【全文掲載】映画『先生の白い嘘』公開初日舞台挨拶【完全レポート】
2024年7月5日(金)、丸の内ピカデリーにて、映画『先生の白い嘘』公開初日舞台挨拶が行われ、奈緒、猪狩蒼弥、三吉彩花、風間俊介、三木康一郎監督が登壇。先日来、問題視されているインティマシー・コーディネーター不在のまま性的シーンが撮影されたことを含めて、それぞれから語られた。
舞台挨拶【完全】レポート
定刻より20分弱遅れて始まった舞台挨拶。昨日来、三木監督のインタビュー記事が大きな騒動となっていることを受けて、舞台挨拶の内容を急遽変えざるを得ないための準備と思われた。
以下の舞台挨拶レポートは、一部の明らかな言い間違い(言葉を噛むなど)を除き、そのままでお届けする。そのため、話し言葉そのままであるが故の、文章としては読みにくいところが一部あるが、記者の誤解による発言の意図を捻じ曲げるリスクを減らすためだとご了承いただきたい。同時に以降は、記者の個人的な言葉は含まない。
■製作委員会からの冒頭の言葉
奥浜レイラ(MC)
お待たせいたしました。本日は映画『先生の白い嘘』公開初日舞台挨拶にお越しいただき、誠にありがとうございます。司会進行を務めます奥浜レイラと申します。どうぞよろしくお願いいたします。まず、本作のプロデューサーである稲垣竜一郎より、本作『先生の白い嘘』製作委員会としてのコメントをお伝えいたします。
稲垣竜一郎(松竹/企画・プロデュース)
本作のプロデューサーを務めさせていただいております松竹の稲垣と申します。製作委員会からのコメントを私の方で読み上げさせていただきます。
昨日、本作では、出演者から要望があったインティマシー・コーディネーター(=性的シーンについて、演者と監督など制作側の間に入って、両者の許容範囲を調整する者)を入れずに撮影をしたという内容のインタビュー記事が掲載されました。
本作の制作にあたり、出演者側からインティマシー・コーディネーター起用の要望を受け、制作チームで検討いたしましたが、撮影当時は日本での事例も少なく、出演者事務所や監督と話し合い、第三者を介さず直接コミュニケーションをとって撮影するという選択をいたしました。
インティマシー・シーン(性的シーン)の撮影時は、絵コンテによる事前説明を行い、撮影カメラマンは女性が務め、男性スタッフが退出するなど細心の注意を払い、不安があれば女性プロデューサーや女性スタッフが本音を伺いますとお話をしていたので、配慮ができていると判断しておりました。
しかしながら、この度、様々なご意見・ご批判をいただいたことを受け、これまで私どもの認識が誤っていたことをここにご報告を申し上げると共に、制作陣一同、配慮が十分ではなかったことに対し、深く反省をしております。
本作を楽しみにお待ちいただいているお客様、原作の鳥飼先生、出演者、スタッフの皆様に不快な思いをさせてしまったことを心よりお詫び申し上げます。
奥浜レイラ(MC)
ここからは、一映画に関わる仕事をする者として、個人的にお話をさせていただきます。映画やドラマにおきましてインティマシー・シーンがある場合は、私個人としては、インティマシー・コーディネーターは必ず起用されるべきだと考えております。
そして、製作・宣伝の場においても、俳優、そしてあらゆる立場のスタッフが心、身体、そして人権が尊重され、守られることを強く望んでおります。生意気ですが、意見を述べさせていただきました。
■最初の挨拶
奥浜レイラ(MC)
それではお待たせいたしました。登壇者の皆様をここでお迎えしたいと思います。『先生の白い嘘』キャスト、監督の皆様です。どうぞ拍手でお迎えください。
奥浜レイラ(MC)
それでは、映画をご覧いただいた皆様に一言ずつご挨拶を頂戴したいと思います。まずは本作の監督を務められました三木康一郎監督、お願いいたします。
三木康一郎監督
今日、お暑い中お集まりいただいた皆さん、本当にありがとうございます。さらに報道各社の皆さんも本当にありがとうございます。
今回、私の不用意な発言により、皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを、この場を借りて謝罪したいと思います。申し訳ありませんでした。さらに、関係者、スタッフ、キャスト、彼らにも大きな大きな苦しみを与えてしまったことを、この場で謝罪したいと思います。本当に申し訳ありませんでした。
さらに、原作の鳥飼茜先生、ものすごくこの作品に尽力していただいたにも関わらず、裏切るような形になってしまい、本当に申し訳ありませんでした。
最後に、このような状況でも、この場にお集まりいただいた皆さん、感謝しかございません。本当に本当にありがとうございました。
奥浜レイラ(MC)
ありがとうございます。続きまして、主人公の高校教師・原美鈴を演じました、奈緒さんから一言お願いいたします。
奈緒(高校教師・原美鈴 役)
原美鈴役を演じました奈緒です。皆さん、観終わった後ということで、今、お気持ち大丈夫でしょうか?今ここに登壇しているみんなも大丈夫?
