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山懐に抱かれて

岩手で長年人気のキュメンタリー番組が映画化『山懐に抱かれて』トークショー

山懐に抱かれて

遠藤隆監督/室井滋

酪農大家族の24年

4月29日、ポレポレ東中野(東京)にて、映画『山懐に抱かれて』のトークショーが行われ、ナレーションを担当した室井滋と遠藤隆監督が登壇した。
本作は、岩手県田野畑村で、自らの手で山に牧場を切り拓き、四季を通じて牛を完全放牧し、草だけを餌に育てる“山地酪農(やまちらくのう)”を営む父・吉塚公雄さんを中心とする大家族を、地元・テレビ岩手が24年にわたり追いかけたドキュメンタリー映画。平成30年度文化芸術祭賞テレビ・ドキュメンタリー部門優秀賞を受賞している。

「山地酪農」とは。1974年から始まった父・公雄の「いのち」の歩み

植物生態学者の猶原恭爾(なおはらきょうじ)により提唱された、日本国土の特徴や動植物本来の生態系を生かし、限りなく自然に近いサイクルで営む循環型酪農法。
すなわち、山林を切り拓き、シバを植え、乳牛を放ち、牛がのんびりと過ごし、自由に交配し、子牛を生み、牛乳が生み出され、糞尿を落とし、山が育ち、シバが再生され、それをまた牛が採食する・・・というサイクルの酪農法だ。
また、放牧は24時間365日(搾乳時以外)、1ヘクタールあたり成牛換算2頭まで、搾乳量も一般酪農の1/3以下という厳しい条件も定めている。

テレビドキュメンタリーの評判が評判を呼ぶ

映画に登場する吉塚公雄さんは、千葉県在住時に「山地酪農」を知り、自ら実践するため、岩手県田野畑村に移住。牧場を開拓することから始めた。時は1977年。そこから何十年にもわたって吉塚農場の「山地酪農」の苦難が続く。
この酪農大家族をテレビ岩手が取材を開始したのが1994年。岩手県内ニュース番組や、全国ニュース「きょうの出来事」、日本テレビ系列「NNNドキュメント」などで、取材内容が放送され、放送のたびに話題が話題を呼んでいった。

今回、映画化されたきっかけは、テレビ岩手が開局50周年を迎えるにあたり、「地元とともに歩んできたテレビ岩手の歴史の半分も継続取材してきたこの題材は、地元の歴史的財産でもある。地元企業の役目のひとつとして、映画という形にして後世に残していきたい」という気運が広まったことだ。

自身「山地酪農牛乳」を愛飲している室井滋がナレーション担当

映画でナレーションを担当した室井滋は、20数年前にテレビでこの吉塚農場を知り、岩手田野畑で生産される「山地酪農牛乳」を注文するように。以来、20年以上に渡って飲み続けているという。

室井滋
22年くらい前、深夜、疲れて仕事から帰ってきて、テレビで吉塚農場のことを見た時に胸がいっぱいになっちゃって。
子どもさんはまだ小さいのに、外が真っ暗な中、乳搾りをしてから学校に出かけていくみたいな、そういう映像でした。
赤ちゃんが生まれると、お父さんお母さんが酪農で手がいっぱいで、なんだか牛が面倒を見ているな感じで、そしてその牛の背中に猫がいたりとか。“なんて世界なんだろう”って思って、この牛乳をぜひ飲みたいと思ってお取り寄せしました。
ですので、今回、ナレーションをやらせていただくことになったのは、ほんとにご縁としか言いようがないと感じています。

