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女の一生

大竹しのぶ「あの喪失感は一生忘れられない。やっぱり芝居をやりたい」11月公演『女の一生』製作発表記者会見

9月30日、東京會館にて、新橋演舞場11月公演『女の一生』の製作発表記者会見が行われ、主演の大竹しのぶ、高橋克実、風間杜夫、段田安則が登壇した。(動画&フォト)

『女の一生』は、日本演劇界を代表する不朽の名作で、昭和20年4月、終戦直前に森本薫が文学座に書き下ろし、杉村春子が初演。以来、杉村はその生涯に947回にわたって主人公の布引けいを演じ、観客の圧倒的な支持を得た。
物語は、明治38年(1905)から昭和20年(1945)までを全五幕七場で綴り、天涯孤独の少女であった布引けいが、拾われた家の長男の妻となって家業を守る40年間を描いている。
けいが恩義ある女主人から託された家を守るために、各場面ごとに成長しながら明治・大正・昭和の時代を生き抜く姿は、正に日本が激動の三時代を歩んで来た姿と重なり、特に第二幕の幕切れの「誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩きだした道ですもの・・・。」という名台詞と共に、人々の共感を呼びながら繰り返し上演されてきた。
同時に第一次と第二次世界大戦という戦争が市井の人々の生活をいやおうなしに巻き込んで日本が苦難へ向かっていく姿を描きだしているが、今回のラストシーンは、現在の社会状況の中、特に希望と勇気をもたらしてくれるものとなるだろう。

大竹しのぶは、主人公・布引けい役。そして、けいがひそかに想いを寄せる堤家の次男・堤栄二に高橋克実、堤家を支える叔父の堤章介に風間杜夫、けいの夫となる長男・堤伸太郎は、今回演出も手がける段田安則が演じる。その他、宮澤エマ、多岐川華子、服部容子、森本健介、林翔太、銀粉蝶という豪華実力派キャストが顔を合わせた。

会見で、今のコロナ禍が俳優に与えた影響について質問されると、大竹しのぶは次のように答えている。

大竹しのぶ
4月に公演を予定していた「桜の園」(アントン・チェーホフ)が、ゲネプロの直前までいって中止になり、「こんな面白いお芝居を観てみらえないんだ」と喪失感が大きかったです。観てもらえることがないまま、セットごとすべてが散っていくというあの悲しみは一生忘れられません。

大竹しのぶ

大竹しのぶ

その上で、今回、大女優・杉村春子の当たり役を初めて演じることについて、大竹と、段田安則は、次のようにその思いを語った。

大竹しのぶ
昭和二十年の戦時中にこの芝居が生まれたんだと思うと本当に色々な事を考えさせられます。
劇場にお客さんが来るのが当たり前じゃない世の中になった今、杉村(春子)先生がお亡くなりになる本当にちょっと前に何日間だけ一緒にお仕事させてもらった時に伺ったお話しを思い出します。
戦時中は、芝居中に空襲警報が鳴るとか、後ろにおまわりさんが立っていて、不当なセリフがないかをチェックしていたそうで、「そういう中で私たちは芝居をやっていたのよ。あなたはいいわね。自由な時代に生まれて、自由に芝居ができるんですもの。頑張りなさいね。」っておっしゃってくださったことを。
私たちは今、不自由な時代に突入したわけです。けれどもそれでもやっぱり、芝居をやりたいと思いました。
稽古場では、万全の対策を練って取り組んでいます。いつもだったらああでもないこうでもないと大声で、時には手を取り合って笑い合ったり。今、そうことは全くできない状況だけれども、その中でも出来る条件の中で、この“布引けい”が生き生きと生きられるような芝居をみんなで作っていきたいなと思います。
この本の持っている力が素晴らしくて、一言一言の台詞の中に文学を感じて、時代を感じて、歴史を感じて、人間を感じます。
だから、このお芝居は延々と続くものになったんだなと思います。
ここで私たちが良いものをまた作って、50年後、100年後、未来の“布引けい”がこうやって生きてきたんだよって教えてもらえるような、良い芝居を作りたいなって心から思っています。

段田安則(演出/堤 伸太郎 役)(出演・演出)
これまで、杉村春子さん、平淑恵さん、波乃久里子さん、いろんな名女優がやられましたが、今回大竹しのぶさんによる令和の新しい“布引けい”を是非お楽しみになっていただきたいと思います。

段田安則

段田安則

風間杜夫

自粛期間中、太ってしまったと語る風間杜夫。『女の一生』の出演は2度目(前回は堤栄二役)

高橋克実

髪の毛のある役のため、「観に来た人に克実さんだとわかってもらえないのでは?」と大竹しのぶからツッコミがあった高橋克実。

■記者会見レポート動画

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女の一生

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新橋演舞場11月公演『女の一生』

明治38年(1905年)日露戦争の後一日本がようやく近代的な資本主義国の姿を整え、同時にその動向が世界の国々と絶ちがたく結び合い、影響し始めた時代。
戦災孤児の境涯にあった布引けい(大竹しのぶ)が、不思議な縁から拾われて堤家の人となったのは、そんな頃である。

清国との貿易で一家を成した堤家は、その当主はすでに亡く、後を継ぐべき息子たちはまだ若く、妻のしず(銀粉蝶)が義弟・章介(風間杜夫)に助けられながら、困難な時代の一日一日を処していた。
甲斐甲斐しい働きぶりを見せるけいは、しずに大変重宝がられた。同時にけいと同様に闊達な気性の次男・栄二(高橋克実)とも気性が合い、お互いにほのかな恋心を抱くようになった。
そのけいの思慕とは裏腹に、しずは跡取りであるべき長男・伸太郎(段田安則)の気弱な性格を気がかりに思い、気丈なけいを嫁に迎えて、堤家を支えてもらう事を望んだ。
しずの恩義に抗しきれなかったけいは、伸太郎の妻となった。
けいは正真正銘堤家の人となり、しずに代わって家の住となっていく。担い切れぬほどの重みに耐えながら、けいはその「女の一生」を生きるのである。

時は流れて昭和20年・・・。二つの大戦を経る激動の時代を生きて、今、焼け跡の廃墟に侍むけいの前に、栄二が再び戻ってきた。
過ぎ去った月日の、激しさと華やかさを秘めて、二人はしみじみと語り合うのであった・・・。

<キャスト>
布引けい:大竹しのぶ
堤栄二:高橋克実
堤伸太郎:段田安則
堤ふみ:宮澤エマ
堤知栄:多岐川華子
堤総子:服部容子
職人 井上:森本健介
野村精三:林翔太
堤しず:銀粉蝶
堤章介:風間杜夫

<スタッフ>
作:森本薫 補綴:戌井市郎 演出:段田安則
美術:松井るみ 照明:服部基 音響:井上正弘 衣裳:前田文子 ヘアメイク:河村陽子
演出補:郷田拓実 制作補:成瀬芳一 舞台監督:瀬尾健児
演出部:大野敏之、山内大典、佐藤たえこ、長井咲花
制作事務:中村恭子、泉野奈津子
制作:松本康男 本田景久 田村由紀子 小櫻真緒

公演期間:2020年11月2日(月)~26日(木)
劇場:新橋演舞場

チケットは、10月4日(日)午前10時より、電話・Webにて受付開始。
・チケットホン松竹
・チケットWEB松竹
そのほか各プレイガイドにて。

[動画・写真・記事:Jun Sakurakoji]

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