本当に直前に、前日にいろいろなことがありまして、皆さんご存知かなと思うんですけど、一言私がここに来てお話ししなければいけないなと思いながら今日は来ました。
でも私としては、ここにいる誰も、気持ちを、心を痛めるようなことがなく、一緒にいたいと切に願っております。私自身も含めて。
なので、一言、私は大丈夫です。
それだけは絶対に伝えようと思っていました。
この後に、最後の方に何でも言っていいですって言われたので、何でも今日はちゃんと自分が伝えたいことを自分の言葉としてちゃんと届けようと思ってここに来ました。
皆さん、きっと色々な葛藤がある中、この場に来ることを選んでくださって、作品を見届けてくださって本当にありがとうございます。どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
奥浜レイラ(MC)
ありがとうございます。
続いて、美鈴の担当するクラスの生徒、新妻祐希を演じられました猪狩蒼弥さん、お願いいたします。
猪狩蒼弥(HiHi Jets)(新妻祐希 役)
に・・・新妻祐希役を、え・・・演じさせて・・・いただきました。
風間俊介(早藤雅巳 役)
緊張してない?
奈緒
さっきも入ってくるときにドアにぶつかって・・・
猪狩蒼弥(HiHi Jets)
言わなくていい!言わないでください!
奈緒
ほぐしてくれたんです(笑)
猪狩蒼弥(HiHi Jets)
新妻祐希役を演じさせていただきました、HiHi Jetsの猪狩蒼弥です。今日は来ていただいてありがとうございました。
昨日、いろんなことがあったみたいで、もちろん僕も人ごとではないんですけど、僕も大丈夫です。
本当に撮影中は、僕自身、初めてではないんですけど、ここまでしっかりとお芝居に向き合って、今までのお芝居はどっちかっていうと、なんていうのかな、上手に演じなきゃとか、上手に作品がいいふうに見えればいいなみたいな。
エンターテインメントの要素がすごく強い中で、ドラマだったり、舞台だったりを演じてきたのですが、この『先生の白い嘘』という作品に関しては、僕が演じるところがゴールではないというか、この作品をいろんな方が見てくださって、この作品を通して、新妻の叫びだったりとか、先生の叫びだったりとか、普段は普通に生きていたら、いろんな人のところに届かない声というのが、いろんな方のところに届いて、そうして初めて自分が演じてこの作品に携わらせていただいたことの意義というのが生まれるのかなと思って。
撮影中は奈緒さんと一緒のシーンがすごく多かったんですけど、今のこの数秒のご挨拶でもわかるように、奈緒さんの強さに支えていただきながら、僕も精いっぱい頑張って演じました。
皆さんに観ていただいた後だと思うのですが、これから見てくださる皆さんも、ぜひエンターテインメントという枠を一つ超えたメッセージを受け取っていただけたら嬉しいなと思っております。皆さん、本日は来ていただき本当にありがとうございました。
奥浜レイラ(MC)
ありがとうございます。続いて、美鈴の親友・美奈子を演じられました三吉彩花さん、お願いいたします。
三吉彩花(渕野美奈子 役)
美奈子役を演じさせていただきました三吉彩花です。本日は本当に皆さんお集まりいただきありがとうございます。
私たち自身の想いは後でしっかりお伝えするとして、まず本当にこのように無事に初日を迎えられたことが本当にありがたいことだと思いますし、こうしてマスコミの皆さん、そしてお客様の皆さんにも来ていただけたことが、とても本当にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。
