【著者 大原扁理氏インタビュー】『なるべく働きたくない人のためのお金の話』
『なるべく働きたくない人のためのお金の話』
大原扁理(著)
発行:百万年書房
定価:1,400円+税
発売日:2018年7月4日
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784991022128
「毎日ちゃんと働いているのに、なぜかお金が足りなくてしんどい」。多くの人が生きている中で何度か思ったことがあるのではないでしょうか。
本書のタイトルからすると、楽して大金を稼ぐ方法の解説本かと考える人もいるかもしれません。しかし、少し読み進めてみると、そうした本とは一線を画していることがわかります。こうした本にありがちな、ITや株、投資といった財テク系の話は一切出てこない。
まずはお金のことを考えるためのスタート地点に立つこと、そして自分が本当に必要なお金の分量を知り、お金に振り回されない働き方・生き方を自分で地道に見つけていくことの大切さを教えてくれる、そんな本です。
【第一章 まずはつらい場所から抜け出す】では、「毎日ちゃんと働いているのに、なぜかお金が足りなくてしんどい状態だったとき、何よりもまず私が優先したのは、そこから離れてみることでした。」と始まります。そして、お金の不安から解放されるための好ましい物事の順番やコツを、著者・大原扁理(おおはらへんり)さんの経験を振り返りながら紹介していきます。
郊外とはいえ、年収100万円以下、週休5日でもハッピーライフを送っていたという大原さん。
そのコツは、「世間の当たり前」に囚われないこと。
必要なお金の分量は人それぞれ違うはずなのに、どうして毎日働かなくてはいけないんだろう? そう思った大原さんは、自分のお金に対する考え方を見つめ直していったといいます。
本書では、そんな大原さんの気づき・経験談から、世間の評価や常識に囚われずに、自分自身が幸せに感じられることを見つけていく方法が紹介されています。
「世間の当たり前」から解放されると、お金の苦しみから解放されるだけではなく、人生においてのさまざまな生き辛さから解放されるヒントにもなるかもしれません
また、大原さんのお金に対する姿勢のなかでもかなり特徴的なのは、「お金を人格化して遊んでいる」ということ。
親友や家族と同じように、お金を大切にしてみたらどうなるだろう?
そういう観点でお金と相対してみると、これまでは考えもしなかったようなお金との付き合い方ができるかもしれません。
詳しくは是非、本書を手にとってみてください。
大原扁理さんインタビュー
「お金」のことを考えるためのスタート地点に立つために
– 今回この本を執筆されようと考えた動機はなんでしょうか?
大原扁理
前作の本『年収90万円で東京ハッピーライフ』を出した時に、低所得でも東京で楽しく生きているということをすごく驚かれたんです。
それで、自分の経済観念とかお金の考え方が人とは違うのかなと思って、今回はそうしたことを中心に書くことにしました。
– この本はどういう方々に読んでほしいと思われますか?
大原扁理
上京したばかりのころの私のように、きちんと働いているのにお金が足りなくて苦しんでいる人です。
お金のことについて考える時には、まずそれを考えるスタート地点に立たなければいけないと私は思っています。
でも、そこにすら立ててない人がたくさんいるなって感じていたんです。
そのスタート地点に行きつくための方法を、こういうアプローチで書いたお金の本って、私が知るかぎりありません。
もし、(読者の方々がお金の問題について)今までなんの解決策にも出会ってなかったとしたら、こういう考え方もあるよって、なにか新しい視点を感じていただけるんじゃないかなと期待はしています。
「幸せってお金じゃないよね」って話があるじゃないですか。正論ですけど、それはお金に困ってない人のセリフで。毎日ちゃんと働いてるのにお金が足りないという人にとっては、正論って何の役にも立たないんですよね。
だからこの本では、お金のことを考えられるスタート地点より、ずっと前にいる人にもわかりやすいように、「まずはつらい場所から抜け出す」という話から始めました
究極のお金愛。お金を人格化して遊ぶ。
– 本の中で、お金を人格化して無駄遣いをなくすという考え方が紹介されていて面白いと思いました。
大原扁理
お金と付き合っていくうえで私の根幹にある姿勢です。
お金だけじゃなくて、私は家とか服とかも全部人格化するんですけど、そうすると可愛くなって愛着がわいてくるんですよね。
自分が家だったらどういう人に住まれたいか、自分が食べ物だったらどういうふうに扱われたいか、とか考えるようになる。
その結果話しかけたりするようになるんですけど、その延長でお金のことも大切にするようになった。
この考え方を、スピリチュアルとかオカルトのことだと思われるとちょっと困るんですが(笑)。
全然そういう方向の話ではなくて、お金に人格を持たせると、お金が出て行ったあとのことや、そのお金が社会にどういうふうに還元されていくのか、ということまで考えられるようになるのがいいなと思っているんです。
私もお金は好きですけど、年収3億ほしいわけじゃないですし、お金も幸せで、私も幸せなのが一番ですよね。
まずは自分が楽しく生きていて、その結果、お金が遊びに来たいと思ってくれるなら、そんな良いことはないなと。
自分のことだけ考えてお金がほしいわけじゃなくて、お金とかそのお金が使われるその先の社会のこととかも考えると、別に私のところだけにたくさん来なくてもいいなと思う。私もお金も社会も幸せなバランスを、いつも考えるようにしています。
世間の価値観に振り回されない
大原扁理
世間の常識を疑ってみるのって難しいですよね。たとえば大学に進学して、新卒して就職して働くみたいなこと。
考えてみたら、人によって必要なお金の額って違うし、それぞれに必要なお金の分量からワークスタイルやライフスタイルを逆算してもいいんじゃないかなと思って。
私も上京して最初の頃は、まんまと世間の常識にはまってました。東京って家賃が高いのが当たり前だと思い込んでたんです。
たまたま郊外に安い物件があると知ったのが、隠居生活を始めたきっかけになりました。
– 自分がほんとうにやりたいことをやっているのか、世間の価値観に振り回されてやりたいと錯覚してやっているのかは、どうしたら気づけるでしょうか?
