【インタビュー】酒井監督「ももクロはモノノフの皆さんが信じている彼女たちそのもの」
ももいろクローバーZの等身大の本音が語られたドキュメンタリー映画『ももいろクローバーZ~ アイドルの向こう側~〈特別上映版〉』(8/19公開)。本作を監督、自らモモノフだと語る酒井祐輔監督(TBSプロデューサー)に、ももクロの魅力について聞いた。
酒井祐輔監督 インタビュー
■モノノフ目線で撮ったドキュメンタリー作品
-本作の撮影をすることになったきっかけは?
酒井祐輔監督
TBSドキュメンタリー映画祭の前に、「解放区」というTBSのドキュメンタリー番組の枠があって、それの企画募集が報道局から社内向けにあったんです。
私はバラエティを作っている人間なんですけど、そこに対しても企画募集の案内があって、僕は、7~8本くらいドキュメンタリーの企画を出したんです。
僕はもともと10年来のももクロのファンなのもあって、その中の1本がももクロのドキュメンタリーの企画でした。
-酒井監督もいわゆるモノノフということですね。
酒井祐輔監督
はい、モノノフです。今回のテーマにしている「彼女たちはどこに向かうのか?」は、僕がファンとして見守り続けている中で、ずっと抱いていた興味だったので、それをこのドキュメンタリーという形で確かめてみたい、答えを見つけてみたいという想いがあって、企画を出して、それを報道局で採用してもらって撮ることになりました。
-ではある意味ファン目線の作品になっているということですね。
酒井祐輔監督
結果的にそうですね。
-具体的にはどういう観点で彼女たちを撮りましたか?
酒井祐輔監督
例えば男性アイドルは30代、40代になってもアイドルで居続けられる道は開かれています。一方、女性アイドルは多くの場合、活動期間が短かったり、ある程度年齢を重ねていくとアーティストに転身したり、俳優に転身したり、ママタレに転身したり、アイドルで居続けられている方は今までいなかったと思うんです。
ところが彼女たちは10代から活動を始めて、もうまもなく30代を迎えようとしているのに、彼女たちが取っているスタンスは一切変わらない。そう考えた時に彼女たちはこれからどうするんだ?と。それがさっきお話した「彼女たちはどこに向かうのか?」ということです。
ひょっとしたらこの子たちは今までの日本の芸能界にはいなかった存在になるんじゃないか、30代、40代になってもアイドルという存在を全うする人たちになるんじゃないかという想いがあって、それを彼女たち自身がいったいどう感じて、何を考えているのか?ということを本人たちにインタビューしてみようと思い、それがこの作品の視点になっています。
■ももクロはモノノフの皆さんが信じている彼女たちそのもの
-撮影前と撮影後で、ももクロに対するイメージや想いなどで変わったところがあれば教えてください。
酒井祐輔監督
どちらかと言うと変わらなかったですね。確かめたという感覚の方が強かったです。きっと彼女たちは自分たちを応援してくれているファンの皆さんを笑顔にするために頑張っていくんだろうと思っていたんです。それに対する本人たちの覚悟の深さを知れました。
もちろん、個々にはそんなことを考えていたのか?と驚く場面はありました。例えば、玉井詩織さんは、器用でなんでもできる人なんですけど、個別インタビューの中で意外な一面を覗かせたんです。才能溢れる彼女でも芸能界の圧倒的な才能を前にした時に、芸能界辞めて別の道に進もうと思ったことがある、それは20歳をすぎてからもあると答えています。「こんなに才能溢れている人でもそんなことを考えるんだ」と、そういう小さな発見はいくつもありました。
でも全体で言うと、彼女たちは、モノノフの皆さんが信じている彼女たちそのものですよということを確かめられたので、それを皆さんに感じてもらいたいなと思っています。
-なるほど、私はそれほどももクロの彼女たちのことは詳しくありませんが、彼女たちの仲の良さはとても印象的でした。
酒井祐輔監督
なんとなく異口同音に彼女たちが同じ方向を向いていると感じられる場面がいくつかあると思うんですけど、彼女たちも人間ですからほんとにそんなに仲が良いの?とか、ほんとにそんなに純粋なの?とか思う方もいるでしょう。でもこの作品を見ていると、ほんとにこの子たちは純粋なのかな、ウソついてないんじゃないかなと思えるんじゃないでしょうか。
-それは身近で撮影されていた酒井さんもそう感じられたということですね。
酒井祐輔監督
はい。これは誓って言いますけど、彼女たちはほんとうに裏表が無いんです。あのまんまの子たちなんです。
■信頼するスタッフに身を委ねて。
-ももクロのプロデュースは誰がどういう形で進めてるのでしょうか?
