【インタビュー】100%高崎ロケの映画作品『高崎グラフィティ。』
第32回 高崎映画祭の最終日となる4月8日、フィナーレを飾るクロージング作品として、特別先行上映された映画『高崎グラフィティ。』。主人公“美紀”を演じた女優の佐藤玲さんと監督の川島直人さん、そして、高崎出身のカメラマン武井俊幸さんに、撮影地となった群馬県・高崎でのエピソードや映画の見どころなどのお話を伺いました!
“映画の街”高崎市
高崎市は、“映画の街”としての文化振興に力を入れており、2003年、「高崎フィルム・コミッション」が高崎市役所観光課に設置された。
昨今、地方創生として映画を呼び込む地方が増えてきているが、「高崎フィルム・コミッション」のように自治体が一括窓口となって、ロケ地提供などの地元との調整を引き受けることは、映画製作者にとってはとても心強い。
「高崎フィルム・コミッション」は15年にわたってその実績を積んできており、近年、高崎でロケされた映画作品が増えてきている。
映画『高崎グラフィティ。』
未完成映画予告編大賞 グランプリ獲得と映画化
本作品は、映像制作会社オフィスクレッシェンドが実施し、堤幸彦監督や大根仁監督や、映画プロデューサーの川村元気らが審査員を務めた映像コンテスト、第一回「未完成映画予告編大賞」にて、応募作品285本の中から、グランプリを勝ち取った企画。次代を担うクリエイターの発掘・育成を目指した本企画に、日本中から熱い注目が集まっている。
映画『高崎グラフィティ。』は、2018年の夏、高崎にて先行公開。そして、東京以下順次、全国ロードショーの予定。
ストーリー
高校の卒業式を迎えた、幼馴染の美紀・寛子・優斗・直樹・康太の5人。
それぞれが将来に不安を抱えていたまま、新生活を待っていた。
そんな中、美紀の父親が彼女の入学金をもったまま失踪する。美紀の父親を捜す5人だが、同時に寛子は同棲を始める彼氏に浮気疑惑。優斗は先輩に保険金詐欺を強要される等、それぞれがトラブルに襲われ、皆地元の閉塞感が嫌になり始める。
道中の出会いや事件、そして父親の真意を前にして、5人は自分について初めて考える。
そうして、5人はそれぞれの道へ自ら歩き出す。
■公開情報
映画『高崎グラフィティ。』
監督:川島直人
脚本:小山正太
出演:佐藤玲、萩原利久、岡野真也、中島広稀、三河悠冴
音楽:長尾洋輔
配給:エレファントハウス
©2018 オフィスクレッシェンド
公式サイト:http://takasaki-graffiti.com/
2018年夏 公開予定
ロングインタビュー
本編映像を想定した台本がない中での撮影
– 今日はよろしくお願いします。さて、今回の作品は、本編映画を作りあげる前に予告編を完成させるといった条件の映像コンテストが前提にあり、そのグランプリ作品だったわけですが、本編映画より先に、予告編を撮影・編集するにあたって、監督自身、たいへんだったのではないですか?
川島直人監督
そうですね。撮影したシーンのどこを抽出するかということをまず考えました。
格好良さだけを狙っていくと単なるプロモーションビデオや広告映像のようになってしまうので、そのようにならないようにするにはどうしたらよいかと頭を悩ませました。
今回のコンテスト参加者のほとんどの人たちが、予告編からの映画制作というものを行ったことがなく、台本も全編ができあがっているわけではないので、主演の佐藤さんも、演じるにあたって難しかったのではないかと。
また、カメラマンの武井くんも予告編だけを撮るっていうのは初めてだったと思うので、難しかった。
ただ、ここにいる3人は、大学の同期生ということもあって、仲が良いからこそ、意見を出し合って、うまく楽しみながら撮影ができたと感じています。
– コンテスト用の3分以内の映像を撮影した際に、本編映像制作を想定していましたか?
