「迷いながら作る方が面白い作品に(今泉監督)」 注目女優・岸井ゆきの主演『愛がなんだ』記者会見&舞台挨拶
NHK連続テレビ小説『まんぷく』に出演中の、今注目の女優・岸井ゆきの。東京国際映画祭にも4年連続参加する彼女の最新主演映画『愛がなんだ』の記者会見、舞台挨拶が、10月28日に続けて行われた。
本作は、直木賞作家・角田光代氏の恋愛小説を原作として映画化され、第31回東京国際映画祭のコンペティション部門作品となっている。
また、オリジナル中心の今泉監督が原作もののメガホンを取ったことも見どころのひとつだ。
『愛がなんだ』の一般劇場公開は2019年春の予定。(レッドカーペット動画あり)
記者会見で、今泉監督は「私が考える“恋愛の想いの差”というのが、原作と通じるところがあり、映画にすると面白くなると思った」と、映画化の動機を語るとともに、「役者は不安で迷いながら演るほうが面白い作品になる」とも。
主演の岸井ゆきのも「監督と相談しながら、ふたりで悩みながら作っていくという基盤が現場で出来た。そうすることで主人公テルコの想いと重なる演技ができたと思う。」と、今泉監督との二人三脚となった本作を振り返った。
『愛がなんだ』作品内容
作品は、岸井ゆきのが演じる20代後半の主人公「山田テルコ」が、成田凌が演じる「田中守」を一途に追いかけるストーリー。初めて出会った場で、お互いに「テルちゃん」、「マモちゃん」と呼び合った仲が、いつからか、「テルちゃん」から「山田さん」と呼ばれるようになる。
好きになってくれるようには思えない「マモちゃん」からの連絡を待ち、一途に追いかけるテルコ。
そこに、テルコの親友「坂本葉子」を深川麻衣が演じ、葉子からの連絡をひたすら待ち続ける「仲原青」を若葉竜也が演じる。
『愛がなんだ』
出演:岸井ゆきの 成田凌
深川麻衣 若葉竜也 片岡礼子 筒井真理子 / 江口のりこ
原作:角田光代「愛がなんだ」(角川文庫刊)
監督:今泉力哉
配給:エレファントハウス
公式サイト:http://aigananda.com/
©2019映画「愛がなんだ」製作委員会
2019年春 テアトル新宿ほか全国ロードショー
記者会見
角田光代氏の原作を映画化したキッカケ
– 原作は角田光代氏の小説となっていますが、今泉監督の作品は、いままでオリジナル作品が多かったと思います。今回、なぜ、この原作を映画化したいと思ったのか、そのキッカケを教えてください。
今泉監督
企画自体のことから話しますと、自らこの小説を読んで映画化したいと話したわけではなく、プロデューサの方からお話をいただいたものです。
角田光代さんのことはもちろん知っていましたし、実際に読んでみた時に、自分がオリジナル作品で描いていた恋愛の片想いとか、想いの届かなさ、想いの差と、この作品がマッチしていたので、この話をいただいたことももちろんわかるし、とてもおもしろい小説なのでやりたいと思いました。
私は、恋人でも夫婦でも、お互いが50%・50%で同じ気持ちで想い合っていることはないと思っていて、片想いはそのひとつの形であると。そういう想いの差に興味があるからです。
ただ、原作物よりはオリジナルが多かったので、原作物っていうのはリスペクトがある分、怖さもありました。
角田さんにはすでに試写も観ていただいて気に入っていただけたので嬉しかったです。
主人公・テルコとは
– テルコというキャラクターについてお聞かせください。
岸井ゆきの
お話をいただいて、原作の「愛がなんだ」を読んだ瞬間、「あぁ、この役ができるんだ」と嬉しく感じました。
そのあと脚本が来て読んだ時も、やっぱり原作の長さをキュッとさせていて、原作へのリスペクトを感じつつ、映画としての・映画にできることというのが脚本に表れていて、とても面白かった分、プレッシャーもありました。
– テルコというキャラクターと、ご自身との共通点はありますか?また実生活で片想いの時はどうされていますか?