山地酪農に一途な父・公雄氏。そして吉塚一家の魅力

そして、24年間吉塚一家を取材し続け、今回の映画で監督も務めた遠藤隆監督は家族の魅力と映画化について次のように語った。

遠藤隆監督
初めて取材で訪れた時は、(プレハブでの質素な生活ぶりは)まるで昭和初期の話みたいな感じを受けました。
みなさん、ほんとうに貧乏なんですが、でも、みなさん、正直なんですね。
これだけはどこにもないなって思って、そこに一番惹かれました。
お子さんたちはこの農場を継ぐべきと譲らない、父・公雄さんには何度も「それは理不尽だ。子どもにも職業選択の自由がある」と意見もしました(笑)
でも、そこですごいのは、公雄さんは、「他人が子どものことに口をはさむな」という言い方は絶対にしないんです。真正面から議論してくれて、そこもすごくいいなと思いました。
今回映画化にあたっては、幅を広げて家族だけの物語じゃなくて、「山懐」というタイトルのとおり、大きなものに包まれて生かされている家族を描くことにしました。

父・公雄さんが「山地酪農」にどれだけ真剣で一途であるかを表すこんなエピソードも紹介された。

室井滋
お父さんがやられている山地酪農をお子さんたちが十分に継いでいらっしゃるように私からは見えたんですけど、お父さん的にはどうもそうじゃないみたいなんですよね(笑)

遠藤隆監督
例えば、四男の雄志くんがチーズを作っているから山地酪農家じゃないとか、三男の純平くんは営業をやっているから山地酪農家じゃないとか、そういうことをお父さんは頑固に言い張るんです(笑)
でも室井滋さん的にはみんな山地酪農をやってるじゃないみたいな話ですよね?

室井滋
例えば俳優になるとかっていうんならわかりますよ。でもみなさん、山地酪農関連のことをもっと広げるためのお仕事をされるわけですからね(笑)

二人からのメッセージ

室井滋
私はこの山地酪農牛乳を20年飲み続けて、やっぱり元気をもらってきたんだなってことを私自身実感しています。
牛乳と、そして映画のナレーションと、今回ほんとに素敵な出会いで幸せだなと感じています。
皆さんもぜひ一度牧場に行かれたらいいですよね。近くでソフトクリームを食べることもできるんですよ。

山懐に抱かれて

室井滋

遠藤隆監督
ひとつだけ、私の思いとしては、室井さん含めて多くの方々に映画を通じて関わっていただいてすごく幸せなんですけど、僕と一緒に頑張って汗を流してくれたカメラマンとかいろんなスタッフがいまして、その人たちがみんな吉塚さんに夢中になって、室井さんも夢中になっていただいて、そして映画ができているということです。
そういうことを感じていただけたらすごく嬉しいと思います。

山懐に抱かれて

遠藤隆監督

岩手田野畑「山地酪農牛乳」について

田野畑山地酪農牛乳は、40年来、広大な牧山に放牧された乳牛がシバを中心に野草と湧き水を求めて、自由意志で食い、歩き、休み、食べ返し、自然の営みから生まれた牛乳。広大な牧山には化学肥料が農薬は一切使用されない。

田野畑山地酪農牛乳公式サイト:http://yamachi.jp

映画『山懐に抱かれて』

平成30年度文化芸術祭賞テレビ・ドキュメンタリー部門優秀賞

作品概要
美しい岩手の自然を背景に綴る、酪農大家族の24年。
岩手県下閉伊郡田野畑村。5男2女の子どもと夫婦、9人家族の吉塚一家。
山を切り拓き、牛を完全放牧し、限りなく自然に近い環境で育む 安心安全の酪農“山地酪農”。
実現に困難を極めるその酪農に挑む、ひたむきな日々を、子どもたちの育ちと豊かな自然の四季とともに丹念に追いました。
山懐に抱かれて、365日24時間“いのち”と向き合いながら、愛情いっぱいに育まれるその「いとなみ」を、地元ローカル局“テレビ岩手”が24年にわたり独自に追いかけた、人気TVドキュメンタリーシリーズ待望の映画化。

監督・プロデューサー:遠藤 隆
ナレーション:室井 滋/
協力:日本テレビ系列 NNNドキュメント
製作著作:テレビ岩手
配給宣伝協力:ウッキー・プロダクション
テレビ岩手開局50周年記念作品
©テレビ岩手
公式サイト:http://www.tvi.jp/yamafutokoro/

ポレポレ東中野にて絶賛公開中!以降、5/24(金)よりフォーラム盛岡ほか全国順次

山懐に抱かれて

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