酒井祐輔監督
川上アキラチーフマネージャーが実質的なプロデューサーですよね。ただ本人は自分のことを「ただのマネージャーです」とおっしゃいますが。
昔から、川上さんが面白いと思うことをどんどん彼女たちに振っていって、彼女たちはそれに純粋に向き合って活動してきたんでしょうね。
そういう中で、佐々木彩夏さんは自身もプロデュース能力があって、ステージの演出もやっているし、みんなそれぞれ自分の意見を出しているようです。でも、元がそういう子たちだし、たとえばライブ演出の佐々木敦規さんだったり、自分たちを支えてくれるスタッフたちをすごく信用しているから、たぶん身を委ねているんじゃないかと思います。
-ももクロを支える川上チーフマネージャー、岡田実音(ヴォイストレーナー)、本広克行監督など、彼ら関係者がももクロを支える想いについて感じられたことはありますか?
酒井祐輔監督
それはやっぱり彼女たちの真っ直ぐさみたいなものに触れていくと、応援したくなるんですよね。彼女たちのためにひと肌脱いであげようというか、彼女たちが目指すものを実現する手伝いをしてあげようという気に、皆さんがなるんだと思います。
それは僕自身もその立場にいたらそうなるんだろうと思いますし、そういう結果がチームとしての力になっていると思います。
■これからも楽しみが尽きないグループ
-ではモノノフ、いわゆるファンの方たちがももクロを応援するその想いは?
酒井祐輔監督
女性アイドルってどうしても男性の疑似恋愛の対象という側面が否定できないと思うんです。ただ、ももクロのファンは世代がとても幅広いし、女性のファンもたくさんいるし、小さな子どもたちのファンもいるし、そこは普通のアイドルとはちょっと違うところだと思います。
大人の男性のファンたちに「もし、ももクロのメンバーと付き合えることになったら付き合いたいですか?」と聞いても、「そんなの畏れ多いです」という人たちが多いんじゃないかなと感じています。どちらかと言うと、おじさんが親戚の子を応援している、成長を見守っている、みたいなそういう形で応援しているファンがとても多いんじゃないかなと思っています。もちろん、中にはルックスが可愛いとか、疑似恋愛の対象で見てる人もいると思いますが、そこが本質じゃない気がします。
-なるほど。そう考えると、ももクロはこれから歳を重ねていってもアイドルで居続けられる可能性を持っているグループかもしれないですね。
酒井祐輔監督
かもしれないです。
-幅広い世代、それこそ子どもたちはももクロにどういう魅力を感じていると思われますか?
酒井祐輔監督
いつも元気で、いつも笑顔なお姉さん。しかもそこにウソが無さそうで…実際に無い。そこだと思います!
-そんなももクロが10年以上続いているその理由はどこにあると思いますか?
酒井祐輔監督
私がどの立場で言っているんだ?ということになりますが(笑)、一人のファンとして思っていることは、これもいつも言っていることですが、ももクロの大原則として、“今現在のももクロが一番面白い”というのがあります。常に今が面白い。
そういう意味では、変わらないと言いつつ、変わり続けているんですね。いろんなことにチャレンジして、どんどん進化していって、それを見守っているのが楽しい。本人たちも映画の中の4人の座談会でそういう会話をしていて、「こういう形になるとはぜんぜん予想していなかった中で、流されていつの間にか辿り着いた。でもあそこで流されるのは楽しかったよね。」というような。
また、いわゆる大きな将来像としての具体的な目標は持っていない。もちろん、途中途中には、たとえば紅白歌合戦に出場したいとか、国立競技場でライブしたいという目の前の目標は持つんですが、いわゆる野心みたいなものを持たない中で、目の前にあるものを精一杯やり続けたきた結果が今なんだと思います。
そういう彼女たちを見ることは、ファンにとっても楽しい。彼女たちがどこに行こうとも応援するぞという気持ちです。
-これからも楽しみが尽きないグループですね。
酒井祐輔監督
そう、楽しみが尽きないです。それをこのドキュメンタリー映画としての撮影を通して確かめることができました。やっぱりこの子たちの将来は楽しみだなって思わせてくれる取材でした。
■「特別上映版」は幻の映画
-この「特別上映版」はドキュメンタリー映画祭バージョンからはどのへんが変わってますか?