この作品は、原作もそうですし、映画化するってなった時も本当に描いていくストーリーがストーリーなだけに、ここに出演者の皆さんもそうですし、監督やプロデューサー、そしてここにはいないキャストの方とかスタッフの方々を含めて、皆さんが各々自分の覚悟であったり、強い気持ちであったりとか、そういうものをしっかり強い意志を持ってこの作品に挑んでくれたと思いますし、私自身もそういう気持ちを持ってこの作品に参加させていただいたので、そういったこの一つの作品を作り上げるために、みんな強い意志があるんだぞということを、皆さんにはぜひ、そこだけでもしっかり感じ取っていただけたら、私たちも救われますし、すごくこの作品が、意味のある作品として残っていくんじゃないかなと思います。
ぜひ皆さんも見ていただいた後だと思うんですが、そういった部分を感じていただけていたらすごく幸いです。
本日は短い時間ですけれども、よろしくお願いいたします。
奥浜レイラ(MC)
ありがとうございます。続いて、美奈子の婚約者・早藤雅巳を演じられました風間俊介さん、お願いいたします。
風間俊介(早藤雅巳 役)
本日は皆さんありがとうございます。本来こういう公開舞台挨拶で言うことではないのかもしれませんが、今こちらの映画館にいるのではなくて、これから映画館に行こうかどうか迷っていらっしゃる方、中にはいると思うんですね。そして、今じゃないかもしれないと思っていらっしゃる方がいたら、その言葉に従っていただきたいなと個人的には思っております。
いつか観たいと思ってくれている方のいつかがやってくることを願っています。そして、この映画が、辛い思いをしていたりとか、何か自分の一歩になってくれるかもしれないと思ってくださった方々の幸せへのきっかけになってくれることを切に切に願っております。
本日はありがとうございます。
■公開初日を迎えて
奥浜レイラ(MC)
改めて奈緒さん、今日観ていただいたお客さんを目の前にしていかがですか?
奈緒
今日ここに来るまでにすごく色んな葛藤がありまして、鳥飼先生とお話ししなくてはという気持ちが昨日からすごくあったので、許されることなのか分からなかったですけど、自己判断で鳥飼先生と直接ご連絡を取らせていただき、お会いしてお話をして、それまで自分がここでどうやって立ったらいいかなと思っていたんです。
鳥飼さんとお話をさせていただいて、原作にすごく支えられていた部分がこの映画を作っている時に大きかったので、少しでもこうやって皆さんが今日来るという選択をしていただいて、観ていただいて、ちょっとでも原作が伝わったりとか、そういうことにつながれば嬉しいなと常日頃、前々から思ってお伝えしようと思っていました。
そして初日を迎えて、いろいろな複雑な思いが正直ありますけど、先生ともお話をして感じたのは、この作品が、観た時に、私は一つの映画としてとても力強い映画になっていると感じました。
なので。その時に現場のみんなで乗り越えたいろんな大変なシーンを思い出しながら、それがこうやって形になったんだとすごくすごく嬉しかったです。自分が思っていた以上に嬉しい気持ちになりました。
それは現場の皆さんがいて、そして今日も一人だったら絶対心細かったし、三木さんと二人だったら、二人とも心細かったけど(笑)、でもこうやって風間さんと三好さんと猪狩君が一緒にいてくれて、今日この日を迎えられて、観た皆さんのお顔を見れてすごく嬉しい気持ちと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。
(会場拍手)
奥浜レイラ(MC)
ありがとうございます。猪狩さんは公開初日を迎えていかがでしょうか?
