【インタビュー】ストレートプレイ舞台初出演の川島鈴遥「自分の気持を言葉にして書くようにしています」
2024年7月5日(金)に開幕した舞台「神話、夜の果ての」にヒロイン役として出演する川島鈴遥(かわしま りりか)。オダギリジョー監督映画『ある船頭の話』で、第34回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞した彼女にとって初のストレートプレイ舞台作品出演となる取り組みや想いを聞いた。
川島鈴遥 インタビュー&撮り下ろしフォト
■ほぼ初めてに近い舞台出演
‐舞台「神話、夜の果ての」について、物語の概要と、川島さんが演じられる役柄(シヅル)についてご紹介ください。
川島鈴遥(シヅル 役)
宗教二世の子供たちに焦点を当てた物語で、主人公の男の子・ミムラアキトを中心に巻き起こる会話劇。彼の犯してしまった罪が、彼の妄想なのか現実なのか?最終的にどこに行き着くのかということが描かれます。
私が演じるシヅルは、あまり素性は明かされてないんですけど、アキトと同じ宗教の施設で一緒に育った女の子で、彼女がアキトを夢か現実かわからない世界に誘います。
信仰はもちろん否定されるものではないし、大切にする方がいらっしゃるのはもちろんですが、その先にある、いわゆる宗教二世と言われる子供達の苦しみ、親子関係が奪われてしまった時に、どこに愛を求めて、自分がどう育っていけばいいか分からないなど、彼らの苦しみが存在することが明らかにされたとしても、世間ではあまりフィーチャーされないまま時が進んでいる。そこに焦点を当てた作品だなと感じています。
‐台本を読んだときの最初の印象は?
川島鈴遥
役者自身がひとつの軸を持っていないと一気に崩れてしまう作品だな、っていうのが第1印象です。
私個人としては、1時間半の上演中、ずっと出続けるという意味で、舞台経験が浅く、これだけのセリフの量があることの不安も大きかったです。
‐舞台「里見八犬伝」出演のときは?
川島鈴遥
このときはメインの役ではなく、2時間余りの上演中、私の出番は15分程度だったので、以前と比べると今回のセリフの量はものすごく多いんです。
‐なるほど。その上で今回の舞台出演の意気込みをお聞かせください。
川島鈴遥
いつもやってる映像のお仕事では、台本をいただいてから、シーンごとの組み立てなどはもちろんやってるんですけど、舞台の台本をいただいた時はどうすればいいか分からなくて。
舞台では100回やった先に何かが見えるっていうのを聞くんですけど、それを信じて、稽古で何もない状態で台詞を言ってみて、相手と何回か交わすことによって、あ、こういう意味合いで言ってるのかもしれないとか見えてくるんじゃないかなと思って、楽しんでやることにしました。
‐稽古の仕上がりはいかがですか?
川島鈴遥
通し稽古をやってるんですけど、すごくいい時もあれば、悪い時もあるなっていう印象が強くて。5人のお芝居なんですけど、1人でも集中力が欠けると、それが伝染していって、1人ずつのお芝居になっちゃうんです。いい時は、みんなが集中力をグっと高めてまとまって力強い作品になってるなって演じながら感じるので、そこの塩梅が今は難しいなって思ってます。
‐演出の詩森ろばさんからはどういうお話がありましたか?
川島鈴遥
最初から細かい指示をされるのではなくて、「一度思ったようにやってみてください。」と、役者を信じてくださってる印象があります。その上で、ダメだったらちゃんとダメって言ってくれて、とても信頼できる方です。
あと、その日の稽古の感触だったり、私と感覚が似ているなと感じることがあります。なので、稽古が終わってから、「あの時どうすればいいかわからなかったんです。」と、不安に感じていることもちょっとずつ話せるようになってきて、とてもいい関係性を築けているんじゃないかなと、一方的にですけど思っています。
‐7月5日(金)に初日を迎えますが、手応えの方はいかがですか?
