
【インタビュー】岩田奏「即興演技が免罪符になって本音を話せる感覚に」映画『初級演技レッスン』
毎熊克哉が主演する映画『初級演技レッスン』(2/22公開)は、即興演技を通して、相手の記憶に入っていくことで過去のトラウマと直面する様が描かれる。そんな本作で、蝶野(演:毎熊)に演技レッスンを受ける中学生俳優を演じた、自身も俳優の道を歩み始めたばかりの岩田奏(いわたかなで)に話を聞いた。
《STORY》
父を亡くした子役俳優の一晟(岩田奏)は、ある日学校の帰り道に「初級演技レッスン」と書かれた看板を掲げられた古工場を目にする。恐る恐る中に入ると全身黒ずくめのミステリアスな演技講師・蝶野(毎熊克哉)と出会う。一晟は蝶野の導くままに、その場で即興演技を実演すると、不思議な体験をするのだった。
一方、一晟が通う学校の担任教師・千歌子(大西礼芳)は、学校で「演劇教育の必須科目化」の是非を迫られていた中、いざなわれるように「初級演技レッスン」の門戸をたたく。千歌子もまた蝶野との出会いによって、想像だにしていなかった奇妙な体験をするのだった―。
岩田奏 インタビュー&撮り下ろしフォト
■頭の中で映像化するのが難しいと感じた
‐昨年7月のSKIPシティ映画祭での本作の舞台挨拶で、台本を一読して「頭の中で映像化するのが難しい」と不安の気持ちがあったとお話されていましたが、改めて、具体的にどういう点が映像化が難しいと感じられたのでしょう?
岩田奏(父を亡くした子役俳優・野島一晟(いっせい) 役)
難しいと思ったのは、やっぱり現実の世界と、演技レッスン中の頭の中の世界とを行ったり来たりするところです。特に終盤のダンスシーンは想像するのが難しかったです。
‐ちなみにダンスのご経験は?
岩田奏
小学校5年生から中学2年生までちょっとだけですけどやってました。ほんとにちょっとだけです(笑)
‐そういういろいろな疑問や不安がある中で、どういう取り組みをされましたか?
岩田奏
演技レッスンを受けてるときの頭の中の世界で発する言葉が、より自分の本音に近いものになっているということは意識しました。
串田監督ともそのようなお話しをしました。普通、お芝居で話す言葉は嘘の世界なんだけど、演技レッスンシーンでの頭の中の世界では、自身の本心を出す場面だと。
‐演じられた“一晟(いっせい)”少年は、中学生の子役俳優ですが、岩田さんの今の立場、状況と近い部分もあるのかなと想像したんですが、実際はいかがですか?共感する部分はありましたか?
岩田奏
オーディションシーンで、質問に対して反射的に答えるところがありますが、そのとき自分の頭の中で物語を組めていないがために、「それはなぜですか?」と問われて、うまく返せなくなるあの感じはわかるなぁって思います(笑)僕も中学生のとき、似た経験があるので。
‐劇中で描かれているオーディションシーンは、実際でもあんな感じだということですね。
岩田奏
そうです。「その人の気持ちになりきって何か演技してください」とか、台本が渡されている上で「その続きをアドリブでやってくださ」など、演じる役の目的をしっかり捉えていないといけないということがあります。
‐一晟少年は劇中を通して、オーディションへの取り組み姿勢に変化が表れますが、その点で共感されることはありますか?
岩田奏
はい。もちろんですが一つ一つのオーディションを大切に取り組んで、相手の印象にしっかり残るような演技をするために、自分としての取り組みをしっかり意識するようにしています。見ている人がどう言ってほしい台詞なのかを意識して、自分の中にしっかり物語を作って臨むということです。
そうすれば、即興芝居であっても、そのシーンがどういうシーンなのかをしっかり理解しておけば、的外れな方向にいくことはないのかなと思います。
■即興演技が免罪符になって本音を話せる感覚に。
‐串田監督とはそのほかどういうお話をされましたか?