川島監督
当時、台本と言っても1枚の紙におさまるくらいのものしかなかったですね、
主演・佐藤玲
プロットのようなものしかなかったですよね。
武井カメラマン
結末までのなんとなくの流れのようなものはあったよね。
主演・佐藤玲
メインキャストとなる5人が幼なじみで、主人公・美紀の父親を捜すというところまでは決まっていましたね。
川島監督
そう、つまり物語のスタート部分しかなかったよね。
本編の中身がまだなく、結末もこんなふうにしようというイメージまでという状態でした。
主演・佐藤玲
本編映像に必要かどうかわからないけど、とりあえず撮ってみようといったものも、いくつか撮りましたね。
川島監督
撮影しているその場所で、何ができるかということを考えながら撮った部分もありました。
一方で、登場人物のキャラクターは、当時から決まっていましたね。
主演・佐藤玲
そうですね、キャラクターはブレなかったですね。
キャストは予告編と本編では、私以外全員変わっているんですけれど、共演してくれたみんなに感謝しています。
高崎で撮ること。見せたい場所。
– 今回の映像コンテストには“特定の地域に限定して撮影すること”という応募条件がありましたが、高崎を撮影地として選んだ理由や撮りたかった・見せたかった場所は?
武井カメラマン
僕が高崎出身ということが、撮影地として高崎を選んだ大きな理由になっています。
見せたかった点としては、やはり生まれ育った高崎の魅力。
四方を山に囲まれた自然があり、その一方で駅周辺は近代的な建物が建っていたり。
でも高崎中央銀座商店街みたいな昭和の街の面影を残す場所があったり。
いろんな顔があるところを見てほしかった。
いろいろなドラマが潜んでいるところを感じてもらえればとおもって、監督をまず、高崎の街に連れてくるところから始まりました。
川島監督
高崎自体の魅力ももちろんあるんですが、一番の決め手は、高崎出身の武井さんが生まれ育った土地で撮影したら、思い入れがある力強い映像が撮れるんじゃないかという気持ちがありました。
こういった気持ちっていうのは、作品に表れてくると思うので。
すなわち、知らない土地で撮るよりも、幼いころから見てきた風景を撮るっていうのは、同じアングルから撮ったとしても、映像の持つチカラがはっきりと出てくると信じていました。
なので、武井くんの想いが前面に出てきたら、きっと良い映画になるという自信があったので、高崎を撮影地として選びました。
主演・佐藤玲
観光PR動画のようにはならず、映画作品としてできあがったところもポイントだと思っています。
その街で育った人の目線・意見が反映されていると思います。、
地元の人の協力。高崎フィルム・コミッションの支援
– 撮影地となった高崎の方々とのふれあい、エピソードは?
川島監督
自動車整備や販売をおこなう“カワノオート”さんに、たいへんお世話になりました。
会社のマイナスイメージにつながりかねないシーンとして劇中で使わせていただくことになり、看板も撮影用に取り替えようと相談したのですが、社長さんから「そのまま使いな!」というありがたい言葉をいただきました。
武井カメラマン
いろんなところで、地元の方々のご協力をいただいているんですが、そんな中、僕の実家も使っているんですよ(笑)
家族ぐるみで協力してもらって感謝しています。
またエキストラとして、若い子たちがたくさん集まってくれましたね。
主演・佐藤玲
高崎の街全体が、良い意味で撮影慣れしている感じを受けました。
撮られ慣れているっていうのかな。
なので、撮影がスムーズに進みましたね。
川島監督
やはり、高崎フィルム・コミッションさんが地域に根付いていて、地元の方々と良い関係を築けているからなのかなって思いました。
エキストラの方がいらしてくださったりだとか、スムーズに進めることができたんだと思います。
これはすごいことだと思いましたね。
仕事柄、フィルム・コミッションの方々と仕事をすることが多いのですが、高崎フィルム・コミッションは温かい…アツイ印象ですね。
この方々あって映画を完成することができました。
ロケ地・高崎を巡る楽しみ
– 先ほどの“カワノオート”さんのように、高崎に訪れれば、映画そのもののロケ地が見られるわけですね。
主演・佐藤玲
すでに、ロケ地をまとめたホームページができていたりして、いくつかのシーンのロケ地情報が掲載されているを見つけました。
少しでも観光の手助けになればいいですね。
武井カメラマン
それで高崎が盛り上がれば嬉しいね。
主演・佐藤玲
そう。それで映画も楽しんでくれたら嬉しいです。
撮影時の楽しみ。高崎での印象に残る食事は?