川島鈴遥
もちろん、観てくださる方にいいものをお届けできるという自信はあるんですけど、先ほども言いましたが、どこか一つボタンを掛け違うと一気に崩れてしまう作品でもあるので、そこは気を引き締めてやらないといけないなと思っていますし、あとは、セリフが飛ばなければいいなっていう想いでいっぱいです。
‐セリフを忘れた!っていうような夢を見たりとかはないですか?
川島鈴遥
夢じゃないんですけど、先日、主人公がタイムスリップをするという映画を観て、一緒に住んでいる演出家が舞台をやることになって、「最高峰のものを見せたいのに役者がセリフを飛ばして、これで俺の人生終わった!」って嘆くんです。で、主人公が過去にタイムスリップして、カンペを出して、なんとか成功させるっていうシーンがあったんですけど、それを観た時から、もしかしたらこれが私の身に起こることかもしれないと思って、ちょっとドキドキしちゃってます(笑)
なので、稽古以外でも、ずっとセリフばっかり喋ってます。
■役者としての転機になった作品
‐オダギリジョーさんが監督として、そして共演者として川島さんと関わることになった映画『ある船頭の話』と『ぜんぶ、ボクのせい』の2作品はとても印象的でしたが、改めて振り返ってもらって、役者として感じたことがありましたら教えてください。
川島鈴遥
『ある船頭の話』では、初めてのヒロインという立場で出演させてもらった、ちょっと異国感漂う作品です。衣裳デザインのワダ・エミさんや、撮影監督のクリストファー・ドイルさん、そしてもちろんオダギリジョーさんもそうですけど、各部署にプロフェッショナルな方たちが集まっていて、作品全体やそれぞれの役に対する想いが明確にあって、それが私たち俳優部にも強く伝わってきて、自分のためだけじゃない、作品のためを思って、どう立ち回りしたらいいのかを考えながらお芝居しなきゃいけないんだなっていうことを学びました。
このときの経験から、俳優としてお芝居に対する意識はずいぶん変わって、それは『ぜんぶ、ボクのせい』にも、その他の作品でも活かされていると思います。
オダギリさんは、寡黙なところがありますが、お酒を交わしたりすると、本音をズバリと言われることがあって、その一言一言に重みがあって、いつも聞き逃さないようにしていました。
撮影のときも、オダギリさんの演出の意図を考えながら取り組んで、二人三脚でできたんじゃないかなと思っています。
そして、柄本明さんとは、船で2人きりになることが多くて、その時にいろいろお話させていただきました。特に印象に残っているのは、「芝居なんて考えてやるもんじゃねぇ、お芝居はもう普段からみんなしてるものだから、その場に立ってそこにいればいいんだよ。」っておっしゃっていただいたこと。それがずっと私の心の中にあって、ちょっと力が入ってる時とかは、その言葉を思い出して、息を吐いて深呼吸して、気取らずに自然体で挑むということをしています。
それほど、『ある船頭の話』は私にとって大切な現場でしたし、贅沢すぎる幸せな空間でした。
‐役者としてひとつの転機になった作品でもあったと。
川島鈴遥
はい、確実にそう言えます。
■恥ずかしくて人に見せられない趣味
‐『ぜんぶ、ボクのせい』では素敵な歌を披露するシーンがありますが、もともと歌を歌うことはお好きだったんですか?
川島鈴遥
はい。でももともとは、音程を取ることが下手だったんです(笑)
小さい時から子役でお仕事させていただいてるんですけど、何かの現場で「ハッピーバースデイ」の歌を歌わなきゃいけなくて、それをとても静かな空間で歌ったんです。自分では普通に頑張って歌えてるって思ったら、家に帰ったらお母さんから「音が外れ過ぎてて恥ずかしくて聞いてられなかった」って言われたんです。
歌うことは好きだけど、みんなに聴かせられないんだって悲しくなっちゃって、聴かせられる歌を歌えるようになるために合唱部に入ることにしたんです。中高と6年間。そうしたら、1、2年目ぐらいで音程が取れるようになって。
満を持してお母さんに歌いますって歌って、「上手くなったね」って言ってくれたことがきっかけで、カラオケにも行くようになって、今ではもう月一で、一人カラオケ行っちゃうぐらい好きです。
‐カラオケでは例えばどんな歌を?
