岸井ゆきのが特別ゲストとして登壇。映画『aftersun/アフターサン』シャーロット・ウェルズ監督来日記念舞台挨拶
2023年4月10日、ヒューマントラストシネマ渋谷にて、アカデミー賞®主演男優賞ノミネート&英国アカデミー賞英国新人賞受賞映画『aftersun/アフターサン』の来日記念舞台挨拶が行われ、シャーロット・ウェルズ監督と、特別ゲストとして、映画をこよなく愛す俳優・岸井ゆきのが登壇。本作の魅力について語った。
初長編作品で英国アカデミー賞英国新人賞を受賞、世界のメディアが絶賛し本年度ベストムービーに選出した注目作『aftersun/アフターサン』が、5月26日(金)より全国公開となる。
11歳のソフィが父親とふたりきりで過ごした夏休みを、その20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で綴る本作。2022年カンヌ国際映画祭・批評家週間での上映を皮切りに評判を呼び、話題作を次々と手がけるスタジオA24が北米配給権を獲得。
昨年末には複数の海外メディアが<ベストムービー>に挙げ、毎年映画ファンが注目するオバマ元大統領のお気に入り映画にも選出されるなど、本年度を代表する1本となった。
その波はアワードシーズンを迎えてなおも押し寄せ、父親を演じたポール・メスカルがアカデミー賞🄬主演男優賞のノミネートを果たす。
監督・脚本は、瑞々しい感性で長編デビューを飾った、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。ソフィ役には半年にわたるオーディションで800人の中から選ばれた新人フランキー・コリオ。愛情深くも繊細なカラムには、ドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが抜擢された。
また、A24製作、第89回アカデミー賞®作品賞など3冠に輝いた『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスが脚本に惚れこみ、プロデューサーに名乗りを上げている。
多くを語らず、ミニマリスティックな演出で観る者に深い余韻をもたらす本作は、誰しもの心の片隅に存在する、大切なひととの大切な記憶を揺り起こす。陽光注ぐ海辺、日焼け止めの香り、大きな波音、そして今も残るカラムの手の感覚……。クイーン&デヴィッド・ボウイ「アンダー・プレッシャー」、ブラー「テンダー」等のヒットソングに彩られながら、まばゆさとヒリヒリとした痛みを焼きつける、いつまでも忘れ得ぬ一編となることだろう。
舞台挨拶レポート
公開に先立ち、本作の監督・脚本を務めたシャーロット・ウェルズが初来日。4月10日に、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で行われた監督来日記念舞台挨拶に登壇した。
さらに、本作の大ファンだという映画を愛する俳優・岸井ゆきのが特別ゲストとして駆けつけた。昨年主演した『ケイコ 目を澄ませて』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝き、映画愛にあふれる感動のスピーチも記憶に新しい岸井ゆきのがこれからの活躍にも期待が高まるシャーロット・ウェルズの才能に注目、今後の映画界を担う若き2人の貴重な対面の場となった。
映画上映前、会場に集まった大勢の日本の観客の前に立ったウェルズ監督は「来日するのは初めてですが、日本に来られたこと、皆さんとこの映画を分かち合うことができて、最高の気持ちです」と挨拶。
また、奇しくもこの舞台挨拶の会場となったヒューマントラストシネマ渋谷では、ウェルズ監督が敬愛する伝説の映画監督の特集上映「シャンタル・アケルマン映画祭2023」が行われており、「実はこの作品でもインスピレーションを受けているんですよ」と明かした。
続けて、「この映画のプレミアが(昨年5月の)カンヌだったので、もう11カ月前のことになりますね。この映画でのQ&Aをする機会は、おそらくこれが最後かなと思いますが、自分が想像したよりもはるか遠くにまで、いろんな人に届いた作品になりました」と感慨深い様子で語ると、「この作品はフィクションではありますが、自分のパーソナルな部分、あるいは自分の人生、そして少女時代といった具体的な部分が入っている作品です。そしてそういった作品でありながらも、たくさんの方たちといろんな形で繋がっている作品なので。観客の皆さまがこれからどう繋いでくださるのか、楽しみです」と付け加えた。
ここで、一足先に作品を鑑賞し本作の大ファンになったという岸井が特別ゲストとして登壇。
ウェルズ監督に花束をプレゼントした岸井は「公開が決まった時からこの映画を観たいなと思っていたら、ちょうど今回のお話をいただきました。この映画は父と娘の話なんですけど、父親は多くを語らないんです。だからこそ自分の過去だったり、生きてきたことでしか解明することができない映画だなと思いました。父親が感じていたものが、セリフというよりも、呼吸とか、後ろ姿とか、肌とか、そういうところから伝わってきて、素晴らしい映画だなと思いました」と本作の感想を述べた。