岸井ゆきの
私は好きな人に限らず、好きなモノ・コトに一直線になるところがあって、そこはすごくテルコと似ていると思うところです。
実際に好きな人ができた時には、好きなそぶりを…なんていうか、本当に好きになるとまったく話せなくなってしまうので、もう、自分をいかにバカにするかというか、スキ!スキ!みたいな、ちょっとふざけたくらいの気持ちでいったりしてしまったりすると思います。
文学作品を映像化するということ
– 文学作品を映像化する場合、原作の中から、映画に向いている部分を抽出したのか、映画ならではの視点を加えたのか、どういう方法を使いましたか?
今泉監督
もちろん、どこまで原作に忠実にするのか・しないのかということは考えますが、小説と映画・映像の魅力の違いの中で、ひとつ、圧倒的な違いがあります。
それは、小説の魅力は、読み手自身の想像の世界が成立することですが、映画は、実在の人が演じますし、映像化することで、原作に親しんだ人の想像との差が出ることです。それでもやはり、本作は映画にしたときの魅力を確信し、私は映画にすべきだと思いました。
オリジナルにしろ、原作があるにしろ、映画のいちばんの魅力は役者というか登場人物が活き活きしていることだと思っていますので、カット割り含めて役者がいちばん魅力的に見える映像表現にすることを考えています。
作り手が不安である方が面白いものを作れる
– 役者さんを魅力的にみせるというお話。この映画の肝って、そこだと思います。
そのための雰囲気づくりみたいなものを監督はどういう工夫をされたのか、それを受けて、岸井さんはどう留意されて演じられましたか?
今泉監督
いろいろあるんですけど、ひとつはやっぱり、自分の中で決めずに役者さんと相談し、一度演じてもらって、自分が思っているよりも面白いものがでる可能性を閉ざさないように現場ではよくやっています。
役者さんは、違和感を持ったり・疑問を持つことがあったら、ぜひ、提案してほしい。
なるべくそのすべてのアイディアを閉ざしていかないようにするのが、ひとつの演出方法だなと思っています。
あと、先輩の監督から言われたことなんですけど、役者さんが思いっきり役をつかんで、役に入って気持ち良くなったら気をつけろと。そうすると役者のエゴが出てきて、お客さんはそれに引いてしまう。
役者も作り手も不安である方が、面白いものが作れるっていうところがあるので、役者さんが役になるためには、その役を思い切りつかんでいない方がいいと思っています。
岸井ゆきの
現場では監督の演出はなくて、「こう思うんですけど、どうですか?」って言ったら、「方向性はこう思うんだけど、わかんないから、ちょっとやってみて」みたいな。
私は最初は、監督に答えを求めにいっていたんですけど、そうじゃないんだなっていうのがわかって、ふたりで一緒に悩んでいました。
きっと、そういう戸惑いとか迷いっていうのが、多分、テルコのその時の迷いとかと重なる部分があったのかなと。
これが愛なんだって思う人もいるし、こうなっちゃうのが愛だよねって思う人もいると思うし、ふたりで、そうやって悩みながらテルコを作っていけたというのが、『愛がなんだ』の現場での映画づくりの基盤がつくれたような気がしています。
舞台挨拶キャストコメント
– 岸井さんは、東京国際映画祭への4年連続参加、記録更新中ですね。『愛がなんだ』では、誰よりも強い愛を貫く女性を演じられましたが、どう取り組まれましたか?
岸井ゆきの
原作を読んだ時、テルコは自己犠牲をしてまで向かって言ってしまう女性で、結構すごいなと思いました。
会社を早退してまで会いに行くとか。
自分と重ねて読んでみた時に、自分にもこういう部分があるなと思いました。
好きなものに向かっていく強さは私にもあるので、そこに思いを重ね合わせていった部分があります。
– 初めての今泉組はいかがでしたか?
若葉竜也
今泉監督のことは前から知っていて、作品に参加したかったので、今回ご一緒できて、光栄です。
企画書をいただいた時、絶対にやりたいとマネージャーに言ったのを覚えています。
本作をご覧になられたらわかっていただけると思いますが、これは原作はあるけれども、今泉監督が作り上げたことがわかると思います。
レッドカーペット
10月25日、六本木ヒルズアリーナで行われた、第31回東京国際映画祭レッドカーペットより。
[写真・記事:Ichigen Kaneda/動画・構成:Jun Sakurakoji]
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