【インタビュー】鞘師里保「映画初出演の迷いが吹っ切れた瞬間があった」映画『十一人の賊軍』
第37回東京国際映画祭オープニング作品『十一人の賊軍』(11/1公開)。白石和彌監督が令和に誕生させた新たな集団抗争劇の本作に出演している鞘師里保(さやしりほ)に、映画初出演の想いや、錚々たる豪華キャストの共演について話を聞いた。
映画『十一人の賊軍』は、1980年代に女子プロレス旋風を巻き起こしたダンプ松本の知られざる物語を描いた「極悪女王」も話題の白石和彌監督の最新作。
「日本侠客伝」シリーズ(64年-)、「仁義なき戦い」シリーズ(73年-)などを手掛け、東映黄金期の礎を築いた脚本家・笠原和夫が1964年に執筆した幻のプロットが、60年の時を経て映画化。
日本アカデミー賞優秀脚本賞、さらに勲四等瑞宝章を受章している笠原は、脚本を通じてその時代の反骨精神や都合によって変わる正義に抗う人物を数多く描き、昭和の映画業界を牽引した。その巨匠が手掛けたプロットを、企画・プロデュースの紀伊宗之と白石和彌監督、脚本の池上純哉たち平成ヤクザ映画の金字塔『孤狼の血』チームが受け継ぎ、山田孝之、仲野太賀ら、錚々たる豪華キャストを迎え、令和に新たな集団抗争劇(*)が誕生する。
明治維新の中で起きた“戊辰戦争”の最中、新発田(しばた)藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた歴史的事件・奥羽越列藩同盟軍への裏切り=旧幕府軍への裏切りのエピソードをもとに、捕らえられていた凶悪な罪人たちが「決死隊」として砦を守る任に就く物語。
【※集団抗争時代劇とは】
1人のスターに頼らない「集団劇」。ひとりのヒーローが活躍するのではなく、チームワークで敵に打ち勝とうとする構造。1963年~1967年頃に東映が作り出してきたジャンルであり、多くの人々に衝撃を与えた。
鞘師里保 インタビュー&撮り下ろしフォト
■ここで負けてはいけない!
映画初出演の迷いが吹っ切れた瞬間
‐台本を読んだ印象、演じられた“なつ”のキャラクターについて、演じるうえで取り組まれたことを教えてください。
鞘師里保(なつ 役)
賊軍は、罪人として集められた人たちなんですが、なつを含めて皆が、自分の正義や大切にしてるものに、不器用にまっすぐな人たちなんだなと思い、そういう人たちの芯や、なつの芯のようなところをちゃんと昇華させてあげたいという気持ちになりました。
なつという女性は、本来人にたっぷりと愛情を与えられる人であるはずなのに、自分が愛情をあまり受けることができなかったために、愛することや、何かを大切にするということに対して自信がなくなって、何も信じられなくなったという経験をしてきた女性だと思うんです。
その中で、「自分が信じている道で好きなことをして生きていく」という志を持って戦いに出る。私自身は、そういう命がけのことは、時代的に経験したことはないですけれども、グループ活動時代に自分が何を大切に生きているのかと迷いが生じて心の芯が折れてしまって、芸能活動を休養させていただいた時期があるんです。
そういう自分の経験をなつに重ね合わせて演じられると、この物語の中のなつも自分自身も前に進めるんじゃないかなと思えました。そう考えると、この作品とは出会うべくして出会えたなとも思います。
‐印象に残っている撮影の思い出やシーンがあれば教えてください。
鞘師里保
私は、今回が初映画で、オープンセットの壮大さや、先輩キャストの方々の顔ぶれとか、そういうもの全てが初めてのことだったんですけど、その中で自分がどうやってこの現場に居なきゃいけないのかっていうのを迷ってたんです。
劇中、なつが山田孝之さん演じる政(まさ)に、「食いな」って言って、食べることを拒んでいる政におにぎりを押し付けるシーンがあるんですが、それが山田さんとの初めての2人のシーンでもあるんです。そのシーンのテストで山田さんと会話をした時に、たまたま合った瞳がとても深くて、とても澄んでいて、すごく吸い込まれそうな気持ちになったんです。私は、ここで負けてはいけないってその瞬間に思って、ひとつ腹をくくった瞬間だったなと思います。
