「子どもを産んでも仕事ができる。自分の道を進んでいっていいんだ」映画『マイライフ、ママライフ』公開記念舞台挨拶
4月2日(土)渋谷HUMAXにて、映画『マイライフ、マイライフ』の公開記念舞台挨拶が行われ、W主演を務めた鉢嶺杏奈と尾花貴絵、池田良、狗飼恭子(脚本監修)、亀山睦実監督が登壇。本作制作のきっかけや子育て経験のない鉢嶺が池田宅へあたかも劇中の“家族留学”をするエピソードなどが披露された。
亀山監督が本作を企画したのは4年前。仕事と子育ての両立で悩む女性たちの経験談を入念にリサーチし、ひとりで悩みを抱え込んでしまうワーキングマザー、仕事に夢中で妊娠に前向きになれない女性を描く。撮影もコロナ以前に行なわれており、撮影から2年以上を経て、この度ようやく公開にこぎ着けた。
亀山睦実監督
他にもいくつか同時に企画立案してはいたんですけれども、私がちょうど29歳ぐらいで、「平成が終わります。元号が変わります。」みたいなニュースがあったタイミングだったんです。
周りの友人たちも結婚したり子供を育てていたり職場復帰しようと考えていたりみたいなところがあって、友人たちのそういった日常的な愚痴が本音としてSNSにいっぱい広がっていまして、その本音を日々見て「あぁ、そうなんだ」って思っているのと同時に、やっぱり世の中のニュースでも、女性たちが結婚はしたけど、子どもをつくるタイミングがつかめないとか、職場の環境的になかなか持とうと思っても、うまくできないっていうようなことがニュースにあって。
「それって私の友人たちだけじゃなくて本当に日本社会の世の中全体も抱えてる問題なんだ」っていうのが衝撃的だったんです。
これをちょうど平成を30年生きてきた人たちが人生のターニングポイントに来てるっていうことも合わせて元号が変わる、令和になるっていうこともあったので、私たち平成世代が持っている感情というものをしっかり物語に落とし込んだ方がいいんだろうなと思って作りました。
■昭和世代も平成世代も同じ苦しみを感じている
ーこれだけの物語を生み出してすごくリアルだったんですけど、脚本監修をされた狗飼さんが、あがってきた脚本を読んでどんな印象をお持ちだったんでしょうか。
狗飼恭子(脚本監修)
私は監督よりもだいぶ歳が上で、昭和世代ですが、平成世代の女の子も私が感じていた苦しみと同じようなものを感じているんだなと思って、何も変化がないことに驚きました。
ー狗飼さんのアドバイスで印象に残っていることは?
亀山睦実監督
今、狗飼さんがおっしゃったとおり、私は比較的、自分の身の回りの人たち・身の周りの同じ世代の人たちが抱えてるものを描いていたつもりだったんですけれど、上の世代の女性の方たちも同じことを思ってたことが発見でした。
そして、長編映画として脚本を書くのは初めてだったので、「あぁ、そうか、脚本ってこうやって書くんだ」という勉強にもなりました。大学で脚本の授業を受けていたので、形式はもちろんわかってはいたつもりではあったんですけど。「こういうことは書かなくていいのか」とか、逆に「こういうことを書いた方がいいのか」とさらに深く知ることができました。
狗飼恭子
監督から生まれてくるものが、とても面白かったので、私は表面的なカタチを整えたり、「このシーンを前に持ってきた方がいいんじゃない?」とか構成のアドバイスをしただけで、脚本監修だなんて名乗ってしまって本当におこがましいなと思います。
■鉢嶺「私も昨年母になって沙織に追いついた」
ー今回は働きながら子育てをする沙織を演じられた印象は?