猪狩蒼弥(HiHi Jets)
撮影が結構前だったじゃないですか。2年以上前だったので、ちょっともはや試写を観させていただいた段階で、若干、懐かしさじゃないですけど、あ、こんな形になるんだという感動と、あとシーン一つ一つを見ると、その時の記憶が鮮明に蘇ってきて、これが演じるということというか、作品を作るということなのかっていうのはすごく感じましたし、それをこれからいろんな方々が見てくださって、形になったものが残っていくというのがすごく嬉しいです。
映画の撮影期間に入る前に、奈緒さんと二人でお話する機会があって、その時に奈緒さんと話して、「僕、演技がわからないんですよ」みたいな感じが若干あったんですよ。どういうテンションで進んでいくのかとか、わからないところも多くてみたいな話をしたんです。
その時に奈緒さんが「私はこのシーンを撮り終わった時に、また猪狩くんが演技をやりたいって思ってくれたら、私の中でもそれが一番だよ。」みたいなことを言ってくださって。ちゃんと僕言ってなかったんですけど、演技をまたやりたいです!
本当に楽しかったですし、撮影期間で言うと1ヶ月ちょっとなんですけど、その期間で積み上げたものが形になって、そこにいろんな人たちの気持ちとかストーリー、エンターテインメントなのかもしれないですけど、気持ちとかいろんな情熱が乗っかって、それがいろんな人の心に届いて、これがもう半永久的に残り続けるというのは、こんなに素晴らしいことじゃないなと本当に思いましたし、難しいテーマではありましたけど、本当に楽しい撮影期間だったので、いろいろありますが、率直に僕はこの作品が公開されたということが心から嬉しいです。
奈緒
ありがと・・・
猪狩蒼弥(HiHi Jets)
こちらこそ。
奥浜レイラ(MC)
ありがとうございます。三好さんは初日を迎えたお気持ちはいかがでしょうか?
三吉彩花
なんかこんな素敵な言葉を聞いた後に、これ以上言うことないなっていうという感じですが(笑)
そうですね、この作品を撮り終えてしばらく期間が空きましたけれども、その間に私自身も別の活動をしたり、別の作品と向き合ったりしていましたが、常にどこか頭の片隅にはずっとこの作品があって、それをすごく自分の中でよく消化する時もあれば、ちょっと自分的には珍しく「あ、本当に大丈夫かな、何かどういう風に出来上がってるかな?」って不安な気持ちも募ったりしながら、色んな気持ちで今日まで過ごしてきました。
でも、みんなが向き合ってきたっていうことが全てだと思いますし、出来上がって観ていただいた、スクリーンに映し出されたこの作品がもう全てだと思うので、それを皆さんに今日からお届けできるということは本当に光栄なことだと思います。あと、ここも3面(スクリーン)ですしね。試写会の時に私たちも3面で観たんですけど、本当に新しい感覚で。自分の中では勝手に映画は一つのスクリーン、一つの画面で没入していくというのが醍醐味でもあるなと感じてはいたんですけれども、こんなにも美しく儚く、台詞であったり、台詞を話していない時の表情であったり、風景であったりっていうのを描いているって、私達が撮影している時にはなかなか気付けなかった部分が映し出されていて。
この新しい映画の形って何?って、儚くてすごい素敵だなって思いましたし、そういう風にまた新しい感覚で何か皆さんが感じていただけたら嬉しいなとも思いました。
でも本当に何より、今日無事に初日を迎えられたことがすごくありがたく思います。
奥浜レイラ(MC)
ありがとうございます。
(会場拍手)
奥浜レイラ(MC)
風間さんはいかがでしょうか?