– 高崎で食べたもので、印象に残っているものはありますか?
武井カメラマン
高崎出身の僕が言うよりも、ふたりに答えてもらったほうがいいかな。
いかがでした?
主演・佐藤玲
最初に食べさせてもらったのが、ソースカツ丼でしたね。
みんなで初日に行ったお店の。
川島監督
ソースカツ丼はうまかったなぁ。あの商店街の奥の。
あと、弁当がうまかったなぁ。なんていったっけ。
武井カメラマン
“登利平(とりへい)”かな。
川島監督
そう!登利平の鳥めし。あの弁当がうまかったなぁ。
主演・佐藤玲
あと、だるま弁当。今日も食べました(笑)
武井カメラマン
あと、“はらっぱ”も行ったよね。
川島監督
そう、シナリオハンティングの時に“はらっぱ”っていう、スープスパゲティ屋さんに行ったんですよ。
“はらっぱ”のスープパスタ、うまかったなぁ。
主演・佐藤玲
え~、なにそれ?聞いてないです!
武井カメラマン
スープスパゲティっていうか、高崎のパスタは、スープが多めなんですよね。
主演・佐藤玲
あと、何食べたっけなぁ… 大福みたいなスイーツ。半解凍してたべるの。おいしかったですよね。
(記事註:のちほど、「元祖生クリーム大福の妙ちくりん」だと教えていただきました)
大学で同期生だった3人。
– みなさんは、大学の同期生とのことですが、映画作りにはどんな影響があったか、また、どなたから声掛けがあったのでしょうか?
川島監督
私としては、やりやすかったですね。
安心してわがままも言えたし、同期だからこそ、やりたいようにやれました。
ふたりに本当に感謝しています。
ふたりがこのあとどういうふうにこたえるかわかりませんけど(笑)
さぁ、次!
主演・佐藤玲
さぁ!(笑)どうやってこたえようかな。
私は在学中は演劇学科で、映画学科だったふたりとはまったく接点がなかったんですね。
川島くんとは、数回話したことがあったくらいだったと思います。
川島監督
僕と武井はずっといっしょで、同じ映画サークルで卒業制作も撮ってもらったりしましたね。
主演・佐藤玲
卒業してから、大学の同期としてなにかをやってみたくて、Twitterのダイレクトメッセージで、川島くんに「なにかやってみませんか?」って声をかけたら、映画をやってみようという話になって、武井くんとも引き合わせてくれた感じです。
武井くんはどう?
武井カメラマン
そうですね。佐藤さんと出会いました。はい(笑)
みどころと、誰に観て欲しいかのメッセージ
川島監督
高校を卒業してから新生活を迎えるにあたって誰もが感じたであろう、大人でもこどもでもない、地に足がつかない感じを描いているので、すべての人に観てもらって、共感してもらえたらと思っています。
メインキャストの5人と話し合って、リアルな人物像をつくりあげているので、共感できるはずです。
ぜひ、『高崎グラフィティ。』をよろしくお願いします。
主演・佐藤玲
映画を普段あまり観ない人でも、なにも考えずにふらっと映画館に観に来て欲しいです。
きっと、ほっとできるというか、この作品を観ることで自分の中のなにか将来の夢とかを考えるキッカケになってくれたらなと思います。
武井カメラマン
もちろん、高崎市民のみなさんには観て欲しいんですけれども、やはり一番観て欲しいのは、中学生から高校生くらいのこれから自分がどうなるかと考えている人たちに観て欲しいです。
そして、高崎や自分自身のことを考えてくれたらなと思います。
川島監督
映画の公開は、今年の夏になる予定なのですが、舞台挨拶なども積極的に行って、いろんな方々とトークイベントなども開催したいです。
メインキャストの5人が撮影期間中に、青春してくれていて、本当に仲良かったので、その姿を撮りためた写真があるので、それを随時、いろんな人に見せていきたいと思っています。
[インタビュー・写真:Ichigen Kaneda / 構成:Jun.S]
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