夢の中

【インタビュー】山﨑果倫「どれを夢と捉えてもらうかは観る人の自由なんです」映画『夢の中』

感動シネマアワードグランプリ作品、映画『夢の中』(公開中)で主演を務める山﨑果倫(やまざきかりん)。俳優として目標としていた芝居の域を初めて実感できたという本作についての取り組みについて聞いた。

本作は、中学生の性の違和感と自己理解の揺らぎを描いた『蝸牛』でMOOSIC LAB 2019短編部門グランプリほか四冠を達成した新鋭・都楳勝監督最新作。
想像をかき立てる幻想的な映像と構成、キャストの真に迫るかけ合いから、この世界と、人と向き合うことの一つの意味を浮かびあがらせる。
主演は、2015年の活動開始から真摯に演技を重ね、「隣の男はよく食べる」(23/テレビ東京)、『輝け星くず』(主演・24公開予定)ほか近年出演作が続き評価を高める山﨑果倫。
共演は、連続テレビ小説「ちむどんどん」(22/NHK)などドラマ・映画を中心に出演、監督作『君に幸あれよ』(23)ほか映像作家としても注目を集める櫻井圭佑。

山﨑果倫 インタビュー&撮り下ろしフォト

■当初のプロットから大きく変わりました

‐本作は作家性の強く、映画を観る人にその解釈を委ねている部分も大きいと思いますが、この物語に最初に触れられたときの印象は?

山﨑果倫(藤野タエコ 役)
実を言うと、最初にいただいたプロットと脚本は、最終的に映画として出来上がった物語とは全く違うものでした。もっと現実的で、性的な肉体関係も描かれていました。
でも、何度かリハーサルを重ねていくにつれて、監督が抽象的な表現に変えていかれたんです。
コロナ禍の影響で撮影が延期になった間に、監督がどんどん脚本を変えて、最終的に原型を全く留めていない、役名以外の全部が変わっちゃって。
だから最初の印象は、今のこの『夢の中』に思うこととは、全く違う印象でした。

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山﨑果倫

‐どういった点が変わりましたか?

山﨑果倫
元の物語は、男女問わず、人間同士の肉体的繋がりと精神的繋がりにある恋愛感情みたいなものについて具体的に描いていましたが、最終的には、性的表現がほとんど無くなったことと、人間同士のもっと根本的なものの抽象的な部分を描いた作品となりました。

‐演じられたタエコというキャラクターの設定に変化はありましたか?

山﨑果倫
これも最初はまったく違うものでした。
女優志望で、自分の体を安売りしてしまう人間で、恋愛もあまりうまくいかないというキャラクターを現実的に描いたものでしたが、タエコという役名はそのままに、感情を擬人化したような存在となりました。

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タエコ(演:山﨑果倫)  ©「夢の中」製作委員会

‐その上でタエコというキャラクターをどのように捉えられましたか?

山﨑果倫
タエコは、とても虚ろで儚くて、虚無感をまとった存在だと客観的な印象を持ちました。演じてみると、ずっといろんな感情で葛藤しているなと。
色は、赤や黄などいろんな色をが全部混ざると黒になりますが、感情も色々なものが混ざっちゃうと、何色かわからなくなって黒になる。タエコの内面はまさしくそれだと捉えています。

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■どれを夢と捉えるのかは観る人の自由

‐『夢の中』というタイトルに込められた意味は?

山﨑果倫
いろんな意味があると私は感じてるんですけど、先ほどおっしゃる通り、観る人に委ねている作品なので、観ている人がこの作品自体を夢だと捉えるのか、登場人物が見ている夢なのか、それは、映画を観ている人自身の心の捉え方が正解だと思っています。
いろんなセリフ、そして、夢っぽいシーン、現実っぽいシーンが織り交ぜられている中で、どれを夢と捉えてもらうかも観る人の自由なんです。
だから演じてる側も、はっきりどれが夢でどれが現実だって分けていませんでした。

‐監督からも明確な区別の指示はなく?

山﨑果倫
ほとんど無かったです。ただ、役の感情や精神状態、肉体の状態にひとつひとつ向き合っていって、それが繋げられたっていう感じでした。

‐都楳(つうめ)監督にはどういう相談、もしくは演出がありましたか?