風間俊介
先ほど、奈緒さんがお話しになっている姿を皆さんが頷きながら聞いてくださっていました。この作品は、僕の口から伝える必要がないほど誠実で、そして役者として、人間として正しくありたいと願った奈緒さんのもと、皆が必死にその信念とそれを共有して作り上げることが出来た作品だと私自身考えております。
なので、もちろん先ほど言ったことと重ねてしまいますけれども、多くの方に観ていただきたいと思っております。それと同時にタイミングというのがある、そんな作品だとも思っております。なので皆さんが受け取って、自分自身が考えていること、そしてそのほかに周りの人と話し合うこと、全ては何かのきっかけだったりとか、世界が変わっていく。
そんな中にこの映画があったらいいなと。そこに私たちがこの映画に込めた信念だったりとか、願いみたいなものを受け取っていただけたらなと思っております。そして、皆さんのお顔を見て受け取ってくださっている方がいらっしゃるなというふうに思っております。
それこそが、私たちがこの映画を作った、作ってよかったと思わせていただける、そんなような希望になっております。ありがとうございます。
(会場拍手)
奥浜レイラ(MC)
ありがとうございます。
■鳥飼茜(原作)からのメッセージ
奥浜レイラ(MC)
そして、ここで原作者の鳥飼茜先生よりコメントが届いておりますので、私の方で代読をさせていただきます。
原作:鳥飼茜
漫画を映像化するということは、基本的には光栄なことだ。それでも自分は自分の描いた作品に無責任すぎたのかもしれないと思う。作品は作品で、描いた人、撮った人、演じた人の個人とは無関係に評価されるべきか、そういう性質のものもあっていいと思う。
ただ、自分はこの漫画を描く時、確かに憤っていたのだ。一人の人間として、一人の友人として、隣人として、何かできることはないかと強い感情を持って描いたのだ。それはある意味、特別で貴重な動機付けだった。今、あんな情動は持てない。
性被害に対し何を言えるのか、私たちはどんな立場なのか。どんな状況でもそれを明らかにできる場合にしか明け渡してはいけない作品だったと思う。こんな原作がなんぼのもんじゃと言われるかもしれないが、なんぼのもんじゃと私だけは言ってはいけなかったと思う。
自分だけは、自分のかつての若い(ナマ物の)憤りを守り通さねばならなかった。
撮影に際して、参加する役者さんからスタッフに至るまで、この物語が表現しようとしている全てに個人的な恐怖心や圧力を感じることはないかどうか。性的なシーンや暴力的なシーンが続く中で、彼ら全員が抑圧される箇所がないかどうか。
漫画で線と文字で表現する以上の壮絶さが伴うはずだったことに、私は原作者としてノータッチの姿勢を貫いてしまった。原作者として丸投げしてしまったこの責任を強く感じるに至り、反省した。
後出しで大変恐縮ではあったが、センシティブなシーンの撮影についての事細かな説明を求め、応じてもらった。説明を聞き、一応のところ安心はしたものの、やはりあらゆる意味で遅すぎたし、甘かったと思う。
わかりようがないとはいえ、もっともっと強く懸念して、念入りに共通確認を取りながら繊細に進めなくてはいけない、そういう原作だった。これは昨年私が記した所信です。文章の公開はしませんでしたが、昨年の時点での私の考えでした。
今公開を迎えるにあたり、この度の発言が良くない意味で注目されていることを、私は何とも心苦しく思っている。なぜなら何かこの作品で誰かに嫌な気持ちを起こすようなことがあれば、私にもその責任があると、既にこのように昨年の私は記していたからです。
こういう場合、皆、一様に「言葉には気をつけなければならなかった。」「コメントに配慮が足りなかった。」「対応が配慮に欠けていた。」と反省されます。ただ、私が感じる問題はそうではない。問題は最初から信念を強く持ち合わせていなかったことではないでしょうか。
私も出版社も含め、制作した者たちが、あらゆる忖度に負けない信念を首尾一貫して強く持たなかったことを反省すべきだったんじゃないか。このことを私は今、私自身に痛感しています。
冒頭で言ったように、最大限の配慮や共通理解を徹底して作るべき作品であること、それを映画制作側へ、その都度働きかけることを私が途中で諦めてしまったことを猛省したのは、主演の奈緒さんの態度に心を打たれたからです。
個人的な感想ですが、この映画制作において一番強かったのは奈緒さんです。彼女はこの騒動で誰よりも先駆けて私に謝罪をされました。現場で一番厳しい場面と素晴らしいまでに誠実に対峙した奈緒んがです。心遣いに感心したと同時に、謝罪なんて必要ないのにと心から申し訳なく思いました。