岩田奏
先ほどお話したとおり、監督は「演技とは嘘の世界だけどそこから生まれる本音もある」ということと、僕に対しては「準備せず、そのままで来てくれ」というお話がありました。
たぶん、一晟と僕のイメージが一緒だったんじゃないかなって思っています。
‐毎熊さん演じる蝶野との演技レッスンシーンでは、即興演技を通して、相手の記憶に入っていく様が描かれていますが、このシーンを通して感じられたことがあれば教えてください。
岩田奏
即興演技がある種の免罪符になって、本音を話してもいいという感覚になるということを改めて感じました。串田監督がおっしゃったように。
普段の自分なら出てこないような本音の言葉が、演技レッスン中だと自然に出てくるなって。
‐共演シーンが多かった、毎熊克哉さんと大西礼芳さんとのお芝居で印象に残っていることは?
岩田奏
2つあります。ひとつは、3人が中華料理店でラーメンを食べるシーン。このシーンでは、劇中のキャラクターとして即興劇で本当の家族のような会話を演じるんですが、実はそれを演じている僕達も即興劇だったんです。即興劇で即興劇を演じるという。
3人でこのお店に来るのは初めてなのに「ここに来るのは久しぶりだな」とか、僕も一晟が野球部に入っている設定を作って、その話をしたりしました。一晟だったらこういう即興芝居をするだろうなって考えながらやったんですが、一晟はこれまで家族とはこういう会話をすることが無かったんだろうなとか思うと、僕自身もとても幸せな気持ちになりました。
もうひとつは、ラーメンを食べた後、3人がそれぞれの方向に帰ろうとして別れを告げるシーン。このときの3人は、とても自然な表情で笑みを浮かべているんです。なぜこういう表情になれたのかは、映画をご覧になって是非感じ取っていただきたい部分です。
‐この別れのシーンは台本通りなのでしょうか?
岩田奏
はい、そうです。
■自分ができないことも挑戦する役者になりたい
‐岩田さんは俳優デビューして2年あまりですが、これまでを振り返っていかがですか?
岩田奏
意外とまだ2年ぐらいなんだっていう感じです。でも思うのは、全部もう一回撮り直したいなって(笑)もっともっと上手くできたのにみたいな思ったりするんですけど、でもその時にしか出せないものもあるんだろうなとかも思いつつ。
‐撮り直したいと思うということは、ご自身の中で、日々成長していっているのかもしれませんね。
岩田奏
そうかもしれないですね。もっとこういう準備のし方があったかなとか、今振り返るとそういうことを考えます。
‐では、今後このように取り組んでいこうというのがあれば教えてください。
岩田奏
まだ高校一年生なのもあり、体型を変えてまでの役作りの経験はないですが、(成長期が終わって)そういうことができる年齢になったら、役のために私生活を変えて臨むとか、あるいは、自分が出来ない楽器やスポーツでも、役作りとしてできるようにしていきたいと思っています。
‐なるほど。俳優というお仕事を始められたことによって、それ以前より、自分の個人的な関心事だけじゃなく、世の中のいろんなことに目が向くようになったのかもしれませんね。
岩田奏
言われてみれば確かにそうかもしれません。いくつもの台本を読んで、役を想像する経験をしてきたことが、それに繋がってきているのかもしれないです。
‐話は変わりますが、前回のインタビューでシャープペンシル集めがお好きだとお話されてましたが、それは今も変わらず?