山﨑果倫
演出に関しては、彼の中にとても細かく明確な正解があるんです。例えば目に力が入ってる入ってないとか、視点の近さや口の開き具合とか。
私がハンバーグを食べるシーンでは、20回ぐらいNGになって、正解が出るまで都楳監督は絶対にOKを出さないんです。

‐確かにこの作品は、セリフで語るのではなく、役者の細かい表情で表現しているなと感じました。

山﨑果倫
はい。その中で特に目の表情が担っているものが大きかったです。今、タエコの心情がどういう状態なのかを目で表現するように意識していました。

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■幻想的で美しい水中シーンの裏話

‐そういう中で、水中シーンは、夢のシーンかなってわかりやすいのかもしれませんね。

山﨑果倫
はい。水中シーンは、心の抽象的な状態を表現したものです。例えば“恋に溺れる”という表現は、苦しい気持ちを水に溺れて息ができないことに喩えているように、タエコが溺れている時や、どんどん沈んでいっちゃう時は、タエコの苦しい心情を、逆に、ちゃんと泳げているときは、タエコが自分の感情の中を上手く泳げて多分居心地が良い状態にいる。というように、水中シーンは、イコール心の状態を映しているんだと私は捉えてました。

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場面写真  ©「夢の中」製作委員会

‐水中シーンは、タエコとショウの2人が登場することもありますが、2人が同時に観ている夢なのか、どちらかの夢なのかも観ていて考えさせられました。

山﨑果倫
タイトルにある“夢”を“心”と捉えると分かりやすいかもしれません。人間って、自分自身のことが、人と話してやっと分かることもあります。例えば自分では明るいって思ってなかったのに、人に明るいねって言ってもらって自分を知るというような。
タエコも、一人では分からなかったものが、ショウ(演:櫻井圭佑)という存在に出会って、自分の心の中を旅することで、自分の状態がどんどん分かっていく。そういうのがショウとのシーンなのかなって私は思っています。

‐とても幻想的で美しい映像になっている水中シーンの撮影は大変でしたか?

山﨑果倫
とても大変でした。未体験の深さまで、初めての潜水で潜ったので。一段、一段、ダイバーさんと耳抜きしながら潜っていったんですけど、本番ではリハーサルよりも2メートルぐらい更に深くまで潜れました。ストロークが長い方が映像の余白が作れると思ったので、いけるところまでいかなきゃと頑張ったら、みんな驚いてくれて、さすがにドヤ顔でした(笑)
その上で、スポットライトが当たっているところに自分で泳いでいかないといけなかったんですが、私は、泳ぎそんなに得意じゃないので、もう無我夢中でした。撮影中はアドレナリンが出ていたのか、どうやったか正直あまり覚えていないんですけど(笑)
水中シーンは体力勝負で一発で成功させなきゃとも思ったので、集中力を研ぎ澄ませました。そのせいか、撮影が終わったらドッと疲れが出て1日寝ていました(笑)

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■とても多才な櫻井圭佑さん

‐共演の櫻井圭佑さんの印象は?

山﨑果倫
友だちでも恋人でもないという役の関係で、なおかつ、お互いの感性を研ぎ澄ませないと演じられなかった役でもあったので、撮影期間中は、お互いあまり仲良くならないようにという意識がありました。なので、会話も最低限で、あまり心の距離が縮まらないようにしていました。
でも、櫻井さんは、写真撮影など、いろんな活動をされている方なので、空き時間はずっと、写真や動画を撮ってたり、いつもエネルギッシュに能動的に動いてる人で、そこがとても魅力的な方だなと思っていました。

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ショウ(演:櫻井圭佑)  ©「夢の中」製作委員会

‐そういえば、櫻井さん演じるショウはカメラマンですね。

山﨑果倫
櫻井さんが写真を撮られる方だからキャスティングされたわけじゃなく、偶然だったらしくて、だからこそすごい縁だなって思いました。
しかも櫻井さんは、水泳もとても得意な方で、飛び込みとかもコーチングしていただいて、とても助かりました。ボートを漕ぐシーンがありますが、ボート部だったかでそれも得意で、(撮影ポイントの)湖の真ん中まで、しかもすごい速い速度で漕いで運んでくれたんです。私にとってもう全部やってくれた方で、とっても多彩な方です。
櫻井さんがいたからこそ、私もお芝居に集中できたということもあります。助かりました。

■私の人間らしさがにじみ出たお芝居を目指したい

‐本作のリリースで、「自分とは別の人間の人生を生きるということを初めて確かに実感ができた作品」とコメントされていましたが、具体的には?