何より映画の中の主人公としての演技が素晴らしかったのです。
現実でも虚構でも、彼女は誠実そのものでした。感謝していますし、彼女が望むなら、たくさんの人にその素晴らしさを観てもらい、分かって頂ければ私自身、反省もした上で、これ以上のことはありません。
奥浜レイラ(MC)
このようにコメントを頂きました。
奈緒
ありがとうございます。
■最後のメッセージ
奥浜レイラ(MC)
今日お越しいただいた皆さんに是非コメントいただきたいと思います。
三木康一郎監督
先ほどの鳥飼先生のお手紙を聞かせていただきまして、映画制作陣として彼女の想いがこれからの映画の在り方、その辺の意義をしっかり正して、この作品で感じたことを教訓にして、しっかり顔を上げて前に進んでいきたいと思います。
そして、ここに立っていただいている4人。初めて会った時に、4人揃って会った時に本読みをしたんですけど、その後に4人揃って話がしたいと。4人だけ集まって、この作品をどう考えていくかという4人の姿を僕は遠目に見て、彼らのこの作品にかける思いをすごく感じました。
今後、この映画がどのように皆さんに届くか計り知れませんが、今後、私、映画人としてしっかり精進してまいりたいと思います。本当に今日はありがとうございました。
(会場拍手)
風間俊介
ありがとうございます。先ほど話させていただいたことに、私が伝えたいことというのは集約させていただきました。なので申し訳ございません。もう一度聞いていただけたらと思います。この作品が誰かの希望になったり、誰かの明日を変える、そんなような作品になったら幸せです。
そして、この作品で皆様が思われたことというのは、私たち俳優、そしてスタッフ全員、映画を作った者たちが覚悟を持って、そしてこの作品は特に責任を伴う作品だと全員が思って臨んだ作品です。なので皆様が何か思ったことがあったら、それを、鉾(ほこ)を自分に向けないでください。
その責任はこの映画を作った我々にあると、私個人ではありますけれども、私は思っております。
なので、重ねてではありますけれども、この作品が、観てくださった方の明日を変える、そんな作品になったら幸せです。ありがとうございます。
(会場拍手)
三吉彩花
改めまして本日はありがとうございました。我々の思いもそうですし、本編を観ていただいた皆様に、どう言葉にするのがいいかというのは、ちょっと今もあまりうまく言葉がまとまらない感じで申し訳ないんですけれども、この作品を作っていく過程でもそうですし、どんな作品であっても、どんな役柄であっても、皆さん本当に一つの作品をお客様に届けるという意味では、本当に強い想いであったりとか、いろんな責任であったりとか、それぞれがすごく真摯に真剣に向き合って作品を作っていると思います。私自身もそういう気持ちで、どの作品も臨ませていただいています。
そういった中で、今回この作品は、どの役者もそうですし、身も心も削って向き合って臨んだ作品だと思うと、本当に色々複雑な気持ちになったり、いろんなことが起こってしまったり、観ていただいた皆様にも何かそういう複雑な気持ちにさせてしまっているのかなと思うと、すごく申し訳ない気持ちもあります。
ただ、風間さんも言っていただいたように、この作品を観たことで何かのきっかけになったりであったりとか、明日を、前を向いて生きていくっていうメッセージを受け取っていただけたらすごく幸せだなと思います。
こんなことを私は個人的に皆さんに映画を届ける身としてお伝えするのは、ちょっと違うのかなという気持ちもあるんですけど、でも本当にさっき鳥飼先生がおっしゃっていただいたように、この作品は本当に奈緒ちゃんがとても真摯に向き合って、しんどいシーンもすごく多かったと思いますし、皆さんそれぞれとても大変なシーンがすごく多かったですし、それを間近で、現場でも見させていただいて、役ではあるけれども、それをすごくリアルに感じて、リアルにお芝居していく姿を横で見て、私はとても勇気をもらいましたし、奈緒ちゃんが座長で本当に良かったなっていうのをずっと感じていました。
この作品がみんなにとっても奈緒ちゃんにとっても報われる、そして本当に一人でも多くの方に届く作品になったら嬉しいなと思います。
なので、ぜひ皆様、どうか本当に、この世の中、自分の思うことであったりとか、自分が発信していくこと一つすごく難しかったり、考えてしまったりとか、そういう世の中ではあると思うんですけれども、どうか温かい言葉を彼女には向けてあげられたらなとみんなでも思ってますし、この作品は本当に私たちは真摯に向き合って取り組んだ作品なので、一人でも多くの方に届くことを願っています。本当にありがとうございました。
