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名優・大杉漣がナレーションを務めたドキュメンタリー『世界一と言われた映画館』初日舞台挨拶

佐藤広一監督「大杉漣さんも喜んでいる」

かつて、山形県酒田市に、映画評論家・淀川長治氏が「世界一の映画館」と評した伝説の映画館、グリーン・ハウスがあった。
1976年の大火災・酒田大火で惜しくも消失してしまったが、「山形国際ドキュメンタリー映画祭2017」の企画でドキュメンタリー映画化が決定。そして、そのナレーションを、自身も生前最後となった名優・大杉漣が務めた。2018年1月5日より全国公開。初日舞台挨拶レポート。

世界一と言われた映画館

大杉漣

40年前、この映画館が酒田に存在していたことの奇跡―
「世界一」と謳われた映画館にまつわる、 証言集(トリビュート・フィルム)

上映ベルの代わりにジャズの名曲「ムーンライト・セレナーデ」が流れると、暗がりの中で大好きな映画が始まる…。
「西の堺、東の酒田」と称された商人の町・山形県酒田市に、映画評論家・淀川長治氏が「世界一の映画館」と評した伝説の映画館、グリーン・ハウスがあった。
回転扉から劇場に入ると、コクテール堂のコーヒーが薫り、バーテンダーの居る喫茶スペースが迎える。
少人数でのシネサロン、ホテルのような雰囲気のロビー、ビロード張りの椅子等、その当時東京の映画館でも存在しなかった設備やシステムを取り入れ、多くの人々を魅了したそこは、20歳の若さで支配人となった佐藤久一が作り上げた夢の映画館。
だが、多くの家屋や人々に被害をもたらした1976年の大火災・酒田大火の火元となり、グリーン・ハウスは焼失してしまう。
それから40年余りの時を越えた今、「ムーンライト・セレナーデ」が流れるあの場所へかつて集った人々が、煌めいた思い出をもとに言葉を紡いでいく……。
今年2月に急逝した名優・大杉漣氏のナレーションにのせて贈る、忘れ難い場所を心に持つ人々の証言集。

『世界一と言われた映画館』
配給:アルゴ・ピクチャーズ
©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

語り:大杉漣
プロデューサー:髙橋卓也 監督・構成・撮影:佐藤広一
■証言協力
井山計一 土井寿信 佐藤良広 加藤永子 太田敬治 近藤千恵子 山崎英子 白崎映美 仲川秀樹
企画・製作:認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭 映像提供:山形放送 協力:山形大学社会科学部付属映像研究所
音声技術:折橋久登 整音:半田和巳 製作助手:稲田瑛乃 宣伝美術:菅原睦子 玉津俊彦
協力プロダクション:ZACCO 製作協力:大久保義彦 成田雄太 オフィス佐藤
配給:アルゴ・ピクチャーズ 配給協力:MAP
(2017年/日本/67分/カラー(一部モノクロ)/DCP・Blu-ray/16:9)

2019年1月5日(土) 有楽町スバル座ほか全国順次公開

グリーンハウス

舞台挨拶

世界一と言われた映画館

岡田芳郎/佐藤広一監督/佐藤良広

佐藤広一監督
山形県の小さな映画館の映画にお越しいただき感謝しています。
この映画の完成に期待を寄せてくれていて、ナレーションを担当くださった大杉漣さんもほんとうに喜んでくださっていると思います。

映画制作の経緯

佐藤広一監督
2017年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で映画祭が制作するという珍しい企画で進みました。
最初は20分くらいの短編ということで進めていたんですが、とてもそんな尺では収まりきらないことに早い段階で気づきまして、長編にさせてもらったといういきさつがあります。

世界一と言われた映画館

佐藤広一監督

佐藤久一氏(グリーンハウス初代支配人)について

岡田芳郎
私が書いた本「世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか」を2013年に山形放送が創立60周年の記念にドキュメンタリーラジオドラマ化することになりました。
その時の佐藤久一の役が大杉漣さんなんですね。
そして今回の映画作品はグリーンハウスのことを詳細に記録しているという意味で貴重な作品ですし、そこに大杉漣さんも関わっているということで。
今度は、佐藤監督には、佐藤久一を主人公にした劇映画を撮ってほしいですね。

世界一と言われた映画館

岡田芳郎

佐藤広一監督
がんばります。

(拍手)

大杉漣さんをナレーション起用した理由について

佐藤広一監督
そのラジオ番組がきっかけもあって、大杉漣さんがけっこう酒田市にいらっしゃることがあったということもあり、知り合いのパーソナリティを通して、大杉漣さんにお願いさせてもらいました。
また私個人的には、昔、大杉漣さん主演の短編自主映画作品にスタッフとして参加しておりまして、そこで面識があったというご縁もあります。
本作に依頼については、即答でOKしていただいて、2017年9月に渋谷で録音させていただきました。

佐藤広一監督
ナレーション原稿を作ってお持ちしたんですけど、言い回しとか「ここはこうした方がいいんじゃない」ってけっこう言ってくださるんですよ。
事前に作品を見ていただいているっていうのもあるんですけど、完成形をイメージされていて。
で、オリジナル原稿と大杉漣さん手直し版と2バージョン録ったんですが、けっきょく採用させてもらったのは全部大杉漣さん版でした。

映画に血が通い始めた!

佐藤広一監督
そして、映画の冒頭には、佐藤久一さんの言葉が入るんですが、これは是非文字じゃなくてナレーションでと思っていましたので、大杉漣さんの声が入った瞬間、「これはいきなり血が通い始めた!」「地方の小さな映画館のただのドキュメンタリーには収まらないな」とその時にすぐ手応えを感じました。

印象に残った言葉

佐藤広一監督
映画の裏方のことをよくご存知の方なので、「よくここまで作り込んだね」っていきなり言ってもらえたのが印象に残っています。

– 大杉漣さんは完成品はご覧になられてますか?

佐藤広一監督
はい。

– なんとおっしゃってましたか?

佐藤広一監督
「心ある丁寧なドキュメンタリー作品」と評していただきました。
「自分は最後にちょっと手伝わせていただいただけなんだ」ってずっと最後までおっしゃってました。

大杉漣さんとの思い出

グリーンハウスの姉妹館に酒田港座というのがあるんですが、そこで、大杉漣さんのバンドとこの映画のイベントを2017年に企画しました。それがたまたまなんですが、酒田大火があった10月29日だったんです。
「なんか怖いよね」っていう話を大杉漣さんとしたのが昨日のことのように覚えています。

映画をご覧になる方へメッセージ

佐藤広一監督
ナレーション収録時には大杉漣さんにはほんとうに労っていただきました。
このように山形から全国に羽ばたけて嬉しいです。
映画のキャッチコピーにもありますけど、映画を愛するすべての人にご覧いただきたい作品です。
どうぞよろしくお願いします!

世界一と言われた映画館

山形県酒田市を描いたもうひとつの映画作品

この日の舞台挨拶に、ゲストとして映画『YUKIGUNI』の渡辺智史監督が応援に駆けつけた。
実は、『世界一と言われた映画館』の証言協力の一人、井山計一氏は、国内最高齢の現役バーテンダーで、彼の半生を描いた作品が『YUKIGUNI』。撮影は佐藤広一氏である。
世界中で飲まれているスタンダードカクテル「雪国」の生みの親でもあり、このカクテルは川端康成「雪国」のイメージを表現したものである。

映画『YUKIGUNI』

渡辺智史監督 – 映画『YUKIGUNI』

[写真・記事:Jun Sakurakoji]

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