岩田奏
今も変わらないです。最近すごいと思ったのは、弟が買ってたんですが、しーさー文房具チャンネルというYouTubeチャンネルがメーカーとコラボしたシャープペンシルが発売されたこと。なんか夢があるなって思って、僕もいつかコラボしたシャープペンシルが発売されたらなって(笑)
‐最後に、映画『初級演技レッスン』のPRメッセージをお願いします。
岩田奏
この映画は、3人の登場人物それぞれの演技レッスンを通して、自分の過去や本心と向き合っていくお話です。演技レッスンを体験する人は多くないですが、そういう大事なものになることもあるということを、この映画を通して伝わると思いますし、そこに注目して是非ご覧いただきたいです。
■撮り下ろしフォトギャラリー
- 岩田奏
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[インタビュー・写真:三平准太郎]
岩田奏(いわたかなで)プロフィール
2008年生まれ、東京都出身。23年、映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』(足立紳監督)でデビュー。ドラマ「姪のメイ」(23年)にてテレビドラマ初出演を果たす。
24年にはNHK連続テレビ小説「虎に翼」やNHK「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」シーズン2にも出演。
25年の公開待機作には、釜山国際映画祭コンペティション部門(ジソク部門)に正式出品された映画『ひとりたび』(石橋夕帆監督)がある。
映画『初級演技レッスン』
《INTRODUCTION》
初長編映画『写真の女』で世界の国際映画祭で40冠を達成し、鮮烈なデビューを果たした串田壮史監督の最新作、『初級演技レッスン』を2025年2月22日(土)より、渋谷ユーロスペース、MOVIX川口ほかにて全国公開する。
串田監督は、CMディレクターとして数々の賞を受賞し、監督2作目の『マイマザーズアイズ』(23)でも、イギリス最大のホラー映画祭である「ロンドン フライトフェスト」で《Jホラー第3波の幕開け》と評されるなど、ジャンルを問わず作品を発表し続け、海外マーケットからも注目を浴びている映像作家だ。
本作は“若手映像クリエイターの登竜門”SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024のオープニング作品として上映され、大きな反響を呼んだ。
主演は、『ケンとカズ』(11)で観る者に激烈な印象を植え付け、以降、話題作への出演が続き、2023年、24年と2年連続で大河ドラマに出演した毎熊克哉。本作では、静謐な佇まいと暗晦な空気を纏わせた物語の中心人物となる演技講師・蝶野に扮している。
共演には、『夜明けまでバス停で』(22)、『鯨の骨』(23)、『STRANGERS』(23 )など多くの映画作品で活躍する大西礼芳が学校の教師・千歌子を演じ、一晟には、『雑魚どもよ、大志を抱け!』(23)でデビューした期待の若手俳優・岩田奏が演じる他、串田組常連の鯉沼トキ、永井秀樹らが出演している。
明解な物語展開をする中で、独創的な映像美と自由で大胆な映像表現が織り交ぜられた本作は、観る者をめくるめく不思議な作品世界へと引き込み、邦画・洋画問わず、これまで感じたことのない映画体験を誘発します。
《STORY》
父を亡くした子役俳優の一晟(岩田奏)は、ある日学校の帰り道に「初級演技レッスン」と書かれた看板を掲げられた古工場を目にする。恐る恐る中に入ると全身黒ずくめのミステリアスな演技講師・蝶野(毎熊克哉)と出会う。一晟は蝶野の導くままに、その場で即興演技を実演すると、不思議な体験をするのだった。
一方、一晟が通う学校の担任教師・千歌子(大西礼芳)は、学校で「演劇教育の必須科目化」の是非を迫られていた中、いざなわれるように「初級演技レッスン」の門戸をたたく。千歌子もまた蝶野との出会いによって、想像だにしていなかった奇妙な体験をするのだった―。
- 場面写真1
- 場面写真2
- 場面写真3
- 場面写真4
- 場面写真5
出演:毎熊克哉 大西礼芳 岩田奏
鯉沼トキ 森啓一朗 柾賢志 永井秀樹
石井そら 中村天音 大滝樹 村田凪 高見澤咲
監督・脚本・編集:串田壮史
制作プロダクション:Ippo/デジタルSKIPステーション
制作協力:ピラミッドフィルム
製作:埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
配給:インターフィルム
2024年/カラー/5.1ch/ビスタサイズ/90分
© 2024埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
予告編
2025年2月22日(土)より、渋谷ユーロスペース、MOVIX川口ほか全国順次公開
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