猪狩蒼弥(HiHi Jets)
皆さん、改めまして本日は暑い中、集まりいただきありがとうございました。
先週ぐらいに、いよいよ公開だということで、改めて原作を1巻から最終巻までもう一回読み直したんですけど、何か読めば読むほど毎回違った考え方をくださるなというのをすごく実感しました。
風間さんや皆さんもおっしゃっていたんですけれども、この作品に携わって責任が伴うっていうのは、それはもちろんこの作品に限った話ではもちろんないと思うんですけれども、強く感じました。
ただ、それと同時に、責任という意味は一緒なんですけれども、やっぱりエンターテインメントというのは、割とゆとりのある人に対して、もっと楽しい、人生に対するプラスアルファを提供するという意味合いがものすごく強いと思いますし、僕はもちろんそのつもりでやっているんですけれども、その反面というか、もう一つの顔として、普通に生きていたら目を向けないところに切り込んでいけるというのもエンターテインメントの特権だなと、改めて漫画を拝読して思いました。
普通に生きていて、普通に自分の人生に没頭していたら、関係ない人には一生関係ないままで終わってしまうテーマだし、関係ない人は目を逸らしたくなってしまうテーマです。けれども、それをある種ひとつのエンターテイメントという土台で、本来触れなかった方の元に届けられるというのは、自分はこの職業に就けて本当に良かったし、責任を持ってそれを娯楽という意味で消費するということではなく、しっかりと誰かに届けるという熱い想いを持って、この作品に挑めたことを本当に嬉しく思いました。
なので、お二人も重ねておっしゃっていたんですけど、色々な方、それは映画が好きな方に関わらず、本当に何かにちょっとへこんでいる方というか、人生に対して味方がいないとか、理解をしてもらえていないと感じている方にも、僕らが寄り添い、完璧に寄り添えるはずがないと思いますし、それこそ演じている最中、僕は新妻のことをきっと一生本当の意味で理解できないし、理解した気になってはいけないというのをずっと思いながら演じてきたんですけれども、そういうものなんだなと、そういう気持ちで、僕は関係ないんじゃなくて、ちゃんと何かしてあげられることはないか、その答えがきっとないんだけど、それを少しでも多くの方に、ちょっと偉そうにだんだんなっちゃったんですけれども、感じていただけたらすごく嬉しいと思える作品です。なので、皆さん、またぜひ観ていただきたいですし、いろんな方の目に届くように、これからも僕自身も猪狩蒼弥として頑張っていくので、この作品に携われたことを本当に感謝しています。皆さん、本当にどうもありがとうございました。
奈緒
好きにしゃべっていいって言われたので、今からお話しすることは私の心からの気持ちです。
まず一つ。きっと昨日の記事があってから皆さんにご不安を抱えさせてしまっている部分があると思うんですけど、それで言うと一つご説明したいのは、この映画の中でも描かれていますが、私自身は原作に本当に心から惚れ込み、この作品に出演することを自分で決めました。
そして、その中で色々なやり取りがあり、すれ違いがあったことも事実です。でもそれは当人同士の問題として、私は権力に屈するようなことは一切なく、対等な話し合いと言いますか、対等な関係で監督ともお話をしましたし、言いたいことは伝えました。
伝えた上で、お話し合いを自分の中ではしていたと思っていた上で、どうしても現場に対してちょっと不十分だと思う部分が正直ありました。
なので、そこは私たちも本当に未熟で、私自身がもっとちゃんとコミュニケーションを取り、この作品を公開する、映画になって公開するというにあたって、どういう風に皆さんを傷つけないように言葉を選んで、ちゃんと自分たちの真意として伝わるかというところまで宣伝の部分でお話できていなかったことが、結果、こういう皆さんを不安にさせてしまうようなことを招いてしまったのかなと、私自身は自分のこととして深く反省しております。
でも、権力の違いとか対等な現場ではありましたので、そこは皆さんどうかご安心して、ただでさえ胸を痛めるシーンがあるんですけれども、私のことを心配してくださっている声も届いていますので、それは大丈夫ですということをお伝えしたいです。
奈緒
そしてその上で、これは以前からこの映画が公開するにあたってお伝えしたいなと思っていたことが2つあります。
