尾かしら付き。

【インタビュー】武田梨奈「ボロボロにやられるところも見せたいんです」

佐原ミズの人気コミック『尾かしら付き。』(コアミックス刊)の実写映画『尾かしら付き。』のスペシャルパッケージBlu-rayが11月1日に発売。本作主要キャラクターのひとり樋山那智の大人時代を演じた武田梨奈に、本作撮影エピソードや今後の抱負などを聞いた。

本作は、お尻に豚のような”しっぽ”が生えている少年・宇津見 快成と、そんな彼をもっと知りたいと思い、寄り添おうとする少女・樋山那智が出会い、傷つきながらも心を通わせ合う、切なく愛おしい愛を描いた物語。
主演は、「映画刀剣乱舞-黎明-」や「『進撃の巨人』-the Musical-」に出演するなど、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍する人気若手俳優、小西詠斗で、豚のようなしっぽが生えている、という秘密を持つ中学生の少年、宇津見快成を演じる(大人になった快成は、佐野岳が務めた)。
そんな彼の秘密を知ってしまう同級生の樋山那智の小学~高校生時代を、ユニバーサルミュージックがおこなった初の女優・モデルオーディション「ニュー・ヒロインオーディション」にて最優秀賞を受賞した期待の新人、大平采佳が演じる。武田梨奈は、大人になった那智を演じる。

武田梨奈 インタビュー&撮り下ろしフォト

■初めましての共演で。

‐本作の台本を読まれた最初の印象は?

武田梨奈/樋山那智(大人)役
『尾かしら付き。』というタイトルと、主人公のひとりで尻尾が生えている男の子(宇津見快成/うつみかいせい)という情報がまずあったので、ファンタジーな作品なのかなと思いましたが、読み進めていくと、だれもが抱える悩を描いた日常的なお話だったので、とても身近に感じられました。

尾かしら付き。

武田梨奈

‐大平采佳さん演じる“樋山那智/ひやまなち”の大人役ということですが、このキャラクターについてどう捉えて演じられましたか?

武田梨奈
那智はものすごくピュアでまっすぐなので、内に秘めた気持ちを人にぶつけることがなかなかできない快成とは真逆だなと思いました。那智は気持ちをぶつけなきゃ気が済まないし、そのまっすぐさが快成の心を開いていくことに繋がったのかなとも思いましたので、そこを大切にしました。
撮影現場で、先に大平さんが演じる那智も拝見したんですが、私が想像していた以上にまっすぐな那智だったので、その印象を崩さずに大人の那智を演じようと心がけました。

尾かしら付き。

場面写真 ©佐原ミズ/コアミックス ©2023 映画「尾かしら付き。」

‐快成の大人役を演じられた佐野岳さんとの共演がメインでしたが、その佐野さんの印象は?

武田梨奈
佐野さんとは初めましてで、しかも撮影期間が2日間というプレッシャーの中現場に入たんですが、佐野さんの方から、「初対面ですが、敬語無しで、那智と快成の距離感でいきましょう」と、心を開いて打ち解けてきてくださったので、それにとても助けられました。
撮影の前の空き時間に2人でエチュード(即興芝居)みたいなことをやって、那智と快成として、「今日、ご飯どうする?」とか、夫婦の2人だったらこういう会話をするよねっていう、ほんとうに他愛のない会話を、お互い設定を決めずにその場でやっていました。

尾かしら付き。

場面写真 ©佐原ミズ/コアミックス ©2023 映画「尾かしら付き。」

‐なるほど!それで長年の付き合いから夫婦になった2人の自然な関係が観る側にも伝わっていたんですね。

武田梨奈
ありがとうございます。2人の関係性がこの物語のメインとして描かれているので、その関係性をしっかりと持って現場に立たないと、違和感のあるシーンになってしまうので、それは佐野岳さんとだったからできたんだと思います。

■エチュードが効いたのかアドリブも。

‐真田幹也監督はこの規模の商業映画作品は初めてだと伺ってますが、監督の印象や演出はいかがでしたか?

武田梨奈
真田監督は役者でもあるからこそ、監督目線だけでなく、役者目線でも役の気持ちについて相談に乗って頂けるのが心強かったです。
印象としては、遊び心もある方で、「台本上ではここで終わりなんですけれど、そのまま撮り続けます。」という指示があって、アドリブで佐野さんとやり取りを続けさせてくれたりして、短い撮影期間の中で現場に馴染めて楽しく演じることができました。
監督が私たちの間に入って良い空気を作ってくださったなと感じています。

‐アドリブで演じた部分は実際に使われていますか?

武田梨奈
後半の方で使われています。

‐では、どのあたりがアドリブなのかなって思いながらこの映画を観るのも楽しみ方のひとつかもしれませんね。

武田梨奈
はい。でも良い意味でアドリブっぽくなくて、事前のエチュードが効いたのか、お互いのやり取りがとても自然にできたなって思っています。

‐なるほど。それではどこがアドリブか見抜くのは難しそうですね。

武田梨奈
だといいです(笑)

尾かしら付き。

■武田梨奈はストイック?