山﨑果倫
タエコを演じていて、予定調和じゃない部分がたくさんあって、例えばこのシーンはこういう感じで演じようとか、それって私が山﨑果倫として考えてることじゃないですか。
そうではなくて、タエコを演じてる間は自然と手がこうなったとか、自然とこういう表情になったとか、自然と痙攣したとか、カメラが回って演じてる時、私の中で初めて起きることがたくさんあって、それが積み重なっていくことで、私じゃなくてタエコが動いてたって思えるような時間が何度かあったんです。
それを初めて体験したのがこの作品のタエコという役だったので、そのようなコメントを書かせていただきました。
お芝居を勉強している中で、それはまさしく目指していることでもあったんです。準備は絶対必要だけど、頭で演じるんじゃないことを重ねて、違う人を生きるところまで行けることを目標にしていたので、それを実感できた作品として、とても嬉しかったのは覚えてます。

‐なるほど。今後の俳優活動に繋がるものを実感できたということですね。

山﨑果倫
そうですね。この作品は、コロナ禍で撮影できない期間が長かったのもあって、結果的に贅沢な準備期間があったからこそ実感できたのかもしれません。
でも、今後、短い撮影期間の作品で、そこまでできるかという課題も同時に感じたので、より身が引き締まる思いですし、タエコの時のようにできているのか?という物差しになればいいなとも思っています。

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‐そもそもの質問ですが、俳優の道に進まれたきっかけは?

山﨑果倫
思春期の頃、自分が何者かになりたいって思ったんです。そのために、今の現状から一歩先へ進みたいという気持ちから、今の事務所のオーディションに応募したのがきっかけです。
そして、明確に自分の中で俳優を志そう思ったのは、2019年に『宮本から君へ』(真利子哲也監督)という映画に出会ったときです。俳優という仕事について、改めてゼロからスタートという気持ちで学び直しました。

‐その上で改めて俳優としての今後の抱負がありましたら教えてください。

山﨑果倫
お芝居自体というよりも、ダメなところも含めた人間らしさ、愛情、優しさ、温もりみたいな、そういう私の人間らしさがにじみ出たお芝居を目指して、感情を取り繕うというより、そのままで演じていけるような豊かな人間になって、それがお芝居に出せるような俳優になりたいです。

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■心の潤い

‐ところで、劇中、水槽で飼っているトカゲに水をやりながら「湿ってないと死んじゃうんです」というシーンがありますが、人間って、心に“潤い”がないと生きづらいじゃないですか。

山﨑果倫
そのシーンはまさしくそれを比喩表現したものなんです!

‐このシーンにちなんで、山﨑さんの日常での心の潤いとはなんでしょう?

山﨑果倫
私の姉の子、2歳と4歳の甥っ子が2人いるんですけれど、その甥っ子の写真を見るときです(笑)
もう日課なんですけど、朝目覚めたら、まず甥っ子の写真と動画を見ます。甥っ子が私の名前、「果倫ちゃん」って呼んでいる動画があるんですけど、それを見た時は、ワ~♪って、心からなにかわからない幸せな成分が溢れ出します。ポワポワポワってします♪ これまで感じたことのない感情を甥っ子たちからもらっています。

‐そのほか好きな過ごし方はありますか?

山﨑果倫
本当に仕事しなくていい日は、昼飲みが大好きです(笑)
お酒はけっこう強めだと思います。あんまりヘロヘロにはならないので。
昼飲みってなかなかできることじゃないから、本当に予定が何も無い日は、昼間にビール!
2杯目以降は、ホッピーの黒とか、ハイボールを飲んでいます。
お酒を飲みながら映画を観るのがとても好きなので、おうちで一人で飲みながら映画を観ています!