川島鈴遥
HYさんの「366日」や、宇多田ヒカルさんの「First Love」。最近だと、tuki.さんの『晩餐歌』という曲を今、十八番(オハコ)でよく歌ってます。
‐歌以外で、オフの日の好きな過ごし方や最近ハマっていることは?
川島鈴遥
休みは基本的に家にいるんですけど、でも誰かにご飯や遊びに誘っていただいたら、喜んで行きます。
家にいる時は、最近は、詩やエッセイを書くのにハマってて、ノートかパソコンを開いて書き綴っています。
オーディションもそうだし、役者は表に出るっていう仕事なので、自分の気持ちを言葉にすることも大切だと思うんですけど、なかなかそれが苦手な部分があって。なので、そういった自分の気持を頭の中でまとめて言葉にして「書く」ということを、日々、思い立ったらやるようになりました。それが最近の趣味になっているかもしれないです。
‐それはご自分のためだけのもの?
川島鈴遥
はい。恥ずかしくて人には見せられないです(笑)
‐いつかエッセイ本とかも出せたらいいかもですね。
川島鈴遥
ちょっと考えてみます(笑)
■作品を支えることで、誰かに届くようになる役者に。
‐俳優としてのお話に戻りますが、子役から始められて、先ほど『ある船頭の話』がひとつの転機になったとお話いただきましたが、今後の抱負として考えられていることはありますか?
川島鈴遥
今までは、自分のお芝居をしっかり磨いて、どんどん露出も増やしていきたいという気持ちが強かったんですけど、それが結局作品のためになってるかって言ったら、自分だけのことしか考えてないんじゃないかなって思うようになりました。
自分として目立つっていうよりも、相手とのお芝居を経て、目立ったものはなくても、作品を支えることで、誰かに届くようになる。そんな作品に出たいって思うし、そういう役者でありたいなって思っています。
‐最後に舞台「神話、夜の果ての」の見どころ含めたPRメッセージをお願いします。
川島鈴遥
宗教二世の話って聞くと、重々しく感じてしまう部分があるかもしれません。確かにメッセージ性の強い作品ですが、ユーモアを交えたところもあって笑えるところもありますし、是非、若い方も含めて幅広い世代の方に観てほしいです!
■撮り下ろしフォトギャラリー
[インタビュー・撮影:三平准太郎/ヘアメイク:伍島琴美/スタイリスト:能城匠]
川島鈴遥(かわしま・りりか)プロフィール
2002年生まれ。栃木県出身。
2010年、テレビドラマ『特上カバチ!!』でデビュー。以降大河ドラマ『八重の桜』などに出演し、幼い頃から女優として活躍。2019年に公開された、オダギリジョー初監督長編映画『ある船頭の話』でヒロインを演じ、第34回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞。2022年公開映画『ぜんぶ、ボクのせい』(松本優作監督)ではヒロインを務め鮮烈な印象を残す。2023年放送NHK「仮想儀礼」に出演するなどドラマ・映画問わず活躍中。
舞台「神話、夜の果ての」
《あらすじ》
青年は目を覚ますと、拘置所にいた。自分がなぜここにいるのか、自分が誰なのかさえ青年はわからない。そばにいるのは、精神科医と夢とも現実ともわからない少女である。ある日、精神科医の元を弁護士が訪ねてくる。国選で青年の弁護士となった彼は、保護室にあり「心身喪失状況」の青年と面会することもできていない。4人の会話は迷走し、もつれ、記憶と現在と精神を行ったり来たりしながら、青年の苦しみと、結果犯してしまった犯罪のかたちが浮かび上がる。
出演:坂本慶介 川島鈴遥 田中亨 杉木隆幸 廣川三憲
作・演出:詩森ろば
制作:serial number
会場:東京芸術劇場シアターウエスト(東京都豊島区西池袋1-8-1)
公演期間:2024年7月5日(金)~7月14日(日)
公式サイト:https://serialnumber.jp/next.html
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