それからは、なつが発するセリフのひとつひとつが、なつ自身の想いからなのか、賊軍総意の想いから発しているものなのか、政を中心に周りとの関係性や物語が進んでいく段階や状況などを意識して、ポイントとなる場面での言葉の説得性を映画を観る人に納得してもらえるように心がけて演じました。
■「賊だなぁ」って思いました
‐ほとんどの共演者が男性ですが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
鞘師里保
最初のうちは、私も少し人見知りな部分があるので、男性陣の中で盛り上がっている時は遠くから眺めていたのですが、以前共演させていただいたことがある仲野太賀さんが「ぜんぜん好きな時に入ってきてくれていいからね」と私に声をかけてくださって、とても優しくてありがたいなって思いつつ、たまにお言葉に甘えて皆さんの輪の中に入らせてもらいました。
でも、男性陣が、檻の中に入れられているシーンの撮影の休憩時間は暑くて仮眠を取っていたり、撮影が深夜まで及んだときなんかにテンションが上って、ワーッとなっているのを見ると、「賊だなぁ」って思いました(笑)そんなときは、先輩の皆さんには恐縮ですが、男性陣を見守っている“なつ”の気持ちにナチュラルになれました(笑)
‐ちゃんと役作りに役立ったということですね(笑)
鞘師里保
ほんとにそうです(笑)
‐今、仲野太賀さんのお話がありましたが、山田孝之さんのお人柄についてどういう印象を持たれましたか?
鞘師里保
私は、山田さん演じる政とは関わりの強い役だったんですけど、山田さんご自身との関わりはそんなに多くはなかったんです。なので、私から見るとまだまだミステリアスな要素がたくさんある方だなという印象です。でも、食事一つとっても、しっかりとしたこだわりを持たれている方だなというのは感じたので、自分が撮影に入るまでの時間も含めて、お芝居に対して研ぎ澄まして臨まれる方なのかなという印象も受けました。
■白石監督はとても興奮されていました
‐白石和彌監督に相談されたことや、監督からの演出などはどういうものがありましたか?
鞘師里保
役が決まる前に監督と面談したときの話では、もちろん作品のストーリーのこともあるんですけど、私がこれまでどのように生きてきたのかという話がメインだったので、私はそこをちゃんと役に投影しなければいけないんだなと、もうその時に感じていました。
その上で、なつ自身のバックグラウンド、そしてなつが政に対してなぜ時間をかけて気にかけるようになったのかというバックグラウンドを私なりに考えたことを、白石監督に相談したところ、その方向性で良いと思うとおっしゃっていただきました。
‐監督に具体的にどういう相談を?
鞘師里保
例えばなつは、自分が愛していた男に裏切られた女性で、それがために火付けをしたという前提があります。
そして政は、女房に対しての愛情、新発田藩に対しての恨みを抑えることができない。藩に従えば生きられるのに、どうしても妥協できないという、そういう変わらないまっすぐさを持った男。
なつは、そういう政を見て羨ましいと想い、そして惹かれていく気持ちが芽生えたんだなって私は思っています。だからこそ、終盤のなつの行動はそういうバックグラウンドがあってできたことなのではと。
‐鞘師さんが感じた白石監督の印象は?
鞘師里保
やっぱり『孤狼の血』などのイメージが強かったので、お会いするまではどんなに殺気立った方なのかなと思っていました(笑)
でも、いざ初めてお会いしたときは、とにかく楽しくお話させていただいて、優しい人柄にも触れて、私の中のイメージが覆ったんです。でも、ふと我に返ったときに「そういえばこういう作品を作ってこられた方なんだ」とも思いつつ。
私が出演していないシーンの撮影を見学したとき、腕が切り落とされる残虐なシーンだったのですが、それが監督にとってとてもうまくいったと感じられたようで「いいね!」って、とても興奮されていて、作品の狂気性が表現されるのはやっぱりこういうところだなって、監督のセンスを感じました(笑)
■「集団抗争時代劇」は、生命力を感じられるところが魅力
‐完成した映像をご覧になってどういう印象を持たれましたか?