鉢嶺杏奈(三島沙織 役)
沙織は、本当に頑張り屋でまっすぐで優しい女性。でもなんてわからずやの旦那を持ってしまったんだろうって、まず思いました。同時に、その時はまだ母ではなかった私がどうやってこの役をやっていけばいいんだろうという不安もありました。
でも、事前に監督とリハーサルをしたり、自分の母や、池田さんの家にお邪魔して母になった方のお話を聞いたりしました。
(我が家に)来たよね。
本当にありがとうございます。
娘さんが二人いるっておっしゃっていて、「どういう感覚なんですか?」っていうのを聞いていたら、池田さんから「そろそろ撮影も近いし、家に来ちゃいなよ」ってとても気軽に言ってくれて、池田家に家族留学させてもらいました。とても楽しかったです。
池田良
オムツ換えやごはんをあげてもらったりもしました。それの大変さを味わったら、役作りに役立つかなと思ったんだけど、鉢嶺さんが楽しそうだったから、そういう意味では目的は達成してないかもしれませんね(笑)
鉢嶺杏奈
スッゴイ楽しかったんです。スパルタみたいな感じで、「じゃぁ、オムツ換えて」って言われて、「やったことないのに、突然オムツを!?」みたいな感じだったんですけど(笑)
その後奥さんにもお話聞いて、1日の生活を見て、本当にお母さんって強いなって。家族の前では明るくふるまっているけど、全部、先を読んで細かく準備されて動いてる姿に、「あぁ、池田さん。あなたは奥さんに毎日ありがとうを伝えていますか?」って気持ちがわいてきました。
池田良
いやいや、僕は(劇中の)この人じゃないから(笑)
でも池田さんは私が娘さん二人と遊んでいた時に、「パパは何してるのかな?」って、パッて振り返ったら、もうなんか日向のあったかそうなところで猫みたいに寝ていました。
池田良
気づいたらね、今日は面倒をみてくれる人が1人増えたから安心しちゃったんだろうね。
鉢嶺杏奈
なんかすごい幸せなあったかい家族だなっていうのをすごく感じました。すごい幸せな粒子が家中にバーっと広がっていましたよ。
池田良
それは良かったってこと?
鉢嶺杏奈
私はあの時間はすごい良かったなって思いました。実体験をちゃんとできたから、想像だけじゃなくて演じられたのがよかったです。
皆さんの力があって沙織という役が出来上がっていきました。
ーそうして結果的に今はお子さんがいらっしゃるじゃないですか。
鉢嶺杏奈
そうなんです。私も去年、男の子を出産いたしまして、やっと沙織に追いついてまいりました。
■鉢嶺「⾃分の道を進んでいっていいんだ、と⼀歩踏み込めた作品」
ーこの作品に関わったことで、考え方は変わりましたか?
鉢嶺杏奈
子どもがいても仕事ってできるのかなって不安だったところがありましたが、この作品を通して「子どもを産んでも仕事できるかもしれない。好きなことやってっていいんだな」という希望を感じたので、子どもが欲しいなっていう前向きな気持ちになれました。
今の(母としての)私があるのは、沙織を演じて「子どもを産んでも仕事ができる。自分の道を進んでいっていいんだ。」と一歩踏み込めたからだと思っています。そういう作品に出会わせくれた亀山監督には本当に感謝しています。
亀山睦実監督
とんでもございません。無茶ぶりな役を演じてくれてありがとうございます。
■母になって観るとこの作品のセリフのひとつひとつが改めて響く
ー鉢嶺さんと亀山睦実監督は大学の同期と伺いました。
亀山睦実監督
はい、大学の同期です。大学時代は一緒に作ったことはないよね。
鉢嶺杏奈
そうなんです。今回、「なんで私を選んでくれたの?」って感じです。
亀山睦実監督
普段のご活躍であの体当たりなことをずっとされているのを見ていたので。
池田良
そんな体当たりの映画でしたっけ、これ。
役柄的に体当たりなところがある映画でした。なので、「お願いできるかな?杏奈ちゃんなら…」と思いました。
鉢嶺杏奈
ありがとうございます。
ー結果的に役だけじゃなくて私生活にも影響を与えたということですものね。
鉢嶺杏奈
子どもができてから観ると、いろんな言葉・セリフひとつひとつが胸に突き刺さってきます。
もちろん役を演じていた時も、「こうだろうな」とに考えてやってるんですけど、やっぱり実体験したあとで見ると、こんな言葉のセリフを書いて作品にしてくださった監督、そして脚本監修の狗飼さん。本当にいろんな女性に響くだろうなっていうのを改めて感じました。
■生き方の選択肢が広がった
ー尾花さんの役も子どもを産むって仕事にどう影響するんだって悩みます。その点についてはどうでしたか?
尾花貴絵(大内綾 役)
私は、綾のような体験をしていないので、最初に台本を読んだ時はどうやって演じようかと悩みました。なので、同世代の結婚して妊娠してた経験を持つ友だちに話を聞いたりしながら、綾とリンクさせていきました。
結婚して妊娠して子どもができることは、一見幸せなことのようだけど、実はそうでもない側面もたくさんあって、そういう体験談も聞いて衝撃も受けました。また、子どもができなくて悩んでいる方にとっては、外で他人の子どもを見ると、「自分もこういう子どもがいたのかな」とか、負の感情になって、つい内にこもってしまうこともある。私も30歳になるので、これからの女性の生き方をすごく考えさせられました。
「女性ってどうやって生きるのがベストなのか」という不安の中、綾を演じて、出来上がった作品を観ると、その不安が希望に変わったというか、こういうふうにも生きられるという選択肢の広がりを感じることができるようになりました。
■父として反省・・・
-ご自身も父である池田さんは、この映画を通して考え直されたことはありますか?