‐本作のテーマを通して、「人と違うこと」について、感じられたことがあればそれぞれ教えてください。特に日本は同調圧力が強いという意見もありますが。

武田梨奈
少しずつですが、人と違うことが個性として認められる時代になってきてはいると思うんですけれど、でも、まだまだ自分からそれを言葉に出して言うことは、特に中高生のときは言いづらいと思うんです。私はそうでした。
学生時代の自分と他人との関係性は、家族か学校の友だちという狭い世界なので、比べる対象が身近で、「これを言ったらおかしいと思われるかな?」とか、コンプレックスのひとつひとつが自分にとってより大きなものに感じられてしまうからです。
今、20代、30代と大人になってきたら、「学生時代に悩んでいたことって可愛いな」って思えるんですけれど、当時は絶対にそのように思えなかったんですよね。。
でも、この作品は、そういう自分でネガティブに思っていることも実は魅力的なことなんだよって肯定してくれる映画だなと思いますので、幅広い世代の人に観てもらいたいなと思います。

‐武田さんご自身が、「私のここはみんなと違うかも」と思われることがあれば、お聞かせください。

武田梨奈
「普通は、選択肢があったら、なるべくキツくない方を選ぶけど、あなたは自らキツイ方に行くよね。」と、親友からはよく言われます。「ストイックすぎる」と言われることもあります。

‐それはご自身では意識していない?

武田梨奈
してないんですけれど、結果、すごく自分を追い込んだなって思うことがあります。追い込まないと生きていられないというか、何もしていない時間が怖いんだと思います。

‐武田さんは武術をずっとやられているのも関係していますか?

武田梨奈
それも大きく影響していると思うんですけど、やっぱり空手などの武道って、ほんとに一日一日の鍛錬がとても大きく結果に繋がっていくんです。なので、やるべきことがひとつでも欠けたら怖いって思っちゃうので、とにかく(自分を)追い込む方を選んでしまうんだと思います。これはもしかしたら私の変わっているところかもしれないです。

尾かしら付き。

■ボロボロにやられるところも見せたい

‐今のお話に関連して、武田さんといえばアクションという印象が強いですが、ふだんはどういうトレーニングをされていますか?

武田梨奈
広くいろんなことをやっているんですけれど、パンチやキックなどの武術はベースとして稽古をしていて、それ以外にもリアクションだったり、よりリアルさを追求しようと心がけています。
今の若い世代の方が、カッコいいって思っているアクションって、めちゃめちゃ強くて、人をボコボコに倒せるというイメージがあると思うんですけれど、私は逆で、やられる方に注目してしまうんですよ。これも変わっているかもですが(笑)
カッコよく見せるアクションの技術は大切ですが、やられる方もすごく重要で難しいと思っていて、それは現場でスタントの皆さんを見ていても感じることです。タイミングとかを合わせるのも、スタントマンの皆さんがいて成り立っているので、そっちの方もちゃんと学びたいと思っています。
たとえば、ジャッキー・チェンさんって、ボッコボコにやられるけど立ち向かうみたいな役が多いですが、私はそれに惹かれてアクションを始めたというところもあるので、カッコいいだけじゃなく、ボロボロにやられるところも見せたいと思います。

‐「ワカコ酒」とのギャップがある武田さんのアクションシーンをまた映画やドラマで是非観てみたいですね。

武田梨奈
そういう役も是非やりたいですね。「ワカコ酒」から私を知ってくださった方の中には、私がそういうアクションもするということをご存知ない方もいらっしゃるので、是非(アクションをする姿を)見せたいなって思います!

尾かしら付き。

■プロフェッショナルにはプロフェッショナルで。

‐その「ワカコ酒」も2015年に放送スタートして8年目になりましたが、改めて日本の食文化で思われていることはありますか?

武田梨奈
「ワカコ酒」に携わってから特に思ったのは、いろいろな酒蔵を巡らせていただいた上で、お酒が美味しいのって、やっぱりお水とお米が大切だなっていうこと。
美味しいものができあがるのは、自然の恵みが成り立っている必要があるなと思ったので、それは日本の素晴らしいところだなと感じています。日本は蛇口をひねったら美味しいお水が飲めますが、これって改めて素晴らしいことだなって。
そういう環境に居られている私たちは、とても恵まれていると思います。

‐コロナ禍になって「ワカコ酒」の撮影も間が空くようになっていましたが、今年から放送が始まったシーズン7の撮影で、街の活気について感じられることはありますか?

武田梨奈
かなり感じます。日常が少しずつ戻ってきて、改めてそれが特別なことだったと気付かされたという声も多く聞きます。でも、「ワカコ酒」では、シーズン1のときからずっと「特別なこと」っていう言葉を使っているんです。こうやって外呑みできることは特別なことなんだなって、彼女はずっと言っていたけど、私たちは「日常が特別なこと」って思うことはほとんど無いじゃないですか。それに改めて気付かされたのは私自身でも大きいことです。
コロナ禍で失ったものもたくさんあるけれど、それだけじゃないなって、シーズン7を通して思いました。

‐ワカコの行きつけのお店は別として、地方なんかで訪れるお店では、実際のそのお店の方が役者として出演されていますが、そういう方々とのお芝居っていかがですか?