鞘師里保
撮影時は、大きなオープンセットの中に入って、主観的な感覚で居ましたけど、スクリーンで完成した映像を客席から客観的に観ると、この映画のスケールの大きさを改めて実感させられたなというのが率直な印象です。戦闘シーンも迫力があって、エンターテインメントとしても満足感があります。そして、賊軍の悔しさやそれに対するまっすぐな気持ちが最後にどうなるのかを是非、見届けてほしいです。
‐本作は「集団抗争時代劇」と位置づけられていますが、このジャンルの魅力はどのように感じられましたか?
鞘師里保
『十一人の賊軍』のお話でいうと、それまで生きてきた境遇の違う人達が、命に関わる苦しい状況に陥り、それでも生きて帰るんだという共通の目的を持ちます。たぶん、普段ならお互い分かり合えない部分があったとしても、一致団結して一つのチームになって戦に出るという目的の強さがあるのではないかと思います。戦う理由としての生命力を感じられるところが魅力なんじゃないかなと思います。
‐本作に出演されてみて、この作品が描いている時代、すなわち江戸時代から明治時代へと向かう日本の歴史の転換点に生きた当時の人々について、感じられたことがあればお聞かせください。
鞘師里保
とても大きな時代の過渡期で、新政府軍VS旧幕府軍などの内戦が頻発して、庶民も、反政府軍としての奥羽越列藩同盟(おうう えつれっぱん どうめい)に加盟するのか否かで振り回される新発田藩の武士たちも、状況がどんどんと変わっていく中、生きるということに集中しなきゃいけなかったのだと思います。そういう、生き抜こうっていう精神性が強い人達が多い時代だったのかなと思いました。
■何にでもチャレンジしたい
‐7月24日にアルバム「Symbolized」が発売となりましたが、アーティスト活動、俳優活動の今後の抱負は?
鞘師里保
慣れない環境や新しい環境に飛び込むことがここ数年とても多いんですけど、今回の作品に登場する「生きていくぞ」という力を持った賊たちに触発されたので、私も挫けないぞ!という気持ちで、どんなジャンルであっても面白そうなところに飛び込める精神性を持って、何にでもチャレンジしたいです!
アーティスト活動はもちろん、映画も今回が1つ目の作品になりますが、これからも映画作品に参加できるように頑張りたいですし、この2つに限らずいろんなことに。
‐初めての映画出演が、大作になりましたね。
鞘師里保
そうなんです。本当にありがたいことです。
‐最後に、ご自身の役どころを含めて『十一人の賊軍』の見どころ含めたメッセージをこれからご覧になる方に向けてお願いします。
鞘師里保
なつを含む“罪人”の烙印を押された人たちが、決死隊として、もう一回自分たちの人生を取り戻すために命がけで戦うお話です。その登場人物と重ね合わせて、何かモヤモヤしてる気持ちとか、前に進みたい気持ちみたいなのを観てる方にも感じてもらえたらいいなと思っています。
そして、とにかく戦いのアクションの迫力がたっぷりとあって、とても見応えありますので、そこもエンターテインメントとして楽しんでいただけると思っています!