まずはこの作品を作るという上で、こういったテーマに触れることに関してもそうですし、社会全体としてどうしてもすごく自分自身が自分の胸に手を当てて、本当に今私は大丈夫だろうか、そして人を傷つけることをしていないだろうかと胸を当て続けなければ、この作品も作れませんでしたし、きっとそれは社会ですごく人同士が共存していく上で大切なことなんじゃないかと私はこの作品から学びました。なので、私もこれからそうやって生きていこうと思っています。
あと、どんなに綺麗な川にも淀みはおきます。その淀みがある部分ばかりを見てしまうと、どうしてもどうしてもそこばかりが大きくなってしまって、全体の綺麗な部分に気付けなくなってしまうことがあるんじゃないかと私自身は思っています。それもこの作品で学びました。
なのでもし皆さん、自分の誠意を脅かすようなことがあれば、そういう人が現れたなら、その人にもきっと大切な人がいるかもしれない。でも、まずは自分の気持ちをぜひ守ってください。そして、その誠意を脅かすような言葉にはしっかりとノーと自信を持って言ってください。きっとそれが自分を一番守ることに繋がるのかなと思います。
そして、相手には家族がいて、大切な人がいて、そういう人たちが一緒に集まってこの社会で生きているんだということを少しでもこの映画で思い描いてくださると嬉しいなと思います。
マスコミの皆様、本当に今日来てくださってありがとうございます。大変緊張感のある舞台挨拶になってしまったんですけれども。
私たちは(マスコミの皆さんに)来ていただいて、言葉を書いて発信していただくという身なんですけれども、その時にどうしても限られた文字数だったりとか、そういった制限があることは重々承知しております。
今日のことが全て伝わるかという部分は怖くもありながら、皆さんのことを心から信頼してここに立たせていただいております。今日ここでお会いして、こうやって取材していただいているのも、私はご縁だと思っていますので、どうかご配慮いただけると嬉しいなと思います。すみません。この作品を代表してというか、偉そうになんですけれども、ちょっとお願いをしたいなと思います。
全ての人が自分自身を自分で守れる、そして誰かが悲しんでいたら手を差し伸べられる。そういう淀みのないきれいな川を、私は心から諦めずに目指したいと思っています。
本当に本当にありがとうございました。
奥浜レイラ(MC)
ありがとうございました。以上でございます。拍手で皆さんをお送りください。ありがとうございました。
■フォトギャラリー
[写真・記事:三平准太郎]
映画『先生の白い嘘』
《STORY》
高校教師の原美鈴(奈緒)は、教卓の高みから生徒達を見下ろし観察することで、密かに自尊心を満たしながら、女であることの不平等さから目を背けていた。
ある日、美鈴は親友の渕野美奈子(三吉彩花)から早藤雅巳(風間俊介)と婚約したと告げられる。早藤こそ、美鈴に女であることの不平等さの意識を植え付けた張本人だった。早藤を忌み嫌いながらも、快楽に溺れ、早藤の呼び出しに応じてしまう美鈴。
そんなある日、担当クラスの男子生徒・新妻祐希(猪狩蒼弥)から衝撃的な性の悩みを打ち明けられ、思わず美鈴は本音を漏らしてしまう。新妻は自分に対して本音をさらけ出した美鈴に魅かれていき……。そして、歪んだ愛憎渦巻く人間模様は思いもよらぬ狂気の世界へと向かっていく。その先で美鈴が見る景色とは――
出演:奈緒
猪狩蒼弥 三吉彩花
田辺桃子 井上想良 小林涼子 森レイ子 吉田宗洋 板谷由夏 ベンガル
風間俊介
原作:鳥飼茜「先生の白い嘘」(講談社「月刊モーニング・ツー」所載)
監督:三木康一郎(『植物図鑑 運命の恋拾いました』『弱虫ペダル』『恋わずらいのエリー』)
脚本:安達奈緒子(『劇場版 きのう何食べた?』「おかえりモネ」)
音楽:コトリンゴ
主題歌:yama「独白」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:松竹ODS事業室 / イノベーション推進部
映倫区分:R15
©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社
公式HP:https://senseino-shiroiuso.jp
公式X:@shirouso_movie
公式Instagram:@shirouso_movie
本予告
2024年7月5日(金)全国劇場&3面ライブスクリーンにてロードショー
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