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■リラックスして観てほしい

‐最後に、本作をご覧になる方へのメッセージをお願いします。

山﨑果倫
作品を読み解くっていう見方よりも、ぼんやりと美術館の絵や景色を見て、自然って綺麗だなとか、切ないなとか思うように観てほしいなって思っています。
映画を観る時は、出来事の時系列や根拠、登場人物の関係性を探すことに頭を使うことが多いと思いますが、そうではなく、リラックスした状態で観始めていただくと、気づいたら自分の心に刺さるものがあると思っています。そのようにに受け取ってもらえたら嬉しいです。

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■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎]

山﨑果倫(やまざき・かりん)プロフィール
1999年10月8日生まれ。愛知県出身。2015年、レプロエンタテインメント×Sony Music合同主催AD「DREAM GIRL AUDITION2015」合格し活動を開始。その後、舞台「ローファーズハイ」(浅草九劇)での公演で演技経験を積みドラマ・映画への出演の機会が増加。
近年の出演作にはドラマ「隣の男はよく食べる」(2023/テレビ東京)、映画『死体の人』(2022/監督:草苅勲)、映画『おとななじみ』(2023/監督:高橋洋人)、ドラマ「君に届け」(2022/Netflix)などがあり、2024年には主演映画『輝け星くず』(2023/監督:西尾孔志)が全国公開予定。今後の活動が注目される。

映画『夢の中』

[感動シネマアワードグランプリ作品]
多種多様な“感動”を肯定し、観客の“心を揺さぶる”企画を全国から募集し、レプロエンタテインメント出資のもと製作する、映画コンペティション企画。

《INTRODUCTION》
中学生の性の違和感と自己理解の揺らぎを描いた『蝸牛』でMOOSIC LAB 2019短編部門グランプリほか四冠を達成した新鋭・都楳勝監督最新作。想像をかき立てる幻想的な映像と構成、キャストの真に迫るかけ合いから、この世界と、人と向き合うことの一つの意味を浮かびあがらせる。
主演は、2015年の活動開始から真摯に演技を重ね、「隣の男はよく食べる」(23/テレビ東京)、『輝け星くず』(主演・24公開予定)ほか近年出演作が続き評価を高める山﨑果倫。
共演は、連続テレビ小説「ちむどんどん」(22/NHk)などドラマ・映画を中心に出演、監督作『君に幸あれよ』(23)ほか映像作家としても注目を集める櫻井圭佑。
そして、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22/NHK)や、連続テレビ小説「らんまん」(23/NHK)など近年活躍の場を広げる山谷花純、大河ドラマ「光る君へ」(24/NHK)出演のほか演出家としても多岐に活動する玉置玲央たちが集結した。

《STORY》
<現実と夢>が溶け合う時間——
いま自分が信じるものを見つめなおす、逃避と目醒めの物語
「俺のこと、ここで匿ってくれない?」血まみれで息を切らす男・ショウに声をかけられたタエコ。生気がなく虚ろな瞳の彼女は、部屋に入る彼に「私の最期、綺麗に撮ってください」とお願いする――。何から逃れてきたのか。その願いは本当に望んでいるものなのか。二人は時間を共有するうちに、夢とも現実ともつかない、お互いの感情と記憶が交ざり合う奇異な世界に引き込まれていく。タエコが、ショウが、目を背けてきたものを前に、表情を変えていく。何が本当で嘘なのか、当たり前と思っていたあの安らぎも、この苦しみも。

出演:山﨑果倫 櫻井圭佑
アベラヒデノブ 金海用龍 森崎みのり 玉置玲央 山谷花純
脚本・監督:都楳勝
音楽:若狭真司
企画・プロデュース:菊地陽介
宣伝デザイン:鴨川枝理
企画・製作・制作プロダクション・配給:レプロエンタテインメント
配給協力:インターフィルム
©「夢の中」製作委員会
公式サイト:https://yumeno.lespros.co.jp
公式X:@yumeno_movie
公式Instagram:@ClingtotheNight

予告編

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2024年5月10日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

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