てほしいという思いはありますか?

伊藤沙莉
皆さん、いろんな事情があると思いますが、願わくば映画は映画館で観てほしいですね。それは、映画は映画館で観られるように作られていると思うからです。音も映像も。
たとえば美術に関しても、『ホテルローヤル』もこだわりはたくさんあって、細かいところまで見渡せるのはやっぱり大きいスクリーンなんです。そういう映画製作の各部署が頑張ったものを細部まで見てほしいなって思います。
そして、登場人物の寂しさ、辛さ、苦しさ、孤独といった感情も、劇場のサイズ感で伝わることがベストなんだと思います。
テレビドラマはテレビサイズに合わせて作られるし、映画は劇場サイズに合わせて作られる。
そこは作り手側の一員として、ふさわしい場所で観てほしいと思います。
ただ、違う作品になりますけど、劇場と配信で同時公開ということがありました。たとえば子育てをしている方が、映画館になかなか行けない事情があったりすることを考えると、こういう公開方法も良いなとは思いました。
ずっと観れないままというよりは、作品に触れられる機会があるので。そういう点で考えると、どういう形でも人の心に届くっていうことが一番なのかもしれません。

伊藤沙莉

■作品の見どころ

-最後にこの作品の見どころを教えて下さい。

伊藤沙莉
作品の中に存在する人たち、きっとそれが人間なんだろうと思うし、その人たちの表情だけでこういう考えなんだと決めつけられない二面性が描かれています。
たとえばヤスケンさん(安田顕)演じる田中大吉もフラフラした感じに見えますけど、内面は孤独だし、すごく寂しいと思うんですね。でもそれを娘(波瑠)にぶつけるかって言ったらそうじゃない。そうやってみんな食いしばって生きていると思うんです。
そういう一面を垣間見る、人の人生を覗き見するという気持ちで観ていただくと、意外とシンプルに胸に刺さるんじゃないかなと思います。そして救われたりもするんじゃないかなと思います。

伊藤沙莉

[ヘアメイク:AIKO/スタイリスト:吉田あかね/インタビュー:安田寧子/写真:金田一元/作品画像クレジット:©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会]

映画『ホテルローヤル』

ストーリー
北海道、釧路湿原を背に建つラブホテル、ホテルローヤル。
雅代は美大受験に失敗し、居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルの仕事を手伝うことになる。
アダルトグッズ会社の営業、宮川に淡い恋心を抱くも、何も言いだせずに黙々と仕事をこなす日々。
しかしホテルには今日も、閉塞感を逃れ“非日常”を求めて様々な人々が訪れる。
投稿ヌード写真の撮影をするカップル、子育てと姑の介護に疲れささやかな高揚を求める夫婦、行き場を失くした女子高生と妻に裏切られた高校教師。
そんな中、ホテルの一室で心中事件が起こり、雅代たちはマスコミの標的に。
さらに父・大吉が病に倒れ、家業を継ぐことになってしまった雅代は、初めて「自分の人生」に向き合う決意をする…。

出演:
波 瑠
松山ケンイチ
余 貴美子 原 扶貴子 伊藤沙莉 岡山天音
正名僕蔵 内田 慈 冨手麻妙 丞 威 稲葉 友
斎藤 歩 友近 / 夏川結衣
安田 顕

原作:桜木紫乃「ホテルローヤル」(集英社文庫刊)
監督:武 正晴  脚本:清水友佳子
製作幹事:メ~テレ ファトム・フィルム  製作プロダクション:ダブ  配給・宣伝:ファントム・フィルム
(C)桜木紫乃/集英社 ©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会
公式サイト:https://www.phantom-film.com/hotelroyal/

予告篇

11月13日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

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