酒井祐輔監督
ドキュメンタリー映画祭では時間の都合上カットしたインタビューが含まれています。それと、新たに撮影した、4人がとても仲が良いのがわかる映像を追加しています。これもファンの方は必見です(笑)
-ドキュメンタリー映画祭で観た人は限られている?
酒井祐輔監督
限られています。東京・大阪・名古屋で上映して、観た方はトータルでも千数百人ぐらいじゃないですかね。いずれもキャパが小さい会場でしたので。
-ファンの方でも観れていない人が多いということですね。ある意味幻の映画ですね。
酒井祐輔監督
そうです。幻の映画です(笑)
TBSのドキュメンタリー「解放区」という番組では正味40数分だけでしたし。そしてドキュメンタリー映画祭で上映したバージョンは101分。そして今回の「特別上映版」は115分です。
なので、映画祭で運良く観てくれた人も、今回もちゃんと観ておかないとダメですよということです(笑)もちろん初めて観る方にはようやくお届けできます、ということです。
-最後に本作の見どころ含めたPRメッセージをお願いします。
酒井祐輔監督
ファンの方はもちろんファンじゃない方にも是非ご覧いただいて、ご自分の目で彼女たちの可能性みたいなものを感じていただきたいなと思います。そして“アイドル”というものに興味のある方にはぜひ観て頂きたいです。いろんな想いが巡るんじゃないでしょうか…!
[インタビュー・写真:三平准太郎]
『ももいろクローバーZ ~アイドルの向こう側~〈特別上映版〉』
「人生の半分がももクロ」等身大の本音が語られたドキュメンタリー映画
百田夏菜子・玉井詩織・佐々木彩夏・高城れにの4名によるガールズユニット「ももいろクローバーZ」。本作は、その「ももいろクローバーZ」に「TBS DOCS」が密着したドキュメンタリー映画だ。
10代から活躍をしている彼女たちも、20代後半から30代目前になろうとしている。彼女たちがどこに向かうのか、何を考えているのか。これまでもアイドルの常識を覆し続け、日本の芸能界で前人未到の境地を切り拓こうとしているももクロの“いま”に迫り、メンバー4人だけの空間で普段あまり語ることのなかった人生観や将来などについて赤裸々に語る。また本広克行監督、ももクロのチーフマネージャー・川上アキラ氏など関係者たちへのインタビューも多数収録。等身大の4人の姿や本音が詰まったドキュメンタリー映画だ。
本作は、今年3月に開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2022」にて限定上映され、大きな反響を呼び、単独で劇場公開する運びになった。
さらに、今回は、新バージョンとして、映画祭版には入りきらなかったインタビューや新たに撮影された追加映像を含めた【特別上映版】として、ももクロの魅力が満載の作品に仕上がっている。
出演:百田夏菜子 玉井詩織 佐々木彩夏 高城れに
監督:酒井祐輔
撮影:中島純 酒井祐輔 編集:伊藤圭汰 MA:飯塚大樹 サウンドデザイン:松下俊彦
企画:大久保竜 チーフプロデューサー:藤井和史 プロデューサー:松原由昌 津村有紀/樋江井彰敏
2022年/DCP/ステレオ 製作:TBSテレビ 配給:SDP ©TBSテレビ
公式サイト:https://momoclo-docs.com/
4人からのコメント&本編映像
本予告
8月19日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷他 全国公開
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自分は小さな離島住まいで中々本土に出る事が出来ません! なので、上映終了後にどこかの動画サイト(ABEMAやdtv)等で有料配信していただきたいです。
ここまで未来を語れるのは、グループとしての確かな自信と揺るぎない信念が有るからだろうね。これまでの様々な経験を血肉として、更に発展させて行くだろう。
どちらかと言えば、過去よりこれからのグループとしての在り方に関心があったので是非観に行きたいと思う。