大原扁理
それが本当に好きでやってるんじゃなくて、世間の価値観に振り回されている人は、それをやらないで済んだ時に、どこかホッとしていると思うんですよ。そういう自分を顧みる時間があるといいですよね。
でも考えさせないようにしているのがこの社会なので、なかなか難しいですけど。
– 「まずはつらい場所から抜け出す」という考え方はお金だけではなく、いろんなことにも当てはまるのではと感じました。例えば、今、学校でイジメなんかで苦しんでいる子どもたちに言えることはありますか?
大原扁理
私は、引きこもっていいじゃん、世間をシャットアウトしてもいいじゃんと思っているところがあるんですよね。今の時代、日本社会は向き合うことが善で一番正しいみたいなところがありますが、それは時と場合によっては、別にしなくていいんじゃないですか。
あと、学校生活って、その時は長く感じるし、たとえば中学校は3年間で終わるっていうことを、子供時代のときは実感としてわからないですよね。なので、学校は必ず終わるってことを子どもたちに伝えたい。
卒業したら、いじめてた子たちは、次の自分の社会をつくることに必死になって、頼まなくても離れて行ってくれますから(笑)。
大原さんご自身について
– 本の中で、臨時バイトとして音楽活動・翻訳・ライターと書かれてますが、具体的には?
大原扁理
ピアノはカフェとかバーで弾いたり、たまに教えたりしてました。あと知り合いのミュージシャンから英語の作詞を頼まれたり、翻訳を頼まれたり。今は台湾に住んでいるんですが、フリーで旅行雑誌のライターをやっています。
– 台湾に移住した経緯・動機はなんでしょうか?
大原扁理
東京で隠居生活ができると証明できたので、海外でもそれが通用するのか試してみたいと思ったからです。
1冊目の『20代で隠居 週休5日の快適生活』という本が台湾で翻訳されることになったときに、台湾良さそうだなと思って、そのまま行ってしまいました。
台湾生活は1年9ヶ月ですが、まだ隠居生活できましたって言うには短くて無責任だと自分で思っているので、もうしばらく台湾で生活してみるつもりです。
– 台湾生活について教えてください。
大原扁理
台湾では週休何日とかははっきり言えないんですが、ライターの仕事は3ヶ月に1回という周期。
1冊終わるのに1ヶ月かかるので、それが終わったら2ヶ月遊んで、みたいなリズムです。
今はすごくバランスがいい
大原扁理
今回のような本を書く仕事は楽しいです。今はすごくバランスがいいんですよ。
私にとって本を書くのは仕事というよりも、余暇活動みたいなもので、これだけだとずっと遊んでいるってことになるんですよね。それはそれでツライかなぁと(笑)。
なので、旅行雑誌のライターのように、自分を拘束する意味でも、割り切って生活費を稼ぐということがあると、精神的なバランスが保たれてとても良い感じです。これからもできるだけやめないと思います。
インタビューを終えて
自由であり続けることの本質
年収100万円以下の大原さんの生活ぶりは、3食自炊、冷暖房を使わないなど、かなりストイックに感じます。でも、大原さん自身「原理主義ではない」とおっしゃっているように、時には外食したり、友だちが来たら冷暖房をつけたり、実は臨機応変で柔軟に対応されています。
また、「世間の価値観に振り回されない」と本書で書きつつ、読書好きで、それもご自身とは真逆の考え方を持った人の本を読むのが好きなんだそうです。
それは、「自分とまったく違う人の頭の中には、自分が気づけなかったものがたくさんある」からで、いいなと思うものは積極的に取り入れるようにしているそうです。
大原さんは自分のポリシーと、異なる価値観とのバランスのとり方が非常に良いなという印象を持ちました。
またなにより、一日一日、お金はもちろん、いろんなことに感謝しながら生きられている大原さんのスタイルは、自由であり続けることの本質であるようにも感じました。だからこそ、お金に囚われない・振り回されないでハッピーライフを送れていらっしゃるのでしょう。
[インタビュー・記事:Jun Sakurakoji、写真:Ichigen Kaneda]
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