武田梨奈
実際のお店の方なので、調理やオペレーションの手際の良さやお客さんとの距離感などの“本物”を直接感じることができるので、お芝居としても入りやすいです。

‐ちょっとマニアックな質問かもしれませんが、実際のお店で、料理をとても美味しそうな映像に仕上げている撮影部さんや照明部さんが実はすごいに違いない!って感じていますが、現場で見ている武田さんからそこのところをお聞かせください。

武田梨奈
1話につき、だいたい2つのお店が出てきますが、放送された映像では、それぞれ5~10分くらいです。
でも、実際の撮影では、1つのお店ごとに丸1日かけて撮影しています。1つのお酒や、1つの料理を何時間もかけて撮影することもあります。
お酒や料理を作ってくださる方も当然プロフェッショナルで、ずっと研究してきた土壌があってのお酒や料理。なので、それを撮影させてもらう私たちもそれに負けないプロフェッショナルな形で映像にしたいと思っています。それらが合体したときにあの“絵”ができていますし、スタッフ皆の想いが詰め込まれています。

‐なるほど。そういうのがあって、単なる街散歩バラエティじゃなく、映像作品としても成立していると感じさせてくれるんですね。

武田梨奈
ありがとうございます!テストとリハーサルもしっかりやっていて、順番とそれぞれの秒数も決めた上で、本番は長回しで撮影するんですが、できたての熱々のものができるタイミングをしっかり狙って「ようい、スタート!」ってやるので、全員の息がしっかり合っていないとあの“絵”は撮れないんだろうなって思います。

尾かしら付き。

■自分を少しでも肯定してあげられるように。

‐最後に『尾かしら付き。』の見どころ含めたPRメッセージをお願いします。

武田梨奈
先ほどの「コロナ禍で失ったものもあるけど、それだけじゃなかった」という話に通じるものがあるんですが、コンプレックスやネガティブな感情は誰しもが持っていると思いますが、でもそれって決して悪いことだけではなく、抱えているものと向き合うからこそ、新たな自分の感情や頑張ろうって思える気持ちが生まれてくると思います。
そういうことがこの映画では描かれているので、もし自分を否定している人がいたら、少しでも肯定してあげられるようになればいいなと思います。是非多くの方に観ていただきたいです。

尾かしら付き。

武田梨奈(たけだ・りな)プロフィール
1991年6月15日生まれ、神奈川県出身。2009年、映画「ハイキック・ガール!」のオーディションで主演に抜擢。空手歴21年。琉球少林流空手道月心会黒帯。主な出演作に、ドラマ「ミラー・ツインズSeason1」(フジテレビ系)、「妖怪シェアハウスー帰ってきたん怪ー」(テレビ朝日系)、「映画『ジャパニーズ スタイル Japanese Style』(2022年)『いざなぎ暮れた。』(2020年)など。近年は主演を務める日米印合作映画「Shambhala-シャンバラ-」、香港ドラマ「打天下2」(ViuTV)など海外作品が控える。」

■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎]


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映画『尾かしら付き。』

《INTRODUCTION》
お尻に豚のような尻尾が生えている少年・宇津見 快成と、そんな彼の“秘密”を知りながらも、寄り添おうとする少女・樋山 那智。お互いのことを知りたいと思いながら、その気持ちをどう伝えたらいいかわからない健気な2 人のちょっと不思議で心温まる物語。原作は、『マイガール』のほか、『バス走る。』『鉄楽レトラ』といった数多くの人気作を手掛け、20~30 代の女性を中心に支持を集める佐原ミズ。累計発行部数15 万部の人気コミック『尾かしら付き。』ついに実写映画化。

《STORY》
樋山那智は、ソフトボールに汗を流し、“日焼け”に憧れる平凡な中学生。彼女は同級生の宇津見くんが抱える重大な秘密を知ってしまう。それは、彼に『しっぽが生えている』ということ。『みんなと違う』ことに迷い戸惑い傷つきながらも、心を通わせ合う二人の物語。

出演:小西詠斗 大平采佳 / 佐野岳 武田梨奈
木村昴 新内眞衣 土井ケイト 長谷川朝晴

原作:佐原ミズ「尾かしら付き。」(ゼノンコミックス/コアミックス)
監督:真田 幹也
脚本:おかざき さとこ
音楽:Hilcrhyme
主題歌:Hilcrhyme「UNIQUE」(Universal Connect)
企画・製作: EAST WORLD ENTERTAINMENT 埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
制作:デジタルSKIP ステーション ダブル・フィールド/SS工房
配給・宣伝:MOVIE WALKER
©佐原ミズ/コアミックス ©2023 映画「尾かしら付き。」
公式 サイト:okashiratsuki-movie.jp
公式Twitter:@okashiratsuki23
公式Instagram:@okashiratsuki_movie
公式Tiktok:okashiratsuki_movie

尾かしら付き。

2023年11月1日 Blu-ray(CD付きスペシャルパッケージ)発売
URL:https://okashiratsuki-movie.jp/bd/

尾かしら付き。

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