池田良(三島博貴 役)
最初は「俺、こいつよりはやれてるぞ」と思ってたんですけど、撮影が終わってから、改めて自分の生活を見直してみると、妻に負担をかけてしまっているところがたくさんあること気づかされて、自分も(役と)変わらないんじゃないかって焦りました。
自分の家族とのあり方を見つめ直すきっかけになって、自分ができる範囲を増やしていこうと思いましたし、実際増えていったと思います・・・よ。
-具体的には?
池田良
例えば僕が仕事で1日いない時は、妻が1日全てのことをやってくれてるわけです。朝起きて子どものご飯を作り、着替えをさせ、洗濯をして、干して。
一回それを全部自分でやってみようと思って自分のオフの日にその全部をやったんですよ。まぁ、大変でした!
今日は客席に男性が多そうなので、ちょっと声を大にして言いますけど、家のことを全部やるって本当に大変です!
■最後にメッセージ
亀山睦実監督
この作品をこのタイミングで公開できることは、エポックメイキングなことだと思います。コロナ禍で直接人とお話する機会がぐんと減ってしまってます。SNSやメールなんかのテキストでのやり取りは簡単ではあるんですけど、やっぱり声を聞くと安心するとかもあるので、電話したり、時間とチャンスがあれば会って話をしたり、そういうことを一つ一つ大事にしていきたい時代になっていると思います。
ぜひ、みなさんのコメントを世界に届けていただきたいと思います。ご感想お待ちしています︕
映画『マイライフ、ママライフ』
妊娠・出産を先延ばしにして、仕事に⽣きる綾。
2⼈の⼦どもを育てながら、働く沙織。
異なる2⼈が、現代⼥性ならではの⽣きづらさを少しずつ解きほぐし、諦めていた夢に向かってもう⼀度、歩み始めるーーー。
INTRODUTION
仕事と⼦育ての両⽴で悩む⼥性たちの経験談を⼊念にリサーチし、ひとりで悩みを抱え込んでしまうワーキングマザー、仕事に夢中で妊娠に前向きになれない⼥性を描いたのは、平成元年⽣まれの⻲⼭睦実。鉢嶺杏奈、尾花貴絵など監督と同世代の俳優たちが等⾝⼤で今を⽣きる⼥性を演じた。夫役の⽔野勝、池⽥良のほか、柳英⾥紗、中⽥クルミなど個性的な⾯々が揃った。また脚本監修に狗飼恭⼦(『⾵の電話』)が参加。現代⼥性がもつ<⽣き⽅>の悩みや、夫との⼦育てをめぐる軋轢などをリアルに描き、第14 回⽥辺・弁慶映画祭では観客賞を受賞。ジェンダーギャップ指数120 位の⽇本の現実を描く。
STORY
結婚から3年、大内綾(30)は仕事に熱中する日々を送っていた。夫・健太郎から「そろそろ子どもが欲しい」と言われるが、綾は妊娠・出産に勇気が持もてない。
ある日綾は仕事で、子どもを持たない夫婦が子どものいる家庭を体験する『家族留学』のイベント運営を任される。2人の子どもを育てながら働く三島沙織(30)の家庭に体験に行くが、綾は生活のためには「本当にやりたい仕事」を諦め事務職で働く沙織の気持ちが理解出来ず傷つけてしまう。一方の沙織も、夫からの家事育児の協力が得られず不満が積もる日々を送っていて…。
出演:鉢嶺杏奈 尾花貴絵 池田良 柳英里紗 中田クルミ 多田真翔 澤邊優愛 真辺幸星 山中雄輔 高木悠衣 蔦陽子 ヴァネッサ・パン 広野桜 清瀬やえこ 中野マサアキ 森本のぶ 水野勝
監督・脚本:亀山睦実
脚本監修:狗飼恭子
エグゼクティブプロデューサー:亀山暢央 大和田廣樹 浦野大輔
音楽:久保田千陽
主題歌:小玉しのぶ
製作:Kugumi
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
配給協力:ミカタ・エンタテインメント
© 2020「マイライフ、ママライフ」製作委員会
公式HP: https://mymom.mystrikingly.com/
Twitter: https://twitter.com/mymomlife_PJT
全国公開中
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