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【インタビュー&撮り下ろしフォト】#鞘師里保「映画初出演の迷いが吹っ切れた瞬間があった」
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■撮り下ろしフォトギャラリー
[インタビュー&写真:三平准太郎/ヘアメイク:上野知香/スタイリスト:藤本大輔(tas)]
鞘師里保(さやしりほ)プロフィール
1998年5月28日生まれ、広島県出身。2011年に、モーニング娘。の9期として芸能界デビュー。グループ卒業後は、ダンスのためにニューヨークへ留学する。帰国後の2020年に活動を再開し、歌手活動を中心にドラマや舞台へと活躍の幅を広げている。
近年の主な出演作品は、舞台『スルメが丘は花の匂い』(22)、ドラマ「俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?」(22/EX)、「ワタシってサバサバしてるから」(23/NHK)、「めんつゆひとり飯」(23/BS松竹東急)、「俺の美女化が止まらない!?」(23/TX)、「推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~」(24年1~3月/TX)、主演舞台『らんぼうものめ』(24年7月~/KAAT神奈川劇場)などがある。
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映画『十一人の賊軍』
《INTRODUCTION》
「日本侠客伝」シリーズ(64年~)、「仁義なき戦い」シリーズ(73年~)などを手掛け、東映黄金期の礎を築いた脚本家・笠原和夫が1964年に執筆した幻のプロットが、60年の時を経て映画化される!
明治維新の中で起きた“戊辰戦争”の最中、新発田(しばた)藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた歴史的事件・奥羽越列藩同盟軍への裏切り=旧幕府軍への裏切りのエピソードをもとに、捕らえられていた11人の罪人たちが「決死隊」として砦を守る任に就く物語——この巨匠が手掛けたプロットを、企画・プロデュースの紀伊宗之と白石和彌監督、脚本の池上純哉たち平成ヤクザ映画の金字塔『孤狼の血』チームが受け継ぎ、令和に新たな集団抗争時代劇として誕生させる。
その一大プロジェクトの主演には現代の日本映画界で双璧をなす超実力派俳優山田孝之と仲野太賀の2名が抜擢され、死と隣り合わせの戦場を我武者羅に駆け抜ける!
一瞬たりとも気が抜けない裏切りと葛藤の物語が2024年11月1日(金)に開幕!運命と対峙する激闘が日本人の奥底に燻る反骨精神に火をつける!!
舞台は 1868年、「鳥羽・伏見の戦い」を皮切りに、15代将軍・徳川慶喜を擁する「旧幕府軍」と、薩摩藩・長州藩を中心とする「新政府軍=官軍」で争われた“戊辰戦争”。
明治維新の中で起きた内戦であり、江戸幕府から明治政府へと政権が移り変わる激動の時代である。その戦いの最中、新発田(しばた)藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた歴史的事件・奥羽越列藩同盟軍への裏切り=旧幕府軍への裏切りのエピソードをもとに、原案・笠原和夫は11 人の罪人たちが「決死隊」として新発田藩の砦を守る任に就くストーリーを創作した。
笠原は「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉の通り、勝った方が全て正しく、勝敗によって善悪が決まるのが当たり前の時代に“果たして勝つことだけが正義なのか?”と一石を投じるべく、憎き藩のために命をかけて砦を守らなければならない罪人たちの葛藤を構想した。しかし当時の東映京都撮影所所長・岡田茂は物語の結末が気に入らずボツに。怒りに狂った笠原は350 枚ものシナリオを破り捨ててしまい、日の目を見ることのないままとなってしまったが、笠原和夫が描こうとしたドラマは今まさに日本が抱えている社会問題とシンクロすると確信した現代の東映が企画・映画化。
出演:山田孝之 仲野太賀
尾上右近 鞘師里保 佐久本宝 千原せいじ 岡山天音 松浦祐也 一ノ瀬颯 小柳亮太 本山力
野村周平 田中俊介 松尾諭 音尾琢真 / 柴崎楓雅 佐藤五郎 吉沢悠 / 駿河太郎 松角洋平
浅香航大 佐野和真 安藤ヒロキオ 佐野岳 ナダル / 木竜麻生 長井恵里 西田尚美
玉木宏 / 阿部サダヲ
監督:白石和彌
原案:笠原和夫
脚本:池上純哉
音楽:松隈ケンタ
配給:東映
©2024「十一人の賊軍」製作委員会
撮影期間:2023年8月~11月
公式サイト:https://11zokugun.com/
公式X:@11zokugun_movie
公式Instagram:@11zokugun_movie
本予告
2024年11月1日(金)全国ロードショー!
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