岸井の感想を聞いたウェルズ監督は、「うれしい言葉をありがとうございます!」と笑顔を見せると、「観客の方に、その映画の中に入る余白を持たせることが、短編を作るなかで学んだこと。今回は短編よりも時間がある中で、どういう余白を入れることが正しいんだろうと思いながら創り上げた作品でした。岸井さんがおっしゃった通り、観客の方が自分自身を振り返ることを必要とする映画ではあると思うんです。でも見終わった後に、素晴らしい報酬があるなと感じてくれたら嬉しいですね」と返答。
そんなウェルズ監督に向けて、「わたしが映画で感じたのは呼吸、お父さんの呼吸を感じました。そういうことに関しての演出はどういう風にされているのかなと、気になりました」と質問を投げた岸井。
それに対し、「アケルマン監督が自分の作品を語る時に、足音の大事さを語っていたことがありました。足音が聞こえるだけで物語を肉付けしていくことができる。何が起こっているのか、語ることができるから大事なんだと。それはまさに岸井さんがおっしゃった通りで、それを呼吸でやりたいと思ったんです。(父親・カラム役の)ポール・メスカルは、わたしのことを信頼してくれたので、彼との仕事を楽しむことができました。わたしの解釈を伝えて、そこに彼が自分の解釈を付け加えて、役柄に息を吹き込んでくれた。『ケイコ 目を澄ませて』を観て、岸井さんが本当に素晴らしい役者であることは分かっていますが、岸井さんもご存じの通り、映画は脚本の文字の上だけでなく、そこに役者さんが入りこみ、役を生きなければいけない。そういう意味でポールはすばらしかったし、父親の愛情も見事に表現してくれたなと思います」と振り返った。
最後に、「わたしはこの作品を観て、この作品から感じられる空気の正体は何だろうと。自分が持っている不安とは何だろうと考えながら、自分なりに回答を出したんですけど。この映画を通じて、わたし自身を見ることができました。そうやって(観客にとっても)自分の物語になるような映画だと思うので、ぜひ楽しんでください」と自身の思いの丈を伝えた岸井。
さらにウェルズ監督も「岸井さんが作品を応援してくださっていることに大きな意味があります。作品自体については、あまり多くは語らずに見ていただく方がいい作品なので、オープンな気持ちで観ていただけたらと。この作品は8年越しに、才能あふれる人たちのおかげで作ることができました。今日ここには立っているのは、彼ら、彼女らのおかげ。映画『aftersun/アフターサン』は、美しい光が投影されるスクリーンで観るのがベストだと思うので、ぜひご覧ください」と観客にメッセージを送り舞台挨拶を締めくくった。
映画『aftersun/アフターサン』
アカデミー賞®主演男優賞ノミネート(ポール・メスカル)、英国アカデミー賞英国新人賞受賞(シャーロット・ウェルズ)ほか
映画賞228ノミネート74受賞(3/30時点)
海外メディア絶賛、A24が北米配給権を獲得!
フレッシュな才能が集結した、本年度ベストムービー
【STORY】
最後の夏休みを再生する
20年前のビデオテープに残る、11歳の私と父とのまばゆい数日間。
―――あの時、あなたの心を知ることができたなら。
思春期真っただ中のソフィ(フランキー・コリオ)は、離れて暮らす若き父・カラム(ポール・メスカル)と
トルコのひなびたリゾート地にやってきた。
輝く太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、親密な時間をともにする。
20年後、カラムと同じ年齢になったソフィは、ローファイな映像のなかに大好きだった父の、
当時は知らなかった一面を見出してゆく……。
監督・脚本:シャーロット・ウェルズ(初長編監督作品)
出演:ポール・メスカル(ドラマ「ノーマル・ピープル」『ロスト・ドーター』)、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン・ホール
プロデューサー:バリー・ジェンキンス(『ムーンライト』)ほか
原題:aftersun/2022年/イギリス・アメリカ/カラー/ビスタ/5.1ch/101分/映倫:G/字幕翻訳:松浦美奈
後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
公式サイト:happinet-phantom.com/aftersun/
公式Twitter:https://twitter.com/aftersunjp
2023年5月26日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開
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